台湾は台北出身の5人組シティポップ・バンド、落日飛車(Sunset Rollercoaster、サンセットローラーコースター)。

今や台湾だけに留まらずアメリカやヨーロッパ、そして日本も含め世界的に高い評価を得ている。

それは数字にも現れており、代表曲「My Jinji」はYouTubeで1000万回再生を超えている。(2020年8月時点)

そんな落日飛車についてより深く知ってもらうべく、バンドの3つの特徴と代表作『JINJI KIKKO』、『Vanilla Villa』、最新作『Soft Storm』について紹介していきたい。

落日飛車とは

落日飛車(Sunset Rollercoaster)

台湾・台北出身の5人組シティポップ・バンド、落日飛車(Sunset Rollercoaster、サンセットローラーコースター)。

メンバーは、国国(Vo./Gt.)、弘禮(Ba.)、小干(Key.)、鳥人(Percussion)、浩庭(Sax.)、尊龍(Dr.)による5人編成。

2011年にデビューアルバム『BOSSA NOVA』をリリースし、同年にはサマーソニックに出演。

その後、2015年までの活動休止期間を挟み、2016年にEP『JINJI KIKKO』を発売する。

2018年にはセカンドアルバム『CASSA NOVA』をリリース。

翌年2019年には、EP『Vanilla Villa』を発表し、フジロックで来日。2020年8月8日にはEP『Vanilla Villa』のアナログ版を発売した。

日本人アーティストとも交流があり、リリースツアーではOGRE YOU ASSHOLE、シャムキャッツ、ミツメ、Yogee New Wavesなどと共演を果たしている。

落日飛車、3つの特徴

落日飛車(Sunset Rollercoaster)
世界で今注目されつつある台湾のインディーズシーン。

その中でも、特に名前を耳にするバンドが落日飛車(Sunset Rollercoaster、サンセットローラーコースター)ではないだろうか?

なぜ落日飛車は台湾を飛び出し、世界的に人気を博すようになったのか。

そこで落日飛車の特徴であるシティポップ、音楽理論と高度な演奏テクニック、定評のあるライブパフォーマンスの3つの特徴に焦点を当てて掘り下げていきたい。

シティポップ

落日飛車の特徴としてシティポップが真っ先に思い浮かぶ。

シティポップとは、日本で70年代後半から80年代にかけて流行した、都会的なサウンドやメロディーが特徴の音楽ジャンルだ。

落日飛車がシティポップ・バンドとして評価されるようになったのは、活動休止後に取り入れられるようになったシンセサイザーの影響が大きい。

サウンドのクオリティーはモダンに、サウンド自体はノスタルジックな要素を多く内包している。これこそがタイムレスなシティポップ。

現在の音楽シーンでは、80年代のリバイバルが流行しているというのも一つのポイントである。

だが決して過去に固執せず、独自のシティポップを表現しているのが落日飛車だ。

高度な演奏テクニック

落日飛車はシティポップを根底に持つが、ジャズやソウル、サイケデリックなどのジャンルも兼備している。

ジャズは音楽ジャンルの中でも、とりわけ高い演奏スキルと音楽理論が必要なジャンルである。

滑らかかつ意外性のある転調、息の揃った楽器隊によって生み出されるグルーヴ感。

リリースを重ねる度に、“音楽をコントロール”するスキルが飛躍的に向上している。

自分たちの意図する音運びができるという自由性が、バンドのオリジナリティに直結しているのだ。

そのためミュージシャンが音楽的な目線で聴いても楽しめるうえ、聴き手の環境を選ばないグルーヴが緩和剤としての役割を果たし、一般リスナーにもしっかりと寄り添っている。

それこそが、落日飛車が国境を超えて愛される理由の一つなのではないだろうか。

ライブパフォーマンス

落日飛車は楽器を多用したバンド構成による音の再現度、高度なテクニック、そしてグルーヴ感が彼らのライブの特徴だ。

音源ではいくらでも修正や重ね録りが可能な為、言ってしまえばごまかしが利く。

では肝心のライブパフォーマンスはというと、メロウなサウンドスケープとタイトなグルーヴは全く音源負けしていない、むしろ音源よりも心地よいのではないだろうか。

幻想的なサイケデリックとロマンチックなムードの漂うライブを演出する幅広いサウンド。

そこにシティポップ特有の、近未来感とノスタルジアが共存する架空の都市像が会場全体を非現実の世界に連れてゆく。

これらの感覚は言語の壁を超え、文化の違いによっても感じ方が変わるため世界的な人気に繋がっていると考えられる。

Audiotreeによる公式スタジオライブ動画も上がっているので、ぜひ視聴してみて欲しい。

Sunset Rollercoaster on Audiotree Live (Full Session)

