UKのメディアは彼らのことを”最も危険、最も厄介、そして最も不可欠なバンド”または”イギリス最後のロックンロールバンド”と呼ぶ。2011年、ロンドンの南地区にて共同でスクワット(不法定住)の共同生活をしていた6人によりFat White Family(以下FWF)が結成。特異な音楽性と、ライヴ中の過激発言、機材破壊等の過激なパフォーマンスで話題となり、2013年には数枚のシングルと、デビューアルバムを自主制作としてBandcampで発表。当初はそこまで評価された存在でなかったが、ジム・モリソンなんかを彷彿とさせる堂々としたライヴパフォーマンスと中毒性のある楽曲で、徐々にカルト・ロックヒーローとしてメディアをも魅了していく。また、彼らはステージを降りても話題を集める。サッチャー元首相が逝去した時には「The Witch Is Dead」という横断幕を住居から下げた。彼らはネット上で右翼政党、高級志向、消費社会、資本主義、そしてマック・デマルコを攻撃した。「マック・デマルコが音楽を作り続けるならオレらはISISに入るよ(殺害しに行くよ)」とシャレにならない発信に対し、当のデマルコは「会ったこともないし、なんでこんなこと言われたのか・・・」と引いてたらしい。行き過ぎた事もするが、インタビューではロンドンでのイスラム教徒差別についても真剣に言与する。様々な話題に事欠かない彼らは、今だに大手レコード会社と契約していない身でありながら、ここ2年ほどで、イギリスで最も重要な新人バンドとして冒頭のような賞賛を方々で受けている。NMEでは特集記事が組まれ、NMEアワードツアーをPalma Violets、Savegesらと回り、グラストンベリーにも2年続けて出演し、ベストアクトの呼び声も高い。

そんな彼らの新譜がこの度、日本盤としてもリリースされる。アルバムについては「自分たちの妄想や、セックス、ドラッグ、死、さらには北アイルランドの英雄である俳優サム・ニールについて」と語っている。で、アルバムタイトルが『Songs For Our Mothers』。やっぱりヒネくれてる。前作は一言でいえばサイケガレージ・ロック色が強く、自由奔放なアルバムだった。それに比べて、今作は構成を重視したようなアルバムに仕上がっている。先行シングルであり冒頭曲の「Whitest Boy On The Beach」は彼らがパリ同時多発テロの同日に偶然パリでGIGをしていた体験が反映された曲だ。クラウトロック的な反復リズムと2コードのギター、甘く処理されたボーカルの音が絡み合い、軽快だが何かが襲ってくるような不気味なダンスビートを作り出している。彼らいわく「人間の憎悪によるビート」であるらしい。この”ビート”表現がこのアルバム全体にもカナメになっている。1曲の中の展開は、どれもよりミニマルで起伏が少ない。その替わり、曲毎でビートの音色やスピードがコントロールされ、いろいろな感情を作り出す。独特の緊張感の中で、楽曲が切り替わる毎に展開が変わる。これがある意味でアルバム内の統一感に繋がり、アルバム全体で1つ世界観を構成している。呪術的にサイケなM4「Duce」やM9「We Must Learn To Rise」はより重く、カリプソ調のM8「When Shipman Decides」やアコギで歌い上げるM10「Goodbye Goebbels」がより快楽的に感情に訴えてくる。

かつてLP盤時代のロックンロールバンドがしてきたような古いタイプの構成方法をFWFは今の方法でリブートさせ、新鮮な音楽体験に昇華させている。ただの厄介な人たちではなく、音楽的な才能が非常に高い集団なのだ。M2「Satisfied」はショーン・レノンと共作だ。ショーンの演奏と思わしきディストーション・ギターが大胆に鳴らされる、このアルバム中で一番ラウドな曲である。このアルバムのいくつかの曲はショーンが住むスタジオでレコーディングされており、その場でジョン・レノンが「Strawberry Fields Foever」の録音で使用した古いキーボード式サンプラーを偶然見つけ、今作にも使用しているらしい。まるでスターウォーズのライトセーバーみたいなエピソードであるが、社会批判を続け、20世紀でロックの革命を成したジョン・レノンから21世紀のロックの旗手、FWFへの何らかの伝承であろうか?ちなみにショーンはFWFと過ごした数日間を”あの人ら乱雑で制御不能。ウータン・クランみたいだった”と振り返っている。

【Writer】ŠŠŒTJ(@indierockrepo)
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