最終更新: 2020年6月21日

名プロデューサー、ブッチ・ヴィグ率いるグランジロック・バンド、ガービッジ(Garbage)。

過去作品から“名作”と名高いセカンドアルバム『Version 2.0』のリマスター盤のリリースが決定。

発売に先駆け、Garbageのメンバー3人(シャーリー、スティーヴ、ブッチ)に『Version 2.0』に秘めた思いを語ってもらった。

Garbageインタビュー

アーティスト:シャーリー・マンソン(Vo./Gt.)、スティーヴ・マーカー(Gt.)、ブッチ・ヴィグ(Dr.) インタビュアー:pikumin

-今作はリマスター盤2作目となりますが、なぜ『Version 2.0』を再びリリースしようと思ったのですか?
シャーリー:デビュー・アルバム『ガービッジ』のリマスターを出したときにすごくいい反応をもらったから、『Version 2.0』でもまた同じことをやりたかったの。『Version 2.0』はファースト・アルバムと同じくらい私たちにとって大切な作品で、それが成功したおかげで私たちは世界中を旅してファンベースを獲得することもできたの。それに今ヴァイナルの需要が増えつつある中で、ガービッジの昔の作品ってなかなか見つからないと思うから、その需要にも答えたかった。デビュー・アルバムの20周年記念を祝うツアーはバンドにとってもファンのためにもやってよかった!と思えるものだったから、『Version 2.0』でもちょっとしたアニバーサリー・ツアーを行う予定。

-1998年に『Version 2.0』がリリースされた時にはヨーロッパの各地のチャートは一位を獲得したり、全世界での売上も400万枚を突破していたり、ガービッジという名前と音楽をより世界に広めたアルバムだと思います。ガービッジのみなさんにとって今作はどんな存在ですか?
ブッチ:『Version 2.0』は僕たちのサウンドをうまく定義したといえる作品だよ。デビュー・アルバム『ガービッジ』から学んだことをそのままソフトウェア・アップデートしたみたいなものが『Version 2.0』なんだ。ビートやエレクトロニカ、ファジーなギターの要素が強まって、フックも増えてる。今『Version 2.0』を聴いてみると、バンドが自信を得てスタイルを強固にしていっているところだとわかるよ。

credit:Joseph Cultice

-さっそく今作リマスター盤『Version 2.0』についてお伺いします。まず、作品で印象的だったのがリズムパートでした。生音とシーケンスを両立させていたと思うのですが、今作ではバンドサウンドという感覚よりも、あえて両者の境界を失くしたようにも思えます。今作のどういうところにこだわったか教えてください。
ブッチ:『Version 2.0』はプロダクション面で限界に挑んだよ。Pro Toolsだけでレコーディングしたはじめてのアルバムだったし、アナログのテープに録るだけでは叶わなかったことがいろいろあるってことに気付いたんだ。それぞれの楽曲について、別のリズムパートを取り入れることを心がけたよ。ローファイなドラムループ、エレクトロニック・プログラミング、生のドラム演奏に加えて、EFXからグルーヴのあるアンビエントなサウンドを拾ってきたりなんかもした。アレンジとミックスの段階では、多くの場面転換が欲しくて、わざわざナチュラルな録音に聴こえるように音を仕上げる必要がない気がしたんだ。このアルバムのミックス作業は決して簡単なじゃなかった…いくつかの曲はトラックが200以上にまで膨れ上がったんだ!」

-未発表曲「Lick The Pavement」が収録されていますが、この曲をどうして収録しようと思ったのでしょうか。またどうしてこの曲は当時、収録せずにリリースしたのでしょうか。
ブッチ:『Version 2.0』のツアーの間、かなりの数のシングル曲をリリースしたんだけど、レーベルがそれぞれのリリースに対してB面用の曲を2曲ずつ付けてほしいって言ってきて。だからほとんどのB面の曲はツアー中の貴重な休日を利用してレコーディングしたのさ。「Lick The Pavement」はささっとレコーディングを済ませた曲で、もしそれをアルバムの制作中にレコーディングしてたら、もっと複雑なアレンジが加わっていたかもしれないな。今回はその曲をもっと追究して、この秋の『Version 2.0』ツアーでプレイする予定だよ!

-リマスター盤と以前リリースしたものとを比較して、印象が変わった曲があれば教えてください。また『Version 2.0』をリリースして20年になりますが、曲自体の解釈が変わった部分があれば教えてください。
ブッチ:リマスター盤の音は最高だよ!このアルバムには僕たちをバンドとして定義づけるなにか特有の、スペシャルなサウンドが含まれていると思う。『Version 2.0』をリマスターしてみて改めて思ったのは、全体を通じてとにかくシャーリーの歌声が素晴らしいこと。彼女はこのアルバムで、シンガー、そして作詞家として本当に成長して、聴けばそれがわかるはずさ。彼女は『Version 2.0』の中心的存在で、その強い個性と存在感のおかげで僕たちのサウンドを世界中に届けることができたんだ。シャーリーはこのバンドにかかせない存在だよ!

