最終更新: 2014年2月24日

ドラマ「マジすか学園」で前田敦子扮する地味な転校生が、何かに立ち向かう人を嘲笑する人に対して怒りを爆発させ“人のマジを笑うんじゃねえ!”と言うカタルシス満載の熱い台詞がある。何かしら突飛で新しい志向を凝らした試みがもてはやされ、真直ぐなものに対しては「ベタ」という烙印を押しがちな一億総ツッコミ時代の中、生真面目でキャッチーな日本のロックに挑戦しているオワリカラ4枚目のアルバムを聴くとそんな台詞を思い出した。

2010年に最新型ポップ・サイケデリアを掲げ登場した4人組。立て続けに発表された過去3作はサイケ/ファンク/ニューウェイヴ/歌謡曲を20代の感性で吸収したサウンド、サブカルチャー臭のする歌詞・タカハシヒョウリ(Vo,G)の歌唱といちいち過剰で捻くれた部分が魅力であった。この“情報量の多さをポップに聴かせる”やり方は器用さ・素養の豊富さでしっかり成立していたし、また同じくサイケなポップを打ち出したモーモールルギャバンや、快進撃を続けるceroなど、2010年代の日本のロック全体の傾向ともいえる。

しかし前作『Q&A』から約2年と最も長い時間を経て届けられた本作には過去作より先(=サイハテ)に踏み出す、ストレートで熱い想いの歌に溢れている。アルバムの核となる2曲「サイハテソング」、「マーキュリー」はシンプルな演奏で井上陽水に影響を受けたタカハシのメロディメイカーとしての才能が爆発した大名曲。ダウナーな空気の「MUSIC SLIDER」も決してアングラではなく山下達郎「SOLID SLIDER」にインスパイアされたようなポップ・ファンクチューンに消化している。“アイデアの過剰さ”ではなく、様々な音楽を吸収した上で身を任せるようにして生まれる真直ぐな音を閉じ込めた“熱の過剰さ”が痛快だ。

とはいえ“道”に関する言葉遊びの打ち込みサウンド「~通路~」など合間に肩の力を緩める工夫もあり用意周到。サンボマスター以来のしっかり音楽的裏打ちを持ちつつ熱に溢れる、日本語ロックの最も情熱的な部分を狙えるバンドではないだろうか。

【Writer】峯大貴(@mine_cism)