最終更新: 2013年9月14日

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アーティスト:Doon(Vo.)、Yukihiro(Gt.) インタビュアー:yabori

-プロフィールによるとDoonさんとYukihiroさんは一時期カナダにいたそうですね。
Yukihiro(以下Y): 最初に俺がカナダに行って、クレイグス・リストっていう海外でバンドメンバー募集をするサイトがあるんですけど、当時マイスペースにちゃんとした音源を載せてるバンドがいて。いざ会ってみたらいいじゃんってなって(笑)。お前あのフジロックの日本から来たんだろって言われて(笑)。

-Doonさんはカナダどうでしたか?
Doon(以下D):半分くらい遊びに行ったようなものですけど。目的意識も彼ほど高くはなかったですね。向こうではライブを観に行ったり、遊んだり養分を取るような期間でした。

-カナダの音楽シーンはどうでしたか?向こうはブロークン・ソーシャル・シーンやアーケイド・ファイア等の素晴らしいバンドがいますよね。
Y:家の目の前にJason Collett(元ブロークン・ソーシャル・シーン)が住んでたんですよ。

-それは凄いですね・・・。
Y:彼らの2ndアルバムで歌ったボーカルがいたんですよね。それとカナダはライブハウスの密集度が凄いんですよ。トロントってダウンタウン自体、規模としてはニュー・ヨークと変わらないんですけど、端から端まで数限りないライブハウスやバーがあるんですね。必ずどっかでライブをやってる。

-バーでもライブをやってる感じでしょうか。
Y:もうライブハウスっていう概念自体があんまりないですね。
D:ライブ専用のハコって話になると、こっちでいうクアトロとかそういう規模になってて、後は飲食店に付随してる感じです。

-リバティーンズのピートがシークレットでバーでライブをやるって話を聞くこととかもあるんですけど、そんなノリで日常的にライブをやってる感じですよね。という事は音楽シーンそのものが日本とは違いますよね。
Y:平日はバーをやってて、土日はイベントをやってる店が多いですね。それと思ったよりもチケットは安くなくて、ローカルバンドだとだいたい20ドル(2000円)くらいですかね。大きなバンドはすぐチケットは売り切れますけどね。

-日本よりもライブハウスに行く敷居が高くない感じでしょうか。
Y:日本よりも敷居は高くないというか、別にライブを観るって目的以外でも飲みに行く人が多くて。横でライブをやってるもんだから聴いてて、いいじゃんってなったら前に行くって感じですね。ライブハウスの作りにもよるんですけど、ストロークスがカナダデビューしたライブハウスはThe Horse Shoeっていうダウンタウンのど真ん中にある所なんですね。そこは入り口から入るとまずバーカウンターがあって、ビリヤードがあって、みんな飲んでるんですよ。ちょっと真ん中に入るとライブ用の入り口があってそこでチケットを買うと、ライブが見れようになってましたね。入らなくても酒飲んでビリヤードやってるだけで、ライブの音がバンバン聴こえてくるんですよ(笑)。
D:日本でいうと、演歌の流しに近い感じですかね。基本的に酒ありきっていう。場の賑やかしで生まれたのが最初の文化なんじゃないかなと。日本はスタイルを輸入してしまった以上、それの発表会をわざわざやらないといけない宿命があるんじゃないですかね。
Y:日本ではライブハウスに行く人って、基本的にライブを観る人だけじゃないですか。でも向こうはもっといろんな目的を持った人がいるんですよ。普通にバーテンと仲が良いから来て、流れてる音楽が良いからチケットを買って観てみようかって人もざらにいますね。入り口が「ライブをやります」ってものじゃなくて、「音楽好きが集まる所でライブもやってます」という感じですね。

-なるほど。まったく日本と違いますね。そういう国の音楽シーンを見て来たお二人にとって、今の日本の音楽シーンはどう見えますか?
Y:右にならえになってる感じが凄くしますね。固定フォーマットが完全に出来上がってるんですよね。日本でインディーズバンドをやるならこうしようみたいな。
D:ディアゴスティーニでインディーズバンド向けの商品出せば?みたいな感じですよね(笑)。打ち上げではこうしろとか。どこの国でもそういうものはあると思うんだけれども、ちょっと酷いかなと。

