最終更新: 2020年5月16日

無題

アーティスト:イノクチタカヒロ(Vo.G ) インタビュアー:まりりん

-昨年キーマレコードに移籍してから約1年ですが大きく変わったことはありますか。
イノクチ:去年は環境を整える1年というか、実験みたいなことをずっとやっていたんですよね。まず去年1月にシングル『田舎のカーボーイ』を会場限定出して、夏にDVD出して12月に今回のアルバムのシングル曲「Touch Me I’m Sick」をまた会場限定で出してってやってたら1年経っちゃいました。感覚的にはずっと活動していました。煮詰まった時期もあったけど夏にまわったツアーが凄くよくて、そのまま今回のレコーディングに突入しました。

-前回はレコーディング合宿をしたと言っていましたが今回はどのようにレコーディングしましたか。
今回もいつも通り一発録りですね。

-レコーディングで実験的なことはしましたか。
エンジニアがいつもの人と変わったくらいかな。ダンディでクールなエンジニアの人で酔っぱらっても変わらない渋い男でした(笑)。

-前回のインタビューで目標を決めてもゴールまで紆余曲折があると言っていましたね。
そうですね。前回のインタビューの時は「車輪の中」を作ってた最中だったんで、何となくヘビーなアルバムになるのかなって言ってたと思うんですけど、結局生きてく中でいろんなことがあったりしてモードも変わったりして、こんなんなりました。

-どの曲もイントロでとても盛り上げてきますが曲の構成でこだわっているところはありますか。
こだわりはないけど、イントロでテンション上がるように無意識にそこを目指して作ってるんだと思います。イントロで自分らのテンションが上がんないとグッとこないんで。当たり前だけど。「灰になっても」と「車輪の中」は特に気にいってます。

-インスト曲「Empty Universe」の日本語訳『空っぽな宇宙』をアルバムタイトルにした理由を教えてください。
逆なんですよね。アルバムタイトルが先に決まって、この曲をどうしようかってなったときに曲名を英語にするかって。それで「Empty Universe」になりました。もともとタイトルは「Touch Me I’m Sick」って曲の歌詞のなかからつけたんですけど。

-歌詞に『イージー・ライダー』や『キャッチャー・イン・ザ・ライ』など映画作品の名前が使われていますが、それらから曲のインスピレーションを受けたのでしょうか。
作為的にしているわけじゃないですけど、自然に好きなものがポーンと浮かんでくることがあるんで。作品から直接イメージはしないですね。前のアルバムはそういうのがあったけど、今回はある特定の作品をモチーフにっていうのはないですね。

-音楽以外のものから大きな影響を受けることはありますか。
映画が多いかな。『イージーライダー』もそうだし、そういうアメリカンニューシネマの古いやつとか。でも何でもありますよ。言い出したら切りがないっていうか。何でも影響受けるなぁ。最近、1人暮らしになってからずっと映画ばっかり観ています。映画を観てレコード聴いて。中古レコードとCDが好きですね。行くとこだわりなく買っちゃうな。

-レコードに続いてカセットブームも来ていますが、カセットテープはどうですか。
カセットは世代じゃないからなぁ。かと言ってレコードも世代じゃないけど。レコードとCDとカセットが全部聴けるやつあったら買うかもしれないけど、レコードとCDで俺はいいかな。でも物はなくならないでほしい。ダウンロードだけになってほしくはないな。形として集めるのが好きなんですよ。目に見えないと嫌だなって。データだけになったら悲しい。アメリカにBurger Recordsってカセットばっかり出してるところあるよね。日本の人も出してるし。近所にもカセットで売ってる町のレコード屋があるけど演歌のカセットしかないからな。ちゃんとロックのカセットも置いてくれたら買うんだけどなぁ。アナログでリリースもしてみたいです。

-hotspringの音はアナログに合いそうですよね。でも最近のロック系のバンドがアナログを出している印象はあんまりないです。以前BELONGで特集したYOUTHWAVE(Yogee New Wavesやnever young beachなど)のバンドはアナログが多い印象があります。
おしゃれだからね。レコードってそういうイメージなんじゃないかな。カセットもそっちのバンドのほうが早そうだし、配信のみもあるから使えるもの全部使ってリリースしている。あ、Czecho No Republicってシティポップなの?

