最終更新: 2016年5月6日

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『9 Dimensions』のアルバム資料をもらった時の事だ。“宇宙の始まりは9次元で、今自分たちが生活している3次元のみ突然膨張した”という。これは一体何の話なのか?大学の授業で配られるレジュメのような資料を前に、オカルト雑誌のMU的な世界観のアルバムになるのかな・・・と思ったのも束の間、アルバムを聴くと丁寧な演奏で前作には見られなかったポップネスを追及する彼らの音楽があった。ラフなイメージのあるバンドだったが、ここからさらに飛躍していく事だろう。メンバー全員に今作のコンセプトとどうしても気になる宇宙の話について聞いた。

インタビュー前半はこちら

アーティスト:Shinji(Vo./Gt./Syn.)、Inui(Vo./Gt.)、Hiroto(Syn./Gt.)、Shissy(Ba./Syn.)、Shun(Dr.) インタビュアー:まりりん 撮影:MASAHIRO ARITA

-リスナーにこのコンセプトアルバムからどんなものを汲み取って欲しいと思いますか?
Inui:自分で音楽を聴いて自分なりの答えを出してもらえたら嬉しいですね。コンセプトアルバムということで、自分たちが伝えたいものは一応伝えたので。
Shinji:コンセプトアルバムって打ち出してはあるけど、それを必ずしも理解する必要はないし、あくまでも音楽として楽しんでほしい。どういう内容なのか探りたい人はリリック読んだりして、流れがしっかりあるアルバムだから感じ取れるし、分からなかったら分からなかったで音楽として単純に楽しい曲が揃ってると思う。知りたい人はこのアルバムを何回も聴いてほしい。
Inui:あえて説明せずにそれぞれの人の受け取り方で楽しんでもらう方が、アハ体験的にはピュアじゃないですか。何かを感じ取ったものが僕らが言ってることと一緒じゃないかもしれないけど、正解よりもそういう体験が大事だと思うんで。
Shinji:全てを理解することはできないと思うんですよ。なにしろコンセプトが宇宙で、漠然としてるものだから。それぞれ宇宙ってどんなものか人によって違うと思うんですよ。俺らなりの一つの宇宙として今回のアルバムだから感じ方は人それぞれで良いと思う。
Inui:どちらかというとコンセプトアルバムって打ち出し方よりかは僕らだけにコンセプトがあって、メンバー同士でイメージを共有するだけのコンセプトっていう感じなんで。
Shinji:作業効率がそっちのほうがいいんだよね(笑)。
Inui:リスナーに入り込む余地があるっていう。僕はそういうものが好きなんで。空白があってるリスナーがそれを空想で埋めることが大事なんですよ。
Shinji:分かりやすく「これはこういうものです。だからこの良さを感じ取ってください。」ってものではない。それぞれが考えて辿り着く答えがあるのかどうかは分からないけど、探すというのが大事で。まぁ純粋に音楽として楽しんでもらえればそれが一番いいですね。探求していくのはビックファンがやることだと思うから。
Inui:自分がビックファンのアーティストって、その人たちがどういうことを考えてって自分なりの回答を得たときがすごく快感じゃないですか。そういうのができるように空白を残しておきたい。

-なるほど。どういうものに対して余白を想像するんですか?
Shun:俺はクラシック音楽を聴く時ですね。クラッシックって100人の中の5人しか演奏しないフレーズがあったり、100人全員で演奏するフレーズがあったり、すごく表現の幅の広い音楽で。そういうのを聴いていると次の展開はどうなるんだろうって事やどうやって終わるんだろうっていう空白を想像する。曲に時代背景が反映されるジャンルだと思うので想像して聴くのが楽しいんですよね。クラシックって何でもありで、現代に至っては全く調の無い音楽もあるんですよ。

