最終更新: 2020年5月16日
言葉自体が意味を持つのではなく、言葉を集めて並べて、その無作為に積もった中にふと意味が迷い込んだような気持ちになる。そんな曖昧な言葉の戯れこそを詩の良さとすれば、今回取り上げる女の子2人によるユニット・その他の短編ズによる『13』はまさに、落ち葉みたいな言葉を集めて作られたような、不思議な匂いと広がりを持つ詩をたくさん持った作品だ。
彼女たちの音楽を何と言えばいいんだろう。テニスコーツ的な、アコースティックで素朴で超越的な「歌もの」としての要素もあるにはある。その一方で、チープでインダストリアルでいかついリズムボックスの上をラップとも言えそうで言えないようなリズムで言葉を淡々と転がしていくトラックも多数含まれている。曽我部恵一のレーベルからリリースされたコンピにもライブテイクが収録されていた「B.B.B(ビーボーイバラード)」は、その両面が自然にかつ不思議な歪さで収まったキラートラックである。
そんな、時に淡々とつぶやかれ時にメロディを伴って流れてくる言葉の数々は、難しい言葉も複雑な光景も描いてはいない。ただただ日々の中見かけた光景やその感想やふと気付いた風のことがらが、しかし冷然とした視線の下、混沌とした量と種類と配置で整然と並べられている。一人ないしは二人の女の子の声で綴られていくそれらの言葉は相当に聞き取りやすく、その言葉が持つ・本来持たなさそうな不思議な響きや印象を聴く人に否応無しに与える。
実際、このアルバムを聴いていると、日常とは実は深い森のようでいて、その中へどこまでも迷い込んでいくような気持ちになる。少ない音数のサウンドや歌、滑らかな日本語の侘び寂びが、何気ない日常にどろっと血を流させる。その乾いたゆるふわ少女地獄の向こうに、何かしら意味のような、そうでないような、何らかのフォルムが見えてくる気がする。それこそ「詩」なのだとここで断定して何かを狭めてしまうのは、彼女たちの望むところではないんだろう。収録曲「プランクエクステンド」の歌詞の一節を、その残念な断定めいた形で以下に引用してこの文章は終わる。
「混乱させてほしいよ あの秘密について知りたいの
何でもわかりやすすぎて 誰でも優しすぎるから」