最終更新: 2023年3月25日

「クロノスタシス」の歌詞にある“BPM83”の意味とは!?

「クロノスタシス」が収録されたきのこ帝国『フェイクワールドワンダーランド』について、佐藤千亜妃(Vo./Gt.)にインタビューを行った。

『フェイクワールドワンダーランド』

きのこ帝国

アーティスト:佐藤千亜妃(Vo./Gt.) インタビュアー:桃井 かおる子

-アルバムタイトルを直訳すると『模造の世界・驚異の世界』となりますが、なぜこの二つの言葉をタイトルに使ったのですか?
佐藤千亜妃:例えこの世界が色々なまやかしで出来ているとしても、感じ方ひとつですばらしい所だと思えるはず。『フェイクワールドワンダーランド』というタイトルには、そんな意味合いが込められています。

-先行シングル「東京」をはじめ、恋愛をテーマにした楽曲が多く、アルバム全体をとして短編集の一冊の少女マンガを読んでいるようでした。どのようなコンセプトでこの作品を作られたのでしょうか?
実際のところ、”恋愛”というもの自体がテーマになっている楽曲は1曲もありません。人との出逢い、喜び、希望、心の揺らぎ、別れや、悲しみ、諦め、アルバム全体を通してそういった人間らしい感情を描いています。口ずさみたくなるようなメロディーを意識しながら、等身大の言葉を選んでアプローチしました。

歌詞について

-歌詞に注目してこの作品を聴くと、前半は比較的に大人っぽい内容やダークな曲が目立ち、後半は前向きで若々しい印象を受けました。さらに前半と後半で、佐藤さんの歌い方や声の出し方も違いますよね。アルバムの前半と後半で内容や雰囲気を変えているのはなぜですか?
受け取り方は千差万別ですね。色んな人がいると思います。曲順に関しては、いつも全ての楽曲を録りおわってから並べます。基本的に、聴いていてハッとしたり、ジーンときたり、という感覚を大事にしているので、ニュートラルな感覚で純粋にサウンドから曲順を導き出します。楽曲制作のときの展開を練る作業に非常に似ています。感覚で作り、そこから頭で整頓していく作業です。試行錯誤でしたが、今回も曲に導かれて順番を決めました。

-収録曲中に雰囲気の全く違うインスト曲が2曲、6曲目の「あるゆえ」を間に挟むようにして収録されています。インストの曲がアルバムの最後辺りに来ることはよくあると思いますし、何より、きのこ帝国が作品中にインスト曲を使用されるのはとても珍しいと思います。なぜ今回インスト曲を入れられたのか、どうしてこの順番にしたのかを教えて下さい。
「あるゆえ」は個人的に少し異質な楽曲だと思っていて、インストはその前後でスイッチを切り替える役目を果たしているかと思います。

「クロノスタシス」のリズム

フェイクワールドワンダーランド

-ゆったりしたメロディーやアッパーチューンなど、今回のアルバムはリズム感が非常に多彩な作品に仕上げられていると思います。以前ナタリーのインタビューで、制作過程でテンポにはいつも悩んでいるという内容のお話しをされていますが、今作で特にテンポなどに悩んだ曲はありますか?
クロノスタシスです。気持ち良く聴けるようにするため、実はブロックごとにBPMを変えていたりします。

-(上記の質問に関して)2曲目に収録されている「クロノスタシス」はレゲエやヒップホップの要素を含んでいて、今までのきのこ帝国にはない新しい一面を見せていると思います。なぜこのようなリズムの曲に仕上げたのですか?
”仕上げた”というよりも、元々、宅録デモの段階でそういった遺伝子を持っている曲でした。デモでは簡単な打ち込みを使用し、ギターなどのうわものは音数を極力シンプルにして、歌とコーラスをのせました。そこには、リズム隊のグルーヴと歌メロを打ち出した曲にしたいという明確なイメージがありました。

BPM83とは

-この曲に関しまして、歌詞にある〈BPM83〉とはどのくらいの速さを意味しているのですか?
この曲の1サビのBPMが83になってます。厳密に言うともう少し細かい数字なのですが、楽しくて、帰るのが惜しい気持ちでゆっくりと歩いている、そんな感じの速さです。

-最後に収録されている「Telepathy/Overdrive」についてですが、歌詞の中でも「馬鹿な僕たちだから手は繋いだままで」とあるように、今のきのこ帝国のスタンスなどを表現しているように感じました。この曲に込めた思いなどがあれば聞かせてほしいです。
プライベートのひとこまを切り取った曲です。2年ほど前でしょうか。あの頃の気持ちは今でも鮮明に蘇ります。聴く人の自由な解釈で聴いてほしいと思います。

-例えばART-SCHOOLの木下 理樹さんなど、【今10代に聴いてほしいアーティスト】にきのこ帝国の名前を挙げている方が増えています。今作は過去の作品と比較すると、とてもキャッチーでポップな仕上がりになっていると思うのですが、制作過程でそのようなことも意識されましたか?
意識しました。今まではどこか避けていた表現方法にもトライしてみて、結果面白いものが生まれた気がしています。

