Hiatus Kaiyote(ハイエイタス・カイヨーテ)の6年ぶりとなる最新アルバム『Mood Valiant』は、フライング・ロータス主催のレーベル“Brainfeeder”からのリリースとなった。

長期ツアーやヴォーカル、ネイ・パームの乳がん克服、メンバーのソロ作リリースなどを経て完成された『Mood Valiant』は、元々横断的であった音楽性から、さらに音のバリエーション豊かに広がった新機軸となる1枚となっている。

複雑に絡まった音の糸が形成するのは誰が聴いても耳が愉しい音像だ。

今回はメンバーのペリン・モス(Dr.)からアルバムについてはもちろん、リリースまでの6年間の活動や、ドラマーとして演奏するうえでの意識など話を伺った。

アーティスト:ペリン・モス(Dr.) インタビュアー:滝田優樹 通訳:青木絵美

Mood Valiantについて

-『Mood Valiant』は前作から6年ぶりのリリースとなりましたが、その理由を教えてもらえますか?
ペリン・モス:人生で色々なことが起きてしまったとしか言いようがないね。『Tawk Tomahawk』と『Choose Your Weapon』をリリースしてからツアーを4年間くらいノンストップでやっていた時期があった。ファーストアルバム『Tawk Tomahawk』をリリースしてからすぐにツアーが始まり、ツアー終了後にオーストラリアに戻ってきて、短期間で『Choose Your Weapon』を仕上げて、またすぐツアーに出た。そのツアーから帰ってきた時は、みんなで少し休みを取りたいね、と思っていたのが最初なんだ。つまり、ハイエイタス(・カイヨーテ)からハイエイタス(=休止)を取ろう、ということ(笑)。少しの間、活動を休止して、自分たちの生活に戻り、新たな刺激を受けてから再び集まって活動を再開しようという予定だった。その間はソロ活動をする機会もあって、個人の活動の幅を広げることができたから良かったよ。でも、休止期間が終わってそろそろ活動を再開しようとしているときに、残念なことにネイ(ネイ・パーム)が癌という診断を受けた。その時、俺たちはツアーをしていて、そのツアーの最中にネイはそれを知ったんだ。ネイは体調が悪かったから検診に行った。そこで悲しい知らせを受けたんだ。その時点からは、レコーディングまでの期間を延期せざるを得なかった。ネイの健康が最も優先されるべきことだったから。ネイの治療は1年くらいかかり、その後も体調が万全になるまで時間がかかった。ネイのことがある前から俺たちは、新しいアルバムの素材を少しずつレコーディングしていたんだ。でもそれも中断された。当初は8ヶ月の活動休止の予定だったのが、結局2年近くになってしまい、さらにコロナという状況も発生して、さらにアルバムのリリースが遅れることになった。だから、人生の様々な出来事に邪魔をされたけれど、それは逆に良いことだったと思う。長い間、休みを取ることもできたし、人生の色々な出来事や苦難を体験したことによって、俺たちは刺激を受け、成長し、その体験をこの新しいアルバムに反映することができたから。だから今振り返ると、リリースに時間がかかったのは良いことだと思っているよ。

-その6年はネイやペリンがソロ作をリリースされてましたね。みなさんはその間、どのような音楽を聴いていたのか、どのように過ごされていたのですか?
6年か?信じられないな!その期間中、俺はたくさんのレコードを聴き漁っていたけれど、『Mood Valiant』を仕上げる頃は、ブラジル音楽に深く傾倒していたね。自分ではその存在さえ知らなかった、ものすごくたくさんの音楽を発見した。未知の世界があるんだと感激していた。まだそれも氷山の一角なんだろうけどね。その氷山の一角を掘っただけでもかなりの刺激を受けたんだ。俺が発見して行った数々のレコードから伝わるインスピレーションや大量の知識に圧倒されていたよ。レコードを聴く習慣がある人には分かると思うけれど、レコードを聴いて、それがどのように制作されて1つの作品としてまとまっているのかを、自分の可能な限りの範囲内で理解するという行為が最高に面白いんだ。だからブラジル音楽をたくさん聴いていたね。あとはエレクトロニック・ミュージックも聴いていた。俺はヒップホップを昔から聴いていたし、バンドに入った当初もエレクトロニック・ミュージックを聴いていたんだ。でも最近はブラジル音楽の世界に夢中になっていたね。音響やミックスの仕方を理解しようとしたり、ミックスエンジニアの観点からではなくて、ハーモニーを聴いてそれを理解しようとしたりした。それからドラマーの観点からはリズムも解釈する必要がある。だから、ブラジルという1つの国だけど、解釈しないといけないことがたくさんあるのさ(笑)。

