最終更新: 2014年2月16日

東京インディ・シーンにおいてcero、シャムキャッツと同じくらい名前を耳にするのはこの4人組バンド・ミツメだ。昨年はインドネシアでのツアーやワンマンライヴ、FUJIROCK FESTIVALへの出演を果たすなど着実に活動の幅を広げてきている。70年代のフォーク・ソングを下敷きに、スピッツのようなか細い声とOGRE YOU ASSHOLEにも似たどっしりとしたダブ・サウンドを兼ね備えているのが特徴的。そんな音楽性を決定的にしたセカンド・アルバム『Eye』、バンド感を強めたシングル「うつろ」と順調に段階を踏んでいき、ついにサード・アルバム『ささやき』がリリースされた。本作は『Eye』でもあり「うつろ」でもあるのだが、でもその路線とはまたちょっと違う。空間を揺らすことでまとめあげた『Eye』が粒ぞろいならば、今回は粒違いの個性がある。以前の音楽性をよりシンプルにまとめただけではなく、どことなくユルくて異物感が残る仕上がりとなっている。

ブラック・ミュージックの匂い漂う「停滞夜」や「paradise」のような、彼らの得意分野ともいえるゆったり踊れるナンバーはドープ感を減らし、空間を揺らすよりもバンドの持つ肉体感を大事に作られている。「クラーク」で見せる半音上がりの不安定な歌い声はユルくておかしいし、ラスト・ナンバーである「number」はビートルズ「A Day In The Life」にも似た不安感を煽って終わる。まるでコピー&ペーストで作られたようなアルバム・ジャケットの団地の写真も、美しい中にどことなく気持ちの悪さを孕んでいるように感じてしまう。

しかし、生み出された気持ちの悪さにすら無関心そうな佇まいをみせる彼ら。ミツメというバンドは、低体温なのだと思う。その時の気分で変わるという方向性もそうだが、ささやきのようにさり気なくて素っ気ない。何者にも邪魔されない、自由奔放できまぐれなバンドだと思う。そういったミツメの核心をよりストレートに感じられる『ささやき』は、これまで以上にミツメらしさが詰まっているのである。

【Writer】ŠŠŒ梶原綾乃(@tokyo_ballerina)