全世界的に作られたファレル・ウィリアムス「Happy」のご当地verは、日本も例外でなく、まさか恋するフォーチュンクッキー化するなんて思いもよらなかった(筆者の勤務先でも一大プロジェクトとしてムービーを作ることになり、実際に踊っちゃった)。またディアンジェロが昨年末に突如14年ぶりのアルバム発表でカムバックを果たし、現代ブラックミュージックの形成と充実がいよいよ目に見える形となって迎えた2015年。入江陽の2ndとなる本作はそんな潮流の、日本における旗手になると名乗りを上げるかのような作品だ。

ソウルフルでありながら線の細く甲高い彼の声は、“ハゲ”、“デブ”、“クソガキ”といった毒を交えたシュールナンセンスな歌詞をのせて奇妙に踊り狂う。さらに今回プロデューサーに大谷能生を迎えコラージュ的にビート・サウンドを再構築することにより崩壊寸前まで緊張感を高めているが、入江の歌がそれを力でねじ伏せる構図で、あくまで“ニッポンの歌謡曲”であることをギリギリ成立させている。大谷にとって打てば響く入江の存在は、奇しくも昨年リユニオンを果たした盟友菊地成孔におけるUAの構図と共通する、格好の素材を見つけたという様子だ。表題曲「仕事」でのラップやピアノ独唱の「JERA」で見せるサックスでの大谷のパフォーマンスはさながら入江を煽っているようにも聴こえる。そして入江版井上陽水「リバーサイドホテル」ともいえるだろう最終曲「たぶん山梨」だ。繰り返される“山梨”の響きがゲシュタルト崩壊を起こす中でクラクラのまま終わりを迎える。

OMSB(SIMI LAB)、池田智子(Shiggy Jr.)、別所和洋(Yasei Collective) といった様々なフィールドから集められた客演陣は入江×大谷のミニマルな構図にスウィートな風を吹かせており、一層本作を窓口の広いぬかりのないものにしている。ネオソウル・ヒップホップ・歌謡曲と様々な要素はあれど“ヤバい、“エグい”という感想しか出てこなくなるような日本ブラックミュージックの最新系にして傑作である。

【Writer】峯大貴(@mine_cism)

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