最終更新: 2014年8月20日

若手のヒップホップ・プロデューサーInfroを迎えた新作は、溢れんばかりのアイデアが形になり、クークス史上最高にダンサブルでグルーヴィなものとなった!素晴らしいポップ・ミュージックを作る音楽家としてのルーク・プリチャードの実像に迫った。

The Kooks インタビュー

アーティスト:ルーク・プリチャード(Vo./Gt.)  インタビュアー:yabori,Mayumi Yada

-今回のアルバムはKOOKSのポップセンスと先鋭的なアプローチが見事に融合した傑作だと思います。先行曲の「Around Town」は何回聴いてもかっこいい曲ですね。
hi!!まず新作を楽しんでくれてありがとう。そして僕たちにインタビューしてくれて嬉しいよ!それと回答を返すのが遅くなってごめん。ちょうどアメリカから戻ってきたばっかりでいろいろスケジュールが立て込んでたんだ。

-今回のアルバムのジャケットには心臓に色んな国の言葉で“Listen”と書かれていますが、これにはどういう意図があるのでしょうか。
音楽ってインターナショナルなものだと思っていて、それは1年を通してもうほとんど家にいるよりも旅をしている状態からだと思うんだけど。だからジャケットに自分たちの学びたい言葉をいくつか載せるのって面白いアイディアだなと思ったんだ。

-アルバムタイトルの『Listen』に込められた意味について教えてください。Listenというのは非常に強く印象的はタイトルだと思いました。これは今作への特別な思い入れや自信からきているのでしょうか。
“listen”って普遍的な単語だよね。呼びかけでもあり、返事にもなり得る。自分自身(自分の心)や自分の周りで起こっていることに耳を傾けることって人生のキーとなることだと思うんだけど、これって現代のテクノロジー社会では忘れがちになることだよね。聞こえて(hear)はいても”聴いて(listen)ない”というか。このアルバムの出来には満足してるし、タイムレスでありながら新鮮な作品になったと思ってる。いろんなジャンルを混ぜ合わせる作業はとても楽しかったよ。

-今回のアルバムはヒップホップ・プロデューサー のInfloという方と一緒に制作されたようですね。彼はどういう人なのでしょうか。またどうして彼と一緒にやろうと思ったのでしょうか。
Infloはロンドン出身の若いヒップホッププロデューサーなんだけど、”Around Town”を書いた時僕はアーバンでヒップホップ的なアイディアを探してたから、誰かそういうジャンルのビートとかに強い人物を必要としてたんだ。それでアンテナをはってたら友達がInfloのサウンドクラウドのリンクを送ってくれて。それを聴いてみたら今まで聴いたことのあるどんなプロダクションより強くてしっかりしてると思ったんだよね。だからすぐに連絡してお茶したんだ。言葉にするとクレイジーになっちゃうけど、僕たちは2人とも近い音楽のアイディアを持ってたし、すぐに化学反応が起こったよ。最終的に一緒に曲をたくさん書いて、今作のプロデューサーは彼しかいないって確信したんだ。

-今回のアルバムは周りのことからいろいろなアイディアをピック・アップしたと言っていましたが、どうしてこのようなアプローチで制作したのでしょうか。
そうだね、今作ではたくさんの実験をしたね。実際、ある日Infloがいろんな音を集めるためにデジタルレコーダーを持って僕らみんなを外に連れ出してくれたんだけど、それがもう死ぬほど面白くてさ。車の音や、人々の会話、道でやってるバンドの音なんかを録音したんだ。いいものもあれば、全然使えないものもあったんだけどね。これまでのアルバムの作り方とはまったく違ったよ。まず僕が1人もしくはInfloと曲づくりにとりかかって、曲のだいたいのイメージをつくるって感じで。僕は今作に対して明確なビジョンを持ってたんだけど、バンドのメンバー達もよくサポートしてくれたんだ。そのイメージやデモを持ち寄ってコラージュして。単なるレコード以上のものができたと僕は思ってるよ。主な部分はできるだけファーストテイクで録るようにしたよ。より曲に降りてくるマジックを生かすようにしたいと思ってね。

-今までのアルバムは何十曲もの中から選りすぐったものをレコーディングしていたようですね。今回もかなりの数の楽曲の中から選んでレコーディングしたのでしょうか。
うん今回も曲をたくさんつくったからいずれ何らかの形で完成させたいと思ってるよ。

-「Hold On」はTalking headsのようで凄くかっこいい曲だと思うのですが、日本盤のボーナストラックに収録されるようですが、正式なアルバムには収録されないようですね。今回のアルバムについて収録する曲としない曲を分けた判断基準があれば教えてください。
ありがとう!僕らはトーキング・ヘッズにインスピレーションを受けてるところがかなりあるよ。アルバムをこれで完成って決めるのはすごく難しいんだ。この曲はすごく好きなんだけど、苦渋の決断で通常版にはいれないことにしたんだ。

