最終更新: 2016年10月29日
愛はズボーンが彼らのホームタウン、大阪はアメリカ村一帯を巻き込んで新たにイベントを主催する。その名も“アメ村天国”。サーキットイベントではあるものの、天国という名前だけあって音楽だけに捉われず、アートワークの展示やフード、果てにはお笑い芸人も出演するというバラエティの豊かなものになるそうだ。はたして彼らは何を考えこんなイベントを行う事にしたのかメンバー全員に聞いた。
アーティスト:アーティスト:儀間建太(Vo./Gt.)、 金城昌秀(Gt./Vo.)、白井達也(Ba.)、富永遼右(Dr.) インタビュアー:yabori 撮影:MASA
-今年の夏に主催したイベント“SUMMERズボップくん2016”はいかがでしたか?
金城:結果的にライブも集客も良かったと思うんですけど、もっと自分たちにできる事があったんじゃないかなって思いましたね。もっと勢いがないとあかんタイミングやったんですけど、終わってみるとそうでもなかったなと。
儀間:ズボップ(“SUMMERズボップくん2016”)のおかげで共演者とはバンドとしても、人としても仲良くなれたっていうのはありますね。ズボップに出てるメンバーは“アメ村天国”に出てますし。
白井:今年は良いライブができたなと思います。一昨年は緊張して上手く演奏できなくて。
金城:自分らでイベントの準備をして、自分らが一番最後に出てきて自作自演感に自分で呑まれるみたいな感じでしたね。でも今年のライブはそこから先に進めたんで、早く次の“アメ村天国”に繋げようと思いますね。
-それではどうして“アメ村天国”というイベントをやろうと思ったのでしょうか。
儀間:僕が大阪のアメリカ村で5年くらい働いてるんですけど、そこで知り合った友達と居酒屋で何か面白い事をやりたいなってずっと言ってたんですよ。でもその時はやり方も分からないし、力もないんでその話はそのままだったんですけど、レーベルオーナーの吉條さんから、サーキットイベントをやってみないかって提案してくれて。その話を聞いた時に昔の話を思い出して、それと繋げれるなって思って。じゃあアメ村を中心としたカルチャーを全面的に押し出したイベントにしたいと思って。
-ではこの“アメ村天国”という名前の由来について教えてください。
儀間:イベント名は僕らが考えた訳じゃなくて、企画段階から一緒にやってくれているライターの大西くんっていうアメ村で出会った友達がいるんですけど、イベントをやる事にしたって話をしていたんですよ。そしたら彼が「“アメ村天国”っていう名前にしたら良いんじゃないですか」って言ってくれて。それが良いなって思ってイベント名にしました。
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-そうなんですね。アメ村天国にはバンドだけでなく、お笑い芸人も出る事になっていますが、どういうきっかけで出演してもらおうと思ったのでしょうか。
儀間:このイベントはバンドだけでなくて、お笑い芸人の人にも出て欲しいなって話をメンバーとしていて。ちょうど吉本がNANIWAdelicっていうライブハウスを使ってお笑いイベントをやる事が決まって。良いタイミングでこの話が出て来たから、一緒にできるねって事でやろうと思いました。
金城:もともとイベントに芸人さんに出て欲しかったんですけど、どうやってブッキングしようかなって話をしてて。でもそういうイベントをやるようになったんで願ってもないタイミングで一緒にできる事になりましたね。
-今回のイベントはサーキットイベントとの事ですが、他のイベントとはここが違うというのがあれば教えてください。
金城:サーキットイベントって言っているのは分かりやすくする為に呼んでいるだけで、本当はアメリカ村でお祭りをやりたいんですよね。
儀間:最終目標はお祭りなんで、アメ村に提灯があって交差点は歩行者天国になっていう。それでここには食べ物屋さんや服を売っているお店もスケーターたちのパークもあるんで、そういう人たちとも連携してその日一日はみんながアメ村に何かを楽しみにやってくるっていうのが理想で。それがお祭りみたいになれば良いなっていうのがアメ村天国の最終目標ですね。
【再掲:interview】 愛はズボーンが生み出す、アートをエンターテイメントでカバーした 『IWZBN』 https://t.co/t2Go2gdNND pic.twitter.com/v9XLEMD7LD
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-という事は音楽というのもお祭りの中の1ジャンルでしかないって事ですか?
