最終更新: 2020年6月10日

怒涛の展開を見せたPLASTICZOOMSを終え、余韻を残すように再びクラブミュージックが場内を包む。

次は誰かと想像しようと思ったところで、THE NOVEMBERS(ザ・ノーベンバーズ)の面々がステージにやってくる。

転換中からメンバー自らが自分の楽器の元へ行き、念入りにチェックするようにじっくりとセッティングを進め、準備を整えた順に幕外へ戻った。

THE NOVEMBERSライブレポート

テキスト:pikumin 撮影:創-sou-

場内が暗くなり、人々はしんと黙り込んで始まりの時を待つ。再びステージに上がると「ようこそ、BODYへ」と小林祐介(Vo./Gt.)が一言口にすると、

アーハの「Take On Me」のカバーから、THE NOVEMBERSのステージが幕を上げた。弾むようなリズムセクションや軽やかなバンドアンサンブルが描くロマンチックな世界は原曲そのままに。

よりスロウテンポへのアレンジや小林と高松浩史(Ba.)が織りなす繊細なコーラスワークによって作り上げる神秘的な世界はThe Cureにとても近しく、

サビの伸びやかな高音やファルセットから2番に入った瞬間の“So needless to say”と歌いだす瞬間のフォールをする小林の歌声はロバート・スミスを彷彿とさせた。

高松の艶やかなベースラインが曲の輪郭を描きスタートする「裸のミンク」は間にスパイシーなモジュレーションサウンドを織り交ぜながらミステリアスな空気を演出し、

すぐさま続いた「きれいな海へ」では水の中をたゆたうように透明感のある音色に包まれる中、波や生命の流れを描くような力強いギターソロがやってくるのが、何とも気持ちが良い。

最後には小林がワンオクターブ上げて高らかに歌い上げ、鮮やかな世界を見せていた。ガツンと来る衝撃で虜にさせるPLASTICZOOMSとは違い、THE NOVEMBERSはムーディーな曲を並べて身も心もじんわりと浸食していくようなステージング。

2バンド目として緩急をつける重要な役割を果たしつつ、伸び伸びとプレイする彼らには、波長の合うメンバーが集まったBODYだからこそのゆとりを強く感じる。


色気と不穏さを滲ませ、あたたかな光に照らされたスモークの中を揺らめきながら演奏するメンバー4人。

小林が「サンキュー!」とステージの後ろの観客にまで届くように遠く投げかけるようにお礼を挟むのみで、次々と曲を披露していく。

前曲のアウトロから繋ぎ、小林とケンゴマツモト(Gt.)が目と呼吸を合わせながらギターリフを重ねて始める「彼岸で散る青」へと続く。

突如やってくる轟音ノイズに心を一瞬で奪われていく中、メタリックな鉄の音がビリビリと鳴り響く「鉄の夢」へ。

まるで歪んだ檻の奥からうめき声をあげるようなディストーショナルなギターののち、一瞬のブレイクで訪れる静寂はまるで獣が奥から鋭い目つきで見つめてくるような冷たさが潜んでいて、思わず背筋がぞくりとする。

小林の張り裂けそうな程のシャウト、ケンゴマツモトが髪を振り乱す姿、動じないリズムセクションの2人は構わず強いアタックで重く芯のあるリズムを貫き通す。

ステージにいる4人はまさしく美しくも凶暴な獣のようにそれぞれの楽器を掻き鳴らしていた。すべてが歪みの中へ堕ちていったところで、ぴたりと終わりを迎え突如現実に戻る。

まさに夢を見ていたのだと錯覚するほどの一瞬の出来事に観客からは大きな歓声と拍手が巻き起こった。


最初の穏やかな空気とは一変、景色が歪み、THE NOVEMBERSのミステリアスな美に取り込まれていく。

繰り返されていくフレーズの中に変化を重ねて始まる「Wire (Fahrenheit 154)」では、まるで迷路に迷い込んだような音像の中で、チョーキングと共に顔を大きく振り上げるケンゴマツモト、

強く打ちつける吉木諒祐(Dr.)のドラミングが加速していく共に轟音の世界へすべてを引率していく。

音が形を失くして歪みが牛耳るノイズ一面の空間へと変貌していく中、彼らは凄まじい集中力で歪んだ音を一つずつ選んで重ねていく。


そのままラストスパートをかけて「Blood Music.1985」へ続くと待っていましたと言わんばかりの歓声が大きくあがった。

時折射抜くような目線で顔を上げる高松はアタックの強いダウンピッキングとディストーショナルなサウンドで、勢いを絶やさずことなくこの曲のリズムを作り出していた。

小林のソウルフルなシャウトとギターがリンクして叫びあげると共に、研ぎ澄まされた空気はそのままエネルギー溢れる圧倒的のステージを見せつける。

大きな拍手が鳴る中、ラストナンバー「黒い虹」へ繋ぎ、ライブハウスが震えあがるほどの轟音は、まるで世界をまるごと壊してしまいそうなほどの爆音と圧力を兼ね備え、地鳴りのようにどこまでも響き渡っていた。

常識も世界も全て吹き飛ばすかのように弾けた轟音に観客は今日一番の大きな拍手と歓声をあげ、会場を大きく盛り上げたままTHE NOVEMBERSはLillies and Remainsへとバトンを渡した。

Lillies and Remainsライブレポート

PLASTICZOOMSライブレポート

セットリスト

2018/02/07 BODY@渋谷DUO MUSICEXCHANGE
NOVEMBERS
1.Take on me(A-ha cover)
2.裸のミンク
3.きれいな海へ
4.彼岸で散る青
5.鉄の夢
6.Wire
7.Blood music.1985
8.黒い虹