最終更新: 2021年4月5日

きのこ帝国のライブで結成された謎多きバンド、LAIKA DAY DREAM(ライカ・デイ・ドリーム)。

新作アルバム『laikadaydream #2』に綴られた“駄菓子屋”、“制服”、“素直な気持ち”は思い出の中に。歌詞からその正体に迫る!

アーティスト:Kazutoshi Lee(Vo./Gt.) インタビュアー:桃井かおる子 撮影:枝穂

LAIKA DAY DREAMとは


-まずはLAIKA DAY DREAM結成のいきさつについて教えてください。
Kazutoshi Lee:結成までに色々ないきさつがあるんですけど、3人とも同じ前身バンドの最終メンバーとして活動していました。出会いまで遡ると、ベースのRyoto Amanoとは大学の音楽サークルで、2個上の先輩として彼と出会いました。ドラムのGaku Ohuchiは、その前身バンドが代々木のZher the ZOOでライブをした時に、対バン相手としてドラムを叩いてたのがきっかけで仲良くなりましたね。前身バンドをやっていた頃は、バンドのやり方も分からなかったので。とにかくバンドという憧れを実現したい気持ちが強かったんですよね。色々あって、最終的にそのバンドは解散したんですけど、それが2018年の春ぐらいで。そこで音楽活動に対する挫折があったんですよ。

-挫折ってどういうことでしょう?
それまでは作詞作曲っていうものを誤解していて。論文を書くように楽曲を作ってたんですよね。それは音楽表現と呼べるかどうかも分からない時間で、このやり方ではできないって気づくのに3~4年もかかりました。もしまた次にバンドをやるなら、歌う時に自分が心から楽しめないとダメだ思うようになって。自分の楽曲を批評的に見るのを止めて、無我夢中で自分の快楽に任せて作るほうが良いんじゃないかと。そう思い始めると新しい楽曲ができ始めて、結果的にそれが1st アルバムになるんですけど、その時に、もしかして作詞作曲ってこういうことなんじゃないかっていう手応えを急に感じたんですよ。そうなるとバンドをもう一回やるなら、編成はスリーピースが良いなと考え始めて。

きのこ帝国との縁

きのこ帝国
-そこからプロフィールではきのこ帝国の主催イベント“退屈しのぎ”で初ライブを行ったって書いているんですけど、それとどうつながっていくんですか?
新しいスリーピースバンドでリズム隊を誰に任せるのがいいかって考えていた時に、きのこ帝国のベースのしげさん(谷口滋昭)から連絡が来て。きのこ帝国が下北沢のライブハウスでイベントをやるから、その前身バンドで出てくれないかって内容だったんですよ。集客が多くあったバンドでもなかったし、活動してるのかも分からない状態にも関わらずオファーして下さって。当時は周りにも解散したことを言ってなかったんですけど、電話でしげさんに既にバンドが解散していることを正直に伝えました。もしライブに出れるなら、僕のソロか新しいバンドの初ライブになりますって言うしかなかったんですよね。そのことを正直に打ち明けたら、しげさんはそれでもいいよって言って下さって。新しいバンドを組みたい人がいるので今から結成しますって言って。直後に今のメンバー二人に電話して、この三人でバンドをやりたいっていうことを伝えました。

-すごい展開ですね・・・!
プロフィールにきのこ帝国の主催イベント“退屈しのぎ”で結成って書いてあるんですけど、このイベントがきっかけで結成したので、真実なんですよ。

-初めてのライブがきのこ帝国のイベントってどんな感じでしたか?
1回目のライブからソールドアウトした満員のライブハウスで演奏することができた訳ですけど、そこで歌ってる時に、こんなことが起こっていいのかなって思えてきて。普通に活動を始めていたらありえないことなので。きのこ帝国の皆さんには心から感謝しています。幸せなきっかけです。

-ちなみに前身のバンドのバンド名はどういう名前でしたか?
The White Waltzっていう名前でした。LAIKA DAY DREAMのスタートは楽曲の書き方が変わったことがきっかけなので、リニューアルされた価値観で活動したいという気持ちから、名前を変えましたね。

