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新たに立ち上げた自主レーベル”TETRA RECORDS”より、シングル「マイガール」をリリースしたシャムキャッツが、10都市を回るワンマンツアーの発表に続き、新作EP『君の町にも雨はふるのかい?』をリリースした。

夏目が過渡期と言うように、今作は「マイガール」で垣間見る事ができたシャムキャッツにしか成しえないポップミュージックの誕生を確信させる内容となった。またサウンドの進化と歩幅を合わせるように夏目の書く歌詞もストーリーテラーとしての円熟味を帯びてきた。本インタビューでは、フロントマンの夏目に今作で表現したかった事や木村カエラとのコラボ、自身の役者デビューについて聞いた。

アーティスト:夏目知幸(Vo/Gt) インタビュアー:yabori 撮影:樋口 隆宏

-前作に引き続き、今回のジャケットもイラストレーターの小田島等さんが担当していますが、どうして今回も彼と一緒にやろうと思ったのでしょうか。
夏目:前2作(『AFTER HOURS』、『TAKE CARE』)は作品のコンセプトありきで、僕とイラストレーターの二人で一緒に突き詰めていく形でやっていたんですけど、見た人が何これ!?って思ってくれるものが良くて。それをやるならオダジが理想的だなと。

-ではこのジャケットのコンセプトはどのようなものなのでしょうか。
謎ですね。ウォーターサーバーがあるのも謎だし、メンバーの写真を選んで切り取ったのもオダジなんですよ。

-そうなんですか。この藤村さんって何の服を着ているんですか?
これは長篠のパーキングエリアに“君も織田信長になれる!”っていうコーナーがあって、そこの服を着ている藤村さんですね。手には火縄銃を持っていう(笑)。どれも見た事ないものが出て来て。自分たちもどうしてこうなったのか聞いていないし、オダジも説明不要だと思っていると思う。

-なるほど。ではEP『君の町にも雨はふるのかい?』にコンセプトがあれば教えてください。
コンセプトというのは特になくて。自分たちの今のモードは「お早よう」をリリースした時と同じモードなので、収まりの悪いというか、この作品をどの棚に入れたら良いか分からないものを作りたかったんですよね。それと5曲を並べた時に、これは一体どういうものか分からないものを作りたかったんですよね。ただテーマとしてあったのは、作品全体を通してアンビバレントな感情というものを表現したくて。アンビバレントというのは1つの事象に対して2つの感情が出てくる事なんですけど、例えば誰か好きな人ができたら“愛しさ”と“憎しみ”っていう感情が同時に出てくるっていうもので。このEPの中だと「洗濯物をとりこまなくちゃ」で主人公が友達から子供が生まれたっていう電話がかかってきて、“おめでとうという気持ち”と自分はまだまだそんな感じじゃないなっていう“不安な気持ち”っていう背中合わせにある感情を表現したくて。

-その「洗濯物をとりこまなくちゃ」を始め、最近の作品では日常会話が歌詞によく出てくるような印象を受けます。どうしてこういった歌詞にしようと思ったのか教えてください。
前2作は景色を描くことに執着したんですけど、それは成功したと思っていて。その向こうに行きたい気持ちが出てきて。前作までの主人公はちょっと疲れていたり、休んでいたり、行動を起こした後にぽかっとしている時間の人たちというイメージで。それが気になっていたんで、次の歌詞を書くしたら動き出す人たちの事を書こうと思っていて。例えば雨が降ったら、洗濯物をとりこまなくちゃいけない。そういう動きを描きたくて、動きを表現する手法として日常会話を入れるようにしましたね。

-なるほど。他にも「すてねこ」では“君”と“僕”の視点が交互に変わっていく歌詞の手法が面白いと思います。これはどのようにしてできたのでしょうか。
自分たちが今年の頭に“捨て猫”になった瞬間があって。自分たちの事を歌おうと思ったし、僕らのライブを見に来るお客さんもどこにも行き場所がない人ももしかしたらいるのかなと思って。そういう意味では捨て猫と考える事もできるかなと思って。自分たちは捨て猫かもしれないけど、誰かが飼い主にもなれるかもしれないっていうイメージが沸いたんで、こういう曲を書てみました。新しい事をやってみたいって気持ちが強いから、こういう歌詞にもチャレンジしてみましたね。それとバンドとして今が過渡期だから、次に向かう風景を見せている作品なんですよ。その姿を見せるのが一番誠実な事だと思ったので、その過程を記録したいと思っていて。そういう意味で実験的な事もやっているし、歌詞のスタイルも変わってきているんですよ。その先が見えているから。

