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Mystery Jetsは奇妙な魅力を持っているバンドです。ロンドン南西部のテムズ河に浮かぶ、イール・パイ・アイランドというヒッピー文化が盛んな小島にて、同地で生まれ育っていた少年らによって結成され、2000年代半ばのデビュー時には、スキッフルやトラッドなど19世紀の英国大衆音楽を掘り下げたインディー・ポップを慣らし、当時のモードであったテムズ・ビートを牽引しました。ボヘミアン的な佇まいもあいまって、ちょっと一癖アリなバンドとして存在感を発揮していた彼ら。その後はアルバムをリリースするごとに、ニュー・エレクトロと80年代ヒットのミックス、オーセンティックなブリティッシュ・ロックへの回帰、渡米してアメリカン・ルーツ・ミュージックの研究と、持ち前のポップ・センスやソングライティングの才はそのままにサウンド志向を変更。一筋縄ではいかない道のりを進みつつも、いずれも傑作に仕上げてきました。

常に変化を課しつつもバンドとしての根幹はブレない――この10年貫徹されてきたMystery Jetsの、偉大といっても良いであろうスタンスはインディー・リスナーに支持されてきました。その一方で、ポップ・シーンのパラダイム・シフトを起こすような革命的一作はまだ作りえていないため、ちょっと小粒な存在として見られている面があるかもしれません。山椒みたいな。ですが、その見方、今後は旋回を迫られる必要があるんじゃないかと思っています。Mystery Jetsの通算5作目となる新作『Curve of the Earth』がちょっとものすごいアルバムとなっていそうなのです! ここではリード・シングルにあたる“Telomere”からその全貌を覗き見してみましょう。

ムーディな鍵盤とヒプノティックなギターがポリリズムで重なるイントロから期待を煽る“Telomere”。ブレインの歌にもいつになく厳かな緊張感が漂ってあます。そして56秒を経て入ってくるバス・ドラムの鳴りにこそぜひ耳を傾けてほしい。ビッグな残響音を残しつつ、きわめて生々しい、まるで心臓の音のような太鼓の音。ちょっとゾワゾワしてきます。実際この曲、聴き進めるにつれ、まるで身体の内部を旅しているようなストレンジなトリップ感があります。そもそも〈テロメア〉とは染色体を保護する末端小粒のことだそうで、歌詞に目を向けても“君の血中で生きているものは誰にも奪うことのできない唯一のもの”と繰り返されています。これまで古き英国文化やアメリカ大陸の肥沃な音楽土壌とさまざまに掘り下げていったバンドが、次に探求したのはコペルニクス的転回で、生命や自然の不可思議さ、尊さだったのかもしれません。そして、“Telomere”を聴く限りでは、サウンドでの表現でその試みを成功させている。おそらくアルバムは相当野心的な作品となっているはず。まずはこの先行曲に震撼すべし!

『Curve of the Earth』

【Writer】

田中亮太
ライター。OTOTOY連載『隣の騒音』やsign magazineで執筆しています。春から上京します。
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