バンド名の由来


-LAIKA DAY DREAM(ライカ・デイ・ドリーム)というバンド名はRIDEの曲名「Like a Daydream」からきていると資料に書いてありましたね。どうしてこの曲をバンド名前にしようと決めたんですか?
バンド名を決めるよりも先にイベントに出ることが決まってしまって、とても焦ったんですけど。自分の好きなバンドも、フェイバリットなアルバム名や曲名を拝借しているバンドが多いので、僕らもそれが良いと思いました。それともう一つ理由があって、動物の名前を入れたかったんですよ。その2大条件を考えている時に、ちょうどRIDEを聴き直していて。もともと好きになったのは高校生ぐらいの時なんですけど、RIDEは今の年齢になってもやっぱりかっこいいと思って。「Like a Daydream」は有名な楽曲ですけど、改めて感動してこの曲をバンド名にました。動物の名前で“ライカ”っていうのは犬の名前なんですけど、人間よりも先に宇宙に行った動物なんですよ。そのエピソードに子供の頃から関心があって。なので“Like a Daydream”を崩して、“LAIKA DAY DREAM”にしました。

Ride – Like A Daydream

-“ライカ”って宇宙犬から来ているんですね!最初、カメラの“ライカ”かと思いました。
それよく言われるんですよね。カメラの“ライカ(LEICA)”は綴りが違うんですけど、カメラ好きなの?ってよく言われてます。そもそもRIDEの曲名ってなかなか気づいてくれないんで、自分たちから言うようになりしました。

-“インディペンデント・ロック・バンド”とプロフィールには書かれていましたが、どうして自主レーベルで活動しようと思ったんですか?
最初から明確にこの道でやるんだっていうのではなくて、自然な成り行きなんですね。満員の初ライブを終えて、そこから後ろ盾のない状態になるんですけど、ここから自力でやっていくってタイミングで曲がいっぱいできていて。それが結果的にファーストアルバムになりました。友人のエンジニアとレコーディングしたんですけど、2019年の6月に録って。いわゆるラフミックスの状態で、いろんなレーベルの人に送ったり、直接渡しに行ったりしたんですね。かなり馬力が必要なことをやったんですけど、なかなか前向きな話が決まらなくて。そこでどうしようとなった時に、当時は2019年で、サブスクリプションが音楽リスナーには大きく広まっていて。せっかくレコーディングをしたんだし、サブスクリプションでリリースしようってメンバーが言ってくれて。それならミックスを進化させて、セルフマネジメントで出そうと決まりました。結果的に『laikadaydream #1』は自主で出したんですけど、いざやってみると、このやり方が音楽にとっては自然かもしれないと思う瞬間があって。レーベルに所属するのも一つの方法かもしれないですけど、しばらくはこのままやれるって思いましたね。解散してしまいましたけど、シャムキャッツも自主レーベルをやり始めたり、現状はミツメもずっと自主ですし、そういう道を選んでかっこいい音楽を作り続けている方たちがいるのも、理由の一つです。セカンドアルバムも前作からの流れを受けて、同じく自主でリリースしましたね。

laikadaydream #2

-アルバムタイトルの『laikadaydream #2』はどうしてセルフタイトルで出そうと思ったのですか?
まずファーストアルバム(『laikadaydream #1』)は7曲収録なんですけど、一曲一曲集中して作ったので、特にコンセプトがあったわけではなくて。なのでアルバムタイトルをどうしようかと思った時に、Led ZeppelinやQueenもバンド名に数字ってアルバム(『Led Zeppelin II』)を出しているし、それがしっくりくると思って『laikadaydream #1』にしました。今作も価値観としては前作と全く同じなので、続編という意味もこめて『laikadaydream #2』にしましたね。

-では次作は“laikadaydream #3”、その次は“laikadaydream #4”という風に考えているんですか?
次作がどうなるかは分からないですけど、今思ってるのは、バンドの基礎となる部分がこの2枚で作れたなって感覚があるんですよ。なので次は言葉を選んだアルバム名になるのも良いなと思ってます。LAIKA DAY DREAMはこういうバンドですっていう自己紹介がようやく終わったように思っていて。もちろん行為としてはまだまだ自己紹介をしなきゃいけないんですけど、音楽的には最初の第一歩はこれで終わったかなっていう感じがあります。

歌詞


-次は楽曲の歌詞の話をしたいと思うんですが、今作は春と夏をイメージさせる曲が多いと思うんですね。そういう季節感はイメージされましたか?
今回のセカンドアルバムを作る時に、ファーストアルバムって季節でいうと冬みたいなアルバムだったねってメンバーと話していて。だから次のアルバムは夏っぽい作品にしたいって話して記憶がありますね。そういう季節感は無意識で作品に出てるかもしれないです。たしかに実際、祇園祭りや夏休みって言ってますもんね。

-こういう季節感が出てくるのはLeeさんが京都出身だからかなと思ったんですよね。
京都の人がみんなそうかと言われれば分からないですけど、京都って構造が原因なのか夏めっちゃ暑いし、冬めっちゃ寒いんですよ。そういう意味で、京都は四季が明確に見える街だとは思います。