JINJI KIKKO

『JINJI KIKKO(ジンジ・キッコ)』は2016年にリリースされた3曲入りのEP。

落日飛車(Sunset Rollercoaster、サンセットローラーコースター)の代表曲と言える「My Jinji」が収録されており、YouTubeでの再生回数は1000万回を超えている。

シンセサイザーなしで生のバンドサウンドを鳴らしていたファーストアルバム『BOSSA NOVA』から約5年の活動休止。

その後初めてリリースされた『JINJI KIKKO』が火種となり、落日飛車の名がインターネット上で世界的に拡散されることとなった。

そんな『JINJI KIKKO』では、80年代に時を戻したかのようなノスタルジックな都会の景観を身に纏ったシンセサイザーが加入し、現在のシティポップ路線へと繋がる。

全3曲を通して、落日飛車の織りなす大人でロマンチックなラブストーリーが集約された作品となっている。

1曲目から3曲目に向けて、過去から未来へと歩みを進めるプロセスが楽しめる。

1曲目「Burgundy Red」では懐古主義な80年への帰還。そして「My Jinji」の間奏では特徴的なサイケデリックやフュージョンの要素が強く反映され、新旧が混在する。

最後の「New Drug」では近未来を描いた過去の作品のような、架空の近未来都市へ思いを馳せる感覚を味わえる。

曲ごとに異なるサウンドと年代性で表現される落日飛車のシティポップがここにある。

Vanilla Villa

2019年にリリースされた落日飛車(Sunset Rollercoaster、サンセットローラーコースター)の3曲入りEP『Vanilla Villa』。

EPタイトルである、“ヴァニラ・ヴィラ”という架空のリゾート地を舞台に展開される約7分間の小旅行。

3曲全てが繋がっており、『Vanilla Villa』全体でまるで一曲であるかのように制作されている。と言うのも、元々は一曲だったが、曲が長過ぎるため3つのパートに分けられた。

そして2020年8月8日にリリースされた10インチレコード版の『Vanilla Villa』には、その3曲が「Welcome to Vanilla Villa」として、元々の形である一曲にまとめられて収録されている。

10インチレコード版では、ロサンゼルス出身の宅録アーティスト、Jerry Paperによる「Villa」のリミックス、

そして落日飛車では初となる中国語で歌われた台湾ニューミュージックの名曲「我是一隻魚 I’m a fish」のカバーも収録されている。

『Vanilla Villa』から想像できるのは、東南アジアのエキゾチックな高級リゾート地である。

それぞれの曲が全く異なるテイストやテンポにも関わらず、ナチュラルかつスムーズに曲間が繋がっている。

同じリゾート地の中でも3つの異なる景色を旅人に提供する、至極の小旅行が約束された作品こそが『Vanilla Villa』である。

Soft Storm

落日飛車(Sunset Rollercoaster、サンセット・ローラーコースター)のサードアルバム『Soft Storm』。

タイトルの“Soft Storm”という名の通り、“穏やかな嵐”という言葉がこのアルバムを表現するのに一番適しているのではないか。

意図的に全体の音数をミニマムに抑えることにより、鳴らしている一音一音への意識が強くなり、結果として力強さが生まれていることに気づく。

韓国のバンド、HYUKOH(ヒョゴ)のフロントマンであるOHHYUKをフィーチャリングに迎えたシングル「Candlelight」では、ボーカルの存在を引き立てることに徹した楽器隊の最小限のアプローチが活きているのが分かる。

音を足し算するのではなく、引き算する。

これは落日飛車がサードアルバムでミュージシャンとしての成熟の末に成し得た技である。

そのように精密に計算された穏やかな心地よさ、そして大規模な嵐のような力強さが同居する作品に仕上がっている。(2020年11月14日追加)

