「Suchmosはこれからどんな音楽を鳴らしていくのだろうか」、彼らの2曲入り最新シングル『FIRST CHOICE LAST STANCE』を聴いて率直にそう思った。

今年の頭に発表したアルバム『THE KIDS』が大ヒットし、先行曲である「STAY TUNE」はホンダの最新車種のTVCMにタイアップされるなど、メンバーと同世代やそれ以下の世代だけでなく、オーバー40の世代からも注目を集めているSuchmos。

彼らの登場は近年流行っている「あなたを応援してます!」といったノリが主流となっているJ-ROCKに対し、バンドサウンドの中に自分達のルーツであるソウルやR&Bのテイストを盛り込んだスタイルがそれまでにない新しい方向性を感じさせ、一目置かれる存在になった。

つまりシーンに対するカウンターとなりえる音楽として、今どきJ-ROCKに飽きてきた若者やルーツミュージック世代の大人達まで幅広い世代から支持を集めるようになった。さらにサウンドだけでなく、上手い具合に韻を踏んだ日本語のはずなのにどことなく英語っぽく聞こえ、それでいて挑発的にも感じられるストレートな歌詞もまた、彼らの楽曲が支持されている魅力の一つである。このようにしてSuchmosを紹介すると、新世代のロックを鳴らしているバンドと感じる人も少なくないだろう。

実際にメンバーの数人は音楽大学の先輩後輩の間柄であり、Vo.YONCEに関しては中学生の時にニュージーランドにホームステイした経験があるなど、メンバーのプロフィールからしてそつがない。その上ファッションセンスまで高く評価され、音楽性だけでなくルックスまでもが注目の的であり、Suchmosというバンドそのものがブランド化していると言っても過言ではない。

この程リリースする『FIRST CHOICE LAST STANCE』は、彼らが立ち上げたレーベルF.C.L.S.からの第一弾シングルであり、レーベル名に込めた意味をそのままシングルタイトルに持ってきている。「最初に選んだことこそが自分達の姿勢である」という意思表示、それほど気合いが入っているということである。このシングルに収録されている2曲は彼らの意思を反映するように新たな一面が垣間見れるものの、リスナーにとってこれからどんな音楽をやっていくのか分からなくもさせる。

1曲目の「WIPER」。出だしのギターはそれまでにないロックな一面を感じさせるのだが、クラブミュージック調のシンセ音とスクラッチ音が重なって、持ち味であったシンプルなサウンドが損なわれているのはもったいない。それでいてボーカルは今までよりも半音高いキーで歌っているのだが、ボーカルパートのメロディーとYONCEの歌声が上手くハマらない。しかも歌詞はYONCEが自ら書いたものでなく、SANABAGANのメンバーでもあるベース・HSUが書いたものを歌っているからか、借り物の言葉を歌うことで彼らの武器であった等身大というメッセージ性が薄れてしまうのではないか。

2曲目の「OVERSTAND」。この曲の歌詞はYONCEが書いたもので、彼が生まれた茅ヶ崎の街のイメージを表現した穏やかなサーフロックという内容になっている。韻を踏んでいる節はほとんどなく、Suchmosの楽曲としては珍しく、歌詞がはっきりと聞き取れる。曲の展開に関しても、同じく茅ヶ崎出身の桑田佳祐のソロ曲を思わせる所もあり、ロックと言うより歌謡曲に近いのは新境地とも言えそうだ。

今回のシングルリリースに合わせて、彼らは、「バンドをすること以外にかっこいいことはない」という発言をしていた。今作のタイトルに込められた意味を感じさせるが、肝心の楽曲からはその言葉に匹敵する説得力を感じることは難しい。ジャンルに囚われることのなくどんな世代の人々にも届く音楽を鳴らしたいと思うのだが、方向性を見定めない限り、バンドの持つ本来の良さや楽曲の持つ力は引き出せないのではないだろうか。

自らレーベルを立ち上げ、一つのブランドとしてバンドを確立させたいという思惑を感じさせる本作。スタンダードなブランドになるのか、それともファストファッションになるのか、次作でその力量が問われるだろう。(桃井 かおる子)

【リリース】

『FIRST CHOICE LAST STANCE』
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