-その先にはどんなビジョンがありますか?
だんだん見えてきているのはもっとシンプルになるって事ですね。それって音の数を減らすというのではなくて、洗練させていく事だと思います。説明するのが難しいんですけど、バンドで言うとThe Cureみたいな感じになるんじゃないのかなと思ってて。

-あのThe Cureですか!?メロディーも演奏も良いけど、どこか違和感があるって感じなんですかね。
うん。この話をタナソー(田中宗一郎:the sign magazineのクリエイティヴ・ディレクター)にしたら、むしろR.E.M.なんじゃないって言ってて。今の話みたいに次の作品はとてもシンプルな構成なんだけど、鳴っている音は全てがキャッチーで、しかも人によって想起させるものが違う作品になるんじゃないかっていうのがだんだんと分かってきてて。

-「洗濯物をとりこまなくちゃ」のMVはアニメーションで制作されていますが、どうしてアニメで作ろうと思ったのでしょうか。
偶然というのもあるんですけど、以前ジャケットを手掛けてくれたイラストレーターのサヌキ君(サヌキナオヤ)がアニメをやりたいってずっと言ってて。でもアニメってとにかく日数がかかるんですよ。それでなかなか実現できずにいたんですけど、「洗濯物をとりこまなくちゃ」は2016年の頭にはできていて。表には出したい曲だったんですけど、いつどうゆう形でリリースするかを保留にしていた曲で。この曲でアニメを作ろうって事で話を進めておいて、出すべき時に出そうと思っていたんですよ。

-そうなんですね。それではこのMVでどういう事を表現したかったのでしょうか。
僕がイラスト担当の二人(サヌキナオヤとずっく)に言ったのは、音楽で語られている物語とは違う視点の物語があっていいと思っているから、歌詞に寄り過ぎないでサイドストーリーを展開して欲しいって伝えて。それによって曲に奥行きが出ると思って。

-だからこのMVの主人公は“虫くん”なんですね。
そうですね。さっきの話をした時にずっくのアイデアで虫を登場させようと思うって提案があって。それがバッチリだなと思ったし、アニメーションを動かす上で虫が主人公だったら、ニョキニョキしてて可愛いだろうなって思って。それで“虫くん”の大冒険になりましたね。

-つくづく思うんですが、シャムキャッツって可愛いものを出すのが好きですよね(笑)。
好きだから知らないうちにそうなっちゃうんですよね。それとかっこつけるのが恥ずかしいから、シャイな部分が可愛い方向に向かせるんじゃないかなと。できる事なら僕らもかっこいいロックバンドみたいな事をやってみたいんですけど、ちょっと恥ずかしくてできないっていう(笑)。否定的な意味ではなくて、僕にはそういうのって似合わないんじゃないかなって思うんですよね。

-今作はロックともポップミュージックの中間のようなサウンドが面白いと思います。とてもバランスのとれた作品になったと思うのですが、こういったバランスを意識して制作されたのでしょうか。
そこのバランスは意識してなくて。ただ好きにやろうとは思っていました。自分たちから出て来たものを形にして、自分たちがそれにどういう反応をするんだろうっていうのを確認したいっていう感じで。

-今作は本編に5曲収録されていてボーナストラックでライブ音源がついてくるという構成ですが、それが6曲目になるという構成がユニークだと思いました。これにはどういった意図があるのでしょうか。
単純に2枚組にしたくなかったからですね。普通はこれだけのライブ音源を入れると2枚組になるんですけど、それだとあんまり面白くない気がしていて。まずは全てを一枚に入れるっていうアイデアがあってこうなりました。

