最終更新: 2021年8月9日

韓国のロックバンド、HYUKOH(ヒョゴ)は押しも押されもせぬ圧倒的な新人である。

HYUKOHは2017年に『23』をリリースし、雄大なアジアの景色を圧倒的なスケール観をもって描いた「万里(Wanli)」のMVを公開した。

HYUKOH(ヒョゴ)とは

HYUKOH(ヒョゴ)

韓国のSuchmosと称され日本に輸入されたバンド、HYUKOH(ヒョゴ)。

そう言われると、シティポップもしくはブラックミュージックの若手が韓国にもいたのかという見方をされると思う。

しかし実のところHYUKOH(ヒョゴ)はアメリカやイギリスにも通ずるオーセンティックなロックバンドであった。

デビューアルバム『23』に収録された「万里」のMVでは、広大な砂漠を疾走する古びたトラックの荷台で演奏する姿はU2を思わせる。

このMVはモンゴルで撮影されたものだそうで、果てしない砂漠に数多の馬が駆け抜ける様は、アジアの雄大さを今までにない形で提示したのではないか。

今作では水墨画で描かれた「TOMBOY」のMVがあったり、日本の東京をもじった「Tokyo Inn」という曲もあり、アジア全体を俯瞰し、作品に落とし込む視野の広さがある。

ではどうしてHYUKOHは一介のバンドでありながら、ここまでの視野の広さを持っているのだろうか。

調べてみるとフロントマンのオ・ヒョクは中国に住んでいた事があり、その後韓国でバンド活動をしているとインタビューで答えている。

異国の地を自分の目で見た経験があるからこそ、アジアそのものへの理解も深まったのではないだろうか。

また彼らは欧米の音楽だけでなく、その歴史にも興味があるという。

欧米の音楽からのさりげない参照点は、今作でいくつも見られるのだが、その中でも顕著なのが本誌表紙の写真で彼らが着ている衣装だろう。

映画にもなったTalking Headsの伝説のライブ『Stop Making Sense』でデイビット・バーンが着ていたオーバーサイズのジャケットにそっくりではないか!!

冒頭で挙げたU2も“万里”という広大さを表現するために『The Joshua Tree』辺りの音楽や見せ方を参照した事は想像に難くない。

HYUKOH(ヒョゴ)の登場は私たちが長年抱いていた韓国=K-Popという先入観にピリオドを打つ事を意味する。

韓国、いやアジアはロック不毛の地なのではなく、ここから素晴らしいバンドがいくつも出てくる兆しを読み取れる。

いつの日かHYUKOHを始め、アジアのバンドがグラストンバリーやコーチェラ、そしてフジロックのステージで欧米のバンドと遜色のない演奏をしている姿を見る日が楽しみでならない。(yabori)

HYUKOH『23』という末恐ろしさ

HYUKOH(ヒョゴ)
あなたは韓国にどのようなイメージを持っているだろうか?「キムチがウマい」、「芸能が盛ん」などだろうか。

海を挟んで隣同士だからこそ、たとえ行ったことがなくとも私たち日本人は韓国に対してこれらのイメージを容易に思い浮かべることができる。

こうした様々なイメージが思いつく中、韓国がアジアでもトップレベルの英語教育プログラムを実行していることを日本人は意外と知らない。

韓国は日本よりも先に早期英語教育に力を注いできた。

幼い頃から英語に慣れ親しむことのできる環境が身近にあり、それにより海外に目を向ける力を自然と養うことができるのである。

2014年秋、一組の若手4人組バンドが韓国でデビューした。名前はHYUKOH(ヒョゴ)。

“HYUKOH”という韓国語があるのではなく、フロントマンのオ・ヒョクの名前を逆読みにして名付けたようである。

幼少期の頃から歌うことが好きで、シンガーソングライターとしての活動を始めた彼が、大学で知り合った音楽仲間と共に結成したのがHYUKOHである。

この名前を見て、何か気づくことはないだろうか?本国の活動の際、彼らはHYUKOH(혁오)と表記して活動している。

英語表記がメインで、その隣にハングル語表記でバンド名が書かれているのだ。

自分たちのバンド名をわざわざこのように表記しているのはなぜか?その答えが彼らの日本デビューアルバム 『23』にある。

このアルバムに収録されている各楽曲には、ロックはもちろんブルースやファンクなどの自分たちのルーツに当たる音楽だけでなく、

中国のカンフー映画で流れているような音楽の要素も入れられ、アジア人ならではの解釈が加えられている。

そうして作られたメロディーの上には、母国語である韓国語に英語と中国語を組み合わせた自由度の高い歌詞が重なり、彼らにしかなしえない解釈で独自のポップミュージックを鳴らしているのだ。

