最終更新: 2023年3月25日

No Buses(ノー・バシーズ)が2枚目となる新作アルバム『No Buses』をリリースする。

「Tic」が予期せぬ形で全世界で聴かれるようになった混迷期を経て、バンド名を冠した『No Buses』をリリースできた背景とは?

また、ロックバンドという形にとらわれないNo Busesの音楽のルーツとは?

Cwondoとしてもソロ活動を行う、バンドのフロントマンである近藤大彗にインタビューを行った。

また、No Busesはフジロック2022に出演し、Youtubeでライブを配信することも決定している。(2022年7月27日追記)

アーティスト:近藤大彗(Vo./Gt.) インタビュアー:yabori

No Busesの意味

No Buses(ノー・バシーズ)
「Having a Headache 」のミュージックビデオの撮影風景
-まずはNo Buses(ノー・バシーズ)というバンド名について聞きたいと思います。No Busesというバンド名はArctic Monkeysの中でもマニアックな曲名(初期EP『Who the Fuck Are Arctic Monkeys?』収録)なのですが、どうしてこの曲をバンド名にしたのでしょうか?
近藤大彗:高校2年生の時に本格的に音楽を聴き始めるまであまり音楽に触れてこなかったんですけど、当時はArctic Monkeysをよく聴いていて。バンド名を決める時に自分たちが思いつく単語で名前を付けようと思ったんですけど、ダサいのしか思いつかなくて(笑)。何かの曲名をバンド名に入れようと思っていて、仮で“No Buses”にしようとなりました。「No Buses」は僕が好きな曲だったんですけど、今思えば“No Buses”っていう字面が良かったなと思って。すっきりして四角く収まる感じがあっていいなと。でも仮のバンド名だったので、後日変えるつもりだったんですけど、思ったよりも早めに曲をリリースできることになって変えるタイミングを見失ってしまって(笑)。

-No Busesってバンド名は仮だったんですか!
リリースしたり、ライブに呼んだりしていただいていたんで、今更ながら変えづらいなと思って(笑)。

-なるほど(笑)。Arctic Monkeysでもいろんな曲がある中で「No Buses」にした理由はありますか?
好きな曲はいっぱいあるんですけど、最初Arctic Monkeysはアルバム順に聴いていきました。一番好きなアルバムは4枚目の『Suck It and See』なんですけど、EPやシングル曲も聴くようになって「No Buses」を見つけました。この曲を聴いた時に特別な曲だと思ったんだと思います。メランコリックでアレックス・ターナーの良いメロディーが詰まっていて、可愛らしい感じがして。それにArctic Monkeysの代名詞のような曲ではなかったので、良い曲見つけたという感覚もありました。

-「No Buses」という曲名の字面と自分が見つけたという感覚があったんですね。次はメンバーについて聞きたいんですけど、No Busesは4人編成から5人編成になりましたが、トリプルギターの編成になったということでしょうか?
ギターは3人ですね。ライブだと僕がキーボードを弾くこともあるので、その時はギターが2人の場合もあれば、トリプルギターでやることもあります。メンバーの担当楽器に関してはフレキシブルに考えてて、何をやってもいいように考えてます。ちなみにサポートメンバーの和田くん(和田晴貴)は大学の後輩なんですけど、すごくいい子なんで入ってもらいました(笑)。一緒にいて落ち着くんですよ。

Ticでの成功の影

No Buses(ノー・バシーズ)
「Having a Headache 」のミュージックビデオの撮影風景
-そうなんですね(笑)。No Buses(ノー・バシーズ)はデビュー曲の「Tic」でいきなり海外で再生回数が増えましたが、これって結成してから間もない頃の話ですよね。
自分たちの正式な音源として「Tic」が初めての曲でしたね。一曲目からこんなに反応があると思ってなくて。主に僕なんですけど、この状況はしんどくて・・・。当時は自分たちで5~6曲をレコーディングして、やっと人様に公式の音源として聴かせるものができたと思えたくらいの時期で。その時の自分たちとして、納得できるものが出せたかと言えば、そうではなくて。そんな状況で初めてリリースした曲が一人歩きしていく様を見て、すごく恐怖を覚えました(笑)。