-この間「ピンポン協奏曲」というのを聴いて驚きました。あれもクラシックですよね。
Shun:大太鼓に卓球のピンポン玉を当てるやつですよね。あれは偶然性の音楽っていう最近の現代音楽の分類だと思うんですけど、ああいう音楽ほど想像力が広がるんですよ。1曲の尺も長いし、ストーリーを想像する事もできるっていう。ヒントを与えられて聴くものでもないので、空想する楽しさを感じられるのはクラシック音楽ですね。バッハの時代になるとクラッシックが理論的なものになってくると思うんですけど、こういう時代だから生まれたとか、戦争中に生まれた曲があるんで、時代背景を知りながら聴くとなるほどって思いますね。
Inui:僕は音楽じゃなくて映画なんですけど、『Only God Forgives』を3曲目の「Man In The Blue」の参考にしました。 監督はニコラス・ウィンディング・レフンという人で、『ドライヴ』って映画で有名になったんですよ。僕はあんまりハードな映画は好きじゃないんですけど、この監督は好きで。『Only God Forgives』は主人公のお母さんがすごく怖い人なんですけど、殺されて壁に寄りかかって死んでるのを主人公が見て、包丁でお母さんのお腹を裂いてお腹の中に手を入れるの。ただグロいシーンって思うかもしれないけど、要するに主人公がすごいマザコンでお母さんに対して罪の意識があって申し訳ないっていう前置きがあって。本当に正解かは分からないけど、僕自身はそれがすごく爆発した表現だと思っていて。ひとつはお母さんのお腹の中に戻りたかった、生まれてきてごめんなさいって気持ちもあるだろうし。あとは単純に自分はずっとお母さんとコミュニケーションが取れなかったんじゃないかなって。人間としての温かみを感じられなかったっていうところで、体内に手を入れることで温かみを直接感じ取ろうとした。そういう風に空白を想像できるんですけど、監督は何も言わないからそれが彼の思っていることかどうかは分からないけど、僕自身はそういう風に考えているから、この表現が大好きなんですよ。表現はいかに余白を想像されるかだと思うし、音楽に対してもそういう体験があったから音楽が好きだし。
Hiroto:僕は特にないですね。クラブミュージックをよく聴いているので、気持ちいいなって(笑)。歌詞ありきですけど、基本的に音がメインなんで、音や歌詞の意味は考えずに楽しんでます。
Shinji:そこは人それぞれだよね。俺も音楽に対して探りを入れるって事はしないけど、そういう空想する事はひとつのバンドや作品がめちゃくちゃ好きで愛している結果だと思うんですよ。俺はひとつのミュージシャンをすごく好きになったら音楽よりもその人そのものに興味が湧くんですよ。その人自身がどういう風に生活しているんだろうって事や誰と付き合ってるんだろうとか、どれだけ稼いでんだろうとか、そういうのが気になる。その結果、めちゃくちゃ調べるし、バンドだったらバンドのストーリーが知りたくなるんですよね。結成して1stアルバムをこういう風に作ったってインタビューでよく読んだな。2nd、3rdアルバムって流れがあってその間はこういう変化をしていたんだって。だから愛する事によって音楽を聴いて探りを入れるんじゃなくて、制作しているタイミングや時期も全部押さえてるんで(笑)。今はこういう感じなのかっていうのが全部わかっちゃう(笑)。好きなバンドこそアルバムをリリースしたら親のような気持ちで聴いてる。おめでとうって。だからそれ以上先は詮索しない。
Shissy:俺がプログレッシブ・ロックが好きなんですけど、プログレのバンドって本当にコンセプトアルバムみたいなのが多くて。ピンクフロイドの『The Dark side of the Moon』っていう1番有名なアルバムがあるんですけど、好きで自分で頑張って英語を読んで意味を知ろうとしてて。結局決定的な答えは出ないんですけど、調べる過程がすごく好きで。自分なりに理解してもう1回聴くと違うところに発見があるっていう体験があったので、俺は好きな曲や好きなアルバムは歌詞をちゃんと読んで理解しようとするタイプだと思う。

-それではYOUR ROMANCEとして今後挑戦してみたい事を教えてください。
Shinji:とにかく新曲作りたい(笑)。アルバム制作が終わって発売するまでの期間で色々と地方を周ってて、アルバムの曲も各所でやりながら、YOUR ROMANCEの結成以来、初めてしっかりと”バンド”っていう雰囲気になったと思ってて。だから曲も作りたいし、ライブもしたいし、色んなことがしたい。もっと俺らを知らない人たちがたくさんいるところでライブをやりたい。
Inui:そうだね。初めて行く場所でライブをやってみたいね。

-例えばどういう所に行ってみたいですか?
Shinji:行ってみたいのは福岡かな(笑)。
Inui:この間行ってすごく良い思いをしたんだよね(笑)。
Shinji:あとは北海道。つまりなかなか行けないような所ですね。
Inui:この2週間くらい周って、東京ってすごく小さいなって思ったから、もっと外に出たいですね。
Shinji:外に行きたい。脱出したい。

-以前BELONG内で東京と関西のシーンが全然違っていて、バンド同士に交流がないという話をしていたのですよ。
Shinji:交友関係で言ったら音楽と離れた部分で交流はありますよ。普通に友達として。関西にミュージシャンで嫌なやつはひとりもいないっすね。シーンはよく分からないけど。
Hiroto:分からないからこそ、そこをぶつけてくれたら楽しいなって。
Shinji:メディアが括っちゃうからね。シーンが明確に分かれてたのは去年までの話であって、今はそれが全部チャラになってる気がするんであんまり深く考えないほうがいいと思いますよ。それぞれがそれぞれの考え方で、シーンに囚われずに自由に音楽活動をするのがバンドの純粋なスタイルだと思うし。それぞれ違うのを括ってしまうとみんな可哀想だと思う。特に俺らみたいに意識が変わってきているバンドは。括られたくないっていうんじゃなくて単純に色んな所に行って、色んな所で仲良くなって全ての人たちにフラットな関係でありたい。