-最近のシティポップリバイバルとして盛り上がってるのは、山下達郎世代のシティポップとは明らかに違うので、BELONGでは物心ついた時からYoutubeがある世代としてYOUTHWAVEと呼んでいます。Czecho No Republicはバンドの編成は近いけれど世代が少し上ですね。
ヘー。俺はYoutubeでドクター・フィールグッドとニルヴァーナのライブしか見てなかったな。中学生の頃とか大分にいた頃の先輩の影響が大きいな。やっぱり九州は縦社会で音楽の世界もそんな風潮があって。まずルースターズ聴いて、そしてストーンズ聴いて、ブルースに辿り着くみたいな。今でも逆に自分らの下の世代が繋がってきてる。東京だとそんな先輩後輩っていうのがあんまりないのかな?でもあるのかな?だからシティポップは、まわりにそんな人がいなかったから。

-そういうバンド界隈のコミュニティができてますよね。対バンもお客さんもみんな友達っていう。
そういうのイライラするなーもう(笑)。

-ロックンロール系のバンドだとファンの子っていう境目がある。バンドは憧れの存在っていう。
そういうことか。そういうの苦手なんだよね。コミュニティっていうのがそもそも苦手だから。パーティーはかわいい子ばっかりで羨ましいけど、やっぱり求めているものが違うんだよね。hotspringのライブにも読者モデルみたいな子に来てほしいけど、そういう人たちには俺らの音楽は必要ないのかなって。友達がいなくてもhotspringを必要な人が来てくれればいいかな。

-生活って日常生活と音楽に関する生活の二種類あると思うんですけど、音楽生活でも違和感を感じることはありますか。
感じますね。他のメンバーも感じてるんじゃないですか。だってこれでも俺らの音楽が一番売れると思ってますからね。そう思ってやってるんだけど、上手くいかないっていうのは常にありますね。でもすごい流行ってるものを乗せるってこともできないし、したいとも思わないけど。だから本音を乗せて歌うしかない。それが一番いいかなと思ってやってます。

-なるほど。では話は戻りますが、このアルバムの告知文には“社会生活不適合者代表”とありますが社会のどんなところに合わないと思いますか。
自称しているわけじゃないんですけどね(笑)。法を犯さないように生きてます(笑)。一生懸命、でもなかなかうまくいかないというか。

-『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の主人公もそうですよね。うまく社会に溶け込めないっていう。
そう、俺もすごく影響受けました。『イージー・ライダー』はおじさんですけど、16歳や18歳くらいの時のフィーリングを忘れてないっていうのが俺と被るなと思って。今、28歳なんですけど(苦笑)。気持ちはあの頃のままなんだけど、中途半端に年取ってるから。地元に帰ると友達がすごい大人になってて。そういうのが悲しいと思って、“年老いたイージーライダー”って歌詞を作りました。(笑)

-大人になりやがって、みたいな感じですか?
そんな突き放してはないけど、気持ちはそんな感じ。あとバンドがもう一回頑張ばろうって時だったから、そういう感じになったのかな。hotspringも中3のときからやってるから、あの時のまま行こうとは思ってないけど、そのフィーリングみたいなものはメンバーのみんなに覚えていて欲しいなって。

