インディペンデントに生きる

今日行われる予定だった全感覚祭・千葉公演は台風で中止となってしまった(現在は13日深夜に東京公演が行われると発表された)。

GEZANや主催者、共演者や関係者には遠く及ばが、このイベントの記事を出した身として今回の中止は悔やまれる。

イベント中止の報を受けて、1つの考えが頭に浮かんで離れなかった。

それはイベント自体は中止となってしまったが、まだ自分たちには全感覚に対し、何かできることがあるのではないか?ということだ。

本来であれば、全感覚祭が行われるはずだった今日という日こそ、イベントのテーマである“インディペンデントとは何か”について考える日にしてみるのはどうだろうか?

2年前、BELONG本誌で“インディペンデントに生きる”という特集を組んだ。

DIYで活動するアーティストについて、どうして自分たち(もしくは信頼するチーム)だけで活動するのか?に迫った内容だ。

今回アップする記事は全感覚祭に出演したTHE NOVEMBERS・小林祐介、シャムキャッツ・夏目知幸による、2017年に行った対談である。

この記事を読んで、自分たちは何ができるか考えてもらえると幸いだ。

アーティスト:小林祐介(THE NOVEMBERS)夏目知幸(シャムキャッツ) インタビュー・テキスト:矢部友宏 撮影:樋口隆宏

自然とオルタナティヴになっている両者

-そもそも2人が出会ったきっかけは何だったのでしょうか。
夏目知幸(シャムキャッツ):昆虫キッズの高橋翔を通じて知り合いましたね。僕も小林くんも高橋と仲が良くて、昆虫キッズがTHE NOVEMBERSと対バンする機会が7~8年前にあって。初めはそこで挨拶しましたね。
小林祐介(THE NOVEMBERS):僕が最初にシャムキャッツを知ったのは昆虫キッズの対バンにシャムキャッツが出ていて、僕は昆虫キッズの楽曲に1曲だけ参加するという機会があって。シャムキャッツのライブを初めて見てかっこいいと思って、物販でCDを買いましたね。

-お互いの印象や演奏している音楽についてどう思われましたか?
夏目:THE NOVEMBERSは僕がやれる音楽じゃないから、そういうものの方が好きだし、かっこいいなと思った。今となっては活動の仕方に共通点が見えてきたけど、当時はやりたい音楽の方向性が違うものだったから、尊敬はしていたけど、違う所にいるバンドだなと思ってた。
小林:お互いがお互いのいる場所で活動を続けている事がかっこいいなと思ってましたね。当時はシャムキャッツの事をまだよく知らなかったし、共演する事でこういう所がかっこいいんだなと思う事が増えていったんですよ。だからお互いを知らなかっただけかもしれないですね。

最後まで責任を持ちたいから頑なになる

-お互いの似ている所はどういう部分だと思いますか?
小林:今となってはインディペンデントという部分を語れば共通している所はいっぱいありますけど、シャムキャッツは自然とオルタナティヴになっていると思うんですよね。彼らの影響を受けている世代も多いと思うんですけど、誰も彼らみたいにはなれていなくて。シャムキャッツはある時期を境にずっと独特な位置にいると思いますね。
夏目:僕もTHE NOVEMBERSに同じ事を思っていますね。彼らも僕らと一緒で頑ななんだろうなって思います。バンドをやる事にロマンチックなものを感じているから、独特の位置にいるのか、そうなろうとしてなっているのかは自分では分からないんだけど、自分たちもTHE NOVEMBERSも頑なだなと思う事はよくある。

-例えばどういう部分が頑なだと思いますか?
夏目:THE NOVEMBERSはそこまでやるんだっていう所までやっちゃうバンドだと思うんですよ。頑なという事は世間的に見たら面倒くさいと思われる事もあると思うんですけど、そこから出てくるキラキラしている部分もたくさんある訳で。THE NOVEMBERSはそれが嫌味にならないし、むしろかっこいいと思う。
小林:さっき夏目くんが言ってた他の人が面倒くさいって思える事も自分たちのものだと思えるなら、全て自分たちの責任だって考え方もできるじゃないですか。そういう考え方になれば自分が責任を取れない事はここからここだっていうのが分かってくると思うんですけど、自分たちのものじゃないまま他人に委ねる人は多いと思っていて。それは自分の保身を考える人だと思うんですけど、頑なである事は自分たちの音楽やステージに関わる事を最後まで見届けたいと思っている訳で。頑なだからこそそうするんだと思いますね。
夏目:小林くんの話を聞いていると全部うんうんってなりますね。こないだインタビューを受けたんだけど、「なんで自主レーベルをやってるんですか?」って聞かれて自分も似たような事を言っていたなと思ってた。その時は自分の事は自分で守る方がより強い表現に繋がるんじゃないかなって言ってたな。

