最終更新: 2020年12月6日


デビュー10周年を迎えてもまだまだ攻めの姿勢を貫くTHE NOVEMBERS。

今回のインタビューでは今までの作品を振り返りながら、フロントマンである小林祐介の音楽遍歴やミュージシャン人生に迫った。

アーティスト:小林祐介(Vo.) インタビュアー:yabori

-デビュー10周年でベストアルバムを出すアーティストは多いと思うのですが、THE NOVEMBERSはベストではなく、初の映像作品を出すとのことですが、どうしてこのタイミングで映像作品を出そうと思ったのでしょうか。
小林:10周年に向けてっていうのは全然関係なくて。STUDIO COASTでライブをやるにあたって自分達なりにチャレンジをしたと言うか、広いステージで演奏してる自分たちを美しく表現できたらいいなと思っていたライブだったので、せっかくそういう気持ちで望んでいるわけだから映像に残したいと思って。もちろんそれが納得のいかない表現だったら人に見せるものではないと思ったんですが、自分達でも「これはいろんな人に見てもらいたい」と思えたライブだったり、演出だったりしたので、出してみようかなと。

-ライブが終わってから出そうと思ったという事でしょうか?
一応撮っておいて、うまく行けば出せたらいいなって思ってたんですけど。ただ最初は、ライブが終わってみないとわかんないなっていう段階でしたね。

-今年でTHE NOVEMBERS結成10周年だそうですね。結成は2005年とのことですが、デビューした年はどのような音楽を聴いていましたか?
バンドの結成は2005年3月で19歳でしたね。その頃、熱心に聴いてたのは日本人だとART-SCHOOL。17歳くらいで出会ってずっと好きなバンドで。その頃のTHE NOVEMBERSは、何の衒いもなくART-SCHOOLみたいな曲をつくりたいなって話をしてました。海外だとニューウェーブとかポストパンク、ネオアコなどをもう少し深く聴き始めた時期がその頃で。The CureやThe Smiths、The La’s、XTC、その辺の80年代のバンドも好きだったんですけど、もうちょっと深くSiouxsie & the Bansheesとかも聴き始めて。どちらかというと日本人の新しい人たちを探そうとはしていなくて、海外の音楽を聴き漁っていた時期かな。18歳くらいに家を出てからいろいろと掘り下げるようになりましたね。

-なぜ掘り下げようと思ったんでしょう?
それまで、地元にあるCD屋さんがあまり好きじゃなかったり、あまり行かなかったりしてて。独り暮らしをするようになってから、知らない街にあるCD屋さんに行くのが楽しくて。あとは新しい出会いがあっていろんな音楽を教えてもらったりしてた時期だったから聴くものが増えていった感じですね。

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-なるほど。そういう音楽は今、どういう部分でTHE NOVEMBERSと結びついてると思いますか?
聴いてる音楽は全部、いい音楽も悪い音楽も影響を受けてると思うんですけど。その時期の影響について言えば、音楽をもっと知りたいとか、知らないことを知った時のワクワク感とか、まだ聴いたことがないけどどんな感じなのかなって想像する楽しさですね。音楽をより深く、たくさん聴いたり考えたりする楽しみ方に繋がってるのかなって思います。音楽にまつわる楽しみ方を知った時期と言うか。

-初期のTHE NOVEMBERSの歌詞は小林さんが感じた事を歌詞にしているような印象があります。この頃はどのような考えで歌詞を書いていたのでしょうか。
もう思い出せないことが多いけど、歌詞で何かを伝えるとか、聴いてる人に何かを思わせるということに頓着が無かった。自分でも、意味があるのか無いのかっていうことを考えていなかった時期で。世の中に訴えたいこととか殆どなくて、だけど口から出したい言葉があったりして、なんとなく常にイライラしてましたね(笑)。若者にありがちな、凄く鬱屈としていたような。その時なりに真剣だったので、その頃の作品は今振り返っても好きな作品ばかりですけど、何も考えないまま作っていたような気がします。