-怖かったんですか(笑)。
本当に怖かったです。まだ自分の力量もわかってない中で偶発的に生み出してしまったものがどんどんいろんな人の手に渡っていって、自分の元を離れていく感覚があって。そもそも自分の音源をリリースするっていう感覚自体が初めてだったのに、自分が想定した域を超えて聴いてくれていたので、最初の方は怖くてしょうがなかったです。

No Buses – Tic

-そうだったんですね。ご自身ではどうして海外で聴かれるようになったと思いますか?
自分たちが曲をリリースした時のタイミングが良かったんだと思います。僕らの前ってYogee New WavesやDYGLが出てきた後で、その中でもちょっと抜けた音を出していたのが当時としては珍しかったんだと思います。でも海外で聴かれるようになった明確な理由はわからないですね。

-以前のインタビューでは、一聴するだけで日本の音楽なのか、海外の音楽なのかすぐにはわからないところがあると言ってましたけど、それもNo Busesの魅力の一つで、それが海外の人からすると面白いんだと思います。
そうですね。初めて遭遇した方はつかみどころがわからない音楽だと思います。

-つかみどころがわからないって意味では、「Ill Humor」のミュージックビデオの中でなぜか踊ってましたね。
本音を言うと踊るのは嫌だったんですけど、当時ミュージックビデオを撮影する時は、ぶっつけで当日やることを考えていて。

-踊るのは当日のアドリブだったんですか?
そうですね。踊るのは恥ずかしさを紛らわすようなところもあります。僕も含めてメンバーもクールに決めるのが恥ずかしくて。あと、ミュージックビデオを撮影していて思ったんですけど、自分たちの曲を口パクして演奏したふりをするっていう行為が未だに恥ずかしいんですよ(笑)。

No Buses – Ill Humor (Official Video)

心境の変化

-なるほど(笑)。確かにそれは恥ずかしいですね(笑)。話は変わりますが、これも前のインタビューで言っていたと思うんですけど、2018年にThe 1975がサードアルバム(『A Brief Inquiry into Online Relationships』)を出した時、時代の音を聴いたって言っていましたが、それって具体的にどういうことなんですか?
僕はそれまでArctic Monkeysとか、音楽は後追いで聴くことが多かったんですけど、タイムリーにその時代に刺さってる音楽を聴いたのはThe 1975のサードアルバムが初めてだったので。リリースするタイミングに立ち会えたことは僕の中で凄い体験でした。例えばこれまで数々のバンドの名盤と呼ばれる作品をリアルタイムで聴けた人たちと同じ感覚を味わえたのかなって。偉大なバンドが揺るぎないベストアルバムを作っている様を見て、僕の中でバンドとの向き合い方が変わったような感覚がありましたね。

-バンドへの向き合い方が変わったっていうのは具体的にどういう変化があったんですか?
それまでの恐怖感が薄れていきましたね。童心に帰ったように、音楽にきらめいた感覚があって。バンドを始めたときの感覚がもう一回戻ってきたというか。もっと楽しく音楽って作れるなっていう気持ちの変化がありました。その感覚が戻ってくるまでは、自分の音楽がどこかにあるような気がしていて、それに外れないようにしていた気がしていて。でもThe 1975は彼ららしい音楽と思われているものから逸脱した上で、それを超えていくような音楽を作っていることが希望に思えて。世代的にラッパーが台頭して、バンドが死にかけてるような雰囲気があった中で、出てきたアルバムだったので、このタイミングに立ち会えて良かったと思って。