-具体的な曲やアーティストやアルバムなどありましたら教えてください。
エルメート・パスコアール。彼のアルバムはほぼ全て聴いた。それからアルトゥール・ヴェロカイはもちろん聴いた。カエターノ・ヴェローゾ、トン・ゼー・・・。まだまだたくさんいるけど、主に思いつくのはそれくらい。今、自宅にもブラジル音楽のレコードがたくさんあるんだけど、俺はそのアーティスト名を知らないのがたくさんある。ただ、どこにあるレコードでどの曲が好きだということしか覚えていないんだ。俺の脳の仕組みなのか分からないけど、名前を覚えるのは得意じゃなくて、色や音や曲の展開で覚えているんだ。レコード屋に行っても、ある特定のアーティストを探しているというよりも、目隠し状態でレコードを漁り、このレコードの感触が良いとか、ジャケットが良いという感覚でレコードを選ぶ。もちろん前者の探し方もするけれど、後者のやり方で自分がどこに辿り着くのかをみる方が楽しんだ。

-レコードのヴィジュアルも大切にしているんですね。
ヴィジュアルももちろん大切だし、レコードから伝わる感覚も大切だよ。レコード屋に来る多くの人は、探しているレコードやアーティストがあって、それを買いにきているけれど、そうじゃなくてただ店に入って何があるのかを発見したいという人もいる。ディガーの多くにとっては、それがレコード漁りの醍醐味の一つでもあると思うんだ。

