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現役高校生でありながらフリースタイルMCバトルで優勝したラッパーLick-G(リックジー)とは何者か?デビューアルバム『Trainspotting』で見せた類い稀なるラップスキルはどのようにして確立したのか?

アーティスト:Lick-G  インタビュアー:yabori 撮影:樋口隆宏

-ラップを始めたきっかけについて教えてください。
Lick-G:誰からの影響というのは特にないんですけど、13になったばっかのとき当時ハマってたyoutubeに関連動画として上がってた日本語ラップの楽曲から影響を受けていて。韻や言いたい事を言葉にしている所が面白いと思いましたね。元々は親父がICE-Tの著書の翻訳をやっていたりKRS-ONEにインタビューしてたりしていた相当なヒップホップジャンキーだったんで、たまに親の部屋で2pacやらがかかっていた記憶はあったんですけど、当時は興味がなくて。日本語ラップや、フリースタイルバトルを聴いたり見たりする中で、親父が聴いていたようなアメリカのヒップホップを聴くようになって。今自分は完全にアメリカの現行ヒップホップに取り憑かれてます、今よく聴いているものはWiz Khalifa、Logic、Russ、Witt Lowryとかですね。

-Lick-Gという名前の由来について教えてください。
Lickはイギリスのスラングでイケてる、かっこいいという意味、っていう情報を2004年くらいの古びたスラングサイトみたいなので見かけて、そこから取りました。詳しく調べてもLickがスラングなんていう情報出てこなかったんで、デマだとは思うんですけど響きが良かったんで。Gについては、自分の本名が“絃”なんでLick-Gという名前にしました。

-現役高校生でありながらMCバトルにも優勝されている事もあり、有名ラッパーだと思うんですが、学校ではギャップを感じる事はありますか?
ギャップは感じまくりですね。有名人だとヘイターが多くて嫉妬されてて。俺がラップをやっているのを知らない時はみんな普通に接してくれていたんですけど、ラップをやっている事が知られるようになってからは周りが同じ学校だからって勝手に自慢されたりする事はありますね。お前友達でも知り合いでもねえんだけど、的な。

-以前のインタビューでヒップホップは這い上がれる音楽であって、お金にもすごく興味があるって言っていたのが印象的でした。BELONGで普段取り上げているアーティストはお金の話をする人は少ないのですが、どうしてお金の部分を重視するのでしょうか。
自分がラップを始めた時周りにいたラッパーは大半スターになって稼ぐって言ってたんですけど、そんな中自分は売れなくてもやりたい事をやれていればいいかなと思っていて。でも自分の場合はやりたい事をやってきた流れでなぜか上手い具合に稼げるようになってきて。一回のMCバトルで10万とか獲れることもあるし、ライブでそこそこギャラももらえるようになってきたんで。あぶく銭の為にスタイルを変えたわけではなくて、以前よりも諸々が能動的になったくらいですね。

-その延長線上に今回のアルバムがあるんですね。
そうですね。ヒップホップはもともと貧困街の人たちが這い上がるって意味でお金が重要な要素だったから、今でもヒップホップはそういうテーマが根付いていると思っていて。実際に今のアメリカのラッパーの歌詞にもお金っていうのはよく出てきますし、逆に金の話ばっかりするな主張をしているアーティストもいるんですけど、お金はヒップホップを語るに当たっては避けては通れないですね。あとはセルフボースト(自己賛美)もヒップホップには重要な要素で。地位や実績を誇示する音楽は少ないけど、ヒップホップは何を言ってもOKなカルチャーなんで。

-流れるようなラップがとても特徴的だと思うのですが、このスタイルはどのようにしてできたのでしょうか。
色んなヒップホップを聴いては自分の中に落とし込んでいるんですけど、当たり前のことながら自分のフローも元を辿れば原型はあって。それになるべく被らないように自分なりに改良していますね。どこまで残るかは分かりませんが、一度作品を作るとなるとちゃんと残るものなんで、できるだけオリジナルなものが作りたいと思っていて。最近のラッパーでフローを全部アメリカのヒップホップのコピーしてる人が少なからずいて。歌詞だけでなく、音楽性もそのラッパーのマインドを滲ます自己主張なので、いくら歌詞を変えて歌い上げていても面白くはないですね。各々の定義なので、自己主張があくまで歌詞だけだという定義ならいいと思います。僕はUSラッパーのフローを頭からケツまで丸ごとパクって自分の手柄にする事に何の意味があるのか分からないんですよ。だから自分のスタイルを築くように意識はしているつもりです。