-今回このアルバムを作る上で、ヒントなどを得たアーティストやアルバムがあれば教えて下さい。
アカシックという人たち。バンドなんですけど、自分は良い意味でバンドらしからぬグループだと思ってます。曲が良くて、とても刺激を受けました。

-ミュージックビデオの話になるのですが、以前「ユーリカ」のPVの監督に映画監督の豊田 利晃氏を起用するなど、きのこ帝国は映像面でも力を入れられてますよね。先行シングルの「東京」では、女優の臼田 あさみさんが出演されていますが、なぜ彼女を起用したのですか?
透明感がありつつも、表情ひとつでは単純に感情を読み取れない複雑そうなパーソナリティに惹かれました。幸せな側面だけではなく、その裏側に潜む不安や悲しみなどが映像としても表現できたのではないかと思います。

下記、インタビューの補足として、“クロノスタシス”の意味を改めて紹介する。

クロノスタシスの意味

クレジット:pexels
「クロノスタシス」は、2014年にリリースされたきのこ帝国のアルバム『フェイクワールドワンダーランド』に収録されている。

この曲は、レゲエやヒップホップの要素を取り入れた、きのこ帝国にとって新しい試みとなった楽曲だ。歌詞には、人間らしい感情や日常のひとこまを描いている。

“クロノスタシス”とは、視覚現象の一種で、目を動かした直後に見える物体が一瞬だけ静止して見えること。この曲は、その現象をメタファーにして、時間や記憶との関係を歌っている。

また、この曲は映画『花束みたいな恋をした』で使用され、再び注目を集めている。

BPMの意味

「クロノスタシス」の歌詞の中で、特に注目されるのが、“BPM83”というフレーズ。これは、曲の1サビのテンポが83ビート・パー・ミニット(BPM)であることを示している。

BPMとは、音楽の速さやリズムを表す単位で、1分間に何回拍があるかを数えたものだ。BPMが高いほど速く、低いほどゆっくりとした音楽になる。

BPM83は、「クロノスタシス」が表現する心境や雰囲気に合わせて設定された数字である。

歌詞では、恋人と過ごす時間を大切にしたいという気持ちを表している。

BPM83とアルバムコンセプト

また、BPM83は、この曲が収録されたアルバム『フェイクワールドワンダーランド』のコンセプトにも関係している。

このアルバムは、“例えこの世界が色々なまやかしで出来ているとしても、感じ方ひとつですばらしい所だと思えるはず”というメッセージを込めている。

BPM83は、そんなフェイクな世界でも楽しく生きる姿勢を象徴しているのかもしれない。(2023年3月25日)

リリース

フェイクワールドワンダーランド
フェイクワールドワンダーランド

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DAIZAWA RECORDS (2014-11-26)
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発売日:2014年10月29日
レーベル:DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT inc.
収録曲:
01.東京
02.クロノスタシス
03.ヴァージン・スーサイド
04.You outside my window
05.Unknown Planet
06.あるゆえ
07.24
08.フェイクワールドワンダーランド
09.ラストデイ
10.疾走
11.Telepathy/Overdrive

猫とアレルギー
猫とアレルギー

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Universal Music LLC (2015-11-11)
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発売日:2015年11月11日
収録曲:
01.猫とアレルギー
02.怪獣の腕のなか
03.夏の夜の街
04.35℃
05.スカルプチャー
06.ドライブ
07.桜が咲く前に
08.ハッカ
09.ありふれた言葉
10.YOUTHFUL ANGER
11.名前を呼んで
12.ひとひら

愛のゆくえ
愛のゆくえ

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Universal Music LLC (2016-11-02)
売り上げランキング: 22,465

発売日:2016年11月02日
収録曲:
01.愛のゆくえ
02.LAST DANCE
03.MOON WALK
04.Landscape
05.夏の影
06.雨上がり
07.畦道で
08.死がふたりをわかつまで
09.クライベイビー

プロフィール

きのこ帝国

“Bass 谷口滋昭/Vocal, Guitar 佐藤千亜妃/Drum 西村“コン”/Guitar あーちゃん

佐藤千亜妃(Vo/Gt)、あーちゃん(Gt)、谷口滋昭(Ba)、西村“コン”(Dr)の4人組バンド。2012年にDAIZAWA RECORDES/UK.PROJECT inc.よりアルバム『渦になる』でデビュー。
2015年4月EMI Recordsよりシングル『桜が咲く前に』を発売。2016年11月、映画「湯を沸かすほどの熱い愛」の主題歌として書き下ろした表題曲を含むアルバム『愛のゆくえ』を発売。
2017年9月に結成10周年を迎え、2018年4月までに9か所9公演、結成10周年を記念した全国ツアー「夢みる頃を過ぎても」を大盛況に終える。9月に約2年ぶりとなるニューアルバム「タイム・ラプス」をリリース、東阪でのワンマン公演を予定している。”

引用元:ユニバーサル ミュージック

Youtube

  • きのこ帝国 – 東京 (MV)
  • きのこ帝国 – クロノスタシス(MV)

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