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バンド演奏で制作され注目を集めたファーストアルバム『Wang』と打って変わって、全て宅録で制作したという王舟のセカンドアルバム『PICTURE』は、得も言われぬ不思議な世界を表現した作品となった。王舟はたった一人でどうやってこの作品を作り上げたのだろうか?本人に聞いた。

アーティスト:王舟 インタビュアー:yabori 撮影:Takahiro Higuchi

―今回リリースされる新作『PICTURE』というタイトルにはどういう意味があるんですか?
王舟:意味は特になくて。アルバムタイトルを考えながら、アートワークも一緒に選んでいたんですが、その時にオム・ユジョンさんという韓国の方の絵を使わせていただくことに決めて。「Picture」という曲もあるし、『PICTURE』というタイトルだったら絵にも注目してもらえて、アルバム全体の雰囲気にも合うし、タイトルとしていいんじゃないかなと思ってつけました。

―店にあのアナログがあったら思わずジャケ買いしたくなるくらいいい絵ですよね。なぜあの絵をアルバムジャケットにしようと思ったのでしょうか。
彼女の作品の中からアルバムに合いそうな絵をいくつか送ってもらって、その中から選びました。このジャケットの絵以外にも、裏に1枚、中面に2枚使用させてもらいました。

―いい絵ですよね。知るきっかけは何だったんですか?
王舟:felicity(王舟のレーベル)の担当が韓国で彼女のZINEを見つけてきて、教えてもらいました。その時はジャケットに使おうと考えていたわけではないんですが、すごいいいなって思っていて。

【BELONG Magazine Vol.14は王舟のインタビューを掲載】
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Cover_Galileo-Galilei-Tempalay×Homeshake_ol(入稿用)

―なるほど。前作のアルバムはアコースティック調でしたが、今作は電子楽器を使用して制作した曲もありますが、『Wang』から今作を制作した間に心境の変化はありましたか?
『Wang』はバンドで録るというコンセプトだったんで、エレクトロな事をやるって感じではなくて。今作は全て一人で打ち込み中心で作ったですよ。今まで使えなかった引き出しを開けてみたくて、そういうやり方で作りました。前作で出せなかったものを今回はひとりでやるかって。

―楽器も全部一人でやったってことですか?
楽器はほとんど打ち込みで音をパソコンの中に集めて、それを鍵盤で流しながら一個一個作りましたね。楽器で実際演奏してるのは、ギターやベースとかぐらいで。シンセは少し演奏して、あとは全部キーボードで作って。

―どうして今回はすべて宅録で作ろうと思ったのでしょうか。
宅録は昔からずっとやってたんで自然な流れなんですよ。エレクトロで打ち込みもあると曲の幅も広がりますし。

―なるほど。今作だと「Moebius」がすごく好きです。ああいう曲があってすごくバラエティに富んだアルバムだと思って。
アルバムにちょっと訳分かんない感じが欲しかったんですよ。前作はシンプルで分かり易いんですけど、その反動でよく分からないものが作りたかったというか。動機がはっきり感じ取れないものが作りたかった。

―だから今回はインスト曲をいくつか入れたのでしょうか。
それも自分にとっては自然な流れで。作る時にインストと歌モノって分けてなくて。普段作ってる曲の中で、アルバムに入れたい曲を選んでいったら、こういうバランスになりました。だからインストを多めに作ろうって意図は特になくて。コンセプトを立てずに作っていったら、インストが前作よりも増えたって感じですね。

―では今作は特にコンセプトのあるアルバムではないという事でしょうか。
そうですね。一人で作るってコンセプトは先にあって、それが満たされていればいいかなっていう。

―どうして今作は一人でやることにこだわったのでしょうか。
前作のように大勢の人と一緒にやると、その中でスケジュールが合わないとか色んな制約があって。それと、録ってもらうには相手の個性がそのまま出た方が好きなので、辻褄を合わせない分、少しバラバラで。そのバラバラでコントロールできなかったところが良かったりもしたんですけど、逆に一人でやったらある程度コントロールできそうだなって思って。だから一人でアルバム一枚まるごと作ってみるっていうのがいいんじゃないかと。