-でも聴いていて違和感がなかったから不思議なんですよね。
本当に!?それは良かった。5曲目の「デボネア・ドライブ」も先に挙げたアンビバレントな感情をテーマにしている曲で夢の中で向かって行くようでいて、現実に向かって行くという対比を描いていて。その対比の中でライブっていうものに入っていったらかっこいいんじゃないかと思って。ライブって現実的でもあり、ファンタジックだと思うんですよ。「デボネア・ドライブ」は皆で車を運転して、どこかの町へ行くっていう曲だからその後にライブ音源が入ったら、自分たちが車を運転して、ライブに行っている感じが伝わるかなと思って。


『君の町にも雨はふるのかい?』のツアー会場限定(大阪・東京公演)で販売する別冊では、夏目の書くストーリー性のある歌詞はどのようにしてできるのかについて触れたインタビューとミニポスターが一冊になったBELONGオリジナルのZINEを販売予定。前回分は完売しました。


-今作を聴いての印象ですが、どの曲も歌詞カードを見なくても聴くだけで全ての歌詞が聞こえてくるように歌っているのではないかと思いました。歌い方など意識した部分はありますか?
最近は意識するようにしましたね。『TAKE CARE』をレコーディングする時くらいから、やっと自分は歌わなきゃいけないんだなという事に気づいたんですよ。それまでは歌うのが恥ずかしいっていう気持ちもあって良くも悪くも歌っていうものに興味がなくて。でも歌というものがだんだん好きになっていって、伝えたいっていう気持ちが芽生えてきたんですよ。伝えたいからしっかり言葉を発したいと思うようになっていって。

-では前まではどのような事を考えて歌われていたのでしょうか。
表現衝動はありましたけど、伝えたいとは思ってなかったんじゃないかと思います。伝わるだろうって信じていたけど、誰かに何かを伝えるよりも自分はこれをやりたいんだっていう気持ちが強いというか。『TAKE CARE』を作った後も歌い方に関しては右往左往していたんですけど、今回の作品ができた後でこれでいこうっていうのが見えてきて。だから今回のEPは目指しているものがあって作った訳ではなくて、この作品を作る事によって歌い方もバンドサウンドも気づけた事が多かったんですね。

-前まではサウンドと歌が合わなかった部分もあるのではと思いますが、どのようなきっかけがあってサウンドと歌を見直そうと思ったのでしょうか。
4人の個性を伸ばしていかないといけないと思っていて。個性って磨かないと天然の変わっているものにしか見えないから磨かなきゃって思ってるんです。見直すというのとは違くて、もっと磨けるところが見えてきたから、今はそれを一生懸命磨いている時期なんですよ。

-どのように個性を磨いていこうと思っていますか?歌詞を中心に伺ったので、サウンド面について教えてください。
具体的な話になってきますけど、リズムの話からするとドラムは快楽的な方がいいと思っいて。僕は快楽にも2つあると思うんですけど、“破壊的なもの”と“踊る快感”とがあって。前者の方はTHE WHOみたいな白人のロックンロールで。これに関して僕らはできていると思うんですけど、後者はスティービー・ワンダーみたいに踊れるビートで。これはできる時とできない時があって。なのでベースとドラムに関してはそこを頑張っているっていう感じ。

-ブラックミュージックのビート感を出したいという事でしょうか。
それもちょっと違っていて。ブラックミュージックじゃなくても踊る事はできると思うんですよ。例えば和太鼓でも踊れるし。なのでハウスやファンクに寄っていくのではなくて、聴いた時に自然と体が動いてしまうものを求めていて。そういうことが今作を録り終えて目指していこうと思いましたね。

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-話は変わりますが、木村カエラの『PUNKY』に収録されている「好き」という曲の楽曲提供を行ったそうですね。これはどういったきっかけで実現したのでしょうか。
カエラさんのスタッフの一人が元バンドマンで。その人経由で曲を書いてくれないかっていう話があったんですよ。ただコンペ形式なので採用できるかは分かりませんっていう話になってて。試しに僕と菅原で1曲づつ書いてみたんですよ。「GIRL AT THE BUS STOP」を聴いて話をくれたのかなと思ったから、自分のバンドではできないけど、こういう曲もできるんですよっていう少し複雑な構成の曲を提出したんですよ。そうしたらメロディーの作り方を気に入ってくれて。でも今回はそういうものではなくて、もっとバンドっぽいものを求めているって言われて。じゃあこれでどうだっていう事でめちゃくちゃシンプルなものを作って提出したら、それが採用されたんですよ。面白いなと思ったのは曲やメロディーではなくて、バンドそのもの持っている汗感が求められていたという事が後から分かったんですよ。