Get Sunについて

-ありがとうございます。では、名前が出たアルトゥール・ヴェロカイについて聞かせてください。収録曲である「Get Sun」は2019年の終わりにリオ・デ・ジャネイロへ行った際に制作されて、アルトゥール・ヴェロカイをゲストに迎えています。リオで制作したいきさつやアルトゥール・ヴェロカイと一緒にプレイしようと思ったきっかけは何だったんですか?
(「Get Sun」で)アルトゥール・ヴェロカイと一緒にプレイしようと思ったのは、彼の芸術性が素晴らしいと思ったという純粋な理由からだよ。彼のセルフタイトルのレコードを初めて聴いた時は俺にとって大きなターニングポイントになった。その時の俺は、先ほど話していたようにレコード屋に行ってブラジル音楽を漁り、どんなものが聴けるかを楽しんでいた時期だった。そして、アルトゥール・ヴェロカイのレコードを聴き、それがきっかけとなり、ブラジル音楽の世界をもっと深く知りたいと思うようになった。初めて彼の曲を聴いたのは、マッドリブが作ったブラジル音楽のミックステープからだったんだ。そのミックステープの中に特に好きな曲があって、俺はいつもその曲に早送りしていたくらいだ。ありがたいことに誰かがミックステープのトラックリストをYouTubeにあげてくれたから曲を特定することができて、そこから全アルバムも聴くことができた。アルバムを聴いた時は衝撃的だったよ。バンドのみんなに教える前に、1ヶ月くらい毎日そのアルバムを1人で聴いていた。もちろんみんなに教えたい気持ちはあったんだけど、自分にとって特別な何かを発見した時って、最初は自分のためだけにとっておきたい期間があるだろう?だから俺は1ヶ月くらいそうしていた。でもツアー中だったからみんなに広まるのに時間がかからなかったよ。楽屋でネイに聴かせたら、ネイも衝撃を受けて、俺みたいにリピートで聴くようになった。それからツアーバスの中でもリピート再生してみんなで聴くようになった。バンドのみんながアルトゥール・ヴェロカイの大ファンになっていたよ。そして4年経ってこのアルバムを仕上げている時のこと。ネイがすごく若い頃に書いた曲があって、それを俺たちで手を加えて新たな息を吹き込んだ。そのときにネイがふと、「アルトゥール・ヴェロカイに参加してもらうのが良いんじゃない?」と提案したんだ。俺たちは「そりゃあ、それができたら最高だけど、そんなの無理に決まってるよ」と冗談として受け止めた。この時点でネイは既に癌の手術を終えていて、人生観が大きく変わっていた。だから彼女はこう言ったんだ。「いや、マジで実現させようよ!」と。そこからはマネージメントが関与してくれてアルトゥール・ヴェロカイの連絡先を入手して、アルトゥール・ヴェロカイと仕事できることになった。彼に制作費を払って俺たちの曲に参加してもらうという話までこぎつけた。その時はまだどのようにして制作が進められるのか決まっていなかったから、その話し合いをしていたときに、ネイが「みんなでリオに行ってアルトゥール・ヴェロカイが作業するのを実際に見ながら一緒に制作できたら素敵じゃない?」と提案した。俺たちは「そりゃあそうだけど、それは費用的に高くなるから無理だよ」と言ったけど、ネイは「とにかく実現させようよ!」とまた言ったのさ(笑)。結局、マネージメントが手を尽くしてブラジルでのライブを企画してくれたから、資金を調達できることになったんだ。俺たちはブラジルでギグをいくつかやって、アルトゥール・ヴェロカイのスタジオでの作業に同席することができた。ブラジルに行った時点では、まだアルトゥール・ヴェロカイが何を演奏するのかを知らされていなかったんだけど、アルトゥール・ヴェロカイだから素晴らしいことをやってくれるという確信が俺たちみんなにあった。実際に素晴らしい体験だったよ。

-ネイの「実現させよう!」というパワフルな姿勢は素晴らしいですね。
そうなんだよ!本当に素晴らしい。ネイのように「私はこれが絶対にやりたくて、これを絶対に実現させるの」と頑固なほど自分の望みを言える人が、俺たちの近くにいる。それはすごく大切なことだ。なぜなら、誰しも自分の望みや信じていることに対して自信を持てない時もある。だからネイの姿勢には尊敬する。頑固というよりも、自分の望みに対して自信があるということだね。だからその望みを実現して行こう、という考え方だね。

Red Roomについて

-本当に素敵ですね!「Red Room」をMVにはアルバムのインスピレーション源となるクライスラー社のヴァリアント・ステーションワゴンが登場してますが、どうしてこの車がモチーフなのでしょうか。
このバンドは周知の通り、ネイの歌詞やネイという人物が大きな機動力となっている。クライスラー社のヴァリアントはネイの母親が運転していた車なんだ。ネイの母親はヴァリアントを2台所有していて、その日の気分(Mood)によって、どちら色のヴァリアントを運転するか決めていた。だから『Mood Valiant』と言うのさ。ネイのパーソナルな部分を表しているんだ。他にもいろいろな解釈ができるけれど、パーソナルな意味合いがあると同時に、ヴァリアントはある意味とてもオーストラリアっぽいというか、オーストラリアの車ではないんだけど、大勢のオーストラリア人がこの車に乗っているよ。車自体がアルバムのインスピレーションになったわけではないんだけど、このタイトルによってネイの物語が明らかになり、このタイトルをつけた彼女の性格も見えてくると思う。