-お互い独立したという事を聞いてどのような事を思いましたか?
小林:シャムキャッツが主催の“EASY TOUR”の松本公演で共演した時に直接聞いたんですけど、大変だねっていう気持ちよりもおめでとうっていう気持ちの方が強かったんですよね。その時のシャムキャッツのムードがこれから大変だけど、やっていくぜっていうのを感じ取れたから、自然とそういう気持ちになったんだと思う。これからどうしたら良いんだろうっていう不安を感じ取っていたら、野暮な感情に駆られていたと思うんですけど、そういうのは全然なかったから、バンドの中にいい波が来ていたんじゃないかなと思いました。
夏目:僕らが自主レーベルをやろうって考えてた時には、重大な事をやっているって全然思ってなかったんですよ。だからTHE NOVEMBERSが自分のレーベルでやっていくってうのを聞いた時に、そういう選択肢もあるよなって思ってました。
小林:周りを見渡しても自主でやるっていう事は珍しい事ではないですからね。

良い環境よりも荒野に身を置く

-それでは本題に移りますが、今回の対談のテーマは自主レーベルで作品のクオリティと売り上げという意味での経済は両立できるのか?という内容を話して頂きたいと思います。というのもアーティストは自由である事が本業だと思うんですけど、それとは逆に音楽ビジネスではバンドや音楽をパッケージとして売り出す手前、自由であればあるほど売り出しにくいっていう矛盾があると思います。そういう世界の外でミュージシャンとしての自由を持ちつつ活動していくにはどうすれば良いかという事をお二人にお聞きしたいと思います。そこで改めてどうして独立したのか改めて教えてください。
小林:自分たちがもともといたUK Projectで作品を出していくにあたって、自分たちの外に対する作品の届け方をもっと自覚的に色んな事をやってみたいという知的好奇心があったのと、自分の事を自分で責任を取らなくちゃいけないっていう立場に自分たちを置かないとミュージシャンとしても一人の人間としても不健康な状態になりそうだなっていうムードを感じていて。自分たちの持ち物のはずなのに他の人のせいにしてしまっている事があって。当時、レーベルに所属していた時に、他の人のおかげでここまで来れたって堂々と言えれば良かったんですけど、僕たちは未熟で浅はかな部分もあったから、上手くいかない事をレーベルのせいにしてしまっていた事があって。そういう自分達が嫌だったんですよ。独立した当時、この考え方は不健康だと思うものを一つづつ排除していきたかったんだと思います。
夏目:(何度も深くうなづく)。
小林:そういう甘えた考え方を自分で持ちたくないって所から、独立して自分たちで進まなきゃ何も始まらないんだっていう所に身を置いてバンドとしての地盤を固めたいっていうのがありました。そういう気持ちで独立したから、目先の利益を度外視してスタートしたんですよね。

-独立以外の方法も考えましたか?
小林:レーベルを移籍する事や新しいパートナーを探す事も並行してやっていきたいと思っていたんですよ。ただそうなっていった時にUK Projectに所属していて別の所に行きたいって言い続けるのは不誠実だなと思って。じゃあ一回身を立てて、自分たちだけならここまでできる、これ以上はできないっていうのが分からなければ人にお願いする事ができないって思ったんですよ。

-夏目さんは先ほどの話の中で深くうなづく場面がありましたが、ご自身にも思い当たる部分はありましたか?
夏目:言っている事は全て分かりますね。自分たちもまずは知的好奇心があってスタートしたし、誰かのせいにしないっていう環境づくりもよく分かる。自分たちに関して言えば、バンドを前に進めようと思った時に、P-Vineに所属していた環境に不満があった訳ではないんですけど、レーベルにいると良くも悪くも守られているから、ぬるま湯に浸かっているような気がしていて。今以上に良い環境を求めるより、自分たちを荒野にほっぽっちゃった方が良いんじゃないかなって思ったんですよね。じゃないとバンドとしての体力がつかないと思うし、それだけの覚悟がないと本当に心の底から出てくる表現は生まれないんじゃないかなって。