Cwondoについて

Cwondo
-アルバムの話に入る前に、近藤さんのソロ(Cwondo)についても聞きたいと思います。先日、デビューアルバム『Hernia』をリリースしましたが、ソロとバンドの違いについてどのような部分にあると思いますか?
ソロは僕の音楽性をそのまま育む作業なんですけど、バンドはそれぞれの音楽性がある中で、重なる部分を伸ばしていく作業のように感じますね。ソロよりもバンドの方がピンポイントだと思います。

ゲーム音楽からの影響

-なるほど。ソロ作では、ゲーム音楽の影響が大きいと聞きました。ルーツのプレイリスト記事では、『クロノ・トリガー』からの影響もあったようですね。
音楽に熱中する前はゲーム音楽が大好きだったんで、自分がプレイするゲームの音楽をよく聴いていました。子供時代は最新のゲームを買ってもらえる家じゃなかったんで、昔のゲームをやることが多くて。そういうゲームのサントラをちっちゃいiPodもどきみたいなやつで聴いてて。当時は音楽が好きで聴いてる感覚はなかったんですけど、今考えると最初に熱中した音楽はゲームのサントラだったかもしれないですね。

-どういったゲームのサントラを聴いていたんですか?
『MOTHER』やロマサガ(『ロマンシング サガ』)とか、『スーパーマリオRPG』のサントラは好きで、よく従兄弟とお互い音源を借りてよく聴いていました。なので今回のアルバム(『No Buses』)を自分で聴いた時にスーファミっぽいなって思うこともありますね。

-特にどの曲がゲーム音楽っぽいなと思いますか?
9曲目の「Yellow Card」はゲームっぽい音になったと思います。全体的に僕が作るメロディーはゲームのサントラからの影響が大きいと思います。特にRPGのサントラって極東感があると思っていて、異国の地に思いを馳せるような音楽の雰囲気が好きで。ゲーム音楽の中でも広い場所を見つめるような曲の雰囲気は自分の作るメロディーのベースになっているかもしれません。

No Buses – Having a Headache (Official Video)

No Buses(アルバム)

-『No Buses』の歌詞なんですが、対訳を見てみると生活に行き詰まっていることや苦しみについての曲が多いように思いました。これは自分の状況を現しているのでしょうか?
僕自分自身のことを書いている部分もあるんですけど、コロナの影響や周りにいる友だちのことも含めて書いていますね。僕の性格上なんですけど、苛立ちを覚えたり落ち込んだりすることがあると抱え込んでしまうタイプで。

-誰かに相談することもできずに自分で抱え込んでしまうんですね。 
先ほども話したように音楽に対する悩みもメンバーに言えなかったんで。僕がバンドに誘った手前、責任感で言えなくなってしまって。悩みを言ってしまうと、バンドを辞めるんじゃないかとか、余計に気を遣わせることになるんじゃないかと思ったりして。ここ1年でやっと話せるようになってきたんですけど、それまでは本当に抱えきれなくなるまで悩んで、限界を迎えてしまうかもなと思った時期もありました。

-そうなんですね。それでは最後に『No Buses』というタイトルに込めた意味について教えてください。
自分たちが納得できる音楽を作り終えたっていう手応えがあって、『No Buses』というセルフタイトルにしました。それと今回のアルバム制作の途中、バンドでしっかり活動できているなという感覚があって。今までは僕が作った家のデモをもとに、みんなと口頭で相談して、スタジオで録るっていう感じで。僕が一人でバンドをやってるような感覚に近かったんですけど、今回はそうではなくて。

-具体的にどういうところに手応えがあったんですか?
アルバムの中で初めて僕以外のメンバーがデモを持ってきた曲があって、それをスタジオで広げて完成した曲もあります。それに加えて、基本的には曲の大まかな部分は僕が考えるんですけど、あえて余白を作ってここは任せようっていう気持ちが生まて。任せる楽しさもわかってきたし、変に神経質にならなくて良かったっていう気持ちがありましたね。

