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カニエ・ウェストの新作を日本では聴くことができなかった今年3月、京都のビートメイカー/プロデューサーのTOYOMUは、わずか4日間でカニエ・ウェストの新作を妄想で作り上げた。その作品『印象III ; なんとなく、パブロ』を自身のバンドキャンプにアップしたところ、一気に海外の有力メディアが飛びつき、その発想の斬新さのみならず作品内容が高く評価された。

それに続いて宇多田ヒカルの『Fantôme』の妄想作『印象VII : 幻の気配』を公開し、11月23日には初のオリジナルEP『ZEKKEI』をリリースする。一体、彼はどのような事を考え、どのような手法でこれらの作品を作ったのだろうか。TOYOMU本人にメールインタビューを行った。

アーティスト:TOYOMU インタビュアー:yabori

-音楽活動を始めたきっかけについて教えてください。
高校生くらいの時に、リップスライムがきっかけで90年代の日本語ラップを聞き始めました。大学に入ってから、KREVAやライムスターのMummy-Dのような“トラックも作れてラップもできるアーティスト”にあこがれて、AKAIのサンプラー、MPC5000を買ったのがきっかけです。

-どうしてトラックメーカーとして活動しようと思ったのでしょうか。
一つ前の質問でも触れましたが、最初は、ラップを少しやっていた自分と自分の身の回りのラッパーのためにインストを作っていたのが音楽を始めたきっかけでした。そのうち、曲作る方が楽しくなってきたのでそのままずっと作り続けて来た、という感じです。

-新作の前にお聞きしたいのですが、どうしてカニエ・ウェスト『The Life of Pablo』を自分で作ろうと思ったのでしょうか。
今年一月から「印象」というシリーズをバンドキャンプで始めたのですが、そのコンセプトが“誰もがわかりやすいテーマで、実験的なこと/自分やりたいことをおもいっきりやる”だったので、ちょうどその時に話題になっていたカニエに乗っかりました。“誰もやらなさそうなので、やったら面白いだろうな”という気持ちです。

-制作された『印象III ; なんとなく、パブロ』はどのようにして制作されたのでしょうか。
whosampled.comというサイトにオリジナルの元ネタが全部あがっていたので、それらの曲のYoutubeからオーディオをサンプリングしてバックトラックを作りました。また、例のロボットのラップに関しては、Genius.comというサイトにTLOPの全歌詞が掲載されていたので、それをMacbookのテクストスピーチ機能に読み上げさせたものを録音しました。それらをいい具合にかけあわせ、カセットテープに録音したものが『印象III ; なんとなく、パブロ』です。

-この作品は曲のタイトルもとてもユニークだと思います。「汝、光を見たか」から始まって、「マン・ウィズ・ア・ミッション」という日本のロックバンドがタイトルになった曲もあります。それぞれの曲タイトルはどのようにして付けたのでしょうか。
70〜80年代の映画の邦題付けが非常に味があっておもしろかったので、自分解釈の邦題を付けてやろう、という気持ちでそれぞれの名前を考えました。変な日本語感はVaporwaveっぽい、という風に言われるんですが、おおよその曲は曲の背景や歌詞、意図があって付けたので、関係ありません。なので、言われて初めて“確かにVaporwaveという見方もできるかも”と思いました。

-この作品はいくつもの海外メディアがニュースとして取り上げましたが、いきなり注目を浴びて戸惑うことはなかったのでしょうか。
もちろん戸惑いました、今はもうゆっくり振り返ることができますが。大きな転機だったと思います。少なくともこれは日本国内ではなく、海外向けだろうなとはうっすら思っていましたが、反応の大きさは予想外でした。

-この作品を作った後に『The Life of Pablo』は聴かれましたか?聴かれてどのような事を思ったか教えてください。
Apple Musicにて聞けるようになってから聞きました。たぶん今回のこの音楽の聞き方できるの僕だけなので、なかなか言葉にするの難しいですが、おおまかまとめると2つで、“これめちゃくちゃ似てる!!”と“これ全然違う!!”です。いずれにしても、オリジナルのTLOPに対しては未だに従来の“完成した”アルバムではないという印象は強いです。良くも悪くも、世の中にモノとして発売することのピリオド性を実感しました。

-それではデビューEP『ZEKKEI』について伺いたいのですが、タイトルの由来を教えてください。
日本語タイトルをどうしてもつけたい、という思いが強かったのがまず一つ。で、なぜ「絶景」かというと、前述した「印象」シリーズの5番目の作品で京都をテーマにして以来、自分の中での京都の見方がハッキリした節があって、心にわりと強く残っていました。今回の作品は京都を題材にしよう!と思い立って制作したわけではないんですが、結果的にこれらのEPの曲をまとめると“自分の中の京都”を俯瞰しているような感覚になったので「絶景」と名付けました。石川五右衛門→南禅寺の三門→京都、というつながりも含め。

-本作はサンプリング・ネタは自ら作ったサウンドと自然音に限定されたどうですが、どうしてこの二つに限定して作ったのでしょうか。
今までは既存曲のレコードやCD等からサンプリングしていましたが、前々からそういうものに頼らずに元ネタから作り上げてしまいたいという願望があったので、一度やってみようと思いあえて縛ってやってみました。もちろん著作権的な問題もありますけども。これからの自分の制作方法にとても良い影響を与えたと思います。

-地元の京都の山でフィールドレコーディングされた音が入っているそうですね。どのような音をレコーディングして、またどのように加工していったのでしょうか。
5曲目の「Social Grooming Service」がフィールドレコーディングだけで構築されております。僕の友達で京都在住のAlly Mobbsというビートメイカー/プロデューサーがいるのですが、この曲は彼がやっているBeat Picnicという自然音をサンプリングして曲を作ろう企画の一環として制作しました。京都に猿が放し飼いにされている場所があるのですが、そこへ行った時のフィールドレコーディングデータが使われています。なので、冒頭に赤ちゃんのような声が聞こえると思いますが、猿の声です。あとはその猿がいるエリアの近くにあった公園のシーソーやブランコの遊具の音を録音、Ableton上のみでドラムやシンセのような音に加工し、ビートを組みました。

-本作は90年代のシンセサイザーとカセットテープを使用されたそうですね。どうして最新の機材ではなく、前の機材を使用したのでしょうか。
最新の機材を使わないことの理由は特にないのですが、身の回りにあるもので作ると言うのは自然なことだと思うので、家のロフトにあったYAMAHAの96年のキーボードを使いました。カセットテープ等も然りです。自分のアイデアを実現するのに必要なら、古かろうが新しかろうがそのアイデアに適したモノを使いたいとは思っております。いずれにせよ、その20年前のキーボードはプリセットに味があるな〜と思って使いました。

-この作品をどのような人に聴いて欲しいと思いますか?
こういう人に、という明確なターゲットはないですが、自分が音楽を始めるきっかけのアーティストやアルバムがあったように、誰かが音楽を作り始めたり、興味を持ったりするきっかけになればいいな、と思っております。

【Release】

『ZEKKEI』
2016.11.23 Release

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