-なるほど。心の底から出てくる表現を求めていたと。
夏目:うん。もっともっとお腹がすくような状況を求めていたから、お金の事はほとんど考えてなくて。レーベルに所属していたとしてもそんなに儲かる訳ではないんですよ。レーベルに入っていても自主でやっていてもCDが売れている枚数が一緒だったら、自主でやる方が圧倒的にお金が入るし。ぶっちゃけた話をすればCDは原盤権がある人のものだから、レーベルが200~300万を出すから、これでCDを作ってくださいってなると、そのCDは自分たちが曲も歌詞も作って演奏もしているけど、曲自体はレーベルのものなんだよね。そうなるとインディーレーベルだとしてもCD売り上げの数%しか入ってこなくて。自主でやると入ってくるお金がそれの10倍くらいに跳ね上がる事もあって。でもその代わりにCDを出す資金を自分たちで稼がなきゃならないんだけど。

-だとしたらCDが売れないっていう昨今は余計に厳しいですね。
夏目:そう。でもレーベルはCDの売り上げが入る分、そのお金で働いている社員さんがいる訳よね。そういう事を想像しても制作面や金銭的にも独立した方が自分たちにとってプラスになると思えたんですよね。

-ものづくりの面でも独立した方がプラスになると思いましたか?
夏目:そうですね。レーベルにいた時とものづくりは基本的に変わらないんですけど、自分の表現が良くないものだったらこの世界にいる意味はないと思っていて。力をつけないとやっていけないなっていう気分は今の方が強い。
小林:弱肉強食の世界というよりかは適材適所なのかなと思います。その場のインスピレーションで作品を作れるのは人生のごく限られた時間だと思っていて。今日お腹がすいたからお腹のすいた曲ができたとしたら365日だと365曲できる訳じゃないですか。僕はそれって作り手の体力とも関係すると思うんですよ。本当だったら作れたはずの曲が自分の体力が足りない事で作れなかったという事を僕らは毎日経験しないといけない訳で。そう考えると体力があったらその時に感じた事を曲にできるなと思って。だから独立するっていうリスクを背負う事で無駄な事ができなくなったり、時間の使い方が変わってきたりするから、こういう未来に行きたいって想像する事で今日の手の動かし方が変わるんですよね。

自分で選んだ未来をどう楽しむかは自分次第

-では本当だったら今日1曲作れるはずだったのに作れなかったという経験をした事はありますか?
小林:良い曲を作ろうと思わなければ作れるんですけど、自分が今年1000曲作れるアイデアがあるとして自分が1日1曲しか作れなかったとしたら、1年で365曲しか作れないじゃないですか。その中でどういう未来を選ぶのかっていうのがその都度変わってくるんですよね。もの作りは無意識でもできるけど、意識する事で作るものが変わるっていうのが去年くらいから実感できるようになってきたんですよ。さっき自由である事と経済は相反するものだって言っていたと思うんですけど、僕はその思い込みを外す事もよりよく生きていく上で大事だと思っていて。例えば曲を作る事は自分以外にもこの曲を好きになってくれる人がいるんじゃないかっていう見込みで作るものだと思うんですけど、どのみち見込みだったらフジロックでお客さんが喜んでいるのを想像して、自分が作れる1000曲の中にそういう曲があると信じてもいいんじゃないかと思えるようになってきて。自分が自由でいる事や達成感は自分自身の事だからどうにでもできるんですけど、それ以外の要素を想像する事で拓けていく未来があるんだとしたら、僕はこんな未来に行きたいって想像して曲を作っていきたいと思ってるんです。人に言われたからこういう曲を作る、っていうのはただのお題でしかないと思うんですけど、自分で想像して考えて作り出したものは単なるお題よりも遥かに価値があるんですよね。人にお題やきっかけをもらうにしても、きちんと自立できてたら人の話に耳を傾けられる強さを持てると思う。独立して自分の事を自分でやるのが偉いっていう話ではなくて、結局は自分で選んだ未来なんだから、この未来をどう楽しむかは自分次第だと思いますね。
夏目:小林くんの言っていた商業的な事と自由でいる事は相反するものじゃないというのは僕も同じ事を思っていて。というのも独立してからの方が僕は不真面目になっていて。しなくても良い仕事は本当にしない。それまではバンドに対して責任を感じて動かしていたから、自分が全部やらなきゃって思ってた。レーベルにいた時の方がジャケットを作る時もずっとデザイナーの横にいるし、プロモーションも1人で動きまくるし、どういう風に売るとか、運営に関するすべてに関わってたんですよね。それだと良くないというか時間をすごく使うから、頭の中がミュージシャンじゃなくなっていく気がしていて。そういうのが続いたときにバンドが立ちいかなくなっている雰囲気を感じたんですよ。その時に仕事をしすぎているのかもしれないなと思って、ほとんど手放したんですよね。その手放すタイミングと自主レーベルの立ち上げが同じタイミングで。そこから僕はかなり自由になったし、自由になった分、自分がどういうスタイルで曲を作れば良いか分かってきたし。むしろそれが商業的な成功にも繋がるんじゃないかって予感もする。