-このアルバムには「Around Town」や、「Bad Habit」、「Down」、「Sunrise」のように手拍子をパーカッションの一部のように効果的に使っている曲がいくつかありますね。とてもカッコいいと思いますし、この手拍子がこのアルバムをよりダンサブルかつグルーヴィに仕上げていると思います。このように手拍子をいれるアイディアはどのようにして生まれましたか?
それこそまさにInfloのおかげだよ!ダンサブルさっていうのは彼の得意とするところで、あの手拍子の音は彼が実際に手を叩いてる音なんだ。コントロールルームの中にいたら、彼が曲に合わせて手を叩いてんだ。それで僕は「それいい!録音しようよ!」って言ったんだ。手拍子ってゴスペルでよく使われるものでもあるよね。このアルバムはゴスペルの影響もかなり受けてるんだ。

-「Sunrise」はどこか中東を思わせるメロディーを使っていますね。この曲を作った時のエピソードを教えてください。
うーん、どうだろう。ただひらめいたものを書いただけだから。フラメンコスタイルのギターを使ってるところがあるからかな。ルールにとらわれず、クレイジーな歌詞にしようと思ったんだ。うまくいったと思ってるよ。

-このアルバムではいくつかの曲でシンセやドラムマシーンを使っているかと思いますが、これはこれまでのKOOKSの曲ではほとんどなかったことですよね。シンセを使うことによる利点、また新発見したことがあれば教えてください。
うん、まさにあったよ。家で制作をし始めて、初めてそういう機器を使うようになったんだけど、ソングライティングのやり方がまったく変わったね。例えばAround Townって曲ではゴスペルのコーラスのサンプルを使って、そこにビートをプログラムしていって曲ができたんだ。遠回りすることなく、自分の頭からでてきたアイディアをそのまま形にできたんだよね。この2つを混ぜ合わせるのは楽しかったよ。バンドの生のサウンドとダンス・ヒップホップの要素の両方をいれることができたんだ。

-先行曲の「Down」を聴いた時は、急な方向転換でびっくりしましたが、当初KOOKSは色んなジャンルな新しい考えを取り入れていこうという理想を掲げていたと聞いています。その意味ではこの『LISTEN』は一つの到達点ではないかと思いましたが、いかがでしょうか。
ハハ!確かにそうだよね。だけどこれをひとつの到達点だと思うのは他にもたくさん理由があると思うよ。「Down」はアルバムの中でも最も他より際立ってるヒップホップソングで、この曲のもつ雰囲気といったらこれまで経験したことのないもので、ドラムとベースとボーカルだけで構成されてるんだよね。Lee Dorseyのサンプルを使ったのはかなり思い切った行為だったんだけど、曲に強い主張を持たせられたし、それと同時にとても自然な感じだと思ったよ。他にそういう曲ってあんまりないよ。僕達のアルバムをつくるうえでのポリシーはとにかくまったく新しくてユニークなものに挑戦するってことなんだ。もちろんそれとひどいサウンドにならないようにっていうのもね!

-このアルバムは全体を通して70年代のファンクやソウルミュージックの影響を感じました。雰囲気が統一されていながらも、これまでの作品と比べて音楽的な幅は広く、より深くなっていますね。ボーカルの面で新しく挑戦したことや工夫した点はありますか?
このアルバムには一貫して持っている雰囲気というのがあって、主にパーカッションと70年代の雰囲気をもったリヴァーブを使っているね。ボーカルに関してはできるだけ自然な感じを出そうとしたよ。だからほとんどのボーカルはまさに曲を作り終えた直後にファーストもしくはセカンドテイクで録ったものを使ってるんだ。

-KOOKSは『KONK』というスタジオの名前をアルバムタイトに持ってくるほど、音作りにこだわったアーティストだと思います。今回のアルバムで音作りにこだわった所があれば教えてください。
ハハ!そう君の言うとおりだよ。もうほんとこだわりすぎてると言っていいくらいだね。だけどそれがまたおかしいんだけど、このアルバムに関しては音へのこだわりについてはあまり考えすぎないようにしてたんだ。実際、僕のギターはほとんどAかDのコードしか使ってないし、コンピューターのプラグインも使ってるしね。だけどInfloは文字通りの天才ですべてをうまく作り上げてくれて、古くもありながら同時に新しくもあるサウンドに仕上げてくれたよ。

-10月に日本に来日されるようですね。「Around Town」はバックシンガーが歌うパートがあるような曲もありますが、このアルバムをどうライブで表現しようと考えているか教えてください。
東京と大阪のゴスペル合唱隊にライブに参加してもらわないといけないね!合唱隊と一緒にライブをやったのは数回しかないんだけど、それがやれない場合はキーボードでコーラスをサンプリングで使うことになるね。本物ではないけどそれでもかなりクールだよ。

-ルークのソングライティングは本当に素晴らしいと思います。参考にしているアーティストがいれば教えてください。
ありがとう!リスペクトしてるソングライターはたくさんいるけど、デーモン・アルバーンが1番だね。彼のアイディアの奇抜さとか曲にひねりを持たす才能が大好きなんだ。後ボン・イヴェールとリッキー・リーは大好きな作詞家だね。

-このアルバムは本当にグルーヴィで、聴いていると自然と体が動くような感じがします。このアルバムをリスナーにどのように「Listen」してほしいですか?
まさにそんな感じだよね!このアルバムはパーティーをする人達のために作ったんだ。

『Listen』

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