最終更新: 2021年5月2日

アーティスト:百々和宏(Vo.&Gt.) インタビュアー:yabori 撮影:MASAHIRO ARITA

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-僕はモーサムってPrimal Screamのようだと常々思っているんですが、彼らを意識している事はありますか?
百々:うんうん、よく言われますね。彼らを参考にしている訳じゃないんですけど、貪欲に何でもやる事が似ているんでしょうね。彼らもベタなロックン・ロールをその時の嗅覚で味付けをして、サウンドを変えていってるんだと思うんですけど、根っこの部分は全く変わらないんですよね。

-彼らに共感する部分はありますか?
ありますね。どのアルバムを聴いても、必ずかっこいいと思う曲が入ってるし。

-先にPrimal Screamの話をしましたが、今回の地獄盤に入ってる「カルチャー」という曲は『Screamadelica』を思わせるようなサウンドだと思いました。この曲はどのようにしてできたのでしょうか。
そっか、そっか。そう聴こえるものなんですね。あの曲は武井が作曲で、まずデモを持って来たんですよ。これをどういう風に仕上げたいの?って本人に聞いてみたら、“特に・・・”みたいな事を言っていたんで、これはボツラインだなってその時、思ったんですけど(笑)。作曲者が明確なゴール地点とビジョンを提示しないと、なかなか曲としてまとまらないんで。自分としても何を歌って良いか分からないって所もあって。じゃあいったん寝かしておこうってことで、ある時に勇がエレドラ(電子ドラム)を叩いたら、かっこいいビートができてきて。レコーディングに入って作品の全体像が見えた後に、この曲は何もしなくても歌だけいびつなやつをのっけたら、完成じゃないかなってピンきて。スタジオで10分くらいで歌詞を付けて、10分くらいで歌入れして。

-歌詞がヒップホップ調ですよね。
そうですね、モーサム流のというか(笑)。それをサウンドにのっけたら、他のメンバーもこれ良いねって言ってくれて。それで「カルチャー」は完成したんですよ。それって不思議な仕上がり方というか、最初にゴールがなかったからこそ出来たんでしょうね。作品のカラーもハッキリ見えた後だったから、こういう曲を入れても良いかもねって思えたのかもしれないっていうのもあるし。時間をかけてない割に、アルバムの中でも意外に重要なポジションを占める曲になったっていう。

-この曲はすぐにできた曲とのことですが、逆に時間をかけた曲はありましたか?
全体的に地獄盤は時間をかけずに作った曲の方が多いですね。せーの、で作った曲が多いんで。そういう曲は1~2テイクくらいでOKかどうかを決めるんですよ。録ったらあれこれ言わずに悩まないので、その辺は早いんですよね。一方で天国盤の方には、シーケンスが入ったダンスものが多いので。サイケあり、ポップな曲もあり、モーサムのバラエティ豊かさは天国盤の方に入っている感じですね。

-歌詞もすぐにできたのでしょうか?「メタルボーイ」の歌詞は振りきれてると思うんですが(笑)。
「メタルボーイ」だけは去年のライブでも何回かやっていたんですよ。この曲はとにかく幼稚な曲にしたくて。僕が中学生くらいの時に洋楽を聴き始めた時に、メタルが流行ってまして。雑誌のBURRN!が創刊して1~2年くらいの時で、中学1年の時にMotley Crueを聴いていて、中学2年になるとMETALLICAの『Master of Puppets』が出てきた時期でしたね。中学3年の時にGUNS N’ ROSESが出てきたっていう、ハードロックが一番盛り上がっていた時で。「メタルボーイ」はその当時の匂いがぷんぷんする曲で(笑)。あの頃のメタルバンドって何を歌っているんだろうって、辞書でひいて調べてみたんですけど、ろくでもないこと歌ってるんですよ(笑)。あ、これでいいんだよなロックってと思えたんですよね。えらそうにステージから人助けの曲なんかを歌わなくても良いんだなって。

