最終更新: 2020年5月16日

cassius-1
2016年のポップ・シーン、いったいどんなことになっているのでしょう。David BowieとIggy Popがキャリア晩期にとてつもなくパワフルな作品を作り出し、Mystery JetsやAnimal Collectiveも傑作をドロップ。The 1975はセールス的にも完全に新時代のスターダムに上り詰め、Anderson .PaakにGallanとブラック・ミュージックも相変わらず最高におもしろいし、GoGo PenguinやLaspleyら新世代ジャズとビート・ミュージック以降の台頭も刺激的。おまけに、UnderworldやPrimal Screamの新作も予想外に良いなど、とにかく聴くべき新譜が多すぎるわけです!

今回の連載もWeezerやLast Shadow Puppetsなど迷いましたが、かなり意外な方向からダンサブルな〈キラー・チューン〉が飛び出したので、そちらを紹介。CassiusがCat PowerとMike Dをフィーチャーした「Action」です。

あまりに90年代ホイホイな3アクトにつき、ただいま思春期ど真ん中のBELONG読者には〈?〉だと思いますので、まずは説明から。Cassiusは90年代後半にDaft Punkと並んでフランス産ハウス・ミュージック=フレンチ・タッチを牽引していたヴェテラン・デュオ。「Cassius 1999」、「Feeling For You」といった楽曲が当時のダンス・フロアを賑やかしていました。そして、Cat Powerは90年代USインディーのミューズ的存在なシンガー・ソングライター。Mike Dはご存じかもしれません。Beastie Boysの不動の3MCの1人。2014年MCAの逝去後は、リミックスやプロデュースなど裏方の仕事が多く、ラッパーとしてのフィーチャーは久しぶりな印象です。

Cassius自体、片割れのPhilippr ZdarはPhoenixやKindness、Raptureなどを手掛ける人気プロデューサーであり、Cassius名義でのリリースは6年ぶり。しかもエレクトロ全盛期に発表した前シングルは、時流を意識過ぎたあまりやや迷走しており、リスナーとしての皮膚感覚としては約10年来のカムバックです。実にグル―ヴィーなベースラインとファットなビートの上でCat PowerとMike Dがラップ・ヴォーカルを掛け合うディスコ・ポップ。Cat Powerがここまでソウル・ディーヴァ感のある歌を披露するのは珍しい気がします。Lipps Incの「Funky Town」を思わせる破格にキャッチーな魅力があり、これは文句なしのキラー・チューン!

突然ですが、この連載〈振り向けば、キラー・チューン〉は今回で最終回になります。短い間ですが読者のみなさま、編集長のyaboriさん、ありがとうございました。これからもあなたとキラー・チューンの良き出会いを願いまして。XO。

【BELONG Magazine Vol.15】
購入はこちら
BELONG最新号

『Action(Single Edit)』

【Writer】

田中亮太
ライター。OTOTOY連載『隣の騒音』やsign magazineで執筆しています。春から上京します。
今までの記事はこちら

◆関連記事(Column:田中亮太)◆
振り向けば、キラー・チューン 第四回(Mystery Jets – Telomere)
振り向けば、キラー・チューン 第三回(Neon Indian – Slumlord)
振り向けば、キラー・チューン 第二回(The Weeknd – Can’t Feel My Face)
振り向けば、キラー・チューン 第一回(Courtney Barnett – Pedestrian at Best)