-季節以外にも例えば制服っていうキーワードが出てきたり、駄菓子屋ってキーワードが出てきたり、過去についての曲を多く書かれたのかなと思って。
そうですね。過去のことを書くんだっていう強い気持ちがある訳ではないんですけど、自分が実際に感じてきた幸福であったり、悲しかった体験って、自分で歌ったときに快楽があるんですよね。でも歌詞はブログじゃないんで、過去の出来事を、事実そのままに歌っているわけではないです。過去の出来事から着想して、膨らませていくような書き方をしていますね。結果的に過去のことが多くなっているというのは、過去の事ってどうしても言語化するのに時間がかかるんですよね。リアルタイムでは普通の毎日なわけで、時が経ってから意味を持ち始める気がします。

-そうなんですね。他にも歌詞にこだわっているところはありますか?
本音をなるべく直接的に表現したいというのを、歌詞を書く上で大前提にしていて。そう思うのは単純に、僕がそういう音楽に影響を受けたからというのがあるんですけど。正直な表現にすごく感動してきた人生だったんで。、僕も表現する時はそうしたいと思います。それと、歌詞を書くときに”独り言”は大事にしていますね。これはすごく尊敬してる先輩の影響なんですけど、独り言で嘘はつけないよねってその人が言ってて。それがすごく印象に残っていて。日常的に独り言は僕もよく言うんですけど、独り言で嘘をつくことはありえないし、全て本音だと思うんですよ。

-なるほど。過去のことを歌っている楽曲が多い中で、「Maboroshi Into The Sky」は現在形の曲だと思いました。特にこの曲の“楽しそうな人たちも 悲しそうな人たちも 等しく雨が降る優しい世界”って歌詞はLeeさんがそうあって欲しいって願ってる言葉なのかなと思って。
世界がそうあって欲しいっていう気持ちはあんまりないんですけど、事実としてそうだと思える冷静な自分がいるのは確かです。“等しく雨が降る”っていうのは死に近づいているってことなんですけど、いつか終わりがやってくるということはどんな人間にも平等に与えられていて。そういう世界が優しいと思えたので、こういう表現になりました。

-「Maboroshi Into The Sky」とは対照的に「From Mi To Ya」という曲があるんですけど、そもそもこの曲は何と読むんですか?
メンバーは“フロム・ミー・トゥ・ユー”って発語してます。タイトルの由来は、ちょっと秘密です。この曲は1995年、僕が3歳の時の、当時の記憶を思い出しながら書いたんですよ。

-それこそ“1995 僕の歌を褒めてくれた 園長先生”っていう歌詞もあって、これはどういう意味かなって。
本当に歌詞の通りなんですけど、僕の歌を褒めてくれた先生がいたんですよね。その体験は、僕が人生で最も嬉しかったことの一つで。正確に言うと、当時は未だ園長先生じゃなくて、担任の先生だったんですけど。当時は、足の速い子がクラスの中でも強烈にかっこいいんですよね。でも僕は子供の頃、太ってて足も遅くて。でもある日、その先生が僕と母親と3人で話す時間があって。母親の前で先生が「かーくん(Lee)はこの幼稚園で1番声が大きくて、一番お歌が上手なんですよ」って褒めてくれたんですよ。それが僕にとっては衝撃的に嬉しくて。速く走りたいってことばっかり考えていたんですけど、自分は自分で別の何かいいところがあるんだなって思えて、すごく嬉しかったんですよね。子供なんで悩んだりはしてなかったですけど、今思えば先生に救われたような感覚になって。その時、自分は歌を歌うことをすごく大切にしていく人生なんだろうなって思ったんですよね。

-この曲がLeeさんの人生のターニングポイントにあたる曲なんだろうなと聴いて思いました。それと最後から2曲目は「Shibuya」というタイトルなのに、家族の歌というのが意外でした。渋谷と家族ってイメージがかけ離れているじゃないですか。
僕は19歳まで京都にいて、そこからずっと東京にいるんですけど、大学生時代に一番出入りしていたのが渋谷だったんですよ。なので僕にとって東京といえば渋谷なんですけど、
街の構造や人の量が今までの人生で見たことないくらいに衝撃的で。今でもたまに渋谷へ行くことがあるんですけど、エスカレーターから渋谷の街を見下ろしたり、スクランブル交差点を歩いたりする時に、なぜか家族だんらんでご飯を食べてた景色を思い出すんですよね。渋谷の景色と真反対のものだと思うんですけど、その時から比べると、ものすごく遠くの世界に来たなって感じがするんですよね。