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-それではアルバムの話に移りたいと思うんですが、『Trainspotting』というタイトルにはどのような意味があるのでしょうか。
『Trainspotting』という映画があって、ざっというとそのテーマが敷かれたレールから逸脱した人生を送るという内容なんですけど、自分も成り行きでレールから外れてしまったんで、そういう生き方も面白いよっていう意味でこのタイトルを付けました。閉塞的な空間にいるよりももっと自由にしていて良いんじゃないかなと思って。いくら勉強がよくできて、高校に通っていても自分の意思を持っていなくて周りに流されている人が大半なんで。

-なるほど。今作の歌詞にテーマがあれば教えてください。
歌詞は決めて書いている訳ではなくて、ビートができた段階で言葉を載せる事が多くて。基本的には曲ありきで作っているんで音に合わせた歌詞もあるから、ビートに左右される部分はありますね。でも全曲完成したのを改めて通して聴いてみると、レールにばっか沿うなっていう“trainspotting”なテーマの曲は多くなってました。

-それではMCバトルとアルバムの2つに分けるとそれぞれで表現したい事はありますか?
MCバトルは表現の場というか対戦相手との対話になってしまうものなんで、ほとんどが自分対相手という構造なんですけど、アルバムだと自分対不特定多数になるんで表現する事自体が違うと思いますね。バトルだと相手の言った事に対してどう返すかという事や、8小節で如何に場を盛り上げるのに長けている人が勝つもので。そういう中でも自分の知っている曲がバトル中のビートで使われた時はその元になった曲の歌詞を引用する事やダブルミーニングの表現をフローに組み込むのがベストだと思っていて。でもそれができる人は本当にごく少数で、大半が過激な言葉を使ったり、音源じゃ出さないような大声でがなり立ててバトルしているのが現状で。でも自分はフィールドがバトルだったとしても面白いかけ言葉を使ったり、がなり立てずなるべく曲で出すようなフローをすることで自分のヒップホップを表現したいと思っているんで対相手だけでなく不特定多数にも向けた表現を意識していて。でもバトルは相手に勝つことが大前提なんでそういう部分は後回しになってしまう事が多いんですけどね。ウィットな表現じゃない下品な口喧嘩こそがMCバトルとか言われても、本来のヒップホップはそういうものじゃないんで。

-なるほど。デビューアルバムが来年リリースされますが、これからはどういうキャリアを積みたいと思いますか?
MCバトルは来年くらいで辞めようと思ってて。自分が最初に出会ったバトルと現状のバトルが別物になっている気がしていて。MCバトルって韻をどれだけ踏むかという事や音楽性とか、フローっていう基準がいくつもあると思うんですけど、その中でも韻を踏む事が重視され過ぎていると思ってて。音楽とは関係ない所にいっているにも関わらず、それでもバトルに負けてしまうと自分の音楽が否定されている気がしていて。今年は自分で負けを認める試合も勿論ありましたが、自分の中では絶対に負けていないだろうって試合が9割だったんですよ。対戦相手の身内がほとんどの会場で負けたのも結構あったし、そういう会場でもスキルでなんとか黙らせて決勝くらいまでは行けるんで余計納得いかないというか。これだけ自分のスタイルを磨き上げて最先端のヒップホップをやっているのに負けるのはどうかなのかと思っていて。だったら自分で作品を作って独立をした方が良いんじゃないのかなと思って。

-MCバトルって試合によって判断基準があいまいな事もあるんですね。
もっと判断材料があってしかるべきだと思うんですけど、判断基準はその会場の客の声が全てと言えば全てなんで。客の声をひっくり返す程の実力はあると自負しているんですけど、それすら敵わないくらいの状況もあって。いくら自曲で実力を証明できると分かっていても、神経質な部分が自分にはあるんで、やっぱり負けは気になる。だからMCバトルのほとんどが審査員制になれば良いと思うんですけど、判断基準は客の声でそういう人はフラットに試合を見る事ができないから、自分がヒール役になる事が多くて。あとは、オールドスクールなビートの上で勢い任せの韻で勝ってしまうラッパー全員をふるい落とすために、ビートを全部トラップにして、軽視されがちな音楽性をしっかり問うというのも善策だと考えています。

-そうなんですね。スタイル的に周りとかけ離れているから、お客さんからしたら悪役という風にみなされると。
もしかしたら自分のスタイルは日本のMCバトルの中では先に行き過ぎているのかなと思ってて。でもそのスタイルを捨ててまでバトルに合わせる事はしたくないと思ってて。負けても自分を貫いてはいるんですけど。だからバトルはもういいかなって。これからは作品を中心に活動をシフトしていこうと思っています。

-それでは最後に今作をどのような人に聴いて欲しいと思いますか?
自分を知っている人が聴けば良いと思ってますね。これを聴かないとジャパニーズヒップホップの新しい時代に遅れるっていうほどセルフボーストする気持ちもないんで。

【Release】
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『Trainspotting』
2017年2月15日

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