最終更新: 2020年12月8日

無理やり洋楽っぽいものをやろうってメンタルでやっても絶対良くならないとストレイテナーは断言する。

むしろ“テナーらしさ”を求めた結果、『Behind The Scene』というアルバムが生まれたという。今作をストレイテナーのメンバー4人がインタビューで語ったこととは?

ストレイテナーインタビュー

ストレイテナー:ホリエアツシ(Vo.,Gt.)、日向秀和(Ba.)、大山純(Gt.)、ナカヤマシンペイ(Dr.) インタビュアー:ohamu 撮影:Masahiro Arita

-今回のアルバムを作られる前に大きな出来事として武道館公演がありましたね。ライブはファン投票を元に曲を演奏したと聞きましたが、どうでしたか?
ホリエ:1回目の武道館は悔いが残ってたので。

-そうなんですね、具体的に教えてください。
ホリエ:武道館だからっていう気負いがあって演出にすごくこだわり、普段じゃないことをやろうとしたんですよ。結果的にフィジカルがついて行かなかったことがあって、もっと鍛えて挑まないといけない場所なんだなっていう。その時にまたやろうねっていう話をして、1回目は終わったんですよ。2回目は最初の時ほど気負わずにやりたいなっていうのと10周年続けてこれたっていうファンへの感謝の気持ちを最大限に表現する事を考えて。今回は準備がじっくりなされてたと思います。そのライブの映像がベストアルバムと共に出せるっていうこともありましたし。

-プレッシャーに負けずにということですよね。
ホリエ:ライブは3時間におよんだんですけど、曲数が多くて体力の限界でしたね。
日向:集中力もだいぶ使ったしね。前回の武道館は衝動的な勢いでやっていたものがもっとクオリティの高いショウを見せるっていうところに意識が変わったんで、最後までずっと集中力を持たせるのが大変でした。最後にこれからのツアーを発表したんですけど、あれ見てて感動的な映画を観た後のスタッフロールのようで泣けてきましたね。
ホリエ:1回目悔いが残ったのは喉が枯れてしまった事なんですけど、2回目は枯れなかった代わりにリアルタイムで腹筋が筋肉痛になってましたね。
大山:初めの武道館は加入してまだ半年で。武道館のすごみも分からないまま放り込まれた感じなんですけど、2回目はちゃんとバンドのグルーヴの一員になって参加できたというか、やっと本当の意味で武道館に立てたなって感じました。あと、ファンからの人気投票でセットリストを決めたからそれによってストレイテナーに求められてるサウンドの方向性がはっきり見えたなと思いました。

-ファン投票をやってみて、実験的に作った曲が予想以上にランクインしていたようですね。アルバムもその流れを受けて自由に作ったものが多いのでしょうか。
ホリエ:あまり実験をしてないっていうことが今回のアルバムの特徴っていうか。アルバムごとにどういうアルバムにしたいっていう気持ちがあるんですけど、作る曲は一曲一曲全部が一個の方向に向かってるわけじゃないんで。それぞれカラーがあったりするんですけど、今回色んな要素が含まれてて、かつ自然体で作れましたね。
ナカヤマ:ツアーも回りきって、年も変わって、さあ11年目を始めるぞくらいのフレッシュさがあったんじゃないかと。

Behind The Scene

-なるほど。『Behind The Scene』というアルバムタイトルですが、直訳すると舞台の裏側という意味ですよね。これにはどういう意味があるのでしょうか。
ホリエ:去年から全都道府県ツアーのドキュメント映像を自分達で撮ったり、ありのままを曝け出していこうって考えてて。ファンを信頼して自分達の作る音楽の裏側にある表情とか人間性みたいなのを出していこうっていう試みをやっていますね。アルバムタイトルは舞台の裏側と言いつつも、舞台って目に見えてるもので。作品だったら、作品を受け取る側は、本当はその作品の表面しか見ることができないけど、そこに見えてるものじゃないもっと裏にあるものに目を向けていこうっていう、そういうメッセージがありますね。

-そのアルバムジャケットは魔法の世界みたいな雰囲気ですね。このようなジャケットにした意図を教えてください。
ナカヤマ:10年間、ずっとデジタルで作ってきたので、それを機にアナログ手法に変えようと思ってベスト盤以降のジャケットは写真だったり、デジタルを使わない方向に行ってたんですよ。そこにグラフィックを載せるとしたら書いたものを並べるしかないと思ってたので。あれ(ジャケットの絵)はメチャクチャでかいんですよ、1mくらい。そこに並べたものを撮って。撮影は雨の中で、大変でした。
日向:曲順もね、看板みたいなのにつるして。
ナカヤマ:そうそう、全部手書きで。夜なべして作りました。その裏側も買った方は何か分かるっていう。

