最終更新: 2015年8月10日

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前作『Astroride』からは実に3年ぶりのレーベルリリースによるライブ音源集。8月8日に渋谷milkywayで行われた自主企画”4th Floor”の会場販売を皮切りに、ライブ会場とM/A/G/N/I/P/Hのwebstoreのみで数量限定販売された。ダウンロードコード付カセットだ。

2人体制になり、活動が活発化したKlan Aileen。昨年は日本全国を飛び回り、今年に入ってからは“田中宗一郎×西村道男 presents二人会”、“下北沢インディーファンクラブ”など、都内の注目イベントへの出演が目立つようになった。その分、彼らのライヴを経験した人も多くなっただろうし、同時に彼らのライヴを実感し、彼らのライヴがどれだけ凄いかというのを思い知った人も多いと思う。ギターの音が鳴った瞬間、スネアの音が鳴った瞬間から独特の空気感がフロアを支配するあの感じ。松山氏のギターリフと竹山氏のドラミングで、静と動がドラマチックに切り替わっていくあの感じの印象がなかなか消えなかったはずだ。実際、ボクがそうだった。

また彼らのライブは常に変化し、進化する。普通、バンドは新鮮さを出すために曲順を変える程度だが、違う曲なんじゃねえのか?ってくらいガラっとアレンジを変えてくる。本人に聞いたところによると「毎回アレンジを変えてる」らしい。しかも即興でやってるのではなく、しっかり仕込んできてる。そこら辺の連中のように、慣れた曲を、慣れたアレンジで無難に再生してるのとは違う。自分たちにプレッシャーを課し、それでこそ生まれる独特の、鬼気迫るような緊張感を生み出している。

音源をリリースするにあたっては、今このライブで成立してる魅力を、このタイミングが出すことが重要だったのだと思う。もしスタジオ音源であれば、彼らのライブの醍醐味であるエネルギッシュさ、そして自由な発想のアレンジが収まりきるのは難しかったかもしれない。だから、このライヴ音源には特別な価値がある。今出さなければいけない。今聴かなければいけない。媒体を聴くごとに劣化するカセットテープにしたのも、そういう意味があるんじゃないかと思われる。

このライヴ音源には、あの”特別な時間”がそのまま納められている。M1おだやかな日本語詞の曲「Okiteruaida」が収束する間もなく、地続きのように始まり、リフレインとスクリームの重奏がカオスぎりぎりのところまで昇りつめ、美しくまとまっていくM2「Done」。もうこの時点でいつの間にかKlan Aileenの”特別な時間”に飲まれてるのを感じるはずだ。

M8の「OHARA」は彼らの故郷、鹿児島の民謡「鹿児島おはら節」のカバーである。日本民謡独特の”音頭”のグルーヴ感とオルタナティヴロックの昂揚感が融合された秀逸なカバーだ。すごくアがる。このおはら節を踊るお祭りは「渋谷鹿児島おはら祭」と呼ばれ、なんと鹿児島市と渋谷区で行われる。この曲が入った音源を渋谷のイベントからリリースするというのも、鹿児島から東京に渡った、彼らからの何らかの宣言文であるかのようにも思える。

Klan Aileenのライヴを体験したこと無い人はこの音源を聴いた後、すぐに生のライヴも体験していただきたい。ただ、その頃には次のステージに行ってるかもしれない。それだけこのバンドは進化のスピードが速い。

【Writer】ŠŠŒTJ(@indierockrepo)
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