-かえって独立した方が曲作りも充実してきたと。
夏目:そう。曲作りって変な作業で人それぞれの作り方があって色んな努力も必要なんですよ。例えば僕の場合だと森の片隅で待っていて、蝶ちょを捕まえるみたいな作業だから、網で捕まえるまでの待ちの時間が必要っていう。自分にとってこの待ちの時間がすごく重要で。前までは待ちの時間がなくて森の中を駆けずり回っていたんだけど、それだと効率が悪くて蝶ちょが捕まえられない。むしろ自分が好きでもない蝶ちょを捕まえる事だってあるし。

-小林さんの場合はどうですか?
小林:夏目くんが独立した後、バンドの中での役割を作家という位置に極力限定しているのは、活動がうまくいく上で最短距離にいると思います。僕の今の状態は夏目くんが少し前に経験していたようなとにかく時間がないっていう状態なんですよ。僕もバンドの中で音楽制作だけに専念したいって思い続けているんですけど、色んな所に手を出さなきゃいけないし、実際に出したいっていう気持ちも少しはあって。だから、自分自身でバンドの中にそういう体質を作ってしまっているんじゃないかっていう不安が少しあるんです。だからそれとどう付き合っていくのかがこれからの自分の課題になっています。バンドの仕事は色々あるけど、音楽が一番大事じゃないですか。さっきの蝶ちょの話でいうと、蝶ちょをたくさん捕まえるために高速で動くレールを作りましょうって目的でレールを作る事に夢中になってしまって、その辺に飛んでいるのに気付かず作業に集中しているみたいな感じなんですよ(笑)。
夏目:本当にそういう事ってあるよね(笑)。
小林:みんなの作業をいったん止めて、その隙に蝶ちょを捕まえられるんなら良いんですけど、今までそれができなかったから、蝶ちょに逃げて行かれるばかりで。レール作りがひと段落してみんなが寝静まっているうちに蝶ちょを捕まえていたんですよ(笑)。
夏目:それも分かるな(笑)。
小林:そんな事をしているうちにこのレールは何の為にあるんだろうっていう、本末転倒な事をしていて。僕も良い音楽を作る事だけに集中できる環境は努力して勝ち取らなきゃいけないと思いますね。だから要らないものを捨てる事や人に任せる事も勇気だから、夏目くんが経験した事もすごく分かりますね。

-バンドの現状を考えると今、小林さんが抱えているものを他の人に任せるのは難しいって事ですか?
小林:任せられていないというかバンドがそういう体質になってしまっているんです。あるものごとがあったとして、得意な事を得意な人がやればいいっていう発想は健康的なようでいて、実は不健康かもしれない。例えばデザインが得意な人がいたとして、ずっと作業を続けていくとどうしても時間がなくなってくるんですよ。いくら得意であっても時間はどうしてもなくなるから。それで、僕が曲を作らないと今日も蝶ちょは0でしたっていう事が何か月も続いてしまうんですよ。
夏目:(再び深くうなづく)。
小林:一番大事なのは音楽を作って自分たちが演奏するっていうことなので、それが崩れ始めると危ないっていう。チームが自分たちの作る音楽に対してどう考えているのかっていう部分がとても大事だなと思いますね。

-なるほど。それでは話が変わりますが、所属レーベルにいた時と比較して作品作りの自由さ、不自由さを感じる場面があれば教えてください。
夏目:僕はレーベルにいた時と独立してからあまり変わってないんですけど、バンドの組織論としては今の方が曲を作る環境ができているから、独立して不自由さを感じていなくて。でもそれはレーベルに所属している事が生み出しているものではなくて、各々のやり方だと思うんですよね。レーベルに所属していてももっと賢ければ良い状況は作れたはずだし。例えばレーベルにいると何枚くらい売れますよって提示された額が自分たちの思っていた額よりも少なかったりする訳だけど、今は自分たちで製作費を決めれるから、そういう自由さは今の方がある。不自由さは特にないね。
小林:人によるともいますが、全部自分でやりたい人からすれば、レーベルに所属していると自分がやろうと思っていたのに、レーベルの誰かがやってしまって手を出せなくなる事がある、と考えることも出来るんじゃないですかね。それはつまり不自由だけど、独立するって事は逆にそういうものを全て手にしてしまう訳だから、ある意味自由でしかないですよね。仮に独立して不自由さを感じるとしたら、経済的理由でやりたい事がここまでしかできないっていうくらいで。でもお金を基本に考えちゃうとレーベルにいても規模が違うだけで、結局は一緒なんですよ。例えばドーム公演をやりたいって言っても、元手がないから無理っていう話で。お金に振り回されてしまうと、どこにいても誰とやっても不自由だっていう感情を勝手に捏造してしまうんですよ。だからそういう不自由さを感じている時点で、その人のいる環境もしくは心の持ち様が間違っているんだと思います。
夏目:経済的な不自由はもちろんあるんだけど、レコーディングには関係あっても創作にはあんまり関係がないと思っていて。むしろ創作の邪魔になるから、自分はそういうものから離れた所にいるんだよね。経済的な不自由さは自分が考える担当じゃないから、そういうものは一切考えてないんですよ。

