最終更新: 2014年6月15日

昨年8月、吉田ヨウヘイgroup(以下YYG)初の関西ライブを京都nanoで見ていた。小さなステージにぎゅうぎゅうに乗る7人(当時)。サックス、ファゴット、フルートを含む編成だが、あくまでメロディ・ギターリフを中心に構築されたロックでフォーキーな楽曲。東京から一台のレンタカーを夜通し転がし、そしてぶつけたというエピソード。当時出来立ての「ブールヴァード」の演奏に納得いかず、西田修大(G)が“もう一回やらせてください!”と再度やった熱意とこだわり。スタイルの模索を続ける彼らから、人懐っこさとアクの強さを感じたことを今でも覚えている。

あれから10ヶ月、編成も8人となったこの2ndからは多くの音が複雑に結われたコンボスタイルで「日本のロック」ど真ん中を試みる、彼らの試行錯誤が見事に結実している。

池田若菜(Flu,Cho)のフルートがまるで第2期の開幕を宣言するようなキラーチューン「ブールヴァード」、YYG流2分半ダンスロック「ドレスはオレンジ」など攻撃的なリズムセクションと複雑な音の積み重ねは白眉。一方で吉田ヨウヘイ(Vo,G,Sax)は友部正人や佐藤公彦らフォークシンガーに通ずる詞の響きを大切にする歌い手であり、これがサウンド・リズムに劣らず声・詞も過剰に耳に飛び込む全部乗せの“濃い味”となる。また女性コーラスに関して前作『From Now On』では一つの音色として飛び道具的機能を担い、「日本のDirty Projectors」とも称される所以であった。だがOK?NO!!やソロでも活動するreddam(Cho,Key)の加入で3人となった本作では、時にシンガロングを生み、時に吉田と同等な存在感を発揮するものとなり幅を広げている。

9曲34分、短くまとめられはいるが聴きごたえは大作の域。それは“複雑なものをシンプルに聴かせる”というサービス精神・試行錯誤の跡さえも音として伝わってくるから。「新世界」を聴いていると何故か通天閣の麓、まさしく新世界の情景が浮かんでくる。串カツのソースの臭い、ドギツイ看板、コテコテの人、あの街独特の“過剰さ・アクの強さ”が本作と通じるからだろう。だから彼らは愛されるのだ。

【Writer】峯大貴(@mine_cism)