最終更新: 2020年5月21日

物心ついた時には配信で音楽を買う世代にとってアナログは、レトロな物というより、フレッシュでファッショナブルな物として映るのではないでしょうか。

インタビュー:カジヒデキ インタビュアー:yabori 撮影:MASAHIRO ARITA

-今回はPeter Bjorn and Johnの「Young Folks」をカバーされるとのことですが、どうしてこの曲をカバーしようと思ったのでしょうか。
カジ:今回のTHE SUSANとのコラボは、まずレコードストアデイ有りきで、NIW!レコードさんの方から彼女達とのコラボで参加しないかとお話を頂きました。今も変わらずレコード好きの自分にとって、レコードストアデイはずっと参加したかったですし、以前から交流はあるものの、一緒に制作をする機会が全くなかったTHE SUZANとのコラボは、とても面白そうだと直感的に思いました。僕自身“Mr.Sweden”という肩書きがあり、「Young Folks」が「口笛ソング」として日本でも人気が出た2007年に、amtmというブラザートムさんとAimiさんのユニットが「恋はビヨーン」というタイトルでカバーをしたのですが、その曲のアレンジとプロデュースは僕が手がけました。THE SUZANはPeter Bjorn and Johnのビヨルンにアルバムをプロデュースして貰った事があり、一緒に何かをカバーをするなら、お互い所縁の深いこの曲という選択はとても簡単でした。

-「Young Folks」のカバーでは、THE SUZANも参加しているそうですね。彼女たちとは、どういういきさつで知り合ったのでしょうか。またどうして彼女たちと一緒にカバー曲をやろうと思ったのでしょうか。
すでに最初の質問で答えてしまいましたが、このシングルは“カジヒデキとTHE SUZAN”という名義でのコラボレーションです。なので僕の作品に参加して貰ったのではなく、対等な立場です。元々彼女達と知り合ったのは2008年頃で、最初のベーシストだったミッシェルさんからMy Spaceか何かに連絡を頂いたように記憶します。とにかくスゴくカッコ良かったので、その年にスタートした僕のイベント“BLUE BOYS CLUB”の第2回目(2008年9月)に出演して頂きました。その後彼女達はNYや活動の拠点を移しましたが、帰国した際に何度か対バンをしたことがあります。

-今作をどうしてヴァイナルでリリースしようと思ったのでしょうか。
レコードストアディの為に作ったからで、ヴァイナルである事がマストです。

-ヴァイナルの魅了について教えてください。
僕自身は1967年生まれなので子供の時からヴァイナルで育ちましたし、やはりアルバムなど12インチのジャケットの大きさが最大の魅力的だと思います。アートだと思います。パッケージとしての楽しさがスゴくありますよね。7インチや10インチも同様で、その大きさの可愛さや、物として大切にしたくなる魔法が宿っています。もちろんCDやデジタルでは聴けない、音の温かみや奥行きがある事はいわずもがなです。

-ヴァイナルは最近息を吹き返したと言われています。どうして今、アナログが注目されていると思いますか?
そもそも欧米などがそうだと思うのですが、物心ついた時には配信で音楽を買う世代にとってアナログは、レトロな物というより、フレッシュでファッショナブルな物として映るのではないでしょうか。中でもインディーやオルタナティブな音楽を好きな人達はファッションにも興味のある人が多いし、オシャレ感覚で楽しめるのではないかと思います。

-ヴァイナルにまつわるエピソードがあれば教えてください。
僕は90年代の前半、渋谷の輸入レコードショップでバイトをしながら、バンド活動をしていました。週に2,3回ある入荷日には、イギリスやアメリカから段ボール10〜20箱分のレコードが届き、開店までに新作を壁に飾ったり、ABC順に仕分けをしたり、一枚一枚にコメントを書いたり、忙しくも楽しい至福の時を過ごしました。特に海外のバンドの最新アルバムやシングルのレコードに針を落とし、流れてくる音楽を聴く時のワクワクする感じは今もずっと印象に残っています。

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-普段どのように音楽を聴いていますか?またレコードを聴きたいと思う瞬間はありますか?
海外のインディーロックやインディーポップ、パンクやニューウェイヴなどオルタナティブな音楽が10代の頃からずっと変わらず好きですし、ジャズやラテン、映画音楽、ガールズポップやロック、ソフトロック等々、好きなタイプの物は幅広く何でも聴きます。

-撮影の際にお持ち頂いたレコードについて伺いたく思います。それぞれのアルバムについて教えてください。またどう自分の音楽に繋がっているか教えてください。
Tracey Thornのデビューアルバム『a distant shore』の日本盤。ネオアコの記念碑的な作品。1980年前後に、現在にも通じるグラスゴーシーンの基礎を築いた偉大過ぎるレーベル“POSTCARD”を代表する3枚の7インチ。Orange Juiceの「Blue Boy」、Aztec Cameraの「Just Like Gold」、Josef Kの「Chance Meeting」。そしてその次世代のPrimal Screamのデビューシングル「All Fall Down」。すべて僕が今やっている音楽のルーツです。

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