-何に対してイライラしてたんですか?
これはすごく個人的なことなんですけど、ただの逆恨みみたいな感じです。社会とは何かっていうことを知るほど社会経験もなかったし、社会を見渡すほどの視野もなかったので、今日の自分が何を感じて、何に喜んだり悲しんだりするのかっていうのがダイレクトに行動に出てしまって忙しかった時期と言うか。今思うと、何であんなだったのか分からない時期ってあるじゃないですか。その時なりに真剣だったけど、今思うとおかしいよなっていう。自分なりにずっと、こういうことが美しいと思うとか、素敵だと思うっていうのを意識はしていて。だけどそうならないことへの憤りだったり、恨んでしまったり憎んでしまったりすることが世の中にあって、それに翻弄されていたような部分もありました。今も美しいものが好きだなとか、楽しいことって素敵だなっていう思いは変わらないけど、昔みたいに、その辺にあるものをわざわざ憎んであげたり、いけすかない人たちに対してわざわざ悪態ついたりするようなお人好しではなくなりましたね。わざわざ憎んであげるほど他人に優しいわけでもないし、悪態つくほど暇でもないし。大人になりました(笑)だから、許さないものはきちんと許さないし、軽蔑するものは徹底的に軽蔑するようにしてます。

-10年を振り返って小林さん自身の音楽性もしくは、聴き方が変わったなと思った瞬間はありましたか?
Fiona Appleがカバーした、The Beatlesの「ACROSS THE UNIVERS」を『GIFT』の作曲をしている時にちょうど聴いてて、美しい音楽を作ってみたいなって強く思ったきっかけのひとつになった様な気がします。そのサビの歌詞を『GIFT』の一曲目「Moire」の最後に歌ってて。ものすごく思い入れの深いバンドや影響を受けたアルバムはたくさんあるですけど、何かをきっかけに次のドアに行けたものとして、思い出せるのはその曲かな。

-そうなんですね。この曲は意外でした。ではバンドとして、どのタイミングが転機になりましたか?
THE NOVEMBERSとしては『To(melt into)』と『(Two) into holy』、その2枚の作品は、ひとつの転機でしたね。気分的にはファーストアルバムというか、0枚目っていうつもりで作ってて。

-このタイミングでどうして、0枚目を作ろうと思ったんですか?
それまでに作ったものにも自信はあったし好きな作品ですけど、それまでの自分はぼーっとしてたんで。ちゃんと自分は何に価値を置いて何を選ぼうか、っていうのを意識し出したスタートが2011年だったんですね。そこで作品を作るってなった時に、一旦はこれがファーストアルバムかなっていう気がしたんですよね。だけど、たぶんファーストアルバムってまだ作れないなって思って。要は、バンド結成したときのデモと言うと少し違うんですけど、自分はこれに価値を置くんだっていう一つの方向や答えを見つかった後で作品を出すんだったらそれがファーストになるなと思ったので。どちらかというと、これから何かを選ばなきゃいけないスタートの瞬間に作品を作った感じだったんで、だから1枚目の一歩手前の出来事かなっていう意味で『To(melt into)』が0枚目ですね。

-なるほど。じゃあ実質1枚目ってどれだと思いますか?
独立したっていうのも含めて『zeitgeist』ですね、アルバムで言うと。その間に出した『GIFT』と『Fourth wall』もお気に入りだけど、それはEPなので。

-あの2枚のEPも、ものすごく良かったです。
それは嬉しいです。それこそCharaと出会ったきっかけの作品が『GIFT』で。僕がCharaに手紙を書いて『GIFT』を送ったら、聴いてくれて。そうしたらライブを見に来てくれて、今に至るんです。もともと昔からCharaに影響を受けた曲やCharaが歌ったら素敵だなと思って曲を作ってたんですよ。そのうちの1曲が『GIFT』の「ウトムヌカラ」で、それも素直に手紙に書いて。しかもそれ、ライブでCharaと一緒に歌ったんですよ、もの凄く嬉しかったです。

-そうだったんですか。僕がTHE NOVEMBERSにのめり込んだ時期っていうのもの『GIFT』の時期なんですよ。
あの作品自体が、自分の中でポップなものやキャッチーなものを意識してたので、届く場所が広がったんだと思います。

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