最終更新: 2020年12月13日

このインタビューはバンド活動10周年を記念し、OGRE YOU ASSHOLE(オウガ・ユー・アスホール)が歩んだ10年と出戸の音楽人生について語ってもらったものである。

OGRE YOU ASSHOLEインタビュー

インタビュー:出戸学(Vo.,Gt.) インタビュアー:yabori 撮影:takeshi hirabayashi

一それでは今回、活動10周年という事で、それにちなんだ質問をしていきたいと思います。まず一般的には10周年というタイミングでベストアルバムを出すアーティストが多いイメージがあるのですが、Ogre You Assholeはベストアルバムではなく、初のライブアルバムをリリースされるとのことですが、どうしてこのタイミングでライブアルバムを出そうと思ったのでしょうか
単純にライブアルバムが新しいものを見せる事ができるし、聴いてくれる人たちも面白いかなって思ったからです。ベストアルバムって、全てのアルバムを持ってる人は必要ないじゃないですか。10周年だからというよりも、ライブの良い所をアーカイブしたものを、今のタイミングで作っておきたかったんです。

-なるほど。ではデビューした年はどのような音楽を聴いていましたか?
自分たちよりも少し上世代のUSインディーロックを聴いていましたね。Kレーベル(K Records)のアーティスト、特にCalvin JohnsonやModest Mouseなどを聴いていました。

-その当時ってそういう情報を手に入れるのが難しいと思うんですが、どのようにしてそういうアーティストを知ったんですか?
当時も今も長野県の田舎に住んでいるんですけど、通っていた高校の近くにCD屋さんがあって。そのお店が半ば趣味でUSインディーの特集をしていたんですよ。日本盤ではなく、あまり出回ってないような輸入盤ばかりあって。どうしてこんなに安いんだろうって思いながら、見始めたのが最初で。当時はBECKやNirvanaが好きだったんですよ。BECKもKレーベルでリリース(『One Foot in the Grave』)があったし、カート・コバーンも左腕にKの刺青を彫っていて、そのレーベルに興味を持ち始めたのが始まりでした。田舎なのに、たまたまそういう音楽が手に入りやすい状況にあったのが良かったのかなと思いますね。

『homely』に影響を与えた音楽

-ではバンドの転機になった時に聴いていた音楽はどのようなものだったんでしょうか?
あるジャンルの音楽をたくさん聴けば聴くほど、多くのものが同じ質感に聴こえてくる瞬間ってあるじゃないですか。それが『homely』を制作する前後で。当時、’70年代のドイツの音楽を聴いたら、新鮮に聴こえる時期があった。そこからバンドが新しくなっていった感覚がありますね。

-どうしてUSインディーから過去のドイツのバンドに遡ろうと思ったのでしょうか?
2000年代の半ばくらいでUSインディーが自分の中で盛り上がりが落ち着いた感じがあって。少し売れたバンドがあると、その後に出てくるバンドが同じような質感の音なのにも飽きてきた。そこから’60~’70年代のロックに戻っていった感じですね。USインディーを聴いている時から、Canは好きだったんですけど、タイミングとしては同時に聴いてて。

-ドイツのバンドって職人気質だったり、実験精神のあるバンドが多いと思うんですよ。そういう精神的な部分でもオウガに影響を与えている部分ってありますか?
Canの場合だと、基本的にバンドメンバーがロック畑の人じゃないんですよね。音楽大学を出ていて、アカデミックな人がいたり。それゆえの格好つけてない感じが好きで。もちろんUSインディーのバンドで、今も格好いいと思えるバンドもありますよ。Modest Mouseの1stアルバム『This Is a Long Drive for Someone with Nothing to Think About』やThe Make-Upっていうバンドとか。今聴いてもこれらの音楽は良いなと思います。

-そこから10年経った今はどんな音楽聴いていますか?
最近は特にブラジル音楽やソウルを聴いていますね。ソウルってどうしても暑苦しい感じや、ねっとり愛を語るものが多いように思うんですが、そういうのはあまり好きじゃなくて。ソウルやファンクの中でもほんの一部のものに、USインディーとドイツの音楽に慣れた耳でも、地続きで聴ける場所があるって感じてて。例えばカーティス・メイフィールドの中期のアルバムの、一見あまりアレンジが派手じゃないもの。『There’s No Place Like America Today』っていうアルバムとか、凄く良いですね。カーティス・メイフィールドだと他にも『Short Eyes』っていう映画のサントラもオススメです。

-なるほど。ちなみに今の音楽で聴いているものはありますか?
ちょこちょこ見るくらいですが、気になったのはいくつかあります。ぱっと思いつくのだとMatthew Herbert、D’Angeloは良かったですね。

-最近リリースされたんですけど、The Strokesのジュリアン・カサブランカスがやっている、Julian Casablancas + The Voidzの『Tyranny』ってアルバムは聴かれました? 僕の中では、あのアルバムはオウガの音楽と重なる部分があって。『Tyranny』はストロークスが作り上げたロックのフォーマットを解体して、再構築している音楽だと思うんです。その部分がオウガの音楽と重なると思うんですよ。
それは聴いてなかったんですけど、ストロークスの初期のアルバムは好きでしたよ。1stアルバムの『Is This It』を出した時に、リアルタイムでこれはかっこいいなと思った。その時はThe Velvet UndergroundやRamonesが好きだったんだけど、2000年代にもこんなにかっこいいバンドがいるんだって思いました。中1くらいの時にリアルタイムの洋楽を聴き出して、ストロークスが出てきたのが高1くらいの時だったと思います。COOKIE SCENEという雑誌にCDが付いていて、『Is This It』のリリース前だったんですけど、サンプラー音源が入ってて。その中ではこのバンドは別格だなって思った。そうしたらその後、すぐに人気が出ましたよね。

-そうだったんですか、ストロークスはリアルタイムだったんですね。それでは最後にこのアルバムをどのような人に聴いて欲しいか教えてください。
多分、オウガを全く知らない人にも楽しんでもらえると思います。それとオリジナルアルバムは知ってるけど、ライブの雰囲気は知らないって人にも聴いて欲しいですね。ライブの導入部分にもなりえるアルバムに仕上がったと思うので、これを聴いて会場にも足を運んで欲しいです。

Web3(takeshi hirabayashi)

リリース

『workshop』

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