最終更新: 2020年5月16日


私たちがライヴやフェスを多人数で共有することが増えたように、最近は多人数から成るロック・バンドが次第にシーンの中心へと進出している。Cero、溺れたエビの検死報告書、吉田ヨウヘイgroup…多楽器で織りなすセッション感、わいわいと活気あふれるその様子。彼らのような音楽集団は、音楽体験の充実感を視覚/聴覚両方の面で満たしてくれる存在なのだ。

そして、恋する円盤と名付けられたこのバンドもそれらのバンドに名を連ねるべき存在だ。2011年結成の6人組。現体制になったのは昨年だというから、まだまだその名は知れていないかもしれない。しかし知名度など関係なく、その音を聴いた瞬間からリスナーの心を鷲掴みにするポップセンスは素晴らしい。耳の早いリスナーはもちろん、なんと元スーパーカーのいしわたり淳治も恋してしまった結果、「出れんの!?サマソニ!?」でいしわたり淳治賞を受賞するなど、評価もばっちりだ。

そんな彼らの特徴的な点は、男女ツイン・ボーカルであることに加え、グロッケンを操るメンバーもいるということ。今回リリースしたバンド初のミニ・アルバム「PASTEL」においては1曲目「テイクディスワルツ」でのフレーズが特徴的であろうか。グロッケンならではの甘酸っぱいきらめきは青春の切なさを感じさせていて、どこかフジファブリック「記念写真」にも通ずるところがある。「春の嵐」は、「夜明けまえ」同様ライヴ会場で発売されていたデモ音源の曲でもあり、ライヴでも盛り上がりを見せていたキラーチューンだ。リヴァーブのかかった重量感あるギターと、その上をサーフするように波打つコーラス。誰でも歌える爽快感が非常に気持ち良い。

音楽に対する姿勢の表れなのだろうか、恋する円盤には楽曲を包み込むオーラとか、勢いをものすごく感じることができる。今作の楽曲たちがライヴにおいて、どのように体験できるのか非常に楽しみだ。まずは、アーティスト写真に写った彼らの笑顔や無邪気さがそのままパッケージされたこの1枚で、聴覚も視覚も満たされていたい。

【Writer】ŠŠŒ梶原綾乃(@tokyo_ballerina)

2011年春「バンドやりたい」と思い立った大塚真太朗が、隣の部屋で太鼓をたたいていた弟を誘い結成、という公式サイトのバイオグラフィを読んで気づく、もしやこのバンド高校生と大学生と社会人が混ざっているのかな?と思ったら、案の定、その通りだった。

若々しくも少しだけシャレたサウンドスケープに、爽やかに歌う男女のダブルボーカル、きっとしゃにむに歌っているであろうその姿が思い浮かんでしまう。手垢のついた言葉になってしまうが、「若々しさ」がこのバンドを今現在突き動かす核であり、しかもそれが、化粧を施された「若さ」ではなく、天然でノーメイクな素顔の「若さ」としてあるのが心地よさを加速させてくれる。

1曲目「テイクディスワルツ」の軽やかなエレキとキュートなビブラフォンの絡み、その上から被さっていくギターサウンドのウネリ。この印象的なイントロに象徴されるように彼らは、The Pains of Being Pure at HeartやThe PASTELSなどの海外インディポップ・ミュージックのゆるいメロディとリズム感の心地よさに加え、国内のロックバンドからの押しの強いギターサウンドをブレンド、事も無げに自然と混じあわせる、そのさじ加減の絶妙さに惹かれる。

イギリスのインディポップバンドであるVeronica Fallsの「Teenage」をカバーした動画をネットに公開するなど、彼らは自らと同年代から少し上の世代によって生み出された2010年代インディポップへの憧れを持ったバンドであり、同時に日本のロックバンドのサウンドとも2つ合わせて見聞してきたであろう彼らには、このサウンドの交じり合いはナチュラルそのものなのだろう。

【Writer】草野 虹(@grassrainbow)
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