最終更新: 2015年7月31日
MO’SOME TONEBENDER(以下、モーサム)が新作アルバムを2枚続けてリリースした。
今まで驚異的なペースでリリースを続けていた彼らであるが、2枚続けてのリリースは初めてのことだったそうだ。
今までモーサムはロックンロールだけでなく、エレクトロやサイケ、果てはフォークまでも飲み込んだ尽きる事を知らない音楽性の幅広さが魅力であった。
ここまでジャンルで括れないバンドもそうそういるものではないが、さすがの彼らも2作連続リリースとなったら、新しい切り口はあるのだろうか?
当初はそういう考えもよぎったが、無用の心配であった。『Super Nice』では藤田がエレクトロという新境地を切り開いたが、今回の2作は武井がモーサムの新しい扉を開いた。
長年のキャリアがあってなお、妥協することなく進化を続ける姿には感服するばかりだ。『地獄盤』のインタビュー時にはメンバーとの関係性を中心に聞いたが、今回は2作同時リリースの真意や制作の背景について、ボーカルの百々に話を聞いた。
アーティスト:百々和宏(Vo.&Gt.) インタビュアー:桃井かおる子 撮影:Chappy
-どうして2つのアルバムタイトルを『地獄盤(Rise from HELL)』と『天国盤(Ride into HEAVEN)』にしようと思ったのでしょうか?
百々:MO’SOME TONEBENDER(以下、モーサム)はもともと両極端なバンドだなと言われてて。ハードなイメージが強いんですけど、エレクトロなサウンドもあって。かっこ悪い曲もバカっぽさもあるっていう(笑)。これまでだったら一枚のアルバムにどちらも入っているようなバラエティ豊かな作品が多かったんですけど、それを分けて2枚作ってみたらモーサムってバンドが面白く見えるんじゃないかなと思ったからですね。制作途中に“天国”と“地獄”って言葉が浮かんで来て、それってモーサムっぽいなと思って。
-楽曲を2つのアルバムで分ける時の基準はありましたか?
“地獄”はもちろんハードかつダークな曲でまとめて、“天国”は歌ものとシーケンスを使ったエレクトロ色の強いものを入れました。8割は悩まずにハマった感じです。
-アルバムを2枚同時制作は大変だと思うのですが、苦労したことはありましたか?
実は今までの制作よりも楽に進んだんですよ。いつもだとメンバー全員でデモ曲を持ち寄って、曲出し会議をするんですけど、そこで作品のカラーがだいぶ決まってくるもので。そうするとこの曲は今回使えないなって、お蔵入りになる曲がどうしてもあるんですよ。でも今回は2作あるからこそ、ボツ曲なしで制作を進めることができて。今までだと曲の善し悪しではなく、今のバンドのノリから外れる曲はレコーディングしてなかったんですけど、2枚あるからどっちかには収録できるなって事で。ボツ曲もなかったんで、メンバー間で嫌な感じになることもなかったですね。
-今回の『天国盤』はエレクトロ色が強く、勇さんのカラーが前面に出ているように思います。特に「NAKAYOSHI 11」は、勇さんが作曲で小さい子供でも口ずさめるようなメロディーになっていると思います。子供でも歌えるような曲が書けるのはすごいと思うのですが、どうしてこういう曲も書けるのでしょうか?
たまにモーサムの曲であるんですけど、“ブラックみんなの歌”ってやつですね(笑)。制作中にあがってくる曲を聴いて、良い意味でバカな曲を作ってるなぁと思ってて(笑)。どこまで幼稚になれるかみたいな所で、あえてメッセージゼロの曲を作ってやろうっていう。
-そうなんですね。あえて何も考えずに作ったという感じでしょうか?
僕が曲を作る時や歌詞を書く時はライブをイメージして作るんで、お客さんが盛り上がってバカ騒ぎをしているもので良いなと思っていて。なるべく自分たちと聴き手も頭をからっぽにさせたいんで。
-なるほど。ライブの時はどのような事を考えて演奏されてるんですか?
実はクールに演奏してますよ。モーサムってステージ側からの光が強いので、お客さんがよく見えるんですよ。盛り上がってるなぁとか、あいつの動き、面白いなぁとか、思いながら演奏してますね(笑)。
-『天国盤』は『地獄盤』に比べて歌詞の内容がハードなものを歌っていると思うのですが、曲は明るめにして歌詞はダークな感じを狙ったのでしょうか。
狙った訳ではないですね。まず曲ができてその後に歌詞を入れたんですけど、イメージがわかない曲もあって。だからあえて曲調とは逆の歌詞を入れようと思って。例えば、「NAKAYOSHI 11」は曲調がほのぼのしてたので、あえて毒を入れたっていう。
-そうなんですね(笑)。「hit parade」の歌詞では、往年のロックスターの名前が出てきて、音楽への思い入れを感じるのですが、これはどういう考えで入れようと思ったんですか?
The Ramonesの「Do You Remember Rock ‘N’ Roll Radio」のオマージュみたいなものですね。あの曲ってラジオを聴いてるって設定で、自分の好きなミュージシャンの名前が出て来るんですよ。そういうのが良いなぁと思って。ベタなミュージシャンの名前を入れたんですけど、いざ見てみると古いのが並んだなぁと(笑)。
-今回の2つのアルバムには、最後に収録されている曲(「イミテイションシティ」、「Kick Out ELVIS」)を武井さんが作詞作曲をしているという共通点があります。これはどうしてでしょうか?
曲を聴いてこれは締めに良いかなと思いました。むしろインパクトが強過ぎて、中盤だと置きどころがないんですよね(笑)。
-(笑)。2作を通じて、武井さんのカラーが色濃く出ている作品だと思うんですけど、武井さんが持ってきたデモ曲はどういう感じで作り上げていくんでしょうか?
勇がシーケンスで曲の土台を作っていってる感じですね。キラキラ感を増していくっていうか、シンセを重ねる作業は勇がやっているんですよ。
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