最終更新: 2020年6月22日
ROYAL BLOODを筆頭に起こったUKのネオグランジロック・ブームはまだまだ広がりを見せている。
本国メディアとレーベルはこぞってブームを担ぎ、新人バンドが毎週のようにリリースをしている。その主人公こそがTIGERCUB(タイガーカブ)だ。
目次
ネオグランジロックムーブメント
日本には熱量がいまいち届いてないが、英国ではまさにオアシス以降のあの頃、リバティーンズ以降のあの頃に匹敵する盛り上がりといっても過言ではなさそうだ。
90年代以降のグランジの流れとして、USはラウドな部分が極まった末、ヘヴィ・ロックに転換した。UKでもグランジにインスパイアされたバンドはいくつか出現した(BUSH、Nine Black Alps、THE SUBWAYSなど)。
いずれもUKの音楽の歴史がどこかで残る、雑種な多様性が特徴的であった。ただ、その頃はギターロックとラウドシーンは両極であり、どちらにもつかないUKのバンドは厳しかった。
それがARCTIC MONKEYS「AM」のヒット以降、US的なアッパーさをUKの音楽性にハイブリットさせるのが”アリ”となり、UKのロック・シーンは塗りかわった。
今年のフジ、サマソニでも大いに存在感を示したDinasour Pile-Up、SLAVES、DARLIA、DRENGE、ROYAL BLOOD。どのバンドも表現力が高く、確固とした個性を持っているのが面白い。
TIGERCUBとは
TIGERCUBはブライトンのバンドだ。出身というよりはロンドンからブライトンに好んで移り住んだらしい。
ロンドンから2時間ほどで行ける海沿いの街ブライトンは、エレクトロポップバンドか、古典的なバンドが受けがちなロンドンよりも、より音楽性の高いエッジな音楽が評価され、しっかりしたシーンが存在する街だ。
同じくブライトン出身(活動歴もほぼ同じ)のROYAL BLOODにも肯定的である。「彼らは本当に本当に素晴らしいバンドだよ。自分たちも影響を受けてる」とライバルにも賞賛を送る。
2011年に結成され、’13年9月に自主製作で3曲入EPをリリース。同年11月にはBLOOD RED SHOESが主催するレーベル”JAZZ LIFE”から 7″盤をリリース。
この作品はブライトンの敏腕プロデューサーTOM DALGETYが手掛けている。彼はROYAL BLOODの超ヒットアルバムも手掛けている。
2014年にはブライトンのRAYGUN MUSICから7″盤を1枚リリース。まさに地元のバックアップを受けながら着々と活動を広げてきている。
『Meet Tigercub』
今作『Meet Tigercub』はこれまでのリリースを結集した計7曲の日本特別企画盤である。通して聴くと、やはりUKのバンドの特徴である多様性に気づかされる。
M1「Centrehold」はKASABIANの「SHOOT THE RUNNER」のような縦ノリに身を任せたくなる曲であるし、M3「BLUE BLOOD」はメロディアスな展開が印象的なパワーポップナンバーだ。
M4「Hold on」はアルペジオとささやくボーカルがドラマチックに展開していき、RADIOHEAD直系のギターロック的な感性を発揮している。この8月にリリースされる7″盤(残念ながらこの企画盤には未収録。
SoundCloudで視聴可能)の収録曲についても、今までのパターンのどれとも違う可能性を覗かせている。
ただ、どの曲も重めのドラムとディストーションギターが鳴りわたるので、ベースとしては、”グランジ”を受け入れた一貫性がちゃんと備わりながらも、多様な音楽性の交わりで楽しませてくれる。
こうなってくると、アルバムという形になった場合が楽しみだ。現在は未定らしいが、早く聴かせてほしいし、日本でもライブを見せてほしい!
【Writer】TJ(@indierockrepo)
今までのレビューはこちら
◆関連記事◆
【Review】“だからグランジは死んでいない”を証明する⇒Drenge – Undertow
【News×Roots】カート・コバーンのドキュメンタリー映画が公開決定&アーティストが語る、Nirvanaのアルバムについて