-今回リマスターしたことで、ヴォーカルの聴こえ方も変化していると思うのですが、どういったことに重きを置かれましたか?
シャーリー:リマスターをするときには必ず、ふつうのひとが気がつかない程度に些細なレベルの、それでも確実な音の違いっていうのが出てくるものよ。

-今作で印象的なのは広いサウンドスケールなのですが、スケールの大きなサウンドを作るに当たって工夫した事があれば教えてください。
シャーリー:『Version 2.0』を制作してた時、確実にそこには成し遂げたいことがあった。ひとつひとつの楽曲がそれぞれに個性を持たせながらも、全体の世界観に馴染んで、そのすべてが一緒になってひとつの世界を創りあげれるようにしたかった。私たちは自分たちの音楽のことを“サイファイ・ポップ”って呼んでたんだけど、結局それが意味していたのは、私たちが突然自由に使えるようになった全ての新しいテクノロジーを駆使した先進的なポップ・ミュージックで、ポップという表現のスケールを拡大させることもできたの。

-『Version 2.0』をリリースした1998年には日本のロックフェス・フジロックフェスティバルに出演していましたね。その時のことは覚えていますか?印象に残っていることなどがあったら教えてください。
スティーヴ:フジロックは僕たちがこれまでプレイした中で特に記憶に残っているフェスティバルのひとつで、今でも僕たちはその話をするんだ。ラインナップも素晴らしかったし、プレイするのを本当に楽しみにしてたんだ。だけどその日はその夏でも一番暑くて湿気の多い日で、僕たちはその準備ができていなかった。クーラーの効いたホテルの部屋から一歩も出ていなかったから、分厚い冬服を着るのがいいんじゃないかなんて思ってしまって。でもそれは大きな間違いだったよ。結局最後はみんな真っ赤になって、シャーリーの髪型もグシャグシャになって、演奏し終えたときにはみんな戦いが終わった後みたいな状態でステージから出るのもきつかった。それ以外は、本当に全部素晴らしかったよ!日本で演奏するのはいつも楽しみなんだ。

credit:Joseph Cultice

-再びに世に出した『Version 2.0』。当時と違う世代にも届くことになりますし、この作品でガービッジを知る人も多いと思います。特に当メディアでは若い世代が多く見てくれているので、このインタビューをきっかけにガービッジを知る人が多いと思います。新しくガービッジに出会う人たちに一言頂いてもよろしいでしょうか。
スティーヴ:長年バンドをやっていて最高だと思うことのひとつは、幅広い世代のファンを持てるってこと。オリジナルの『Version 2.0』がリリースされた時にはこの世に生まれていなかったファンだっている。そういう新しいファンは、他のどこからも得られないなにかを求めて、僕たちのところにやってきてくれるように思うんだーある種のサウンドの多様性とか、その影響。良くも悪くも、僕たち4人をユニークだと感じるものに。僕たちはこれまでずっと、自分のことをどこか“違う”と感じていたり、自分の意見なんか大切じゃない、どこにも居場所がないと思っている人たちを受け入れたい、そんな人たちを尊重したいと思って活動してきた。その想いが僕たちがこれまでに作った、そして今も作りつづけている音楽に表れていることを願ってる。僕たちはみんな、違うところよりも共通点の方が多いんだよってことを伝えたい。

-どんな人にこの作品を聴いてほしいですか?
スティーヴ:オーディエンスなんて選ぶことはできないよ。オーディエンスがぼくらを選んでくれるんだ。だから、当時『Version 2.0』にあまり繋がりを感じることができなかった人に、今回リマスターを聴いてもらって何らかの形でインスピレーションを受けてもらえればいいなと願っているよ。インスピレーションを受けるのに決まった道筋なんてなくて、だからこそ音楽は素晴らしいアートの形態なんだ。僕たちはただ音楽をこの世に送り出すだけで、それをどうするのかは受け手次第だからね。だからこの質問の答えは、“自分の考えを持ってる人たち”ってとこかな。

リリース


『Version 2.0(20周年記念盤)(リマスター)』
レーベル:Stun Volume / Hostess
発売日: 2018/06/22
品番:HSE-4596/7
※初回仕様限定:ボーナストラック1曲・ダウンロードコード付ステッカー封入(フォーマット:mp3)。歌詞対訳、ライナーノーツ(新谷洋子)付

プロフィール

ガービッジ(Garbage)

“過去に3度のグラミー賞ノミネートと35カ国以上でライヴ経験があるアメリカ合衆国・スコットランドのロックバンド。紅一点のヴォーカル、シャーリー・マンソンの存在感とコケティッシュな魅力が特徴。アルバムの累計セールスが1500万枚を超える。影響を受けたバンドに、ロキシー・ミュージック、プリテンダーズ、スージー・アンド・ザ・バンシーズ、カーヴ、コクトー・ツインズ、パティ・スミスやデヴィッド・ボウイなどをあげている。ライナップはシャーリー・マンソン(vo)、スティーブ・マーカー(gr / key)、デューク・エリクソン(gr / key)、ブッチ・ヴィグ(dr., loops)。2016年6月に6枚目となるアルバム『ストレンジ・リトル・バーズ』、2017年8月には配信限定シングル「No Horses」を発表。2018年6月、セカンド・アルバム『ヴァージョン2.0(20周年記念盤)(リマスター)』をリリースした。”

引用元:ガービッジ(Garbage)プロフィール(Hostess)