-日本のバンドって自由なバンドが少なくと思いますね。
Y:雑誌を見てても一括りにできるバンドが多いというか。
D:多分好きなバンドがいるんでしょうけど、そのバンドとほぼ同じような事をしてるだけなのがいけないと思うんですよね。メロコアが流行った時に、そのまんまメロコアをやってしまうっていう。本来ならこの人たちはなんでこんな音楽をやっているんだろうとか、元をマネしないとその人たちには追いつけないはずで。その人のマネなんかしてもその人以上になれるはずないし。

-全くその通りだと思います。ではバンドについてですが、Christopher Allan Diadoraは“Drinking Team”というコンセプトを持っているそうですが、これはどういう意味なのでしょうか?
Y:コンセプトというか、僕たちはバンドです!頑張ります!みんなに良い音楽を届けたいです!っていう気持ちがないっていう。我々は自分たちの好きな音楽が一緒でベクトルも同じ方向を向いてる人間の集まりというのが重要で。もちろん音楽を鳴らすことも重要なんですけど、みんなで酒飲んでて「この曲めっちゃ笑えるけど、みんなぽかーんとするんだろうな」みたいなノリが大事なんですよ。

-他のバンドと違って、もっと自由にやりたいってことですよね。
Y:バンドは自分たちの為にやってるんですよ。でももっとライブをやりなよとか言われますけど、我々がやりたくないと思ったらやりたくないんですよ。
D:さっきのディアゴスティーニじゃないけど、ライブはMCでこういう事言わなきゃいけないとか、それに沿わない事をやると周りで関わってくれてる人がやきもきするみたいで。
Y:フレンドリーにしとけば、もっと注目してくれるお客さんがいるかもしれないのにとかって言われる事もあって。でもこっちはそういう人に振り向いてもらう為にやってる訳ではないので。

-確かにファンサービスをしなくても、曲が良かったり、ライブが良かったら振り向いてくれるでしょうね。
D:そう。全くフレンドリーにしてない訳でもないし、面白い奴がいたら仲良くなるし。ただフラットにやってるだけなのにね。

-バンドそのものが自由に音楽をやる為の場という感じですよね。最初はDiadoraにThe Telephonesの石毛さんも加わる予定だったそうですね。
Y:彼が最初にやってたバンドも割と偏屈なバンドだったんですよ。

-Telephonesの前のバンドということですか?
Y:そうです。石毛のやっていたとあるバンドの何がアホだったかというと「フー・ファイターズの1stが好き」ってバンドだったんですよ。それだけで俺がツボってしまって(笑)。だってフー・ファイターズが好きなんじゃなくて、色々ある中で、あえて1stが好きっていう(笑)。それでお互い共感した訳なんですよね。こいつとは似たものを感じると(笑)。で、サイドバンドやるからにはとことんひねくれてやろうぜって言ってて、石毛もそれじゃあやるってなって。

-ということはDiadoraの最初の発想はサイドバンドから始まったという事ですよね。
Y:そうです。死ぬほどポストハードコアでしたね。
D:メインのバンドでは発散できないストレスをこのバンドで発散してやろうという感じですね。でも結局メインがなくなったんで、メロディーが戻って来たっていう(笑)。

-今の音だとストレスなくやってるんじゃないですか?
Y:ストレスなくやってますね。本当の最初はめっちゃ叫んで、ギター投げてましたね。今はさすがにやってませんけど(笑)。

-(笑)。今回のアルバムのジャケット(『Amanda』)を見たのですが、めっちゃエロいんですね(笑)。でも面白いと思いました。これにはどういった意図があるのでしょうか?
Y:まずはジャケットに裸体を出したらいかんのかと。何なら乳首も出したかったんですけど、その辺りはどの辺までがセーフか分からなかったというのもあって、それならお尻を出そうとなって。もともとハッピーな感じの曲で勝負する訳ではないので、爽やかな写真一枚!みたいなものではないと。このジャケットを決めた瞬間にビーディ・アイのジャケットが思いっきり乳首出てて、クッソーーーってなりましたね(笑)。エロをかっこ良く見せる方法はいくらでもあるんだけど、エロははなからダメだみたいなのはちょっと分かんないなって思って。見せ方によっては絶対かっこいい所に繋がると思うんで。