―なるほど。コンセプトがないって言っていましたが、僕はこのアルバムを聴いてて思ったのが、どの曲も場所を指しているのかなと感じました。例えば一曲目の「Roji」が現実にある場所ですし、世界旅行している感じというか。
歌詞は割と皮肉みたいなところもあるんですよ。「Roji」の歌詞の内容は、せかせかしてる旅行者ばかりが集まる架空の街があって、そこに自分も行き着くっていう。その街は自分には合わないないから疲れたっていう歌詞です。完結する話じゃなくて状況を歌ってる。

―それがRojiと関係あるんですか?
それはほとんど関係なくて。歌詞の一小節だけバーにいる猫にあいさつしに行くっていうくだりがあって、そこだけですね。もう亡くなっちゃたんですけど、Rojiにはレタスっていう猫がいたんですよ。そこだけちょっと関係してるぐらいですね。名前は「Roji」だけどあんまりRojiのことを歌いたかった訳ではなくて、サウンドの部分で自分が感じていたRojiっぽい雰囲気を出したかった。

―「Roji」だけでなく、他の曲からも居場所というか、場所であったり、違う国の風景みたいなもの感じました。そういう部分は意識して制作されたのでしょうか。
特に意識はしてないです。でも、聴く人によって色んな感じ方ができるようにって思って作っていますね。だから限定したテーマやコンセプトがない。聴き手が自由に解釈できる方が好きなんですよ。その人自身の記憶と連結して、その人が楽しめるのがいいなと思って。具体的な楽しみ方を提示するのではなくて。それもいいと思うんですけど、自分が作る分には感覚だけ提示したい。楽しいなって時は過去のどんな出来事を思い出しても楽しいって振り返れると思うんですけど、その楽しいなって気分にさせるってところまでをやるのが面白いかなって。実際どういうことを思い浮かべるかは人それぞれなので。

―なるほど。今回は宅録で制作されたという事で色んな楽器使われたと思うんですけど、使うのに苦労した楽器はありますか?
打ち込みなので楽器はあまり使ってなくて、キーボードでいろんな音色を弾いたんですけど、普段は使わない楽器を多く使いましたね。トランペットは曲に組み込むのが難しくて。色々と試行錯誤を繰り返しましたね。あとシンセサイザーは質感を出すのが大変でした。

―確かにシンセの音はすごく良かったです。質感を出すというのはどういう工夫をしたのでしょうか。
シンセは真空管のプリアンプに通したり、スピーカーで鳴らしてマイクでまた拾ったり。そういう事で音色が変わるところがあるんだなってやりながら気づいて。それで他の楽器の音がエレクトロじゃなかったんでシンセとなじまなくて。生っぽいドラムでやりたかったから、シンセの音をできるだけ硬い音からふんわりさせるのに、色々と試しました。

―シンセの録り方ひとつでも試行錯誤があったんですね。ではそのシンセの音になじませるために他の楽器の音を変えたりもしましたか?

それもやりましたね。だからどこが正解かを色んな楽器を変えながら調節していって、最初からやり直したりを繰り返しながら作りました。

-そうなんですね。では音楽をどういう風に作っているのか教えて欲しいのですが、特に「ディスコブラジル」はどういう音楽を参考にして制作されたのでしょうか。
自分は色々と音楽を聴いて、頭の中で混ぜ合わせるタイプの作り方をするんですよ。この音楽を聴いてこれみたいな感じのものを作ろうっていうのはあんまりなくて。音楽が相手というよりは映画の方が参考にしている部分が多いですね。

