シンガポールには独自の音楽がない。前回のアジアン・インディーのレビューを書いたときに、そんな言葉を聞いた。しかし、その特有なシーンの中でシンガポールという島国の音楽を模索し、アジアに、世界に届けようと奮闘するバンドがいた。M1LDL1FEだ。

M1LDL1FEの前身はシンガポールのインディー・シーンを牽引してきたバンド、Take Two。シンガポールには、才能ある若手アーティストを集めて行われるNOISE Singaporeという育成プログラムがあり、そのプログラムの中で最も優秀なアーティスト達が選出される。Take Twoとしてその賞を2014年に受賞した彼らは、それ以降目覚ましい活躍をみせる。Walk the MoonやTravis, Death Cab for Cutieのシンガポール公演のオープニングアクトを務め、中国や東南アジアでツアーを敢行し、シンガポールのiTunes Chartではトップに位置する人気バンドとなった。瞬く間にシンガポールで最も愛されるインディー・ロック・バンドの仲間入りを果たした彼らだが、その後、メンバーの離脱をきっかけに、今年に入ってM1LDL1FEと改名した。

大学時代にカバーバンドとして活動を始めた彼ら。SoundCloud上には、Two Door Cinema Club, Family of the Year, Fleet Foxes, Yuck, We are scientists, The Wombatsなど洋楽中心のカバー曲がアップされている。本人達が2000年代の音楽に影響を受けたと語るように、ロックンロール・リヴァイバル、ニューウェーヴ/ポストパンク・リヴァイバルと呼ばれた時代の系譜を継いでいることが窺える。また、同じくSoundCloudでThe 1975, Bombay Bicycle Club, Backstreet Boys等のカバーも公開していたり、インタビューでWalk the Moonのカバーをしていた時のことを話していたりと、幅広く音楽を吸収し時代に呼応してきたことが彼らのポップセンスを形作ったと言えるだろう。

M1LDL1FEとして発表した新曲は、格段に洗練された印象を受けた。インディー・ロックにダンスのグルーヴを乗せたキャッチーな「Distraction」も、TOTOを思わせるAORサウンド的ドリームポップな「How You Forget」も、Take Two時代からの楽曲の煌めきや耳に残るメロディーはそのままにして、日本の音楽シーンを騒がすyahyelやD.A.N.のような“低体温”なスタイリッシュさが加わり、世界へと届く質感が備わったように思える。

上質なインディー・ロックとクラブ文化の浸透したシンガポールで培われたダンスのグルーヴ、南国特有の空気感が混ざり合うユニークさが彼らの魅力。力強く、世界のどこででも通用するだろうボーカルは、アジアから世界へ発信していける可能性を感じる。彼らのSNSで度々見つける“シンガポールの音楽”という言葉には、自分達が切り開いてきたシンガポールの音楽シーンを世界に伝えたいという熱意が見てとれる。常に未来を見つめ歩みを止めない彼らが、アジアの音楽シーンを面白くしてくれることは間違いないだろう。(Tomo Kinoshita)

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