-それでは今作『laikadaydream #2』をどんな人に聴いてほしいと思いますか?
もちろんいろんな人に聴いてほしいんですが、正直な表現が好きな人は僕らの音楽を気に入ってくれるんじゃないかと願ってます。ここ最近、正直な表現に触れる頻度が減ったように思うんですよ。架空の楽園や理想郷を歌ってる人がいて、しかもその割合が昔よりも増えている気がしています。僕はそういう表現が嫌いなわけではないですけど、自分から進んで選びたいとも思わなくて。みんなで一緒に頑張ろうよみたいなメインストリームの音楽は相変わらず存在し続けていますし、そこへのアンチテーゼとしてサブカルチャーがあって。でも最近はそのサブカルチャーとして登場した人たちも、サブカルチャーとしての楽園を歌っていたりして。人間のもっと奥底にある感情をぽろっと言っちゃうような表現の割合が減ったように感じてますね。そういう表現を目指してる人間がまだここにいるよというのが伝わったら嬉しいですね。

-ルーツの話を伺いたいんですが、正直な歌詞という意味でSyrup 16gからの影響が大きいと思います。それ以外にも影響を受けたアーティストがいれば教えてください。
Syrup 16gももちろんそうですが、くるりやシャムキャッツ、海外だとRadioheadにも影響を受けてると思います。子供の頃からいろんな音楽聴く中で、いま挙げた方たちはすごく正直かつハイクオリティな表現をされていると思っていて。Radioheadは英詞なので細かい部分までは分からないですけど、自分たちも正直でいるっていうスタンスはそこからきていますね。

-今回『laikadaydream #2』を聴かせていただいて、私個人としてはSyrup 16g、くるり、スピッツの3組からの影響が強いのかなと思って。
スピッツも大きな影響を受けていますね。特に初期のスピッツってシューゲイザー色の強い曲がたくさんあるんですけど、僕はそれがすごく好きですね。くるりはアルバムによって音楽性が全然違うんですけど、スリーピース編成の頃のサウンドには影響を受けていると思います。

-それでは最後にこれからLAIKA DAY DREAMがどのようなバンドになっていきたいか教えてください。
バンド活動でいうと、自主での活動がどこまで持つのかが客観的にすごく興味があります。不安でもあり、楽しみでもあります。曲単位でいうと、まず今回「A Girl In Saigon」がバンドで完成した時に、大きな手ごたえを感じました。この曲はコード進行がかなり多くて。コード進行が多いとメロディーが自動的に良くなるわけではないんですけど、繊細なメロディーにはなっていくんですよね。それって、僕の解釈だとシティポップ的かなと思っていて。要するに「A Girl In Saigon」は僕なりのシティポップなんですけど。自分の中であまりブレンドされることのなかった、ラウドなアプローチとシティポップ的なアプローチの2つが奇跡的に共存できた感覚があって。ソングライターとしても、今までは絶対出来なかった作詞作曲という意味では大きな自信になりました。これからはいろんなリズムと組み合わせて、この2つのアプローチを組み合わせた楽曲、そして自分が歌っていて楽しいメロディーを作り続けていきたいと思います。

リリース

2ndアルバム『laikadaydream #2』

発売日: 2020年2月3日
収録曲:
1. A Girl In Saigon
2. Musician
3. From Mi To Ya
4. Maboroshi Into The Sky
5. Usotsuki
6. Natsu Yasumi Blues
7. Shibuya
8. Idol
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1stアルバム『laikadaydream #1』

発売日: 2019年12月4日
フォーマット:Mp3
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プロフィール

LAIKA DAY DREAM(ライカ・デイ・ドリーム)

“ー 2018/10/03、きのこ帝国主催イベント『退屈しのぎ』にて初ライブを行い、この日を結成日とする。
ー 2019/12/04、1st Album『laikadaydream #1』をリリース。
ー 2020/02/16、Bluemsとのツーマンライブ『花と犬』を下北沢GARAGEにて共催、SOLD OUT。”

引用元:LAIKA DAY DREAM(ライカ・デイ・ドリーム)プロフィール(オフィシャルサイト)

LAIKA DAY DREAM代表曲(Youtube)

  • LAIKA DAY DREAM – Garakuta
  • LAIKA DAY DREAM – I Adore You
  • LAIKA DAY DREAM – Kinmokusei Room

ライター:桃井 かおる子

スマホ、SNSはやっておらず、ケータイはガラケーという生粋のアナログ派。

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