期待の新人が続々と現れ、再び盛り上がりを見せるUKロックシーン。そして、数々のレジェンドバンドの復帰もあり、再び注目を集めることとなったシューゲイザー。両ムーヴメントの波に乗るであろう期待の新人が現れた。 ロンドン発の男女混合5人組シューゲイザー・ポップバンド ナイト・フラワーズだ。

デビュー間もない新人ながら、英BBCラジオの若手発掘プログラムBBC INTRODUCINGで取り上げられ、2014年にはイギリスの大型音楽フェスBESTIVALにも出演。その後もNMEやPitchfork、BBC Radio、XFMといった海外の大手メディアにも紹介され、ザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートのメンバー キップ・バーマンは彼らの惚れ込み、大絶賛しているという。2015年に日本限定盤としてミニアルバム『Night Flowers』をリリースすると、国内から大きな注目を集め、新人ながらにロングヒットを記録。翌年にはジャパンツアーを決行し、大盛況で完遂させた。

そんな彼らがデビューミニアルバムから3年、待望のフルアルバム『Wild Notion』を4月18日にリリースした。まばゆい輝きを放つポップサウンドと歪みを効かせたシューゲイザーサウンドの融合。ふわりと揺れるメロウなツインボーカルに、ロマンティックなフレーズ。 シューゲイザーポップに留まらず、あらゆるエッセンスを取り入れて作り上げたナイト・フラワーズの期待の新作をさっそく聴いてみた。

まず一曲目「Sandcastles」から聴いてみよう。あたたかな光に包まれてぼんやりと滲む世界。ゆっくりとフォーカスを合わせてゆけば、煌びやかな音の波が押し寄せてくる。軽快なリズムを刻むドラミングや、ルートをなぞるベースラインと、極めてシンプルなリズムセクション。余分な着色をしないギターリフは輝かしい音を紡ぎ、広大な世界へ牽引する要となっている。そしてはじまりを告げる詩を歌うソフィア・ペティットの歌声は。まるで子守唄を歌うようにささやかで儚げだ。しかし、小さな街の路地裏から大空へ羽ばたいていくように、どこまでも身軽で、凛としている。フェードアウトしていくかと思いきや、アウトロがそのまま続き次の曲イントロへ。

余韻を与える間もなく、まるで一曲中の展開だと錯覚したまま「Night Alive」へ続くザ・ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートの名作であるファーストアルバム『The Pains of Being Pure at Heart』を彷彿とさせるような、尽きぬ疾走感と若さ溢れるエナジーを発揮するバンドアンサンブルに、キラキラと鮮やかに弾けてゆくギターサウンドには、聴き心地の良さと共に、胸を掻き立てる躍動感を秘めている。ナイト・フラワーズの持ち味であるストレートに駆け抜けるみずみずしいシューゲイズポップなサウンドと、浮遊感漂うツインボーカルの魅力を、すでに冒頭2曲から存分に感じ取ることができるのだ。

その後も、全体的にシンプルな構成で織りなすストレートなナンバーが続く。しかし、彼らの狙いどころはとても明確かつ的確。衝動を焼き映したディストーショナルなサウンドも雑味はなく、煌びやかな音色はどこまでもクリーンで、耳あたりの良さを強く意識しているようだ。そして、無駄を削ぎ落とした展開だからこそ際立つ、夢うつつなボーカルを乗せる。このバランスが非常に良いのだ。

しかしこのアルバム、けして単調に進んでいくわけではない。アルバム中盤から、彼らのマインドが姿を現す。コクトー・ツインズを彷彿とさせるような、シンプルなリズムとディストーションギターでドリーミーな世界を演出すれば、ザ・キュアーのようなとびきりポップで華やかなメロディが主軸を担うこと。一方、ザ・スミスのように甘酸っぱいポップミュージックにセンチメンタルなアルペジオを効かせ、ぐっと胸を切なく締め付けるようなサウンドスケープを作り出していたり、彼らの音楽はシューゲイザーのみならず、ドリームポップやニューウェーヴにも非常に密接している。

中でも目を引いたものは「Head On」と日本盤ボーナストラックに収録されている「Glow In The Dark」。前者はペイル・セインツの「Kinky Love」を彷彿とさせるようなロマンチックなメロディと丁寧な歪みが生み出すメロウな空気感に満ちていて、どっぷりと夢に浸っているような深い気持ち良さがある。憂いを含んだソフィアのボーカルが、光と孤独をしっとりと歌い上げるところも味がある。後者は、ミドルテンポでじっくりと歌を聴かせるナンバーだが、煌びやかな音像で彩られているのに、どこか切なくて胸がきゅっとなる。特に後半にかけてのコーラスワークが美しく溶けていくのがたまらない。ディレイやリバーヴを駆使した心地良い揺れを生む音作り、メロディックなギターフレーズや繊細なアルペジオは、オルタナティヴ色が強く、なだらかな曲にハリを作っていると同時に、輝かしくもセンチメンタルな雰囲気を常に漂わせているのだ。それがこのバンドの核となっている。

持ち味を活かしながら、様々なエッセンスを取り入れてゆく今作は、音のグラデーションのように後半にかけて変化してゆく。違った雰囲気や試みを取り入れるけれど、コアはしっかりと保ち続けている。その集大成としてあらゆる要素を集約したのが、アルバムの最後を飾る『Cruel Wind』だ。この曲だけでもナイト・フラワーズの魅力をまるごと堪能することができるほど。

しかし、アルバムの流れを辿って感じたものたちが、最後にひとつとなる喜びをぜひ味わってもらいたい。シューゲイザー、ドリームポップ、ニューウェーヴ、オルタナティヴ…様々なジャンルのフィルターを通して、独自のコアにグラデーションを重ねて行くこのアルバムは、きっと多くの人の心を掴むだろう。それは、今作を頭から最後まで通して聴くことで、より実感することとなる。ここでひとつ、彼らのスタイルが確立されかけている。彼らが今後、どのような音楽を吸収し、グラデーションを重ねて、どう生み出していくのか。今後のナイト・フラワーズの音楽に、目が離せない。(pikumin)

【Release】

『ワイルド・ノーション』
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