今もシーンにいるという気はしなくて、強いて言うなら良い音楽やっているんだけどわかりやすいシーンに属していない人たちの筆頭みたいな。どこにも属したくはないのかな。

アーティスト:橋本薫(Vo/Gt) インタビュアー:まりりん

-バンド結成のいきさつを教えてください。
橋本:僕が元となる別のバンドをやっていて、3年くらい前に僕以外のメンバーが全員辞めちゃったんですよ。そこで今のドラムのアベくん(アベヨウスケ)が入ってくれて。で、新たなメンバーでベースとギターもいたんですけど、それも2年前に辞めちゃって今のメンバーが揃ったって感じです。それまでそれぞれ掛け持ちでやっていたから、どうしてもサポートみたいになっていて。ちょうど今のメンバーが集まった時に、(メンバー全員が)うちのバンドしかやってなかったんで、名前も変えて自分のバンドって思ってもらおうっていうのが始まりです。

-昨年10月にHelsinki Ramadan Clubから、Helsinki Lambda Clubに改名されましたが、バンド名の由来について教えてください。
最初に何とかクラブにしたいよねって話が出て、どうせならありそうもないクラブ、ラマダンって断食なんで「断食クラブ」ってないよね、って事で先にRamadan Clubができて。そこにさらにラマダンと関係のないところを結びつけようって事で、語感的にもヘルシンキがいいんじゃないってなって、Helsinki Ramadan Clubが出来たんです。そこからLambda Clubに変わったのは、ラマダンよりもラムダの方が言葉としての響きが良いなと思って、今のタイミングならまだ変えてもそんなに響かないかなと。ガラッと変えるよりも、改名しました!って言って全然変わってないというギャグっぽいのにしたかったのでラムダを無理矢理入れました(笑)。ラムダは数式とかのラムダ係数ともうひとつ、宇宙定数という意味があって、アインシュタインが宇宙の理論を計算する時に、宇宙の広がりを抑える力の宇宙定数を無理くり入れてたんですけど、それが数式として間違ってて。それを作ったことが「生涯最大の過ち」と言ってて面白いなぁと思って・・・。特に深い意味はないです。今後より活躍しやすくするためにっていう感じですね。

-UK.PROJECTのオーディション優勝からもうすぐ1年ですが、環境や周囲の反応は変わりましたか?
ガラッと変わった事は未だにないですね。最初はオーディションで優勝したってとこから引っかかっていく人が多かったと思うんですけど、今は楽曲ありきで食いついてくれる人がいて広がっていってるなぁというイメージのほうが強くなっています。少しづつ体感としての知名度は広まってきているのかなという感覚です。

-大型フェスへの出演や、メディアからも取り上げられる事が増えましたが、現在、メンバーとの関係はどうですか?
うちのメンバーはほんとに何も考えていないんで、全然悪くなったりはしないですね。僕は色々考えたりしますけど、あいつらはたぶん迷いなくどんどんやっていこうという感じで。雰囲気はいいんじゃないかと思います。最初に入ってきたアベくんもどんどん積極性が増してると思うんで、関係性は良くなる一方かなって気はしてます。

-前作『ヘルシンキラムダクラブのお通し』は8 cm短冊CDでリリースされていますが、どうしてこの形式でリリースしようと思ったのでしょうか?
近年オーディションで優勝してデビューするバンドが多くて、その優等生コースが面白くないなと思って。一発目からいきなり変化球で面白いことがしたくて。今時8cmとか出さないじゃないですか。オーディションで優勝したんだみたいな目で見られるのが嫌だったというのもあるんですけど、単純に面白いことがしたくて8cmにしました。

-そこから1stミニアルバムの『olutta』というアルバムをリリースされましたが、タイトルに込めた意味について教えてください。
基本的にタイトルとか深く考えずに決めちゃうんですけど、前作がお通しってきたらビールだよねという発想になって。ただビールにしてもダサいだけなんで、たまたまフィンランド語でoluttaがビールって知って、言葉の響きもいいし知らない人はどういう意味なんだろうって引っかかる部分もあっていいかなと思って、すぐ決めちゃいました。

-前作からたった3ヶ月で、新作をリリースしていますが、前作とはここが違うというのがあれば教えてください。
前作が初めてのちゃんとしたレコーディングだったんで、右も左もわからない状態でなんとか現状に追いついて録り終えるって感じだったんですけど、エンジニアさんがすごくいい人だったんで打ち解けてた部分があって今回もまた同じ人にお願いしました。その時のチームワークというかリラックスしてたっていうのが大きかったと思うし。レコーディングの段取りがちょっとずつ見えてきて、色々試したいことも試せたので、前よりは音楽的な意味でも広がりが持てたかなと。

-“ここにおいでよ”という歌詞が「ユアンと踊れ」と「チョコレィト」の2曲で使われていますね。これには何か共通のイメージがあるのでしょうか。
“ここにおいでよ”って歌詞がユアンだったら“なにもないけど”だったり、チョコレィトだったら“どこにいけるかわからないけど”だったり、こういう状況だけどちょっと上を向こうって気持ちがあるんですよ。だからそういう事もあるけどこっちにおいでみたいな歌詞をつけたがるのかなと思いました。ネガティブのまま終わらせたら歌にする意味がないと思うんですよね。

-歌詞から劣等感や自分への怒りのようなものを感じるのですが、それらが創作のモチベーションになっているのでしょうか?またどのようなときに曲を作るのでしょうか?
明るい気分よりは落ち込んでる気分の時の方が原動力にはなりますね。それを曲にして気持ちを整理したり、落ちた気分を消化したりというのがあるので、そういう気持ちの方が結びつきやすいですね。音楽聴いて「あー楽しい!」っていうよりはもやもやみたいなのをはき出したい、その手段として音楽をやっているという感覚なので、自然とそういう気持ちがこもることが多くなります。