-前の個別インタビューの時には藤村さんがお金の管理をしているって言ってましたね。
夏目:そうですね。僕と菅原はリアルな事を考えてなくて。人はワクワクする事にお金を使うと思うから、どうしたらもっとワクワクするだろうっていう事を考えるのが自分たちの担当だし、自分たちが考えられるバンドへの経済的な貢献だと思うんだよね。本当にそれで儲かるのっていう話は他の人にしてもらって、こういうのが理想なんだよねって話をするのが自分たちっていう。

-THE NOVEMBERSだとどういう役割分担をしていますか?
小林:大まかには、お金周りの管理をしているのが高松くんと僕で、基本的に彼が出納帳をつけています。デザイン周りは外注もしつつケンゴくんと僕で、吉木くんはマネージャーと一緒にブッキングやライブ周りの手配をしているんですよ。でも曲を作るのが自分だけになってしまっているから、いい加減曲を作るだけの担当になりたいっていうのはあります(笑)。
夏目:バンドで役割分担できたら活動が楽しくなってきてて。よりバンドらしさを感じれるようになってきているんですよ。というのも藤村が全体のお金の流れを把握していて、月別の収支を見ているんですけど、その月はもう一本ライブを増やさないと厳しいかもしれないとか、ここで印税が入るから大丈夫だとかを見てるの。僕はかっこつける担当だからこういうライブが続いている時に、こんなライブをやるのはバンドとしてかっこ良くないとか、今決まっているライブでやった方がかっこいいとか、そういうせめぎ合いの話をするのが楽しくて。

-なるほど。そういう話はレーベルにいた時も話してなかったんですか?
夏目:今まではそこまで考えてなかったね。前まではなんとなくやっていた部分があって、単純にこういうの楽しいよねとか、これはめちゃくちゃギャラ高いから出とこうよとかっていう具合でその場その場の判断だった。今は単純にみんなが得意分野をやっているだけで、藤村は昔建築をやっていたから、数字を見るのが好きな人で。
小林:高松くんも建築をやってた。
夏目:そうなんだ!藤村はこうした方がかっこいいっていうイメージはあんまり持っていなくて、それよりも数字で見ていった方がやる気が出てくる人なの。そういう感性を持っている人とその真逆の僕とで喋ると一番良いのかなっていつも思うから。そういうやり方で上手くハマった時は楽しいかな。

