セルフタイトルであり彼らにとってのデビューアルバムとなる『SEKAITEKINABAND』で見せた世界的なバンドの音楽は、疾走感と共に繰り出す、噛み付くようなダークウェイブだった。「HELLO」をはじめとした挑み、訴え、攻める曲たち。現役大学生とは思えないほどの大人びたクールな佇まいを映した冷たいサウンドと、とぎ澄まされたセンスを発揮していた。同年にLilies and RemainsとPurpleとのスプリットアルバム『UNDERRATED』を発売するなど、次世代ポストパンクシーンの先鋭的存在だったように思える。『SEKAITEKINABAND』発売から約5年半、そして結成から10年経った2017年。11月18日に自身2枚目のアルバム『NEW』をリリースした。

10周年を迎えるアーティストは大抵いくつかのアルバムをリリースし、通常はアルバムがリリースされる毎に徐々に表れる変化や、成長、違いと共通を感じ、リスナーに様々な姿を見せているものだ。しかし彼らには、バンド個人の作品としては2つしかない。『SEKAITEKINABAND』と『NEW』の2作品では雰囲気をがらりと変えてきた、まさに彼らの“NEW”スタイルの提示だ。それは可能性を広げる音楽。自分たちの強味であった理想的なダークウェイブやポストパンクではない部分に軸を置いたアルバムである。

世界的なバンド、と聞いてイメージするものがあるとしたら、間違いなく刻まれたビートの勢いに乗じて攻め抜くクールなポストパンクミュージックだろう。森健太朗(Vo./Dr.)のハイキーのシャウトやGang of Fourを彷彿とさせる硬質なギターサウンド、乾いたノイズの中に浮かぶ捻らないリズムパートがとても印象深く残っている。そして、国内ではコンピレーションで共演したLilies and RemainsやPLASTICZOOMSと共有するソウルを根強く感じさせていた。

『NEW』ではあのクールなのにアグレッシブなスタンスを感じることはなかった。若さとエネルギーを細く尖らせていたこれまでの曲たちと比べ、世界的なバンド全体におけるサウンドのパワーやバイオレンスさは落ちた。ガツンとくる衝動的な威力もない。特にアルバム前半は、リード曲「LOVE?」含めミディアムテンポのルーティンが続き、非常に聴きやすさが増した分、クセやアクの強さがなくなってしまったように思える。というのが最初の印象だった。そして、このアルバムのアクの強さは聴くたびにその姿を現していくことを知る。

過去の作品と違う点は大きい。ジャンルそのものが違うとも言えるほどだ。今作は全体的にみずみずしさを持つ音たちが並び、よりクリアで直球な音選びで整えられている。トップナンバーである「LOVE?」は始まりから終わりまで、やわらかくゆっくりと揺れる水面を、薄い光が滑るようにさらりとしている。今までの猛烈に掻き鳴らす音と打って変わって、温かくて丸い音たちが集められたバンドアンサンブルは心地よく鳴り響く。とまで言うと、軽やかで綺麗なアルバムだと想像してしまうが、よくある“海の見えるきれいな景色”というような神秘的できれいなものだけではない。空と混じり合って境界をなくした海が、波の揺れの間に空気を食べて、呑み込みながら呼吸をしている姿のような一面をも見せる。鮮やかに変化していくローファイエフェクトに揺れる「Olympic」やヘヴィなリズムを鼓動と地を這うような森のボーカルが闇と光を映す「CURE」では夜の海を見ると、深みに迷い込みそうになるあの重たい世界においては、まさに世界的なバンド本来のダークサイドを垣間見ることができる。『NEW』を通して彼らの音楽が見せる光景そのものはとても現実的で、リアルな空気感を常に漂わせていた。

アルバムの中盤にあたる「TEOREMA」では、同名のピエル・パオロ・パゾリーニの映画のように、同じ展開の中で、激情し、変貌する瞬間を重ねる。この曲以降はそれまでの大人しい雰囲気をがらりと変えるように、各曲に様々な遊びが施されている。「END」では彼らの武器であった乾いたギターサウンドを後半がっつり組み込んでいたり、最後を締めくくる「Uta」ではシンプルな展開の上でやさしくて、どこか哀愁をまといながら歌声とエフェクトが水滴のように落ちては消えていったりと、各曲に全体的な統一性はありつつも細かく聴いていくとすべて雰囲気が違って見えていく。それはあらゆる手法といろんな効果を取り入れることに成功したからだ。基盤とされる構成が繰り返される中で、小さな音の重なりを楽しむこと。それが今作のコンセプトなのだ。そして、リスナーはそれを繰り返し聴くことで、ひとつずつ明解にして変化や音の集いを楽しむ。コンセプトは聴き手まで届き、まるごとじっくりと楽しむことができる作品ではないだろうか。

すました顔で殺意を解き放つ『SEKAITEKINABAND』から、大きくアプローチを変えて作られた『NEW』は、聴くたびにひとつひとつの音の揺らめきに惑わされていく。「現在は“いい曲”を作ることだけを考えている」と森は語る。彼らは今作で、自身の音楽の幅や可能性を提示して、フィールドを広げている。これからが、まさに世界的なバンドになる道へ踏み出せるのではないだろうか。(pikumin)

【Release】

『NEW』
Now On Sale
販売先:
タワーレコード渋谷店
FILE-UNDER RECORDS
FLAKE RECORDS
sone records
PROVOKE ASSOCIATION(Web Store)

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