-ポールは『Mood Valiant』について「この旅路のすべてを要約している」と発言されていますが、改めて今作のコンセプトを教えてください。
アルバムの解釈はバンドメンバー各自によって違うと思うけど、(ポール・)ベンダーが言っていたのは、おそらく、こういうことだと思う。ファーストアルバムは自分たちのため、そしてメルボルンにいる何百人の知り合いのために作った作品だった。それだけのはずだったんだ。でもそれがすごくたくさんの人に広まり、俺たちも驚いた。だからバンドとして音楽を作り続けた。クリエイティブなアイデアも生まれ、色々なことに挑戦して、挑戦して行くとそれが知識として蓄積された。セカンドアルバムではその知識を活かして音の幅を広げていった。また、ツアーもたくさんして、ライブ演奏の経験も積んでいった。その後は、バンド活動からみんな離れて、ソロ活動をしたり、各自が個人の人生を歩んでいた。そして、最近はコロナの影響で世界からも隔離されていた。『Mood Valiant』はそれまでの時間が全て詰まっている。俺たちの11年間の経験が込められているんだ。それを全て包括しているのがこのアルバムなんだよ。次のアルバムも同じで、今作よりもさらに洗練されたものになると思う。洗練されているけれど、偽りのない音楽。今では、自分たちが達成したいことができるようになった。活動を始めた当初は、「こういう風にしたい」と思っても、理想と違うものになって、とりあえずそのサウンドで妥協するということもあった。今後もそういうことがあると思うけれど、昔と比べると、自分たちが表現したい感情をどのように表現するのかという、俺たちの知識も相当増えた。表現の作り方も学んだし、表現の演奏の仕方も学んだ。

Brainfeederとの契約

Hiatus Kaiyote(ハイエイタス・カイヨーテ)
撮影:TreKoch

-フライング・ロータスの主宰レーベル“Brainfeeder”と契約してのリリースも大きなトピックスです。先ほどもお伝えした音のバリエーションが多くなったことなど、『Mood Valiant』はフライング・ロータスからの影響を感じました。そのあたりはいかがでしょうか?
そうだね、『Mood Valiant』は具体的にフライング・ロータスから多くのインスピレーションを得たわけではないけれど、俺たちはみんな各自で、どこかの時点で、フライング・ロータスからものすごい影響を受けてきた。それは100%そうだと言い切れる。でもそれが今回のアルバムに影響しているとは思わないけれど、今までに受けてきた影響というのは、俺たちに浸透しているとは思う。バンドメンバーの多くは(音楽プロデューサーの)デイデラスにも影響を受けてきたし、俺個人は(ザ・ルーツの)クエストラブにも影響を受けてきた。そういう昔からの影響は自分でも忘れてしまいがちだ。俺は今年になってから再びDJクラッシュを聴いたんだけど、とても興味深い体験をした。彼は、若い頃の俺にものすごい影響を与えた人だった。2ヶ月くらい前にDJクラッシュを再び聴いた時に、その頃の記憶が蘇ったんだ。自分が音楽を作り始めた時のこと、その当時、見えていた色や感じていた香りなども蘇った。驚きだったよ。ドラムのスウィングを聴いた時、俺のスウィングがどこから由来しているのか分かった。DJクラッシュのビートを聴いた時に気づいたんだ。俺は当時DJクラッシュをかなり聴き込んでいた。だから自分でも彼のビートを真似していたんだ。それと同様にフライング・ロータスも、バンドの全員にとってのインスピレーションになっている。それがいつ、どのように、というのは、そのアーティストの音楽を再び聴いた時に気づくことがある。フライング・ロータスが彼の音楽でやったことを、俺たちも無意識にやっているかもしれない。彼にインスパイアされたり、彼の音楽を真似してみたり、彼の音楽に適応したりしているかもしれない。だからフライング・ロータスの影響を受けていることに対しては俺も100%同感だよ。<Brainfeeder>のレーベルに加わることができてとても嬉しい。フライング・ロータスのような尊敬する人が俺たちの活動をサポートしてくれて光栄だし、それがきっかけで俺たちの活動を前進させることができた。『Choose Your Weapon』の時期は、俺たちみんなフライング・ロータスを聴いていたんだぜ。今回のアルバムは、少し方向性が違うけれどね。

-また、どうして“Brainfeeder”と契約したのでしょうか。
しっくりくると思ったからさ。俺たちにぴったりだと思った。俺たちはツアーでよくサンダーキャットに会うんだけど、あの人は最高だよ。