母国語以外の言語をも駆使した歌詞を歌うスタイルは、70年代後半に大ヒット曲「モンキーマジック」がお茶の間で人気を博したゴダイゴを思い起こさせる。

ゴダイゴのフロントマンであるタケカワユキヒデもまた音楽界のエリート育ちであり、こうした点においてもHYUKOHと似たものを感じさせる。

タケカワがそうであったように 、オ・ヒョクもまた幼い頃から国やジャンルなどを問わず様々な音楽に触れ、自然とその感性が世界に向けられていったと思われる。

彼らの楽曲は、一つの曲の中で韓国語と英語、曲によっては中国語も加えられる。英語を身近に感じられる環境の中で育ち、世界を知ることでアジア人としての感性を深められたのではないか。

つまり幼い頃から世界に目を向けてきたからこそ、自らのバンド名に英語表記を書き加えたのだろう。広い視野を持ってして彼らの楽曲は生み出される。

おそらく、彼らの目指すところは本国や日本に留まらない。

これは余談だが、アルバムタイトルになっている“23”という数字はメンバー4人の年齢である。

国によって読み方は違うが、数字は世界共通であり、誰しも知っているし読める文字である。

韓国や日本、そしてアジアに留まらず、HYUKOHが世界を股にかけてその音楽を展開する日もそう遠くはないのかもしれない。(桃井 かおる子)

リリース

23
23

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HYUKOH
トイズファクトリー (2017-06-07)
売り上げランキング: 49,060

収録曲:
1. Burning youth
2. Tokyo Inn
3. 가죽자켓 (Leather Jacket)
4. TOMBOY
5. 2002WorldCup
6. Jesus lived in a motel room
7. Wanli万里 (Wanli)
8. Die alone
9. 지정석 (Reserved seat)
10 . Simon
11. Paul
12. Surf boy

プロフィール

HYUKOH(ヒョゴ)

“2014 年秋デビューの韓国4 ピースバンド。
オ・ヒョク(Vo/G)、イム・ヒョンジェ(G)、イム・ドンゴン(B)、イ・インウ(Dr)の1993 年生まれの同級生で結成。洗練されたサウンドとブルージーな歌声が人気となり、個性の強いファッションスタイルは音楽と一緒に凄まじいスピードで話題になり、「HYUKOH」という文化を創ってしまった。

デビュー1 年で音楽配信8 週連続5 位圏内を記録、アルバム完売等の快挙を連発した結果、数々の強豪アーティストを抑えて2015 年の年間ダウンロード・チャートが4 位と大健闘。さらにオ・ヒョクが参加した「応答せよ1988 Part3」サウンドトラック「少女」は2 週連続1 位、2016 年上期26 週ホット100 位以内から外されず、最も愛された曲に選ばれた。

昨年末のソウル@ ワンマンライブは4000 キャパを即完売。すでに中華圏でもフェスやワンマンを次々成功させ、アジア各国からラブコールが絶えない。日本でも昨年夏『SUMMER SONIC 2016』に出演、新人にして東京大阪の両ステージに立ち各方面から大反響。加えてサマソニ・エクストラとして代官山SPACE ODD で開催したワンマンはチケットが瞬殺。

2016 年11 月、トイズファクトリーより「20」「22」のライセンス盤をリリースし、秋には、大阪と東京でワンマンライブを開催された。

2017 年4 月末、前作EP『22』リリース以降、じっくり時間をかけて作り上げられた彼らの記念すべき1st Full Album『23』をリリース、日本ライセンス盤は6 月7 日にリリースされた。「23」は韓国内で大ヒットし、2018 年2月におこなわれた第15 回韓国大衆音楽賞2018 では、”最優秀モダンロックアルバム(「23」)”、”今年の歌(TOMBOY)“、”最優秀モダンロック曲(TOMBOY)”の計3部門を受賞。約30 公演にもおよぶワールドツアーを昨年おこない、世界進出を確実におこなうアジアバンドとして世界中で注目をあつめる。

2018 年も続々とワールドツアーが発表され、秋にはJAPAN TOUR も決定した。”

引用元:HYUKOHプロフィール(TOY’S FACTORY)

YouTube

  • HYUKOH(혁오) – Wanli万里
  • HYUKOH(혁오) – Leather Jacket(가죽자켓 뮤직비디오)
  • HYUKOH(혁오) – TOMBOY(톰보이 뮤직비디오)

ライター:yabori
yabori
BELONG Mediaの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・​後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻

これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。

過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。

それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行してきた。

現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。

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Twitter:@boriboriyabori