お金になってもワクワクできないとバンドは続かない

-THE NOVEMBERSもそういったせめぎ合いはありますか?
小林:やっぱりありますね。予算が達成できないっていう事は自分たちへの給料が払えないっていう事だから、3ヶ月先までは大丈夫っていう事をキープするのを目標にしていて。さっき夏目くんが言っていたこういう流れで来ているのに、ここにこういうライブを入れるのは美しくないっていうのが本当にせめぎ合いなんですよね。そのせめぎ合いの中でみんな同じバンドのはずなのにそれぞれ守るものが違うから、美意識的に揺れ動かざるを得ないっていうのは分かりますね。そこに関しては発想の転換も大事だと思っていて、どのみちライブを入れないといけないんだったら、ただやるよりもこの対バンをやる意味を見出そうと思うようになってきてて。それを見出さないままお金だけを目的にしてしまうとやらなきゃ良かったって絶対に後悔するんですよ。そういうのはお客さんにも伝わると思うから、僕らが微妙だなと思って対バンに出た事があるとしたら、それを繰り返していくと僕らの対バンにはお客さんが来なくなって、ワンマンしか見に来なくなるんですよ。それもあって自分たちの出るイベントや対バンはすごく気を付けてる。少なくとも自分たちが楽しめないのなら出ない。逆に楽しめる要素を見出す事も大事になってきて、一見なじまない対バンでも普段、自分たちが見せていないような一面を見せれるんだったら、お客さんも普段見れないものを見れるし、対バン相手もTHE NOVEMBERSはこういうバンドなんだっていう事で何かが生まれるかもしれないし。ただお金の為に対バンをやるのではなくて、やって良かったって思える事を前提に考えるようになってきましたね。そういう意見がせめぎ合った事で今までになかった価値が生まれるんですよね。それでも生まれなかったとしたらダメだったって事なんですよ。
夏目:今の話はだいぶリアルな事を言ってるもんね。お客さんもどんどんこういう事を知って賢くなっていった方が健全だと思う。バンドって音楽以外にもそれぞれの服装やアルバムジャケット、誰と仲が良いとか、そういうものも全て含めて、そのバンドが何者かを表すと思ってて。だから対バンも自分たちがどういったバンドなのかを表すものなんだよね。対バンが自分たちの成り立ちを表すからこそ、くるりもASIAN KUNG-FU GENERATIONもトクマル(トクマルシューゴ)さんも自分たちでフェスをやっている訳だし、それがすごくかっこいいっていうのが大事。でも対バンも含めて表現なんだっていう言い方はロマンに欠けるから、あえて今までは自分からは言わないようにしてた。でもみんな分かっている事だと思うんだよね。それって小学生の時に誰と友達になるのがかっこいいかって言う話と一緒で。誰しもそういう事を一度は考えた事があると思うし、そういう考えで友達になる子ってちょっと嫌じゃん。でもバンドはエンターテイメントをやっているから、そういうのも必要になるよね。でも本当だったら呼ばれた場所はどこでも出て、自分の表現がどんな場所でもできれば良いんだけど、それができない場合っていうのもある。そういう時には出たくないよね。
小林:うん、本当にそう。

-では最近手応えのあった対バンはありますか?
小林:まだ先なんですけど、これからPlastic Treeのイベントに出るんです。ジャンル的には向こうがヴィジュアル系と言われてて、僕らは何だろう、J-Rock?なのかもしれないけど、シンパシーを感じる事が多いし、お客さんも潜在的に楽しみにしている部分があると思うから、楽しみですね。

-THE NOVEMBERSもPlastic TreeもThe Cureが好きだからルーツも似ているんじゃないですか。
小林:そうですね。ルーツが似ているのもあってシンパシーを感じるんだと思います。
夏目:最近になってThe Cureにハマり出したんだよね。
小林:そうなんだ(笑)。でもそういうのよくあるよね。去年はWEEZERが分かったって言ってなかったっけ?
夏目:そう、去年はWEEZERだった!
小林:それがきっけかけでWEEZERを聴いてみようと思ったんだけど、結局よく分からなかった(笑)。
夏目:それも分かる(笑)。3年前はRadioheadの良さがやっと分かった。僕は無理やり話題の音楽を聴こうと思わないんですよね。
小林:去年はみんながフランク・オーシャンを良いって思わないとヤバいっていう風潮があって、さすがにそれはどうかと思いました。確かに良いんだけど、みんなが良いって思わないといけないっていうのは違うんじゃないかなと思ってて。そういう雰囲気をミュージシャン界隈から感じたんですよね。
夏目:お客さんはそういうのについて行っちゃっていいと思うんだけど、ミュージシャンがそこに合わせる必要はないと思う。海外のバンドと対バンしているとみんな最近の音楽をあんまり聴いてないんだよね。僕らが対バンした人たちはみんなそうだったし、マック・デマルコは普段ニール・ヤングを聴いてるとかなんだよね。去年か一昨年のPitchforkのロックランキングの序文が好きなんですけど、そこに書いてあったのは“今、このジャンルの開拓者たちは過去に色々あったロックの歴史から自分たちの表現に合ったマテリアルを拾い上げてみんなにこういう形もあるんですよって見せるプロたちなんだ”っていう文章があったんだけど、海外のバンドはみんな本当にそういう感じでやってる。同世代からの影響ももちろんあるんだけど、基本的には自分たちが素敵だと思う音楽を時代に関わらず探して自分たちのものにしていくのが僕らの仕事だと思う。だから無理やり新しいものを聴く必要はないんじゃないかな。