-以前に任せることに抵抗があったんですか?
任せることに抵抗ありましたね。最近はないんですけど、なぜか自分が作ったデモに固執しちゃうこともあったので。そこが吹っ切れたのはBIM君と「Non Fiction feat. No Buses」を作らせてもらう時に、自分が渡したものにメロディーをのせてもらってすごくいいものができた感覚があって。それが人に任せる楽しさに繋がっていって、バンドで音楽を作る楽しさまで発展したんだと思います。

BIM – Non Fiction feat. No Buses

-最後に『No Buses』をどんな人に聴いて欲しいと思いますか?
もちろん皆さんに聴いて欲しいと思います。でも強いて言えば、僕らのことをあんまり好きじゃなかった人にもう一回聴いてほしいですね。前作『Boys Loved Her』よりは良い作品が作れたと思うんで。

No Buses(ノー・バシーズ)
「Having a Headache 」のミュージックビデオの撮影風景

リリース作品

2ndアルバム『No Buses』

発売日: 2021/6/23
収録曲:
1. Preparing
2. Number Four or Five
3. Very Lucky
4. Alpena
5. Surprised
6. Not Healthy
7. Mate
8. Having a Headache
9. Yellow Card
10. Biomega
11. Playground
12. Imagine Siblings
フォーマット:Mp3
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1stアルバム『Boys Loved Her』

発売日: 2019/9/11
収録曲:
1.Sleepswimming
2.In Stomach
3.Untouchable You
4.Dirty Feeling
5.Tic
6.Dandruff
7.Ill Humor
8.Little Boy
9.Rat
10.When You Sleep With Your Son
11.Medicine
フォーマット:Mp3
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No Buses「eyes」でGUとコラボ

No Busesが自分を新しくする自由をテーマとした新曲「eyes」を2023年3月4日にリリースする。

この曲はNo Busesが書き下ろした新曲で、ファッションブランドのGUとbeautiful peopleがコラボレーションしたオリジナルムービーのテーマ曲として使用されている。

ムービーは、GUの特設サイトで視聴することができ、女優の見上愛が曲とともに青春の思い出を振り返る様子が描かれている。

「eyes」のMV公開

No Buses メインアー写 (1)
No Busesが2023年3月4日にリリースした、新曲「eyes」のMVを公開した。

新曲「eyes」はフロントマンの近藤大彗が作詞・作曲だけでなく、MVの監督・撮影・編集も行っている。

No Buses – Eyes (Official Video)

No Busesフジロック出演決定

フジロック2022

No Buses(ノー・バシーズ)が2022年に開催されるフジロックへの出演が決定した。

彼らは7月29日(金)、RED MARQUEEに登場する。

フジロック2022
2022年7月29日(金)、30日(土)、31日(日)新潟県苗場スキー場

No Buses:フジロックでライブ生配信決定

フジロック2022 YouTube ライブ配信アーティスト 7月29日(金)
No Busesのフジロックでのライブ配信はチャンネル2の12:00~を予定している。

フジロック2022プレイリスト

BELONGスタッフで、フジロック2022に出演するNo Busesを含めたアーティストのプレイリストを作成した。

フジロックを120%楽しむためにこのプレイリストを聴いて欲しい!

No Buses代表曲(Youtube)

  • No Buses – Number Four or Five (Lyric Video)
  • No Buses – Pretty Old Man (Official Video)
  • No Buses – Girl (Official Video)

No Buses ライブ

No Buses 2ndアルバムリリースツアー

  • 2021年7月25日(日)@大阪・心斎橋 LIVE HOUSE Pangea
  • 開場・開演 18:00 / 18:30

  • 2021年8月7日(土)@東京・渋谷 WWW X
  • 開場・開演 17:30 / 18:30

ライター:yabori
yabori
BELONG Mediaの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・​後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻

これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。

過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。

それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行してきた。

現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。

今まで執筆した記事はこちら
Twitter:@boriboriyabori