最終更新: 2020年6月9日

ドイツ発・新鋭シューゲイザーバンドJaguwar(ジャグウォー)のデビューアルバム『Ringthings』が、翌年1月17日に発売されるという知らせが届いた。

Jaguwarとは

Jaguwar
結成して5年、2年おきにファーストEP、セカンドEPとリリースを重ねてきたJaguwar(ジャグウォー)は、同時にヨーロッパツアーを行い、

様々なバンドと共演するなどと精力的な活動の末、自身の活動の幅を広げることに努めた。

また、シューゲイザーバンドとして知名度が高いThe Telescopesのツアーでサポートアクトとして抜擢されたことも大きく、それを機に彼らの所属するTapete Recordsと契約。

そして今回、デビューアルバムとして発売されるのが『Ringthings』だ。

リリース後の2018年2月には同じくドイツ内でのツアー、そして毎年3月にアメリカ・オースティンで行なわれる大規模フェスティバルSXSWへの出演が決定。

活動の範囲を順調に広げる彼らの新作『Ringthings』は今までとは一風変わったアルバムとなっている。今までとは違うアプローチとなった今作は、果たしてJaguwarにとってどういう存在となるのか?

『Ringthings』

リリカルなギターリフから始まる「Lunatic」から今作の主軸を握る空間系のきらめきとモジュレーターで作り上げたデジタリックワールドを見せる。

開放的かつ真っ直ぐに突き抜ける疾走感は初期The Pains of Being Pure at Heartをよりポップに昇華させたようだ。

そして、今作『Ringthings』の煌びやかで明瞭なサウンドや外せないヌケ感は、彼らも好きだと公言するThe Cureの『Kiss Me,Kiss Me,Kiss Me』に通ずる。

また、対照的なツインボーカルも特徴のひとつ。オイエミ・ノイズ(Vo./Ba,)の土岐麻子のような素朴な声は加工せず軽やかに飛ばし、一方、レミー・フィッシャー(Vo./Gt.)はThe Cureのロバート・スミスやFoalsのヤニス・フィリッパケスのように奥行がある声に、常にエコーを乗せている。

と、ここまでだとわりと綺麗な爽快な音楽が持ち味なのかと思うのだが、本当にそうなのだろうか?彼らのこれまでの作品で見せた爆音に生きる猛獣の姿はどこへいったのか?

『I EP』、『II EP』ではRingo Deathstarrを彷彿とさせるほどの、迫りくるヘヴィーなサウンドと爆音ノイズが不穏な異空間と、息ができないほどの圧迫感と威力を共生させていた。

しかし、彼らのハングリー精神満載な姿が消えたわけではなかった。まず「Slow and Tiny」で見せた本質的な一面。

穏やかに始まるも、一瞬にしてクリス・クレンケル(Dr.)のヘヴィーな8ビートが打ち込まれ、爽やかさで塗りたくられた壁紙は破られる。

ボーカルの後に続く変声音が何とも不穏さを漂わせ、叙情的なサビを迎えてからが本番だ。メタル大国であるドイツの血筋を感じるほどの、ディストーショナルかつドラマチックなギターリフが猛威を振るい出す。

そして歌い終わりには、「まだ終わらせない」と言わんばかりにレミーのノイズが本領を発揮し、ゲインマックスの歪みが襲い掛かってくる。

サウンド的威力、爆音の追い討ちは先日発売されたMogwaiの『Every Country’s Sun』に収録されている「Old Poisons」の衝撃に近い。ツインボーカルで誘う静寂に実験的な遊びを轟を加えた「Whales」。

待望のフィードバックノイズで締めくくる「Away」、轟音の洪水とシンフォニックなリフでクライマックスを彩る「Week」と続くアルバム後半の流れは、風格のある良い仕上がりだった。

今までの雰囲気を変えた今作では、今までのハチャメチャな自身の音楽を操れるようになったと捉えるのが正しいのだろうか。

このアルバム自体、ベースはあくまでポップだ。しかし、リズムも大きく変わらず、曲の最後を繋げてるなど、統一性があるとも言えるが、曲後半にパンチのあるノイズを組み込むというパターンの一定化で、曲ごとの個性が浮かび上がらないとも言える。

しかし、アングラな活動域をメジャーに広げる為の作だとしたら、前作までで培ったJaguwarの良さというものをもう少し押し出すべきだと考える。

例えば、ゴシックパンクからロックミュージックとポップミュージックを掛け合わせ変化していき、メジャーを確立させたThe Cureのような存在を目指すなら、

今作で基盤としているポップミュージックをどう極めていくか、またはシューゲイザーというものを携えていきたいのであれば加え方を今後も常に追求し続けなければならないだろう。

今作は新しい道への打診と共に、挑戦への道を進む作品となった。次作でどう変化していくのか。これは非常に気になるところであり、彼らなりのスタイルを見つける作品となることを切に願うと共に、心から期待をしている。(pikumin)

リリース


『Ringthing』
発売日:2018年1月17日
収録曲:
1. Lunatic
2. Skeleton Feet
3. Slow And Tiny
4. Gone
5. Crystal
6. Night Out
7. Whales
8. Away
9. Week
10. End

プロフィール

Jaguwar

“Jaguwarはドイツのシューゲイザー・バンドだ。サッカリン・ポップとアンフェタミン・レプタイルのバンドの如きノイズの組み合わせから、The CureとRideの中間地点の様なサウンドを鳴らす。バンドは2012年にOyèmi NoizeとLemmy Fischerによってベルリンで結成された。2014年にはドラマーのChris Krenkelが加入。現在のラインナップとなっている。2014年にはデビューEP『I』、2016年にはセカンドEP『II』をアメリカのProspect Recordsよりリリース。イギリス、デンマーク、フランス、セルビア、ドイツ等をツアーし、We Were Promised Jetpacks、Japandroids、The Megaphonic Thrift等とステージを共にしている。2016年、The Telescopesのツアー・サポートの件を機に、Tapete Recordsと契約。2017年にはドイツのバイエルン州ホーフにあるTritone Studioで、デビュー・アルバムのレコーディングを開始。音を幾層にも重ねる作業の為、作業は長期に渡ったが、過去の作品よりもノイズが増しよりポップとなった当『Ringthing』は完成した。”

引用元:Jaguwarプロフィール(Big Nothing)

YouTube

JAGUWAR – Crystal (official video)