-今回のアルバムは原点回帰という言葉をどうしても使いたくなるような作品だと思います。サウンドも初期に戻ったような印象を受けましたが、心境の変化などがあれば教えてください。
ホリエ:僕らみたいなバンドはどっちかっていうと作品性重視とかオリジナリティーを出すために何を加えて何を引いてみたいなのを試しながら音楽を作っていくんですけど、今回なぜそういう初期衝動的な音が鳴っているかっていうと、そういうのに対する照れもいらないなっていう気持ちがあって。それくらいさらけ出していこうっていうのがありましたね。だからずっと好きでいられるものをそのまま出した感じっていうか。もう、これあのバンドのパクリだよねとか言われないだろうなって。
日向:どうやってもテナーっぽくなっちゃうっていう。

-リスナーも安心して聴けますね。ストレイテナーは日本語と英語で歌う曲がありますが、この二つはどのように使い分けているのでしょうか。
ホリエ:メロディーにどっちが合うかっていうだけですね。メロディーを作った時点でどっちかっていうのはすぐに自分の中で答えが出てて。たまーにディレクターからリクエストで、ちょっとだけ日本語入れたらどうかなっていうアドバイスをもらってやってみることもあるけど、直感ですね。

-メロディーの段階で決まってるんですね。「Super Magical Illusion」はとてもかっこいい曲だと思います。特に間奏の部分から元のメロディーに戻る部分の展開が素晴らしいですね。この曲はどのようにしてできたのでしょうか。
ホリエ:まずハードロックっぽい曲ができたんですけど、サイケバンドのロックンロールナンバーみたいな。ハッとするような展開みたいなものが自分の中でブームなんですよ。カニエ・ウエストの影響ですかね。いきなり全然関係ないサンプリングみたいものが曲の途中に差し込まれていくのがおもしろいなと思って。
日向:まるで違う世界観のものがいきなり入ってくるっていう。
ホリエ:ストレイテナーじゃないんじゃないのってくらいのものをぶっこみたかったんですよ。

機材へのこだわり

-今回のアルバムを作るに当たり、サウンドで工夫した部分はありますか?
大山:今回のアルバムのコンセプトが裏側を見せるっていう方向ということもあって、自分の音をさらけだすという感じでしたね。工夫したというよりは、今まで自分達が培ってきた音を全力で出すっていう。
ホリエ:レコーディングになるといろんな機材を使ってみたり、普段自分が弾いているのじゃない楽器を試してみたりしてたんですけど、今回の作品のレコーディングは普段使ってる楽器を使おうっていう。

-普段使っている機材だと、ライブでも再現しやすいですよね。「翌る日のピエロ」はNANO-MUGEN COMPILATIONに収録されていた曲ですよね。テナーはNANO-MUGEN FES.(以下ナノムゲン)の常連だと思いますが、海外アーティストと共演してみて刺激を受けることはありますか?
ホリエ:ナノムゲンに限らずですけど、海外のバンドが来日した時はサポートアクトやったりとかして、実際対バンして影響を受けるというか、好きなものからは影響を受けますけどね。ナノムゲンだとSilver Sunとか。
ナカヤマ:あれはもうなんていうんだろうね、渋い。
ホリエ:ナノムゲンは渋いバンドを出すから。ゴッチにCSSを呼んでって話をしてて、結局呼べなかったんですけど、すごく好きで。

-ナノムゲンに限らず海外のアーティストから影響受けていると思うんですが。
ホリエ:今年フジロックに出演しました。

-フジロック、私も行ってました。
ホリエ:風邪をこじらせてあまり楽しめなかったんですけど。

-ナカヤマさんをいろんなところで見かけました。
ナカヤマ:前夜祭から全てが終わった翌日までいました。

-髪の色もあってか、とても目立ってらっしゃって(笑)。
ナカヤマ:あらゆるところで目撃されてる。しかもベロンベロンなんで。
ホリエ:着いてすぐにシンペイ(ナカヤマ)を見かけたからね(笑)。
ナカヤマ:酔っぱらってトイレに向かってる時に(笑)。
日向:フジあるあるだよね(笑)

-(笑)。フジロックで目的のアーティストはいましたか?
ホリエ:ついた瞬間Travisが演奏してて最高でした。前日のFoster the Peopleを見たかったんですけど。
ナカヤマ:俺はFoster the People見たけどね。Arcade Fireの時にベロンベロンで全く覚えてないのが唯一の悔いですね。
ホリエ:みんな大絶賛してたもんね。

-他に何かエピソードはありましたか?
ホリエ:ゴッチがストレイテナーのライブを観て男泣きしたっていう。
日向:それが一番思い出だよね。ゴッチが泣いてるよ、って思っちゃった(笑)。
ナカヤマ:楽屋裏でも泣いてたよね。
日向「ダメだ俺、おっさんだよー」って(笑)
ホリエ:あれ名場面でした。隠れたBehind The Sceneっていう(笑)。

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-そうなんですね(笑)。今回のアルバムにも洋楽からの影響を受けたトラックがいくつかあるように思いました。特に「Breaking Ground」、「78-0」はThe StrokesやPhoenixのサウンドに通じるものがあるように感じます。アルバムを作るうえで、参考にされたアルバムがあれば教えてください。
ホリエ:全部好きですね、The StrokesもPhoenixも。