-そうなんですね。他のアーティストに曲を提供してみていかがでしたか?
僕らも演奏で参加させてもらったんですけど、カエラさんは一発で歌を決めるんですよ。カエラさんは別の部屋でレコーディングしたんですけど、一発録りでレコーディングして修正なしで完成っていう。普通だと手直しはあるはずなんですけど、それが全くなくてすごいなと思いましたね。こういう曲だからそういう方向に寄せたというのはあるのかもしれないんですけど、上手くて感動しましたね。

-歌い手として参考になった部分もありましたか?
参考になりましたね。でもそれを見た時は参考になるというレベルにまで行けてなくて。そこで衝撃を受けて自分も頑張ろうと思って。その後、声の出し方の本を読んで勉強したんですよ。例えばアメリカって政治家の一人一人にボイスティーチャーっていう先生が付いていて。顔や髪型と同じレベルで声もかっこよくないと発言に説得力が出ないっていう発想なんですよ。そういうのを今、勉強していますね。

-夏目さんはENJOY MUSIC CLUB「夏の魔法」で役者デビューしましたが、どういうきっかけで話がきたのでしょうか。
EMC(ENJOY MUSIC CLUB)からMVを撮りたいと思っていてゲイ役なんですけど、お願いできませんかっていうメールがきて。僕はやった事のない事は基本的に何でもやってみたいと思うタイプなんで二つ返事でやるよって連絡して。

-演技は初めてですよね?自信があったのでしょうか。
初めてですね。自信はなかったんですけど、自信のない事ほどやった方が良いなとは思っていて。自信のある事をやって失敗したら嫌だけど、自信のない事を失敗しても自分が傷つかないじゃないですか。

-実際に演技してみていかがでしたか?
バンドの活動って自分で動いて判断しているから、ちょっと辛い所があって。どういう曲やどういう歌い方がベストかを自分で判断しないといけないんですけど、自分たちでは分からないことが多くて。だから最近はプロデューサーやディレクターが欲しいなと思ってて。今回のMVの場合は監督やメイクさんもいて、僕は素材として指示通りに動けば良いという状況で。その指示通りに動けば良いっていう感覚は新鮮で気持ち良かったです。それと今回はゲイ役をやらせてもらえるという事でゲイの人に失礼にならないようにと思っていました。ただ音楽をやっているとゲイのミュージシャンっていっぱいいて。だから彼らのように振る舞えば良いんだなとは思っていました。音楽を聴いていると自然とその辺は疑似体験をしていると思うんですよね。

-それでは最後に今作をどのような人に聴いて欲しいと思いますか?
好きなものに飽きた人に聴いて欲しいですね。どんなにハマっていても途中で飽きるじゃないですか。何も聴くものがないなって時に、この作品を聴いてもらうと面白いかもしれない。聴く人は限定していなくて、音楽以外でもプラモデルとか好きな事に飽きたら聴いてみて欲しいんですよ。

【Release】

『君の町にも雨はふるのかい? 』
NOW ON SALE

【ワンマンツアー 2016-2017】
『君の町にも雨は降るのかい?』
2016年11月26日(土) 千葉・千葉LOOK
2016年11月27日(日) 宮城・仙台CLUB JUNK BOX
2016年12月10日(土) 新潟・GOLDENPIGS BLACK STAGE
2016年12月11日(日) 石川・金沢vanvan V4
2016年12月17日(土) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
2016年12月18日(日) 大阪・umeda AKASO
2017年1月21日(土) 福岡・福岡graf
2017年1月22日(日) 広島・広島4.14
2017年1月28日(土) 北海道・札幌Colony
2017年2月3日(金) 東京・恵比寿LIQUIDROOM

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