最終更新: 2019年1月1日



以前Twitterで募集した #YOUTHWAVE応募枠で唯一インタビューに漕ぎつけた、大阪発の新人バンドWOMAN(ウーマン)。その正体に迫る。

アーティスト:宇都宮 航(Gt.) インタビュアー:桃井かおる子

-どうして今回“YOUTHWAVE”の企画に応募したのか、動機について教えてください。
宇都宮:もともと僕らはTHE NOVEMBERSが好きなんですけど、BELONGは彼らのインタビューを掲載している事もあって前から愛読していて。僕らは今年、バンドを始めたばっかりでこれから自分たちの音楽をどう広げていこうかって考えていた時に、今回の機会があったので、応募させてもらいました。

-WOMANの結成以前にtayutaというバンドで活動されていたようですね。tayutaからどのようにしてWOMANになったのか、そのいきさつについて詳しく教えてください。
tayutaが解散するタイミングで、今やっているWOMANを発表したんですけど、制作自体は去年の春からやっていて。WOMANは前身バンドのボーカル以外のメンバー4人が続けてやっているんですけど、ギターの松永と僕は高校の同級生だったんですよ。2人とも軽音楽部で音楽をやっていたんですけど、松永が大学に進学した時にドラムの団長が一緒にバンドをやろうっていう話になって、そこから僕にも声がかかって。ベースの柳本は他のバンドをやっていたんですけど、そのバンドが解散するタイミングで一緒にやる事になって。もともと柳本は高校の後輩ですし、tayutaを好きでいてくれていたんですよ。それでこの4人が集まったんですけど、ボーカルのサキヤマは彼が他にやっているバンドとtayutaでよく対バンをしていて。僕らが解散するタイミングで、彼のバンドも活動休止することになって。お互い距離が近いがゆえに一緒にやる事は意識してなかったんですけど、よくお世話になっていたライブハウスの店長が一緒にバンドをやってみたらって提案してくれて。音楽の趣味が似ていたんで、去年の春にやっと結びつきましたね。

-前身バンドのメンバーが4人も一緒だから、tayutaという名前で再始動するという方法もあったと思うのですが、あえてバンド名を変えたのはどうしてでしょうか。
tayutaとは違う新しい事をやりたいと思ったからです。前のバンドの名前だと思い切って新しい事ができないですし、tayutaの時も僕が曲を作っていたんですけど、ボーカルのサキヤマが加入するまで1年くらいの期間が空いたのもあって、その間に作る曲が変わってきていて。そういうギャップを抱えて音楽を作るよりは新しい事をやった方が健全だなと思って、バンド名を変える事にしました。

-WOMANというバンド名にはどのような意味が込められているのでしょうか?
名前よりも先に曲ができたというのがあって、バンドのイメージがまとまらなくて。どうしてもバンド名が決まらなかった時に、それなら自分たちの好きな曲やアルバムのタイトルからとろうっていう事になって。僕がiPodを出した時にちょうどRhyeの『Woman』っていうアルバムを聴いてて。試しに“WOMAN”っていうバンド名はどうかなって言ったら、メンバー全員気に入ってくれて、WOMANに決まりました。男5人組なんですけど、あえて“WOMAN”っていうのも面白いかなと思って。言葉の意味が広すぎて普通はつけない名前だと思ってつけました。

-WOMANには“g e n r e l e s s、g e n d e r l e s s、f e a r l e s s”というコンセプトがありますが、これにはどのような意味があるのでしょうか。
まず“g e n d e r l e s s”はバンド名がWOMANなので、性差関係なく聴けるようにしたいという事と、サキヤマの声が中性的だという事もあります。WOMANというバンド名に込めた意味にもつながるんですが、トランスジェンダーがテーマの映画に影響を受けていて。例えばグザヴィエ・ドランの『わたしはロランス』っていう映画があるんですけど、これは僕が今まで見た中で一番打ちのめされた作品で。社会的にも教師としての立場を確立している主人公が、結婚を前提に付き合っていた女性がいるんですけど、その主人公がある日、自分は生まれてきた身体を間違っていたと女性に告白するんですけど、その現実に対してその女性がどう支えていくのかっていうストーリーで。それを見て性別って何なんだろうって考えさせられましたし、僕らが音楽を作るからにはそこを超えていきたいなと思って。“g e n r e l e s s”の意味はそのままで、音楽をやる側が自分たちはこういうジャンルですって言うのはダサいなと思ったんで、僕らはそこには属しませんっていう意思表明です。“f e a r l e s s”はさっきの話にもつながるんですが、自分たちの好きな音楽をやりたいと思って始めたんで、恐れずにどんな音楽でも自分たちが好きになったものは取り込んでいこうっていう事でこういうコンセプトを掲げる事にしました。

