最終更新: 2014年11月18日

3年3カ月、それは、ストレイテナーがセルフタイトルアルバム『STRAIGHTENER』以来となる今作を生み出すまでに費やした時間だ。自らに課した<ストレイテナーが鳴らすべき音楽>という重いテーゼは、セルフカバーアルバムとベストアルバムと続いたディスコグラフィを見れば分かるように、自問自答となって数年の延長を強いたように見える。

ミニアルバム『Resplendent』の発売、そしてメジャーデビュー10周年を通過して生み出された今作のキーワードは、<ストレイテナーらしからぬ音楽>であり、「さりげない変化と進化」であるのは言うまでもない。

これまでに作品群に比べ、「Asshole New World」や「Super Magical Illusion」のような激しいロックチューン、「放物線」や「彩雲」のような穏やかな楽曲など、ホリエアツシと大山純による2人のギターはより大胆な音色とギターサウンドに挑戦。日向秀和とナカヤマシンペイという当代随一のリズム隊は、前作ミニアルバムに収録された「BLACK DYED」のような<ストレイテナー流ファンクネス>を、よりソリッドに仕立て上げてきた。それらは大きな変化として目立つわけではないが、これまでの彼らのイメージを補強し、新たな彩りを放っている。

これまで特徴的だったホリエアツシ独特の歌詞世界も同様だ。リズム隊の変化に寄って、これまで以上に韻を踏むことを意識したであろうリリックや、『Behind The Scene』=舞台裏/風景の裏側というタイトルからして、今年新作を生み出した坂本慎太郎/OGRE YOU ASSHOLE/THE NOVEMBERSといった面々がえがいた<現代=ディストピア>というメッセージを、どことなく暗喩しているように感じずにはいられない。

今作ラストの楽曲「78-0」の歌詞から<78を揶揄と読む>ことも、World Record=世界記録≒歴史と読み解くこと、そういった解釈を許しながらも、何かしら明確な意思が現れているわけではない。様々な文脈を得ることができるインターネットが同時に、様々な舞台裏を知る機会を与えている、それが暗黙のまま日常に溶け込み<裏側>ともなっている現在を、ホリエアツシの視点がおぼろげながらも写しだした一作と言えば、一つの個人的な合点としては落ち着く。さり気ない変化でありながら確かなる変化を刻んだ今作は、これからの彼らの分岐点になる一作ではなかろうか。

【Writer】草野 虹(@grassrainbow)
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