-それでは自主レーベルで作品性を上げる為、売り上げを出す為に工夫している事があれば教えてください。
小林:売上の話を直接するなら、僕らの場合はお客さんに直接届けること、直販する事を工夫していますね。流通と直販の2つの販売形態があるんですけど、それぞれの役割を分けていて。流通している分は直販に比べて利益率が良い訳ではないんですけど、色んな人に聴いて欲しいと思っているので、流通をかけて販売しています。一方で直販は当然利益率が良いんですよ。店では買わないけど、僕らから直接買いたいっていうファンの子もいるくらいなので、どう届けるかも大事にしてます。作品性でいうと台所事情を考えて変に守りに入らないようにしようと思っていて。工夫というよりかは独立したがゆえに変な足枷ができてしまう事を警戒してます。予算を気にするばかりに、作品性を落としてもいいやっていう考え方とか、そういうのは絶対ダメだなと思う。
夏目:独立する前と今と比べて違うのは、今は大きな目標を作ってそれを達成しようと思っているんだけど、それがある事によって自ずとどういう作品を作るべきなのかとか、どのくらいのクオリティのものじゃないといけないのかが決まってくるから。常に自分たちが設定した目標を頭に入れておけば作品作りもお金の事も大丈夫かなと思う。作品もお金の事も長期的に見てるんですよ。自分たちの仕事は聴いている人の気持ちをカラフルにさせる事だから、自分っていう人間はつまらない人間だって思って欲しくないんだよね。自分はモノトーンじゃなくて、色んな要素があって難しくて面白いっていう人間なんだっていう感覚になれたら良いなと思っているから、そういうイベントや作品を作っていきたいって思う。ただそれがずっと成功する訳ではないと思っていて。バンドとしても存在価値は示せると思うんだけど、経済的に成功するかは分からない。でもそこは粘ってやらないと意味がないというか、お客さんをワクワクさせられる人が残ると思うから、それを達成できるように長期的に見てる。目先の経済的な失敗は問題じゃないから、最低限はクリアできるように努力はするけど、もっともっとワクワクできるものを目指してる。レーベルにいた時からそういう発想はあったんだけど、今思えば確信はなかったかもしれない。

-それでは最後に自主レーベルで作品性と経済を両立させるにはどうしたら良いと思いますか?
夏目:今言った事と一緒なんですけど、シャムキャッツの場合は楽しい事を続ける事がその2つを両立させる事に繋がると思うんだよね。結局自分たちが信じている事をやって結局ダメだったとしたら、そこまでのバンドだったっていう事なんですよ。僕はそれでいいと思っているんですよね。やりたいようになるべく長くやるにはどうしたら良いか考えるっていうだけかな。
小林:まさに夏目くんが言った通りで、良いヴィジョンを持つっていう事に尽きるんですけど、こうなったら良いなっていう事を信じて今日する事を考えるっていうのが大事で。良いヴィジョンを持つ事で作品的にも経済的にも良い未来がくる訳じゃないですか。だから良い未来を想像する事がそれらを両立させる際に一番大事で。お金を儲ける事ができてもワクワクする事ができないとバンドは続かないと思うんですよね。お金を儲ける事がものづくりのガソリンじゃなかったんだっていう事が早い段階で分かると思うんですよ。ワクワクする事ってものづくりに関係なく、人が豊かに生きていく上で一番大事な事かなと思います。
夏目:ワクワクする事を続けるのは難しい事だと思う、自分たちもずっと良いライブをしないといけない訳だし。だから真面目に考えないといけないと思う。
小林:自分の人生をワクワクする事で満たそうと思うと楽じゃないしね。

-だとしたらワクワクする為に工夫している事はありますか?
夏目:基本的に昨日の自分たちよりも今日の自分たちの方が良いライブができるはずだとしか思ってないんだよね。それを繰り返しているだけで、最初の話にも繋がるんだけど、僕は最近頑ななものの方が良いとより強く思っていて。自分の色を決めたらそこから動かずに色々と言われても反省すらしない方が良いと思うんだよね。だからもっともっとここにいれるにはどうしたら良いかなっていう考え方をしてるのが工夫かな。前はそこがぶれていた部分があって、ライブでもロマンチックなシャムキャッツ、楽しいシャムキャッツっていう具合に色んなものを見せたかったんだけど。自分っていうアーティストがどういう風に見られていて、自分たちはどういう風に見せたいかっていう所まで頭が回っていなくて自由にやっていたんですよ。今はシャムキャッツをどう見せたいかを決めているから、ここから動かないでおこうって思ってる。
小林:工夫ではないんですけど、怖気づかないようにしていて。例えばこの人に嫌われたらどうしようっていう、この人って誰だっていう話で。そんな人はいないんだから、気にしない事が怖気づかない事だと思うんですけど、人に何か言われて一喜一憂したり、傷ついたり、人を十字架にしちゃうとそれが怖気づくって事に繋がってしまって。それで身動きできなくなってしまうのはもったいないと思う。
夏目:確かに怖れが入るとワクワクは一気に消えちゃうから、ぶれずにいるのが一番かっこいいよね。