-なるほど。バンドロゴのデザインにもこだわりが伺えますが、これにも何か意味があるのでしょうか。
見た目の良さを重視してこういったロゴにしたんですけど、他では見たことのないものなのでフラットにバンドを見てくれるかなと思ってこれにしました。

-今年の1月にリリースされた4曲入りEP『Nude』は歌ものの内容ですが、最新曲「Insomnia」はダンスミュージック寄りの音になっていると思います。『Nude』を出して少ししてから、何か音楽性を変えるきっかけがあったのでしょうか。
『Nude』の制作時はギターで作曲していたんですけど、「Insomnia」はシンセサイザーを導入したタイミングで。シンセを使用しているうちにこういう曲調のものができてきて。そこでやっと好きな音楽とやっていた音楽のギャップが薄れてきて。この曲は3月の頭にレコーディングしたんですけど、その直前にJames Blakeのライブを見て。そのライブが音源と違ってすごくアグレッシブな演奏をしていた事に影響を受けました。それまでは暗くて重たい印象の曲だったんですけど、彼のライブを見た衝撃がこの曲に直接反映されていると思います。

-どうしてシンセを入れて楽曲を作ろうと思ったのでしょうか。
ギターだけで楽曲を制作するのも良いんですけど、もっとバンドの音楽性に幅を持たせたいと思って。あとは楽器が好きなのでシンセを買って、どんな音を作れるのか試してみたいと思っていました。今までの音楽と決別するくらいの気持ちで新しい音楽を作りたいと思っていたので、シンセとの出会いはとても刺激的だったんですよ。「Insomnia」はボーカルエフェクターを使っているんですけど、サキヤマがBon Iverが好きなのでそれにも影響を受けていて。いざ使ってみるとサキヤマの声質にも合っていて、シンセ主体の曲に上手くハマったので、良かったと思います。

-今後バンドとしてどのような楽曲を作っていきたいと思いますか?
「Insomnia」は硬めな音で演奏することが多かったんで、今はその反動でアコースティックな音楽をやりたいと思っています。それでいてシンセで得た質感を生音にも活かしていきたいとも思ってて。生演奏にこだわってバンドをやっているので、それがうまく伝わるようにバンドの母性を出していきたいですね。

-目標にしているアーティストがいれば教えてください。
僕らは海外に向けて発信していきたいので、音楽性がどんどん変わっていくバンドを見ると、その心意気だけでもグッとくるものがあります。THE NOVEMBERSも毎回音楽性が変わりますし、自分たちもそうありたいと思います。バンドっていうだけでみんな同じ見られ方をするものだと思うんですけど、僕らはどんどん変わっていきたいし、リスナーとしてもいろんなものを聴くので、それを自分たちの音楽にも反映していきたいと思います。

-それってもしかしてRADIOHEADみたいになりたいっていう事ですか?
そうですね!僕もサキヤマも彼らが大好きで、孤高だけど商業的にも成功しているのがすごいと思います。聴く側の想像を超えたものを毎回作ってくるんですけど、リスナーも彼らについていくっていう。僕らもそういう得体の知れない存在になりたいですね。

-5月には大阪でワンマンライブを予定されていますが、今年結成されたにも関わらず、ワンマンは思い切った決断だと思います。どうしてこのタイミングでワンマンライブをしてみようと思ったのでしょうか。
バンドとしてのドキュメントを見て欲しいと思ったからです。音楽を作る時間もバンドをやる時間も有限だからこそ、僕らはやりたい事をやりきると決めてWOMANを始めたんです。だからやりたいようにできるワンマンが一番良いと思って。ワンマンでは初めてVJを入れますし、このバンドになってからライブはまだ一回しかやった事がないんで、どれくらいの人が知ってくれているかという事を含めていろんな不安はあるんですけど、やると決めたからには全うしようと思います。普通はワンマンって知名度が出てきて、ツアーで色んな所を周って最後にやるものだと思うんですけど、そんなルーティン自体がどうでも良いと思ってて。僕らはやりたいからやる、っていうだけです。

【DOWNLOAD】

『Insomnia』
BELONG本誌を手に取ってくれた方限定で、WOMANの新曲「Insomnia」をフリーダウンロードできます!

【Live】
first one-man live
”Documentary #1”
2017.5.6@大阪 Namba artyard studio
VJ:POKHARA
来場特典:新曲『regret』のダウンロードカードをプレゼント

【Release】

『NUDE』
Now On Sale

【PROFILE】
2017年より始動。音楽表現においてジャンル、ジェンダーに捉われない洗練された感性をモットーに邁進する5人組バンド 。

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