-サンダーキャットは最高ですよね!
そう!レジェンドだし、いい奴なんだよ。サンダーキャットもそうだし、〈Brainfeeder〉のアーティストはみんな俺たちと同じ雰囲気がある。目指しているものも似ているし、ツアー中も仲良くできる。音楽性は違うかもしれないけれど、同じところからインスピレーションを得ていると思う。だから〈Brainfeeder〉の一員になったということは嬉しいことだよ。

-私も〈Brainfeeder〉は大好きなレーベルの一つです。どのアーティストの音楽も素晴らしいですよね。
良いよね。個人的には〈Ninja Tune〉とも繋がりを感じるんだ。さっきはDJクラッシュについて話したけど、アモン・トビンやDJヴァディムなどに若い頃は影響を受けていたんだよ。

-そうでしたね。先日、ポールにインタビューする機会があった時に伺ったのですが、あなたはヒップホップから入って、ドラマーになる前は、ビートメイカーをしていたそうですね。マッドリブなどの影響を受けていたとお聞きしました。
そうなんだよ!マッドリブやJディラはかなり後なんだけどね。一番最初にハマったのはアメリカのヒップホップでナズとメソッド・マンだった。でもその直ぐ後にDJシャドウやDJクラッシュ、DJヴァディムなどのインストのヒップホップやトリップホップに夢中になった。〈Ninja Tune〉のようなロンドン発のヒップホップを聴くようになり、その後に再びアメリカに戻り、マッドリブなどにインスピレーションを受けた。

-これまでのアルバム作品はコヨーテやマンドリルなど動物がアルバムのジャケットに描かれていましたが、今作のアルバムは何をモチーフにされたのでしょうか?
あれはネイの親しい友達が素晴らしいアーティストで、ネイはこの絵を昔から持っていた。俺たち4人は普段、物事を即座に全員一致で賛成することがあまりなくて、譲歩することもあるんだけど、このジャケットに関しては直ぐにみんな賛成したんだ。絵をみた瞬間、みんな「アルバムのジャケットはこれだね!」と賛成した。だから何の苦労もなくアルバムのジャケットが決まったんだ。素晴らしい瞬間だったよ。ネイがとても親しくしている人で、俺たちにとっても親しい人の作品を使うことができて良かった。

ペリンの演奏・作曲の極意

-Hiatus Kaiyoteの音楽は、枠にとらわれず、聴いていても観ていてもハイスキルなプレイが楽しめます。しかし、着地点は人懐っこいポップミュージックというところが不思議な魅力だと思います。特にネイ・パームのパワフルなヴォーカルに合わせて演奏される際、心がけていることはありますか?
ライブなどのステージ演奏をする時と、スタジオでライブ演奏をレコーディングする時とでは意識が違ってくる。理想論で言うと、ドラムを演奏する時は、いつでも最高なドラマーとしての演奏をしたいと思っているけれど、作曲をしてドラムのパーツを考えているという状況の場合は、どんな音響の設定でも曲の全体像をイメージして、録音したらどう聴こえるか、プロダクションを加えたらどう聴こえるかということを考える。それによってドラムを叩く強さや、どんなドラムのパートを演奏すれば良いのかということが分かってくる。ドラムキットでやれることを全て披露するのではなく、単にテンポを保つ方がふさわしい場合もあるからね。歌詞や曲全体の雰囲気に合っているドラムの音を考えるんだ。メンバーそれぞれの役割は、曲を演奏している時と、作曲やアレンジをしている時とで違ってくる。アレンジをしている時は、一歩離れた視点から曲について考える。それは俺たちみんながやっていることだよ。みんな、意識を切り替えて音楽に臨んでいる。1つのモードで全て行うのではなくて、ドラマーとしての意識、アレンジャーとしての意識、プロデューサーとしての意識を使い分けている。個人的には、その意識を即座に切り換えてマルチタスクのように作業することはあまり好きじゃなくて、ドラマーならドラマーの意識に集中して取り組んで行くやり方が好きなんだ。俺にとってはそういう役割でさえもフィジカルなことだから、自分の身体がどう感じるかが重要なんだ。だから、ドラマーの時は自分の身体をリラックスさせて、自分のエネルギーをドラムを通して表現したい。レコーディングやライブの時はまた別のエネルギーを使うからね。レコーディングの時は、音をミキシングコンソールに通して、スピーカーからどのように聴こえるのかということを意識するし、ステージでライブをやっている時は、そういうことを一切意識せずに全く自由に演奏する。少なくとも俺の場合はそうだね。できる限りのエネルギーを発揮して演奏し、観客にそのエネルギーを感じてもらい、俺の音をより近くで感じてもらいたい。だからリハーサルでも精一杯やっているよ。俺はライブの後に汗をかいていないと、ライブをやった気がしないんだよ、ハッハッハッ(笑)。