プロフィール:THE NOVEMBERS


Yusuke Kobayashi(Vo./Gt.)、Kengo Matsumoto(Gt.)、Hirofumi Takamatsu(Ba.) 、Ryosuke Yoshiki(Dr.)による2005年結成のオルタナティブロックバンド、THE NOVEMBERS。2007年にUK PROJECTより1st EP「THE NOVEMBERS」でデビュー。様々な国内フェスティバルに出演。2013年10月からは自主レーベル「MERZ」を立ち上げ、2014年には「FUJI ROCK FESTIVAL」のRED MARQUEEに出演。海外ミュージシャン来日公演の出演も多くTELEVISION、NO AGE、Mystery Jets、Wild Nothing、Thee Oh Sees、Dot Hacker、ASTROBRIGHT、YUCK等とも共演。小林祐介(Vo / Gt)はソロプロジェクト「Pale im Pelz」やCHARA、yukihiro(L’Arc~en~Ciel)、Die(DIR EN GREY)のサポート、浅井健一と有松益男(Back Drop Bomb)とのROMEO’s bloodでも活動。ケンゴマツモト(Gt)はソロ・プロジェクト、Dalanoiseとしての活動やドレスコーズのサポート、また園子温のポエトリーリーディングセッションや映画「ラブ&ピース」にも出演。高松浩史(Ba)はLillies and Remains、BAROQUEのサポート、吉木諒祐(Dr)はYEN TOWN BANDやトクマルシューゴ率いるGellersのサポート、MEAT EATERSとしての活動なども行う。2015年10月にはBlankey Jet CityやGLAYなどのプロデュースを手掛けた土屋昌巳を迎え、5th EP『Elegance』をリリース。2016年は結成11周年ということで精力的な活動を行い、Boris、Klan Aileen、MONO、ROTH BART BARON、ART-SCHOOL、polly、Burgh、acid android、石野卓球、The Birthday等錚々たるアーティストを次々に自主企画「首」に迎える。2016年9月に6枚目のアルバム『Hallelujah』をMAGNIPH / HOSTESSからの日本人第一弾作品としてリリース。11周年の11月11日新木場スタジオコーストワンマン公演を実施し過去最高の動員を記録。2017年FUJI ROCK FESTIVAL WHITE STAGE出演。2018年2月にはイギリスの伝説的シューゲイザー・バンド、RIDEの日本ツアーのサポート・アクトを務める。同年5月に新作EP『TODAY』、そして10月にはBorisとのコラボEP『unknown flowers』をリリース。2019年3月、7枚目となるニューアルバム『ANGELS』をリリースした。2019年11月11日にワンマン公演『NEO TOKYO – 20191111 -』を皮切りに、京都・静岡・金沢で『TOUR – 天使たちのピクニック -』を開催を予定している。

プロフィール:シャムキャッツ


メンバー全員が高校三年生時に浦安にて結成。2009年のデビュー以降、常に挑戦的に音楽性を変えながらも、あくまで日本語によるオルタナティブロックの探求とインディペンデントなバンド運営を主軸において活動してきたギターポップバンド。サウンドはリアルでグルーヴィー。ブルーなメロディと日常を切り取った詞世界が特徴。2016年からは3年在籍したP-VINEを離れて自主レーベルTETRA RECORDSを設立。より積極的なリリースとアジア圏に及ぶツアーを敢行、活動の場を広げる。代表作にアルバム「AFTER HOURS」「Friends Again」、EP「TAKE CARE」「君の町にも雨は降るのかい?」など。最新作はシングル「カリフラワー」。2018年、FUJI ROCK FESTIVAL ’18に出演。そして2018年11月21日、5枚目となるフルアルバム「Virgin Graffiti」発売。2019年11月6日にEP『はなたば』発売予定。

ライブ情報

SHIBUYA全感覚祭 – Human Rebellion –
2019年10月13日(日)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-EAST、duo MUSIC EXCHANGE、WWW X、La.mama、7th Floor、O-nestラウンジ
料金:入場料・フードフリーの投げ銭制(ドリンクチャージのみで入場可)
※未成年者の入場不可、要顔写真付きID

全感覚祭19・カンパ振り込み先

ゆうちょ銀行
四五八支店
普通預金 1156467
カネコツカサ