金城:そうです。1回目のイベントというのもあって、分かりやすくサーキットって言っているんですけど、いずれはそこから抜け出していきたいですね。だから回数を重ねないといけないと思いますね。
白井:俺らが死んでも引き継がれるようなイベントにできたらいいですね。
金城:それを言ったら城天(大阪城公園ストリートライブ)なんかもそうですよね。あのイベントは大阪市とも話合ってやっているみたいで、もともとは関西のアマチュアバンドが始めたそうなんですよ。それでその中にシャ乱Qのメンバーもいたらしいですね。ゆくゆくはそういうイベントにできたら良いなと思います。話してて思い出したんですけど、そもそも愛はズボーンはアメ村発のバンドって言い出したのは儀間くんなんですよ。俺らも自然とアメ村出身のバンドですって言ってるんですけど、そんな事をみんなで話し合った事がなくて。
-ん?それはどういう事でしょうか!?
金城:儀間くんがアメ村には思う所があるってずっと言ってて。
儀間:みんなをアメ村で働くように仕向けたっすね(笑)。
金城:儀間くんの話を真に受けて、アメ村で本気で働こうと思った事があったんですよ。その時の僕のアメ村のイメージって、まんだらけのグランドカオス店っていう変な名前の店があったんですけど、まずはそこで働くことやなと思って。その流れでバイトの面接を受けてみようと思って電話したんですよ。そしたら電話で落ちたっていう(笑)。
一同:(笑)。
金城:それで働くことはできなかったんですけど(笑)。でもCDを出してるレーベルのオーナーがライブハウスPangeaの吉條さんという事もあって、今では週に一回はアメ村に行きますね。みんなにとってアメ村は愛着がある所だと思います。
儀間:アメ村って面白いのが“島”なんですよね。
-“島”というのは?
儀間:アメ村って四つ橋筋、御堂筋、千日前通り、長堀通りっていう大阪の大きな道に囲まれて孤立した街なんですよ。だんだんその街で文化が濃くなっていったような所なんで、変な人ばっかりいるんですよ。何をしても当たり前がないっていう。マイノリティな考えが通用するのが良くて、人と合わせる事の方が恥ずかしいよねっていう空気があって。だから居心地が良いんですよ。
白井:僕は未だにアメ村は怖い所やって思う部分もありますね。でも最近は好きになってきましたけどね。
一同:そうなんや!
儀間:白井君はアメ村がずっと怖いって言ってたもんな。
白井:単純に慣れただけかもしれないですね(笑)。
儀間:白井君にはアメ村にある100均のSeriaで働きって言ったもんな(笑)。富ちゃん(富永 遼右)はサンボウル(ボウリング場)な(笑)。
金城:2年くらい前に俺がまんだらけで、白井君が100均で富ちゃんがサンボウルで働いとったらヤバいよな(笑)。仕事帰りになったらみんな揃うし。
富永:休日に暇な時があったら、だいたいアメ村にいてますね。行ったら落ち着くし、絶対に誰か知り合いがいるんですよ。仕事帰りに遠回りしてでもアメ村通って帰る事もありますね。
儀間:アメ村にいると落ち着くんですよね。北大阪の梅田に行ったら、どこに座ったらいいか分からんし、落ち着かないんですぐにアメ村に戻ってくるんですよ(笑)。
一同:(笑)。
儀間:アメ村のすぐ隣の堀江で服を買うんですけど、買ったらとりあえずアメ村まで持って行ってコーヒー飲んだりしますね(笑)。アメ村をピボット(軸足)にして生活するみたいな(笑)。
金城:逆に誰にも会いたくない時はアメ村に行かないんですよ(笑)。
-アメ村が生活の中心という事ですね(笑)。昔のアメ村って治安が悪いってよく言われていましたけど、今はどんな感じでしょうか。
儀間:5~6年前は一番治安が悪くてディープだったそうですね。このイベントをやるにあたって歴史を知っておいた方が良いなと思ったんで、アメ村の町内会長と商店会の人たちに話を聞きに行ったんですよ。アメ村の治安が悪いってされていた時期って僕らが中学2年くらいの時で、僕らも行くのが怖い場所だったんですよ。それがどう変わったかって言うと、アメ村にたくさん落書きがあったみたいなんですよ。それを町内会の人たちが全部消してしまおうって活動があったみたいで。割れ窓理論っていうものがあるんですけど、一個でも窓が割れてたら風紀が乱れるっていう話があって。それでSANTAっていう有名なスプレーアートの人も捕まったし、落書きを全部消したみたいなんですよ。町内会と商店会の人たちが毎週土曜日になったら、ペンキを持って落書きを消してくっていう事を何年かしていて。最後の落書きはサンボウルのボウリングのピンに描いてあったらしくて。
一同:へぇー!そうなんや!