-対バンしてみたいバンドはいますか?
Shinji:対バンしてみたいバンドは無限にいますよ。その中でも特にMystery Jetsとやってみたい。ツインボーカルでめっちゃ好きだし、共通してるところが多いんですよね。

-単純に気になったんですけど、あのアー写は何をしているんですか?
Shinji:俺らを監禁していた悪い星があって全員でどうにか脱出したっていうストーリーで。ポットみたいなものに乗って悪い星から脱出して、謎の星に不時着したんです。その脱出ポットから出てきて、俺らは実験室みたいな所から逃げ出してきたんで全員ブリーフに白いロンTを着ているんですよ。それぞれ腕にバンドでナンバリングもされてて。そしてここからどうやって抜け出すかっていうのをとりあえず火を炊いて考えている所です。

-めっちゃストーリー仕立てになってるじゃないですか(笑)。
Shinji:俺らはずっとカメラマンを固定でやってきてて。毎回6人全員で集まって今回はどうする?って決めるんだけど、暴走した結果あれになった。
Hiroto:だから結局なんだこれ?っていう反応が正しい(笑)。アルバムのブックレットにも同じコンセプトの写真がいっぱい入ってるんでそれも一緒に見てくれたら面白いと思います。

-ジャケットにもストーリーがあるんですか?
Shinji:ジャケットは単純にShissyのケツ(笑)。
Inui:ブックレットは順番に写真が並んでるから見ればすぐに分かりますよ(笑)。

-Shissyのケツって(笑)。それでは最後にこのアルバムをどんな人に聴いてもらいたいですか?
Shinj:俺らを知らない人。知ってる人ももちろん聴いて欲しいけど、俺らを知らない人に聴いてもらいたい。ロックを好きな人。
Inui:誰でも聴いてもらえたら嬉しい。
Shinji:あとShissyのケツが好きな人(笑)。「お!いいケツだな」ってジャケ買い(笑)。
Shissy:前回の『BUSINESS』から一歩成長したぞ!みたいな所は聴いてもらえたら分かってくれると思うんで、YOUR ROMANCEの成長を楽しみにしてくれている人にも聴いてもらいたいですね。
Shinji:このアルバムが1stアルバムなんですけど、ここまで2年間、結成から活動してきて、その締めくくりになったなって思います。まだ次の曲作りは始めてないんですけど、さっき話したようにアルバムの制作からリリースまでの期間中にバンドとしての意識が変わったので。とりあえず第一章の結びとして1stアルバムを聴いてもらって、ここから第二章を楽しみにしてもらいたいです。

-最後に言いたいことはありますか?
Hiroto:みんなの押し曲は?

-私は9曲目の「Opportunity for Reminiscing」が好きです。あの曲でアルバムの流れが変わるので。
Inui:あの曲は「よし!帰還するぞー!」っていう感じですね。
Shissy:4曲目の「Revolver」かな。単純にかっこいい。
Shinji:「Revolver」は戦争がテーマの曲なんですよ。
Shun:僕は「Space Lion」ですね。
Shinji:なぜならこの人がほぼ全てを演奏してるから(笑)。
Shun:そういう意味です(笑)。たくさんパーカッション入れたんで楽しかった。
Shinji:8割パーカッションで構成されてる曲なのでライブがめちゃくちゃ面白い(笑)。ほぼShunのソロっていう(笑)。俺らはただふざけてるだけになるんですよ(笑)。
Shun:まだライブではやってないんですけど、楽しみにしててほしいのもありつつ、頑張んなきゃなっていう自分へのプレッシャーもありますね。本当に楽しくレコーディングできたし、いろんなものを叩けて楽しかった。だから聴いて欲しいなって思いますね。
Shinji:俺も「Revolver」かな。自分の作った曲だし、テーマはRage Against the Machine。あのバンドがすごく好きでインスパイアされて作ったんで、トリップホップ的な曲だから自分の好みに1番近い楽曲。
Inui:僕は「Fingers」ですね。ギターソロがかっこいい。レコーディングではShinjiがギターソロを弾いてるんですけど、ライブでは弾かせてもらってる。
Shinji:「ちょっとここだけは譲ってください!頼むわ!」って(笑)。
Inui:いいよって言ってくれたんで僕が弾いてるんだけなんですけどね。とにかくギターソロがかっこいいっていうだけです。
Shinji:あれはギターソロのための曲だよね。
Hiroto:僕は「Back to the Earth」。アルバムを総括する曲でもあるし、個人的に情景が見える曲が好きで。エモーショナルだけど静かだし(笑)。
Inui:でも今回のアルバムの曲は全部好きなんだよね。本当に良い曲しかないし、マジで味が濃いなって思いましね。
Shinji:ラーメンの1番高いやつあるじゃん。全部のせってやつです。

-今の話はラーメン全部のせの中で、それぞれが自分はその中でもチャーシューが好き、自分はメンマが好きってことですよね。
Shinji:そういうこと。
Inui:本当は全部好きなんですけどね。

『9 Dimensions』
発売中
NIW118

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