-その頃に思った気持ちがこの曲に出てるってことですか(笑)?
遊びの要素が大きい曲だったんで、これにたいそうな歌詞を付けてもって思ったんでアホになりきりましたね(笑)。

-「トーキョーロスト」の歌詞は、百々さんから見える東京観を歌詞にしていると思います。この歌詞の中で、“ロストボーイ”と“ロストガール”が出て来ますが、どうして彼らの事を歌おうと思ったのでしょうか。
東京ってタイトルを付けたので、東京感がでちゃいますけど、別に日本でも良いんですよね。ニッポンロストでも良かったんですけど。例えば電車に乗ってると、なんでみんなこんなにつまらなそうにしているんだろうって思うんですよね。僕も傍からみると、そう見えるのかもしれないけど。楽しくないニュースも多いし、閉そく感というか。未来がないなって感じる感覚がこの2~3年、強いじゃないですか。「トーキョーロスト」ができた時にヒリヒリした感覚があったんで、メッセージというほどのものではないけど、なんか投げつけたいなって思って。

-投げつけたいというのは誰に対してですか?
CDを聴いたリスナーにですね。脳天をかち割りたいなって気分で。その気持ちはこの曲に一番入ってるかな。

-特に“ロストボーイ”と“ロストガール”に焦点を当てたのはどうしてでしょうか。
うーん・・・。バンドやってる一つの理由は、自分たちの出す音楽でリスナーを覚醒させたいって気分があるんですよね。ライブ観にくるお客さんは特にそうなんですけど。叫んで帰って欲しいし、全部ここで吐き出させたいなって思うんですよ。こういう曲をやるので、みなさんサビに来たら右手を挙げてジャンプしてくださいみたいなのが大嫌いなので(笑)。モーサムをやってる時って、好き勝手に騒いで欲しいって思ってやってるんですよね。聴く人に“なんじゃこりゃ”って思わせるような感じで。お前らの私生活、つまんないんだろって気持ちが“ロストボーイ”と“ロストガール”になっているのかもしれないですね。

-思ったものを吐き出すというのは、百々さんがモーサムで歌詞を書く時とリンクする部分はありますか?
もちろんつながっているのもあるし、若いころに聴いて衝撃を受けたパンクからきているのかな。誰も優しい言葉なんかかけてないし、メッセージ性が一切ないような音楽を聴いても、勝手に自分がこれは凄いって覚醒して、これがあれば生きていけるっていう武器をもらったような感覚があったんですよね。その感覚を感じてくれたらなって思いで、やっている所はあります。

-地獄盤のタイトル『Rise from HELL』なんですが、これは地獄から這い上がるという意味でしょうか。タイトルについて詳しく教えてください。
イメージはそうですね、サウンドも地獄みたいだし。リスナーを地獄に突き落としたいと思いながら、そこから這い上がってこいよっていう気持ちがあって。そこから夏には天国に連れて行こうかなっていう(笑)。

-今回のアルバムはどのような人に聴いて欲しいと思いますか?
バンド側からこういう人にというのはないんですけど。メインストリームのはぐれ者バンドなんで、学校や世の中についていけずに隅っこの方でウダウダしてる若い子がいたら、このCDを渡したいですね。これを聴いてみろって(笑)。

-東京にいる“ロストボーイ”と“ロストガール”にも聴いてほしいと思いますか?
うん、そのまま生きていけっていう思いがありますね。メインストリートを歩かなくても楽しい事あるぜって。ウダウダしている若い子はバンドやれば良いのにと思うんですよ。生活の足しになるかは分からないけど、ステージに立ったらひどい事をやればやるだけ喜ばれるし(笑)。ギターを壊したら、それだけでもお客さん喜びますしね(笑)。こんな場所は他にないじゃないですか。だからはぐれ者はみんな、バンドやれば良いのにって思うんですよね。

【interview前半】MO’SOME TONEBENDERの百々が語る、バンドとしての美学

『Rise from HELL』