Hiatus Kaiyoteのルーツ

Hiatus Kaiyote(ハイエイタス・カイヨーテ)
撮影:TreKoch

-Hiatus Kaiyoteの音楽や活動に影響を与えた、バンドのル-ツにあたるアルバムを3枚教えてください。また、そのアルバムからどのような影響を受けていると思いますか?
良い質問だね。俺たちみんなに共通するものを考えてみるよ・・・。1つは(Carlos Nino & Miguel Atwood-Fergusonの)『Suite For Ma Dukes』だね。これはライブパフォーマンスなんだけどレコードでもリリースされていると思う。ヴァイオリン演奏者のミゲル・ファーウッド・アトキンソンがオーケストラを編成してJディラの楽曲をオーケストラで生演奏したというパフォーマンスだよ。この映像は俺たちみんながよく見ていた。それからアルトゥール・ヴェロカイのセルフタイトルアルバム(『Arthur Verocai』)。あとみんながたくさん聴いてきたのはフライング・ロータスのアルバムだね。どれかというのは決められないけど、俺にとっては『Los Angels』かファーストアルバムの『1983』が一番好き。俺たちのルーツとしてかなり昔に聴いていたものをセレクトしてみたよ!

-『Mood Valiant』をどんな人に聴いて欲しいと思いますか?
誰が聴いても楽しめるようなレコードであってほしいとは思う。絶対に全ての人が楽しめるとは全く思っていないけれど、どんな人と答えるのは難しいな・・・。俺たちのライブには本当に様々なデモグラフィックス(性別や年齡などの意味)の人が来てくれるからね。メタルヘッズの人たちも俺たちの音楽が大好きなんだぜ!俺にとってそれは驚きだったけれど、俺たちの音楽にはマスロックっぽい楽曲もあるからなんだろうな。だからライブには、メタルヘッズもいるし、ジャズヘッズもいるし、ヒップホップのファンもいるし、歌が好きなシンガーたちもいるし、ネイの女性としての存在が大好きなファンもいるし、それに加えてドラムのファンやベースのファンもいる。だから非常に幅広い人たちが俺たちの音楽のリスナーなんだ。でもみんなオープンマインドな人たちだと思うよ。オープンマインドじゃない人は俺たちの音楽を好きにならないんじゃないかな・・・。でもそんなことはないか・・・。そんなことを想定する俺がオープンマインドじゃないな・・・。ごめん、今日はやたらと哲学的で曖昧なことばかり話しているね(笑)。

-そんなことはないです。良いお話が聞けていると思います。それでは最後に日本のリスナ-にメッセ-ジをお願いします!
日本の皆さん、こんにちは!俺たちは日本が大好きで、日本に行くのをみんな毎回楽しみにしているんだ。日本には良いレコードがたくさん揃っていて、今までも最高の掘り出し物があったよ。日本のみんなは音楽が大好きだから、今回のアルバムも楽しんでくれたら嬉しい。早くまた日本に行ける日を楽しみにしているよ!