儀間:落書きを全て消したと同時に防犯面にも力を入れる事にしたそうなんですよ。それやったら日本で一番防犯カメラがある街にしたら安心なんじゃないかっていう事で、アメ村は日本で一番防犯カメラのある街になったんですよ。防犯や防音に力を注ぐようになってから、大手企業もアメ村に参入してくるようになって。それからパンケーキ屋さんやフライングタイガーみたいに家族連れでも来れる街になっていったそうなんですよ。それで今はストリート系の人たちもいれば家族連れもいるっていうカオスやけど、風通しの良い街になっていったそうなんですよ。
-そうなんですね。アメ村にそんな歴史があったなんて知らなかった。
儀間:このイベントをやるに当たって実感したのは、自分たちは他の所から来てアメ村で楽しんで帰るだけなんですけど、実際にアメ村で住んでいる人もいてて。その人たちとの意識の違いに大きな溝があって。例えば三角公園でバンドが演奏してたら、道行く人は面白いと思うかもしれないんですけど、住んでいる人からしたら街の中心の公園で大きい音を出されたら寝れないし、仕事もできないじゃないですか。そういう部分で立場の違いを感じましたし、自分たちがロックバンドと名乗るだけで何人かの人には先入観で不快な思いをさせてしまったのかもしれないなと思いましたね。
金城:イベントが始まったわけではないんですけど、現段階でまだまだ伸びしろもあるし、やる事も沢山あるなって感じている所ですね。
【再掲:interview前半】 このアルバムは全曲アートになっている『愛はズボーン – MAGMAそれは太陽のデジャヴュ』 https://t.co/CbiK5QNMd0 pic.twitter.com/rR6CxVzRAj
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-イベントによっては自分たちでゴミ拾いしているものもありますよね。
儀間:そうですね。自分たちもイベントを途中で一回中断して、アメ村ゴミゼロ計画と言って、出演者とアメ天イメージガールっていう自分たちで勝手に作ったグループがあるんですけど、一緒にゴミ拾いをしようと思ってて。そこでゴミ拾いをした人って身勝手に捨てないと思うんですよね。そういうのがだんだん広がっていけば、アメ村がきれいな街になると思うんですよね。
金城:僕はグラフィティアートが好きなんですけど、なんというか・・・。複雑ですよね。アートではあるけども、見方を変えたら犯罪っていう。
儀間:正直な事を言うとグラフィティアートのある街ってガラが悪いって見られるけど、興味をそそられるじゃないですか。
金城:そうやけどお店のシャッターに描くのはホンマにあかんなと思いますね。
儀間:そうやな。でもアメ村に一個だけでいいから自由に描いていい壁を作って欲しいですね。それがあったらずっとアートが上書きされていくし、歴史を感じられると思うんですよ。
-なるほど。そういうのがあれば面白いですね。話は少し変わりますが、出演バンドのラインナップの基準について教えてください。
儀間:単純にどれもめっちゃかっこいいし、俺らが全国各地を回って出会ってきたバンドが出てるんですよ。
金城:愛はズボーンってホンマに4人とも人が良いんですよね(笑)。
一同:(笑)。
-自分で言うんや(笑)。言わんでも分かってるよ(笑)。
金城:もう自分で言います(笑)。俺らが活動を始めて自分だけ売れようと思ってやったことって一回もないんですよ。絶対に共演者や関係者、ライブハウスありきでやってきてて。みんなと同じ目線でやりたいと思ってるんで、売れたら勝ちとは思わないし。そういうスタイルで5年やってきて実ったものがこのメンツだと思いますね。
儀間:このメンツを揃えられるのは間違いなく僕らだけだと断言できますね。
金城:初回に有名なバンドを呼んだとして、次回もそういうバンドが出れなかったらダメだよねってなると思うんですよ。ズボップくんも同じような考えでずっとやってるんですけど、知名度があっても僕らと面識のないバンドは呼ばないですね。例えば今回だと先輩格のバンドで忘れらんねえよに出てもらっているんですけど、長い付き合いがあるからこそ出てもらってて。ツアーで呼んだり呼ばれたりしている関係だから声をかけさせてもらったんですよね。さっき言ったように自分らだけで売れたいとは思わないって考えてるから、僕らは何回も悔しい思いをしてきているんですよ。その分このイベントにこんなメンツが揃ったっていう事は、ちゃんと返ってきているんだなと実感しますね。
【最新記事:interview 後半】 四つ打ち・裏打ちサビでエモいコードはもういいから、俺らの裏打ち聴いてみろ 『愛はズボーン – MAGMAそれは太陽のデジャヴュ』 https://t.co/UdytGcODAS pic.twitter.com/BFe9YTHosV
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-これはTHE NOVEMBERSの受け売りなんですけど、愛はズボーンのやりたい事を例えるなら、みんなを乗せて進む大きい船ってイメージなんでしょうか。
儀間:その通りですね。お客さんも関係者もバンドも乗せて進んでいきたいですね。自分が呼んだ好きなバンド同士がライブを見てこれから繋がりができるようになったら、俺らもめちゃくちゃ嬉しいですね。そうやって一つの塊になっていきたいですね。
-今回のイベントにも出てるドミコとTempalayはこないだ関東で“BEACH TOMATO NOODLE”という自主企画イベントを開催していて、それに愛はズボーンも出演したと聞きました。そのイベントはいかがでしたか?
