最終更新: 2020年12月6日

“Erratic”。辞書には、「突飛な。風変りな。きまぐれな。不規則な。」といった意味が挙げられている。自身の音楽をそう表現する韓国のシンガー・プロデューサー、MISO。

アメリカでも人気を博す韓国のR&BシンガーのDEANを筆頭に、新進気鋭の若手アーティストが集結したClub Eskimoのメンバーの一人だ。

現在、韓国でK-Popに匹敵する勢いを見せるHipHop・R&Bシーンの中でもひと際異彩を放つ彼女。柔らかでチルアウトなR&B。永遠に包まれていたくなるような心地よいビート。

彼女の音楽は、同じ韓国のポップミュージックでもトーンや温度、見える景色が違う。どうして、彼女はこのような作品が作れるのだろうか?

クラシックやジャズが好きな両親の影響を受け、チェロやフルートを習っていたという彼女。韓国に生まれ、人生の半分をイギリスで過ごし、その後また韓国へと戻ってきたという。

テレビやラジオから流れる音楽はほとんどがHipHopやR&Bという90年代~00年代初頭のイギリスで育った彼女には、当然のようにその音楽や文化が染み込んでいる。

当時は、AaliyahやUsher、R.Kellyを好きだったそうだ。韓国に戻ってきたとき、初めは韓国語さえ分からず、文化にも馴染めなかったという。そんな彼女が韓国の音楽とは一線を画す音楽を作り出すのは、当たり前のことかもしれない。

2015年には、パリで開かれたレッドブル・ミュージック・アカデミーに韓国人として初めて参加。

世界各地から選ばれたプロデューサー、ヴォーカリスト、DJ、楽器の演奏家など、独自に音楽を追究する優秀な人材が集まる国際的な音楽イベントだ。

また、彼女の最新シングル「Take Me」は、SpotifyのUSバイラルチャート50で3位を獲得するなど注目を集めた。

さらに、2017年にはClub Eskimoのメンバーとしてカナダ・アメリカツアーに参加、DJとしてパフォーマンスを行っており、彼女の存在は世界に浸透し始めている。

このように、彼女自身が国を超えて様々な音楽や文化を体感してきたことも、世界に通用する音楽を作り出した一因といえるだろう。そして、優美なサウンドはもちろんのこと、彼女の音楽を唯一無二のものにしている理由のひとつは、その“声”でもあると思う。

なめらかで憂いを帯びたボーカル。ゆらめく歌声。その甘美な響きに一瞬で絡めとられてしまう。何度でも聴いていたいと思える声は、彼女の音楽の最高のスパイスだ。

これから彼女がどう活動し、どんな作品をリリースしてくれるのか。ミステリアスな彼女そのものが“Erratic”であり、予期できない。そのヴェールを脱いで私たちの前に現れてくれるのを、今から心待ちにしていたい。(木下トモ)

Miso – Take Me (Official Video)