―ちなみに今回は影響を受けた映画はありますか?
ウォン・カーウァイの『恋する惑星』という映画ですね。それを制作中に見返してて、「Moebius」はその映画を参考にしていますね。「ディスコブラジル」もちょっと参考にしている部分があります。でも直接の影響というか身体に染みついてて。

―映画から感じる雰囲気を音に変える感じでしょうか?
はっきりと雰囲気を音にするって意識はしてないんですけど、『恋する惑星』の内容というよりはこんな美意識かなっていうのを音で伝えるというか。ありきたりなラブストーリーでかっこつけてる内容なんですけど、それも含めていいんですよ。ロマンチックなシーンでも主人公がブリーフ一丁でかっこよくなかったりするんですけど、映像の中に主張がすごくあって。最初に見たときはピンとこなかったんですけど、2~3回目ぐらいからすごい好きになっていって。何度か見返すって事はその映画と何かしらの縁があったってことだと思います。

―今回のアルバムから「ディスコブラジル」をアナログで出されてると思うんですけど、どうしてアナログで出そうと思ったのでしょうか。
アルバムを作る前から「ディスコブラジル」をシングルで出そうという話があって。シングルの「ディスコブラジル」はバンドで録音しているんですが、アルバムに入っているのは一人で作ったデモがベースになっています。

―どうしてリリースの形態としてアナログを選んだんですか?
アナログだとテンションがあがるので。あと音が良いっていう。12インチに1曲だけで重量盤ですし。

―ジャケットもすごくかっこよかったです。
KINDNESSがMVも撮ってくれたし、シングルだけで色々な人が関わるのが面白くかったです。

―KINDNESSってどこで知り合ったんですか?
Blood OrangeのMVが好きで、その監督がKINDNESSだったので、オファーをしてみました。そうしたらOKをもらって日本で映像を撮りたいから行くよって。

―MVも見たんですが、日本人が撮影するよりも日本を面白く撮影しているなって思ったんですよね。
お祭りや太極拳をやってる集団とかを撮影してて面白かったですね。撮るシーンがどれも意外で。

―言われるまでKINDNESSが映像監督をしているとは思わなかったんですよね。日本の方が撮られてるのかと思ってて。それが実はKINDNESSって知ってすごくびっくりしました。
見てるところが面白いですよね。旅行で来てる延長の視点というか。多分自分も海外に行くとそんな感じに撮影するんじゃないかな。見ている場所が住んでる人たちからしたら気にかけてなかったようなところを発見するような感じになるんだと思います。

―それでは最後に今回のアルバムはどういう人に聴いてほしいですか?
どういう人に聴いて欲しいというのはないです。そういうのは一回も思った事がないんですよね。それこそおじいちゃんや子どもが気に入ってくれたら嬉しいし。それも縁みたいなもので、こっちからどういう人に聴いて欲しいって思わなくて。たまたま聴いてもらって気に入ってくれたらいいなっていう。音楽をあんまり聴かない人にも聴いてほしい。

―このアルバムに巡りあってくれたら良いなって感じでしょうか。
そうです。音楽はそういうもんだと思うんで。イメージもないし、ニーズに合わせることなく、自分の癖もそのまま残して作ったので、それで気に入る人が、多分別にどの年代でもいると思います。そういう人に届くかどうかは縁みたいなものなんで、多くの人がこのアルバムに出会ってくれたら嬉しいですね。

『PICTURE』
Now On Sale

【Live】
■王舟「PICTURE Release Tour(Alone)」
2016年2月11日(木・祝)愛知 西アサヒ
2016年2月13日(土)京都 喫茶ゆすらご
2016年2月14日(日)広島 浄泉寺
2016年2月18日(木)福岡 STEREO SIDE-B
2016年2月20日(土)北海道 kino cafe
2016年2月21日(日)宮城 BAR&EVENT HOLE Tiki-Poto

■王舟「PICTURE Release Tour(Big Band)」
2016年3月5日(土)大阪 Shangri-La
2016年3月13日(日)東京 LIQUIDROOM

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