白井:とにかくロケーションが最高でした。
金城:あの二組がやっているのが良いなと思いましたね。もし主催がイベンターの方だとしたら、ロケーションが良かったという印象だけで終わると思うんですけど、あの二組がやっている事で余計にイベントとして意味のあるものだなと思いましたね。
白井:ドミコとTempalayが楽しそうにしてたのが良かったよな。ライブもめっちゃ良かったし。
金城:“BEACH TOMATO NOODLE”というイベントの舟を運転していているのが彼らっていうのが面白くて。ずっとイベントの準備をしていたから、めっちゃ疲れてたと思うんですけど、俺らが来たら本当に喜んでくれて。それが嬉しいっすよね。
【今月の注目記事ベスト2⇒対談】俺らは俺らでやれるぞっていうのを示せたらそれでいい。-Tempalay×ドミコ主催フェス“BEACH TOMATO NOODLE” https://t.co/mlR95m9mNo pic.twitter.com/CTC5zTixIH
— BELONG Media (@BELONG_Media) October 3, 2016
-それでは最後にこのイベントにはどんな人に来てほしいと思いますか?
儀間:これはお祭りなんで来る人は限定したくはないですね。今回が初めてというのもあって音楽が好きな人が集まると思うんですけど、今後の事を考えたらふらっと来れるものにしたくて。アメ村天国やっているから、ちょっと見に行こうやって感じで。
金城:祭りみたいに花火見に行こうやって感じで来てくれるようになったらいいですね。
儀間:面白い事を考える人にも来てほしいと思いますね。じゃあ俺はアメ天で来年こんな事をやってみたいって言ってくれる人にも来てほしいと思いますね。THE BOSSSのボーカルのちひろがアメ天の事を考えている時、急に「ホンマにありがとう」って言い出して。こういうイベントで街ごと盛り上げるような企画って、ホンマは俺が一番やりたかった事やけど、それができるだけの準備ができてなかった。でもそれを愛はズボーンがやってくれて、俺らも参加できるのが本当に嬉しいって。
一同:そうなんや!
儀間:そういう事を言ってくれるのは嬉しいですね。それとアメ天ではアートワーク展っていうのもやるんですよ。Dig me out caféを展示として1週間使わせてもらう予定で。音楽とアートってずっと隣り合わせやなってイメージがずっとあって。あなたが好きなこのアルバムのジャケットを描いている人は、こういう絵も描くんですよっていうのを教えてあげたくて。そこに金城くんの絵も展示する予定なんですよ。
金城:ベルベッツ(The Velvet Underground)のジャケットをアンディー・ウォーホルが描いていたっていうような背景を知って欲しいんですよね。最近だとそういう事も知らないバンドってかなりいますからね。僕らは音楽とアートの関係というものを伝えていきたいんですよ。
儀間:絵も楽しめるし、フードの特別メニューも出しますし、ライブも見れるし、見たいものがないなって時はアメ村でたこ焼きも食べれるし(笑)。みんなおいでって感じですね。
【イベント】
愛はズボーンpresents“アメ村天国”
2016年11月12日(土)大阪府 FANJ twice / LIVE HOUSE Pangea / LIVE HOUSE OSAKA BRONZE / CLAPPER / digmeout ART & DINER
<出演者>
愛はズボーン / Age Factory / THE BOSSS / THE BOY MEETS GIRLS / CHAI / コンテンポラリーな生活 / Creepy Nuts(R-指定&DJ 松永) / DENIMS / deronderonderon / ドミコ / DOTAMA / フィッシュライフ / ギャーギャーズ / ハラフロムヘル / Helsinki Lambda Club / 神頼みレコード / LADY FLASH / THEラブ人間 / ナードマグネット / 岡崎体育 / ONIGAWARA / パノラマパナマタウン / プププランド / THEロック大臣ズ / SPARK!!SOUND!!SHOW!! / Tempalay / TENDOUJI / Walkings / 忘れらんねえよ / 花柄ランタン / マッシュ(Kidori Kidori) / ミヤモトアツシ(PJJ) / たかはしほのか(リーガルリリー) / ヘンダーソン / ジュリエッタ / リー5世 / 中山女子短期大学