落日飛車が1000万回再生される理由

落日飛車(Sunset Rollercoaster)

台湾から世界へ羽ばたいた落日飛車(Sunset Rollercoaster、サンセットローラーコースター)。

落日飛車が世界の音楽シーンで認められたのにはいくつかの要因が考えられる。

インターネットの普及により、音楽が国境を越える”ボーダレス化”が進んだこと。

シティポップの全盛期を知る人には懐かしさと同時にモダンさを感じさせ、全盛期を知らない人には、80年代の音楽のリバイバルとして新たな音楽として受け入れられていること。

そしてジャズ、サイケ、ソウルやフュージョンなどを織り交ぜる音楽性は、ジャンルの境界線を超越しているということ。

国境、世代、音楽性。

これら3つの壁を越える落日飛車は、もはや何にも縛られないバンドなのかも知れない。

そして、今の時代の音楽の在り方に限りなくフィットしているバンドではないだろうか。

落日飛車のこれからの進化と共に、日本を含めたアジアの音楽シーンが世界でさらに注目されることを強く期待している。

リリース

3rdアルバム 『Soft Storm』

収録曲:
1. Soft Storm
2. Overlove
3. Under the skin
4. Passerby (feat. Michael Seyer)
5. Teahouse
6. Overlove (Rehab)
7. Hyperfocus
8. Midnight with Paul
9. Candlelight (feat. OHHYUK)
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EP『Vanilla Villa』

ジャンル: シティポップ

mp3

発売日: 2019/5/1
1.Welcome to
2.Vanilla
3.Villa
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アナログ

発売日: 2020年8月8日
フォーマット: 10inchアナログ
品番: BRRCD-054
収録曲:
1.Welcome to Vanilla Villa
2.Villa remix by Jerry paper
3.我是一隻魚 I’m a fish (cover)
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2ndアルバム『CASSA NOVA』

発売日: 2018/3/14
ジャンル: シティポップ
フォーマット:Mp3
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1stアルバム『Bossa Nova』

発売日: 2011/9/22
ジャンル: シティポップ
フォーマット:Mp3
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プロフィール

落日飛車(Sunset Rollercoaster)

“落日飛車(サンセット・ローラーコースター)は2009年に結成された。現メンバーは国国(ボーカル・ギター)、弘禮(ベース)、小干(キーボード)、鳥人(パーカッション・電子ドラム)、浩庭(サックス)と尊龍(ドラムス)の5人。

2011年にアルバム『巴莎諾娃 Bossa Nova』発表し、その年のSUMMER SONICに出演。その後数年間の活動休止を経て、2016年E.P『JINJI KIKKO』を発表、アーバンかつサイケでメロウな唯一無二の落日飛車的アジアンオリエンティッドロック(AOR)と評される。

2018年に2ndアルバム『CASSA NOVA』を発表し、成熟した圧倒的な世界観を表現したバンドの代表作であり、様々なメディアで2018年のベストアルバムと評された。

ライブパフォーマンスにも定評があり、既にアメリカ、ヨーロッパツアーを敢行し各地で入場規制となるなど世界中から一目置かれる存在となっており、台湾はもとより近年のアジアインディシーンの盛り上がりを代表するバンドである。”

引用元:落日飛車(Sunset Rollercoaster)プロフィール(BIG ROMANTIC RECORDS)

Youtube

  • 落日飛車(Sunset Rollercoaster) – My Jinji
  • 落日飛車(Sunset Rollercoaster) – Welcome to Vanilla Villa
  • 落日飛車(Sunset Rollercoaster) – Candlelight feat. OHHYUK

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ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
Rio Miyamoto
BELONG Mediaのライター/翻訳。18歳から23歳までアメリカのボストンへ留学し、インターナショナルビジネスを専攻。兵庫県出身のサイケデリック・バンド、Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)でボーカル/ギターと作詞作曲を担当。2017年には全国流通作品である1st EP『Under the Sun』をインディーズレーベル、Dead Funny Recordsよりリリース。サイケデリック、ドリームポップ、ソウル、ロカビリーやカントリーなどを愛聴。好きなバンドはTemplesとTame Impala。趣味は写真撮影と映画鑑賞。
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