このバンド、本当にどんどん良くなっていく。前作のパワフルな作風とは対照的になっていることは、先行シングル曲の「Burning For No One」で決定的だった。クリーンな音で構成された哀愁たっぷりのキラキラポップ。“誰かのために燃えているんじゃない”というタイトル、歌詞はストイックだ。漫画「あしたのジョー」で力石徹戦後、自分が燃え尽きることに向い、闘い続け、真っ白な灰になった矢吹 丈のストイックな生き様にも重なる。アルバムではこの次に「My Wrong」で加速して、泣きメロがド直球なバラード「An Ivory Hand」に突入。至上のポップの世界に導いてくれて、なかなか抜けさせてくれない。

本人たちは今作を“『Men’s Needs Women’s Whatever』以来のポップ(にフォーカスした)アルバム”と公言し、”ポップ”であることを強調している。これまでも、作風は違うにせよ、CRIBSのアルバムのテーマは一貫して”ポップ”だった。しかも、時代に合せて量産され、消費されていくポップミュージックではなく、心に残ったらなかなか消えない、”普遍的なポップ”を様々なタッチで作り上げてきた。最高のパートナーたちと共に。彼らは自分たちの理想を追い求め、毎度プロデューサーを変えている。

ほとんどセルフプロデュースだったというデビュー作『THE CRIBS』。演奏も録音もローファイでUKローカルの域を脱してなかった。でもここが原点。メイン・ストリームの音で見事にライブの迫力をまるごと音源で表現させた2枚目『The New Fellas』。プロデューサーは特異なニューウェイヴ・ポップの名手エドウィン・コリンズ(ex-ORANGE JUICE)だ。機材によじ登ったり、流血したり、ハードなライブを繰り返したこの頃、変化を求めて選んだのが、FRANZ FERDINALD、Alex Kapranosだった。3枚目『Men’s Needs Woman’s Whatever』はフランツ流の音作りとグルーヴが効果的に反映され、洗練された作品としてセールス的にも成功し、バンドの立ち位置を変える転機にもなった。4枚目『Ignore The Ignorant』はジョニー・マーとプロデューサーのニック・ローネイと煮詰めた、叙情派ギター・ポップアルバムだ。ベテランたちとの箔も音にも現れていた。前作『In the Belly of the Brazen Bull』はスティーブ・アルビニとデイブ・フリッドマンというUSインディの2大巨頭がプロデュース。そりゃそうだよね、ってくらいに爆音オルタナが全開しながらも、しっかりポップに着地したオルタナティヴ・ポップアルバムだった。

そして今作プロデューサー、リック・オケイセック。The Carsで80年代にパワーポップの源流を作り、WEEZERのブルーアルバムのプロデュースで90年代に金字塔を打った。特にこの人は音に”魔法”をかける手腕が非常に優れており、今作でもすごく有効に活かされている。CRIBS特有のちょっと汗臭いようなパワフルな演奏に、リックの”魔法”処理が施されたことで、オーデコロンの甘い香りが漂うような爽やかな”ポップ”に仕上がっている。今作を「ポップだよ」って言うのも無理はない。

「アンダーグラウンドな音を取り入れつつ、ビートルズのようなポップな曲をつくる」(『THE CRIBS』ライナーノーツより抜粋)CRIBSはデビュー当時からの姿勢がブレていない。タッチは変わるが、すべての作品が成長の過程として繋がっていて、むしろアーティストとしての表現力が強力になっている。本作『For All My Sisters』が改めて思い知る決定打だった。

【Writer】ŠŠŒTJ(@indierockrepo)
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