アルバム

サードアルバム『Mood Valiant』

発売日: 2021/6/25
収録曲:
01. Flight Of The Tiger Lily
02. Sip Into Something Soft
03. Chivalry Is Not Dead
04. And We Go Gentle
05. Get Sun (feat. Arthur Verocai)
06. All The Words We Don’t Say
07. Hush Rattle
08. Rose Water
09. Red Room
10. Sparkle Tape Break Up
11. Stone Or Lavender
12. Blood And Marrow
フォーマット:Mp3,CD,アナログ,カセット
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セカンドアルバム『Choose Your Weapon』

発売日: 2015/5/1
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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ファーストアルバム『Tawk Tomahawk』

発売日: 2012/4/1
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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プロフィール

Hiatus Kaiyote(ハイエイタス・カイヨーテ)

“紅1点で強烈な個性を放つギター・ヴォーカルのネイ・パーム、ポール・ベンダー(Bs)、サイモン・マーヴィン(Key)、ぺリン・モス(Ds)の4人からなるハイエイタス・カイヨーテは2011年メルボルンで結成。
2013年夏、米ソニーミュージック傘下のマスターワークス内にあるサラーム・レミ主宰フライング・ブッダ(Flying Buddha)レーベルからデビュー。アルバムに収録されたQ-TIP共演のシングル「NAKAMARRA」が第56回グラミー賞ベストR&Bパフォーマンス部門にノミネートされ、スナーキー・パピーが受賞するも、この部門でノミネートされた初のオーストラリアのバンドとなった。
2015年5月、セカンド・アルバム『チューズ・ユア・ウェポン』を世界リリース。スケール・アップしたグルーヴ感と流動するエネルギーにみちたハイエイタス・サウンドは世界中のファンを魅了し、iTunes R&B/Soulアルバム・チャートにおいてアメリカ、オーストラリア、カンボジア、カナダ、ドイツ、イスラエルの6カ国で1位を記録。
セカンド・アルバムを引っ提げての5月に行われた全米ツアーでは、各地でソールドアウト公演が続出した。5月12日のミネアポリス公演にはプリンスも駆け付け、絶賛コメントを発表している。6月以降は大陸を移動してパリ、モスクワ、トルコ、ベルギー、ウィーン、ニース、フィンランド各地でのライヴに加え、グラストンベリー、モントルー・ジャズ・フェス、ノース・シー・ジャズ・フェス等、歴史あるヨーロッパ名物フェスへの参戦を果たす。変幻自在のジャム・バンドとしての本領を発揮したハイエイタス・カイヨーテは、世界中の音楽ファンをうならせ、次世代を切りひらく唯一無二の存在として、かつてない注目を集めるバンドへと大躍進を遂げた。
9月26日ブルーノート東京での単独公演に続き、27日には横浜で開催されるブルーノートジャズ・フェスティバル・イン・ジャパン出演のため来日する。”

引用元:Hiatus Kaiyote(ハイエイタス・カイヨーテ)バンドプロフィール(Sony Music)

代表曲(Youtube)

  • Hiatus Kaiyote – Nakamarra
  • Hiatus Kaiyote – Jekyll
  • Hiatus Kaiyote – Breathing Underwater

ライター:滝田優樹

1991年生まれ、北海道苫小牧市出身のフリーライター。TEAM NACSと同じ大学を卒業した後、音楽の専門学校へ入学しライターコースを専攻。

そこで3冊もの音楽フリーペーパーを制作し、アーティストへのインタビューから編集までを行う。

その経歴を活かしてフリーペーパーとWeb媒体を持つクロス音楽メディア会社に就職、そこではレビュー記事執筆と編集、営業を経験。

退職後は某大型レコードショップ店員へと転職して、自社媒体でのディスクレビュー記事も執筆する。

それをきっかけにフリーランスの音楽ライターとしての活動を開始。現在は、地元苫小牧での野外音楽フェス開催を夢みるサラリーマン兼音楽ライター。

猫と映画鑑賞、読書を好む。小松菜奈とカレー&ビリヤニ探訪はライフスタイル。

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Twitter:@takita_funky

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