セイント・ヴィンセントを爆発的なブレイクに導き、今も数多くの人気アーティストを抱えるイギリスの名門レーベル・4AD。 今年6月にはギャング・ギャング・ダンスが7年ぶりにとなる新作アルバムをリリースし、来年にはディアハンターも新作アルバムのリリースを控えている。 来年1月にはこの2バンドが来日し、東名阪を回るツアー“4AD presents Revue”の開催が決定。そして先日、このツアーにドーターのフロント・ガール エレナ・トンラの参加が発表された。と同時に、エレナはエクス:レイと名前を変え、11月30日にデジタル配信限定でアルバム『Ex:Re』をリリース。歴代アーティストが目まぐるしい活躍を見せ、活気づく4ADから新たに輩出されたエレナのソロ作品に、多くのリスナーが歓喜した。
今作のテーマは“二度と戻らない愛”。現実と自分自身に向き合うために綴られた、愛の標本的アルバムである。

まずはドーターの歴史について触れたいと思う。
ドーターは2010年にエレナを中心に、ロンドンで結成された3ピース・バンドで、レーベル契約前から米人気テレビ番組に出演するなど、注目の新人としていち早くフィーチャーされていた。2012年に出演したアメリカ最大級の音楽フェス“SXSW”でのライヴが話題となり、4ADと契約。 翌年2013年3月に『If You Leave』でデビューを飾った。耽美な音色に、大自然を豊富とさせる力強いバンド・アンサンブル、そしてエレナの儚げに揺れるソフトな歌声で描く幽玄なサウンド・スケープに、多くの人が魅了された。ファースト・アルバムリリース後は“FUJI ROCK FESTIVAL 2013”、“Hostess Club Weekender”と立て続けに来日公演を開催。 2016年には東京・大阪で初となる単独公演を開催している。
ドーターとしては、今年4月にタイアップ作品のために書き下ろしたというサウンド・トラック『Music from Before the Storm』をリリースしたばかりだった。

「regarding ex (元カレについて)」と「 X-Ray(レントゲン)」という単語を掛け合わせてできた名前がエクス:レイ(Ex:Re)だった。アーティスト名にまで込めたその深き愛を、彼女は終わらせなければいけなかった。 望みのない希望を捨てるために、1年をかけて曲づくりに向き合ったが。レコーディング自体は数か月で完了したという。
親友を亡くした悲しみをすべて絵にぶつけたパブロ・ピカソのように、彼女は失恋による辛さや、胸に残る愛情をすべて楽曲制作に注ぎ、作り上げたのが今作である。
収録されている楽曲たちは、どれも彼女の経験を追体験をするような音楽だ。それも美談のごとくきれいで美しいメロディを奏でるのではなく、ドロドロと溢れ出る血液のように重たく、ずんと沈むような曲調ばかり。
心を追い込むように、常に輪郭のはっきりとしたリズム・セクションやダークなエフェクト・サウンドが迫りくる。どくどくと脈打つ血流を、じっくりと襲いかかってくる現実という闇を表現するように、深くずしんと響き渡る。
中でも「Too Sad」はあまりに悲痛な曲に聴こえた。曲名通り、エレナは声を絞り出し、涙を流しながら訴えるように歌っている。一音ずつ沈んでいくメロディ、呟くように揺れるボーカル、行く先のない愛が淀む音圧の高いノイズ。彼女の胸を埋め尽くす闇が伝わってくるようで、胸が苦しくなってくる。最後に繰り返される「he well」「you know」が切なく、愛の終わりを自分自身に必死で伝えているようだった。

彼女の想いというのは、悲痛なものだけではない。すべては、愛に満ちた時間があったからこそ出会ったもの。あたたかな音色を紡ぐギターアルペジオや、切なく彩るピアノは、愛の美しさをなぞるように主旋律を担い、したたかに鳴り響く。
他にも、「Where The Time Went」では、繰り返されるメロディとまどろみを導くダーク・エフェクトにより失恋特有の虚無感が描かれ、続く「Crushing」では情熱的なギターストロークとリズミカルなドラミングで、まだ胸の内に灯る愛の炎を猛々しく表現している。 「もう終わったことなのだと思わなければならなかった。そうでなければ、“まだ可能性はあるかも”と永遠に想い続けてしまうから」そう語るエレナの言葉の通り、すべてわかっている“けれど”に込められた、行き場のない想いたちが、楽曲ごとに違う形で刻まれているのだ。

楽曲の暗さはもちろん、彼女の歌声には悲しみのすべてが宿っていた。
元より透明感のある歌声を持つエレナだが、今作ではより消えてしまいそうな儚さを見せている。 救いのない悲哀を感じさせながら、ハリがあり、力強さを垣間見せるところには、性別を超えてザ・スミスのモリッシーを彷彿とさせた。
ラストを飾る「My Heart」では、その寂しげな歌声は前向きな姿勢を見せ、やわらかなギターアルペジオに支えられながら力を取り戻していくようにも感じられる。愛、喪失感、愛にまつわる美しい思い出たちすべて向き合い、認めたことで、彼女はようやく終わらせることができたのだ。
所詮は他人の恋愛模様。しかし、ここまで作者の痛みに共感でき、のめり込むことがあるだろうか。執着してしまうほどの深い愛。それほどの代物に、これからどれだけ出会えるのだろうか。彼女が経験した悲しくも美しい愛に、筆者は今日も想いを馳せる。(pikumin)

【Release】

『Ex:Re』
¥1,500(アルバム ※ダウンロード配信のみ)
NOW ON SALE


『Romance』
¥500(シングル ※ダウンロード配信のみ)
NOW ON SALE

【Live】
4AD presents Revue
DEERHUNTER, GANG GANG DANCE and EX:RE
SPECIAL GUEST DJ: 4AD LABEL BOSS SIMON HALLIDAY

・大阪公演
2019/01/21 (MON) BIGCAT
OPEN/START 18:00
前売¥7,000 (税込/別途1ドリンク代) ※未就学児童入場不可
INFO: SMASH WEST 06-6536-5569 / [http://smash-jpn.com] [http://smash-mobile.com]
TICKET発売: イープラス、ぴあ(P:130-779)、ローソン(L:52132)

・名古屋公演
2019/01/22 (TUE) ELECTRIC LADYLAND
OPEN/START 18:00
前売¥7,000 (税込/別途1ドリンク代) ※未就学児童入場不可
INFO: JAIL HOUSE 052-936-6041 [www.jailhouse.jp]
TICKET発売: イープラス、ぴあ、ローソン

・東京公演
2019/01/23 (WED) O-EAST
OPEN/START 18:00
前売¥7,000 (税込/別途1ドリンク代) ※未就学児童入場不可
主催: シブヤテレビジョン INFO: BEATINK 03 5768 1277 [www.beatink.com]
TICKET発売: イープラス、ぴあ、ローソン(L:74192)、 iFLYER、clubberia
企画制作: BEATINK http://www.beatink.com
※オルダス・ハーディング (Aldous Hardin) からエクス:レイ (Ex:Re) への出演者変更による払戻しはございません。予めご了承くださいますようお願いします。
※既にチケットをお持ちのお客様で、振替公演でのご来場をご希望のお客様は、そのままチケットをお 持ちの上、当日ご来場いただけます。大切に保管していただくようお願いします。