-その曲に関わらず、今回の制作でこのアーティストのこういうところを取り入れようっていうのはありましたか?
ホリエ:逆アプローチというか、僕が原型を持ってきた曲で「Asshole New World」はグランジ風のサウンドアレンジになってますけど、それをアレンジしてる時にひなっち(日向)が「こういう事なんじゃないの」って上げたのがスパークルホースでしたね。

-シングル曲のカップリングにはライブ音源が入る事が多いですよね。ライブであんなに素晴らしい音が出せる秘密について教えてください。
ホリエ:ライブを見たことがある人にとっては、ライブ音源は映像が浮かぶ、自分が体感してるテンションが蘇ると思うんでそういう良さはありますよね。

-ライブを体感していない人でもアドレナリンが出る様な気がするんですけど、何か工夫されてることがありますか?
ホリエ:ライブ音源でも全然良くない時もありますからね。死にたくなるようなダメな時もありますよ。
日向:人間だもの(笑)。
ホリエ:穴があったら入りたいわって(笑)。
ナカヤマ:強いて言うなら、ライブ音源録るときはレコーディングエンジニアにもちゃんと入ってもらう。だからクオリティーが高い。

-なるほど。みなさんがライブをやるに当たって大切にされている事を教えてください。
日向:僕は楽しむことかな。
ホリエ:ライブ前にはなんとか平常心になりたいなと。ステージに上がったらテンション上がっちゃうから。
ナカヤマ:出る前に、行くぞーオイ!みたいなことは絶対やらない。あそこでテンション上げちゃったら失敗するんで。
ホリエ:落ち着こうねって話が多いですね(笑)。
ナカヤマ:袖に友達とかいたら、ギリギリまで雑談してるくらいで出てくるっていう。

-どの瞬間に切り替わるんですか?みんなが見えた瞬間とかですか?
日向:実際切り替わってない。
ナカヤマ:うん、切り替えてない、切り替えちゃったら台無しというか。
日向:お客さん見える瞬間までギャグ言いまくっちゃったりしてるくらいで(笑)。
大山:僕はステージの上で冷静になってしまうことが多いんで。逆に楽しもうと気持ちを上げて行きます。

-みなさん他にも活動をされていますが、これはテナーじゃないとできないなって思うこと、テナーで良かったなって思うことはありますか?
日向:ホリエアツシの楽曲です。それに尽きますね。
ホリエ:やっぱりテナーはライブが楽しい。

-それはメンバーとのグルーヴみたいなものでしょうか。
ホリエ:演奏していて身を預けられる開放感とか、お客さんの表情とか、全部が重なり合って上昇していくような感じ。これはなかなか味わえない、よく友達とかに言われるんですけど「ステージの上で歌って気持ちいいやろうなー」って言われるんですけど、「気持ちいいけど」っていう感じ(笑)。代わってあげられない。自分じゃないと気持ち良くないですもんね、ただステージに立ってるだけじゃね。
大山:このバンドはバランス感覚が絶妙ですね。4人揃った時の全員が攻めてる感じがいいというか。すごいギリギリだけど絶妙な所にいる。
ナカヤマ:出切ったなっていう感じですね。プラスして言うなら、活動が11年になってるんで、その間のオーディエンスとの積み重ねた関係もストレイテナーじゃないとないものだし。

-そうなんですね。The fin.というバンドをご存じでしょうか?この前彼らにインタビューした時、テナーをリスペクトしていると言ってました。そして彼らが言うにはテナー世代のバンドは洋楽っぽいことをやろうと思っても、どこかで邦楽と折り合いをつけないといけない世代なんじゃないかと言っていました。それに比べて自分たちはそのまま洋楽っぽいことをやっても受け入れてくれたと言っています。実際音楽を作ろうと思った時、洋楽と邦楽の壁のようなものを感じることはありましたか?
ホリエ:壁できちゃってるなって思うことはよくありますけど、自分たちが作るものに関してはそんなに洋楽っぽい曲だからとか、邦楽っぽい曲だからっていうのは両方良さがあって、リスナーは両方の持ち味を楽しんでくれてるんじゃないですかね。
日向:無理やり洋楽っぽいものをやろうってメンタルでやっても絶対良くならないし。だからよりストレイテナーらしさを求めた方が、クオリティーが高いものになる。
ホリエ:メロディーができて、絶対にこれは英語が合うだろうなって思うことでも敢えて日本語で書いてみたりしますね。日本語で歌ったからこその良さっていうのも、メロディーは洋楽っぽいんだけど歌詞を日本語にしたことによって、良さがより強まることはあります。メロディーに聴き入っちゃって歌詞が入ってこないって感想はよく言われるんですけど、それがマイナスではなくて、本当に好きで聴いていくなかで詞が入ってきて、っていうそういう順番でもいいんじゃないかなって思いますね。

リリース

『Behind The Scene』

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