最終更新: 2020年3月19日



テキスト:pikumin 撮影:Bunta Igarashi
”首” tour OCT 2018。全4公演のうち、後半戦は神戸・京都の2daysで行われた。
“首”第3夜は、10月21日・神戸VARIT公演。ゲストアクトにTHE NOVEMBERSのレーベルメイトであるKlan Aileenと小林祐介が絶賛するというAge Factoryを招いた。
トップバッターはKlan Aileen。ボーカルギターとドラムの2ピースとは思えないパワフルな演奏は、ステージ後方まで生音がクリアに聴こえるほど力強く、一瞬の隙も見せず会場を震わせ続けた。 続くAge Factoryは、先日リリースされた新譜『GOLD』を中心に、エネルギー全開の圧巻のパフォーマンスを披露。時に猛々しく叫び、時には切なげに響く清水エイスケの歌声と、彼らの振り幅の広い楽曲たちに、オーディエンスは夢中になり全身で応え続けた。2バンドによる、若き魂と衝動がぶつかりあうロックミュージックによって、場内は熱気で満ちた。いよいよ、彼らの登場だ。
SEと共に小林と吉木、ケンゴと高松が登場。場内をあたたかく包むように「37.2°」が始まる。脈打つ鼓動のようにバスドラは強く鳴り、ギターの擦れる音は小鳥のさえずりのように花を添える。楽器の音が止み、小林のアカペラだけが場内に響き渡る光景に、観客は見入った。
なめらかに踊るようなベースラインから「We」が始まると、ピリッとした緊張感が走る。THE NOVEMBERSのショーならではのあの空気感だ。

そのまま、関西初披露となるBorisとのスプリット12インチEP『unknown flowers』に収録されている「Journey」を披露。のっけから繰り出される低く蠢くフィードバックノイズは、ずしんとお腹の奥底にまで響き渡るほど威圧的だ。
ノイズで埋め尽くされた中でしか生まれない美がある。その思想はBorisと共鳴しつつも、違った捉え方で、彼らならではの艶やかな轟音を奏でている。彼らの轟音に近づくことで、THE NOVEMBERSらしさが浮き彫りになったといえよう。
轟音を繋いだまま、「あなたを愛したい」を挟み、もう一つの新曲「ひとつにならずに」へ。ストレートなアプローチの往年ロックサウンドとツインボーカルを交え、今までにない雰囲気をまとっている。ギターを抱えるように掻き鳴らすケンゴマツモトは90年代前半のジョニー・グリーンウッドを彷彿とさせる。

「彼岸で散る青」「鉄の夢」と続き、再び爆音の渦が巻く。ノイズはどこまでも雑味なく、きれいな音はさらに純度が高く極められていて、聴き心地が良い。また、ケンゴがセンターに駆け出し、本能のままに弾き散らかすと、観客からは大きな歓声があがり、場内のボルテージはぐんとあがった。その空気がまた彼らを熱くさせ、4人全員ともハイテンションのまま激しく重厚な音を繰り出していた。
今まではどこまでも広く響き渡っていた彼らの音は、狭く深くなった。ミニマムを極めたプレイスタイルで、無意味な余韻は一切なく、重たく深い音をより濃密にさせている。新しい手法であり、より彼らの曲の魅力に取り込まれるようだ。その証拠に、観客は他に一切注意を反らすことなくステージだけを見つめ、音に酔いしれているではないか。
チューニングの間一息つき、小林がリズム隊に向かいグッドサインを出し「Blood Music.1985」でラストスパートをかける。全員が一体化し、ハイパワーハイスピードで駆け抜ける。最近のTHE NOVEMBERSのステージは、互いの繋がりを明確に感じる。全員が互いの音に触発されるように、ギターソロが鳴き叫べば、シャウトが響けば、ひとつ歪みが重なれば、音がひとつずつ強くなっていくのだ。圧倒的なノイズの渦にオーディエンスは飛び跳ねて応える。ケンゴマツモトは拳を突き上げたのを見て、場内の全員が、この音楽の完成形を見た気がしたのだ。
穏やかな曲から静かな情緒が沸き立つハードな曲まで披露してきた中、両方を兼ね備える「いこうよ」で本編を締めくくる。
本日の彼らのコンディションもテンションも抜群で、個々の持ち味が最大限に活かされたところで、各曲の本来の魅力が打ち出された。
今や構築的というよりも、本能的。計画性よりも、ぶつかり合うエネルギーの反応や衝動を楽しんでいる方が近い。それは、熱い魂がぶつかり合う音楽を見せたKlan AileenとAge Factoryと深く共鳴している。それをロックと言うならば、彼らは生粋のロックバンドであり、その真髄を見せてくれたのだ。

アンコールに応え、ゲストアクト2組へ感謝を述べて「Hallelujah」を披露。本来はここで終わる予定だったのだが、突如「あの、もう一曲やっていいですか?」と小林が観客に問いかける。
「この曲で終わろうと思ってたんですけど、彼らを見ていたら自分たちヒヨってるな思ったんで。」実はAge Factoryのステージを2階から見ていた小林。彼らの熱いパフォーマンスと掻き鳴らされる爆音を真っ直ぐに見つめていたのが印象的だった。きっとリスペクトと同時に、心に火をつけられたのだろう。「僕らの曲で、一番爆音の曲やって帰ります。」と一言置いた途端にギターを掻き鳴らし、「黒い虹」が始まった。最後の最後に今日一の轟音で会場を埋め尽くし、音が消える瞬間まで誰もがステージに夢中となった。曲終わりには大きな拍手が巻き起こり、首第3夜は、終焉を迎えた。


【Set List】
2018年10月22日@神戸VARIT
1. 37.2℃
2. We
3. Journey
4.あなたを愛したい
5. ひとつにならずに
6. 彼岸で散る青
7. 鉄の夢
8. Blood music.1985
9. いこうよ
En1.Hallelujah
En2.黒い虹
【Live】
・2018/11/11(Sun)@恵比寿LIQUIDROOM
November Spawned A Monster(ONEMAN GIG)
・2018/12/7(Fri)@品川教会グローリアチャペル
「HOLY」THE NOVEMBERS Live at Shinagawa Gloria Chapel