爽やかさ。

SHERBETSの近作『FREE』、『STRIPE PANTHER』が歴代の浅井健一作品でもとりわけシリアスでダークで鋭い作品で、その後のソロでも『NANCY』という同様に暗く研ぎすまされたトーンの作品を出していて、これはSHERBETSの新作もさらにその方向を深めていくのか、と思ってたところにアルバム冒頭の「ひょっとして」を聴いて、そのSHERBETS的なダークさもありつつの力強くポップな爽やかさに驚かされた。

その1曲目の影響も大きいだろうが、トータルで観ても今作『きれいな血』は随所にポップで楽しい感じがちりばめられたアルバムだ。それは近作的な、ひとつのことを突き詰める、というよりかは、いろんなことをしようとバンドが試みていることが大きいのかもしれない。特に顕著なのが、中盤。今作中最も明るくポップな「ミツバチ」では、浅井に加えてキーボードの福士とドラムの外村が作曲に、外村が作詞までしている。浅井が自分作以外の歌詞を歌うのは相当珍しいように思うが、そのあたりに今作の楽しさが顕著に現れている。

他にも「She」は福士作詞作曲ボーカルの壮大なピアノバラードで、まずこれまでの浅井健一作品には無かったような一曲。福士といえばキーボード・コーラス等でSHERBETSとそれ以外でも浅井と関わりの深いプレイヤーだが、今作では他にも「ミツバチ」の雄大なコーラスや「Now,I’m Here」の囁くようなけだるいボーカルなど、これまでになく彼女の「声」がフューチャーされている。

浅井のソングライティングも、SHERBETSらしい低温な幻想感が光る「Freeze Market」「きれいな血」辺りから、ブラスを効かせたワイルドなロックンロールの「LADY NEDY」、そして近年の彼のテーマの一つである打ち込みリズムシリーズでも最もリラックスしたシュールさが心地よい「ワナフィー」など、彼の資質の幅広い部分がバンドを通じてのびのびと表出されている(しかしワナフィーって何だ……?)。

冒頭で述べたように、ソングライター浅井健一の世界観の円熟はディープなサッドネスの追求によって成されるのだとSHERBETS近作や『NANCY』で思い込んでいたけれど、今作はそういったのとはまた違う、悲しみをたたえながらもリラックスしていて時々ユーモラスな、より彼の人間的な部分が現れている。ライブ先行の販売方法といい、現在のSHERBETSの冒険的で開放的なスタンスが、持ち前の少年性と落ち着いた大人の爽やかさとが絡み合った現在の彼らが、より多くの人に届くといいなと思った。

【Writer】おかざきよしとも (@YstmOkzk)

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