-地元は大分ですが、東京とは音楽をやる環境も違いますか?
全然違いますよ!東京はニューヨークみたいなものですから。中学校くらいのときは情報も今より少なかったですし、やっぱり田舎ですからね。俺らの時はYoutubeも出てきたし、ネットでCDを買おうと思えば買えたけど、レコード屋さんにも電車に乗って行かないと行けないし。だから情報を共有するのが楽しかった。今も仲良い大分のバンドとそういう話するのが大好きで。みんな「これ知ってる?」っていう話をしてみんながそれを聴く。誰かが持ってきたらそれを好きになったり。東京にいると気が進まなくてあんまりライブ行かないんですけど、大分だとそれ逃しちゃうともう一生見れない気がするから、ちょっとでも興味あったらライブに行ってたんですよね。そういう経験が面白かったなって今になっても思いますね。東京は来月もあるかとか、3ヶ月後にあるでしょって国内のバンドだとなるんですよ。でも海外のバンドなら次にいつ来るか分からないから行くっていう。だからそれに近かったんですよね、大分に来てくれるバンドは。外タレみたいなものですから。年に1度か3年に一度かっていう。

-収録曲の「スピード」に“俺は信じている”っていう歌詞がありますよね。大分というか九州のバンドってまっすぐで熱いっていうイメージがあって。実際東京出身のバンドって“信じている”とは歌わないかなって思います。
信じているものが少ないからわざわざ歌にしているのかなと思います。

-数少ない信じているもの…その仲間同士の繫がりとか?
わかんない…あんまり言いたくない(笑)。

-先日の無料ワンマンはそこではじめてhotspringを見る人も多かったと思いますが手応えはどうでしたか。
良かったけど、もうちょっと自分らの空気にしたかったなっていうのはあるけど。明らかに「あーはじめて見に来たんだろうなー」ってお客さんもやっぱいましたけどね、「楽しそうになってきたな」っていうのもわかりましたし。でもポカーンと見ている人もいたし。おもしろかったけど、でももっとすごいことしたかったなって。

-まずどうして無料ワンマンをやろうと思ったのですか。
せっかくアルバムを出すし、先行投資みたいな気持ちで。この機会になんとなく名前を知ってるけどって人に見てもらいたかったんです。いっぱい来てくれたから嬉しかったです。成功したけど、もうちょっとやりたいなって。その分はツアーでかな。それと俺、その日酔っ払って家の鍵なくしちゃって。開けるのにドアを壊して3万5千円かかったんですよ。超ショックで。大家さんと連絡取れなくて、鍵屋さんと待ってたんだけど、もういいですよねってドリルでガーってやり始めた時に大家さんから折り返し電話かかってきて。「どうしました?」って。「もういいです」ブチッって切りました。これエピソードとして入れておいてください(笑)。

-このアルバムをどんな人に聴いてもらいたいですか。
どんな人にでも聴いてほしいですけど、無料じゃないじゃないですか。だから手に取りたい人しか取らないから、ちゃんと欲してる人に聴いてほしいと思います。手に取ってお金を払ってでも聴きたいっていう人に聴いて欲しいし、それを必要な人に聴いて欲しい。hotspringを欲している人って俺みたいな人なんじゃないですか。たぶんロクな奴はいないと思います。六本木で遊んでる奴は聴いてくれないと思うんですよね。必要がないから。いつも違和感を感じている人に聴いて欲しいです。1回は聴いて欲しいなって思います。

『空っぽな宇宙』
3月9日(水)発売

【Live】
『空っぽな宇宙ツアー』
3/25(金)横浜club Lizard
3/30(水)千葉LOOK
4/5(火)仙台MACANA
4/8(金)札幌COLONY
4/12(火)名古屋HUCK FINN
4/13(水)京都GATTACA
4/15(金)福岡Queblick
4/16(土)別府Copper Ravens (ワンマン)
4/19(火)大阪FANDANGO

4/22(金)下北沢CLUB Que (ツアーファイナルワンマン)
OPEN 18:30 START 19:00
前売¥2300 当日¥2800 (税込み、1ドリンクオーダー)
3/12(土)チケット発売開始! info/VINTAGE ROCK 03-3770-6900

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