-お二人のそういう感性が芽生えたのも海外に行ってからですか?
Y:いや、元からありましたね。でもなおさら拍車がかかったのかもしれないですね。みんな真面目だなというかね。冗談半分で思いついたアイデアをどんどんやってみるってだけでもいいんじゃないかっていう。バンドはマジでやってるんですけど、こういう事やったらお客さんは引いちゃうかなぁ~じゃなくて、ノリでいいじゃんっていう。
D:真剣に遊んでるというか、ふざけているっていう所を汲んで欲しいですね。

-そういう側面は普段のバンドの活動では伝えづらい所ですよね。
Y:分かってくれる人がいたらもっと嬉しいけど、分かってもらおうとしてやってる訳ではないので。
D:多くの人にとって音楽って娯楽の一部なんだし、少しでも生活に刺激を与えるものなんだから、まず自分たちが楽しんでないといけないと思うんですよね。むしろそれが基本なんだと思うんだけれど。それで顔色伺うなんて本末転倒だと思う。バンドってそんな偉いものじゃないし。

-自分たちが表現したい事を表現してないのが一番ダメなんじゃないかと思いますね。今のバンドってサラリーマンっぽい事をやってる気がしてて。
Y:相手に合わせて、合わせてって、やっていくとね。
D:そもそもサラリーマンになりたくなくて、バンドやってるんじゃないのっていう。

-その通りだと思います。今作を聴いた感想なのですが、もちろん演奏も素晴らしいと思ったのですが、Doonさんのボーカルが意外とスゥイートだったのが面白いなと思いました。もっと渋い感じなのかなと思いました。もっとブルースっぽいというか。
D:俺らはメロディーをしっかり作りたい所があるからじゃないですかね。ロックン・ロール野郎でもブルース野郎でもないので。それは育ったのが90年代の洋楽だからかもしれない。

-今回のアルバムのコンセプトはどのようなものだったんですか?
Y:コンセプトというほど偉そうなものじゃないんですけど、青写真はあって。それがクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジというバンドなんですね。我々は彼らの影響がかなりでかく、目を覚まさせてくれたバンドなんですね。本当にひねくれてるって意味では、ザ・フォーマットぶっ壊しバンドというか。
D:彼らはそこまでブルージ―じゃないし、メロディーもフックもちゃんある。
Y:ブラック・キーズはプロデューサーのデンジャー・マウスと会うまではメロディーにフェイクを多用してて、いかにもブルースガレージってバンドでしたけど、彼と会ってメロディーが前に出てきて、ボーカルのダン節が出てるじゃないですか。

-ブラック・キーズの『エル・カミーノ』は良いアルバムでしたよね。
Y:最初はポップにまとまり過ぎててびっくりしたんですけど、後から聴いていくとちゃんと根底に今までの彼ららしさがあるし。

-オールディーズっぽくなりましたよね。
Y:我々の音楽にもオールディーズという部分は大事で。人々があれを聴いてなんでオールディーズと感じるかっていうのは、多分マイナーコードだと思うんですよね。ストロークスでいうと「Trying Your Luck」のレトロ感というか、物悲しいけれどもひたすら暗い訳でもないという。ザ・メランコリックって感じですかね。日本だと8ottoの1st『we do viberation』なんかが近いと思いますね。我々の音楽はアコギでも弾けるんだけども、それをどんどんバラバラにしていった先にあるものなんですよね。
D:それでいてみんなで口ずさめるような所に落とし込みたいってのがありますね。

-それでは最後の質問です。さっきの話にも出てきましたけど、90年代の音楽がルーツだったんですか?
Y:入り口はニルヴァーナのような普通の洋楽を聴いてましたね。時代に即した音楽を聴いていて、2000年代に入ってから一気に自分の中では広がったという感じがしますね。
D:入口はエアロ・スミスですよ。
Y:中3とかの頃の話ですけど、本当の入りはハード・ロックですよ。でも今のバンドの音楽は2000年以降登場したバンドにも影響を受けてて。その中では俺はまずマンドゥ・ディアオに影響を受けて、ストロークスもキングス・オブ・レオンもいたけど、自分の中に一番残ってるのはマンドゥ・ディアオですね。あのレトロ感やマイナー調とかメランコリックブルースって感じもあるし、ハッピーな曲よりももの悲しい曲が好きなんですよね。そういうものが自分の中に残っていきますね。