-実体験をもとに歌詞を書くことはありますか?
前作まではそういうのが多かったんですけど、距離の近い歌詞はだいぶやりきった感はあります。今はまた違うアプローチで第三者的な立場からの歌詞は実験的に試そうかなと思っています。

-ソングライティング(曲作り)は全て橋本さん一人でやっているのでしょうか?
僕ひとりです。でも今はデモや曲の構成とかも全部作ってリードギターまでがっつり入れちゃう時もあるし、入れないときは歌とギターだけで投げて、後はメンバーの意見を聞きながら、民主主義的に曲の詰めはやってる気がします。リズム隊に対しては信頼しているんで、やってくれたことに言うことはないんですけど、自分もギターを弾いてる身なんでリードギターに対してはぶつかったりしますね。意見は聞くんですけど、「全然だめ」って言って何度もやり直しってパターンが多いです。

-「シンセミア」は踊ってばかりの国からの影響が見られ、他の曲の歌詞にはThe ClashやAC/DCが歌詞に出てきます。どのような音楽から影響を受けていますか?
このバンドに関して言えば2000年代のロックンロールリヴァイヴァルはもちろんあると思うし、そこをフォーマットにしている部分もあります。日本語が面白いなと思って聴いていたのはくるりやフジファブリックとか、andymoriかな。あとはさっき言った踊ってばかりの国、ゆらゆら帝国とか、日本語がすごくひっかかって入るバンドからは影響を受けているのかなと思いますね。ビートルズもすごく好きなんですけど、奥が深すぎてなかなか影響として出てきづらいっていうのもあって。あんまりガレージっぽくはないし、その時々でやりたいことをやっているんですけど、一番わかりやすく影響されているのはロックンロールリヴァイヴァルって感じです。

-BELONGには、“Roots Rock Media”というコンセプトがあります。それにちなんでHelsinki Lambda Clubのルーツを伺いたいのですが、バンドのルーツに当たるアルバム(国内・海外を問わず)を3枚教えてください。またそれぞれのアルバムからどのような影響があるのか教えてください。
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Pavement『Slanted and Enchanted』
ローファイ感というか、歌がヘロヘロなんですけどその分必死さが伝わるというか、そういう部分にグッとくるとこがあって。僕も歌下手なんですごい共感しつつ(笑)、ぶっきらぼうなんだけどどことなく優しい感じがあって。もちろんメロディもすごい良いので、憧れてるし要素として取り入れています。

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andymori『andymori』
感情が詰め込まれているというか、一見ガレージっぽいんだけど、壮平さんが通ってきているフォークや歌謡曲の人懐っこさが出てるんで、歌として聴きやすくて日本人的にグッとくるところがあるように思います。でもそういうフォークっぽい歌メロにそぐわないような歌詞が入っているのが気持ちいい違和感で。そういう無国籍感やシンプルなのに新しい感じが自分でもしっくりきますね。

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くるり『アンテナ』
ジャンルに囚われずやりたいことをやるという姿勢に憧れるし、僕たちもそういうスタンスで「自分たちはこうだ」って決めるより、広くやりたいことをやっているという感じなので。キャッチーさやメロディはどれも大事にしていると思うので、そういう意味でくるりはルーツのでかい核になっているのかなと思います。

-以前、バンドのプロフィールに“邦ロック界のダイオウグソクムシ”と書いてありましたが、今はどのようなポジションを目指していますか?
ありましたね(笑)。去年ダイオウグソクムシが話題になったじゃないですか。ダイオウグソクムシって全然餌食わないんですよ。何年も食べてないみたいな。単純に受け狙いでひっかかりになるかなって気持ちでダイオウグソクムシって書きました。今は・・・どこだろう(笑)。ゆくゆくはロールモデルとしてはくるりみたいに、ノンジャンルで音楽をやりたいですね。本当うちらは隙間産業だと思うんで(笑)。今もシーンにいるという気はしなくて、強いて言うなら良い音楽やっているんだけどわかりやすいシーンに属していない人たちの筆頭みたいな。どこにも属したくはないのかな。ジャンルに括られるよりは縦横無尽に合間を縫って色んなとこに出られるような・・・。ジャンルでは括りにくいけど、何かのシーンになりたいかなと思います。

-8cmシングルのリリースを始め、Helsinki Lambda Clubはあえて時代に逆行しようとしている所があるように思います。どうして最新のものを目指すのではなく、昔懐かしいものに目を向けようとするのでしょうか?
歌詞に出てくるようなロックへのロマンっていうのは個人的にあります。昔に固執するっていうよりはロマンを感じつつも、今風にってわけじゃないですけど、今の自分たちのやり方でまた違う音楽をやるっていう感覚ですかね。回顧主義や今を否定するのではなく、そういうものに憧れつつ今の自分たちがあるぐらいの感覚です。

-最後に『olutta』をどのような人に聴いてほしいと思いますか?
聴いてもらえれば誰でも嬉しいですけど、最近の日本のロックとかに対してあんまり面白くないよねと思ってる人や、CDを買ったりしてもあんまりグッとくる感覚を味わってない人が聴いてくれてひっかかってくれたら嬉しいです。聴いてグッとくるという感覚がしっくりくるアルバムだと思うので、そういうときめきに会ってない人に是非聴いてもらいたいと思います。

『olutta』

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