最終更新: 2022年4月2日
コールドプレイ(Coldplay)が新作アルバム『Music Of The Spheres』より「People Of The Pride」のMVを公開した。
この記事では、「People Of The Pride」の歌詞を和訳するとともに、BELONG独自の解釈で内容を考察している。
人種差別や性差別によって自分らしく生きる権利を奪われた人々。
コールドプレイが「People Of The Pride」で描いた、“誇り高き人々”とは?
目次
コールドプレイとは
コールドプレイ(Coldplay)は1997年、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ在学中に結成された。彼らはマンチェスターでアマチュアバンド向けのフェスで初めてライブを行った後、初のEPとなる『Safety』を発表。
1999年4月にBlurやRadiohead、Queenなどの錚々たるアーティストを輩出してきたパーロフォン・レーベルと契約し、2000年7月にデビューアルバム『Parachutes』をリリース。
同作からシングルカットされた「Yellow」でブレイクし、またたく間にイギリスを代表するバンドとして頭角を表した。
2002年にリリースされたセカンドアルバム『A Rush of Blood to the Head』、2008年の『Viva La Vida』はマルチプラチナアルバムとして世界中のアルバムチャートを席巻。
最初の3枚のアルバムが数カ国でマルチ・プラチナムを獲得した後、コールドプレイは更に成熟し続け、これまでの成功を上回る高いレコード売上、複数のジャンルを吸収する進化し続けるサウンドを獲得した。
2021年、9枚目のアルバム『Music Of The Spheres』をリリース。
コールドプレイメンバー
コールドプレイのバンドメンバーはクリス・マーティン(Vo./pf.)、ジョニー・バックランド(Gt.)、ウィル・チャンピオン(Dr.)、ガイ・ベリーマン(Ba.)は、いずれも音楽一家に生まれた。
5人兄弟の長男であるクリス・マーティンは、幼い頃からピアノを弾き始め、後にトム・ウェイツの作品に影響を受ける。
一方、ギターを担当しているジョニーはエリック・クラプトンやジミ・ヘンドリックスのヘビーなギター・サウンドを聴いて育った。
スコットランド出身のガイはロックよりもファンクが好きだったため、ベーシストになったという経緯がある。
マルチインストゥルメンタリストのウィルは、コールドプレイのメンバーに加わるまでドラマーになるつもりはなかったそうだ。
People Of The Pride
コールドプレイ(Coldplay)の「People Of The Pride」は、9作目となるアルバム『Music Of The Spheres』の収録曲。
2021年10月にシアトルのクライメート・プレッジ・アリーナで行われたライブ映像を織り交ぜたミュージックビデオは、The Rolling StonesやAdeleなどの音楽ドキュメンタリー映画を制作してきたポール・ダグデールが監督を務めた。
コールドプレイ(Coldplay) – People Of The Pride (Official Video)
People Of The Pride歌詞和訳
コールドプレイ(Coldplay)の「People Of The Pride」について。
人種差別や性差別によって奪われた人権がテーマの歌詞を和訳し、内容を考察していく。
左の人々も
右の人々も
皆心の内側にライオンを宿している
誇り高き者たちよ
さぁ行こう
“People on the left
People on the right
Got a lion inside
People of the pride
Let’s go”
自らを神と宣誓した男がいた
無神論者は皆処刑されるだろう
優雅に辺りを闊歩する男がいた
まるで全てを手にしたかのように
人々を思い通りに操ろうとする男がいた
まるで自家製の鳩時計のように
その男は大衆を鳩時計の周りで行進させた
チクタク、チクタク、チクタクと
“There’s a man who swears he’s God
Unbelievers will be shot
There’s a man who walks around
Like he owns the fucking lot
There’s a man who takes his time
From his homemade cuckoo clock
And he makes us march around it
Tick-tock, tick-tock, tick-tock”
狂った目をしたクロコダイルがいる
時代の変化が訪れようとしてる
年老いた犯罪者の悪行のために
俺たちはもう戦わない
ぼろ切れを縫い合わせて
革命の旗にするんだ
皆で立ち上がれば
時代のアンセムにだってなれる
さぁ立ち上がれ
“There’s a crocodile cross-eyed
There’s a turning of the tide
We’re no longer gonna fight for
Some old crook and all his crimes
There’s a sewing up of rags
Into revolution flags
Got to stand up to be counted
Be an anthem for your times
It’s just work”
そんなもんさ、簡単じゃない
皆吹き飛ばされてもおかしくない
天国は避難階段さ
暗闇の中で必死にしがみつけ
そんなもんさ、信じてくれ
心臓が高鳴っている
愛する者同士で
誰もが自由に恋愛できるようになるさ
素晴らしいだろ
誇り高き者たちよ
さぁ行こう
“It’s just work, it’s not easy
And we could all be blown apart
And heaven is the fire escape
You try to cling to in the dark
It’s just work, believe me
Still my beating heart
We’ll all be free to fall in love
With who we want and say
Yeah, yeah, yeah
People of the pride
Go”
People Of The Pride歌詞和訳まとめ
コールドプレイ(Coldplay)の「People Of The Pride」の歌詞は、差別によって奪われた人権がテーマの楽曲である。まず冒頭の歌詞に登場する“左の人々/右の人々”は左翼と右翼を表現しており、その次に続く“ライオン”はプライドの象徴であり、どの党派の人々もそれぞれ心の中にプライドを抱えていることが綴られている。
“左の人々も
右の人々も
皆心の内側にライオンを宿している
誇り高き者たちよ
さぁ行こう”
Viva la Vida期のデモ
Aメロの歌詞が書かれたのは、2008年に発売されたアルバム『Viva la Vida or Death and All His Friends(美しき生命)』と同時期で、当時は「The Man Who Swears」というタイトルでデモが制作されていた。
そして、ここで登場する男は“独裁者”であり、楽曲のテーマの一つである自由を制限する“世の中の不自由”を象徴した存在として描かれている。
“自らを神と宣誓した男がいた
無神論者は皆処刑されるだろう
優雅に辺りを闊歩する男がいた
まるで全てを手にしたかのように
人々を思い通りに操ろうとする男がいた
まるで自家製の鳩時計のように
その男は大衆を鳩時計の周りで行進させた
チクタク、チクタク、チクタクと”
次の歌詞に登場する“クロコダイル”とは、ピーターパンに登場する“チクタクワニ”というキャラクターを示唆しており、先ほどの歌詞にある“チクタク”という表現とリンクしている。
チクタクワニはフック船長の右手を食べて以来、フック船長を食べようと追いかけ続けるワニであるが、フック船長を“独裁者”と見立て、独裁政治に終止符を打とうと奮闘する人々を比喩していると読み解ける。
Viva la Vidaとのリンク
そして続く歌詞では、『Viva la Vida or Death and All His Friends(美しき生命)』のアートワークにも使用された『民衆を導く自由の女神』とリンクしており、自由のために闘う人々への尊敬の意が表現されている。
“狂った目をしたクロコダイルがいる
時代の変化が訪れようとしてる
年老いた犯罪者の悪行のために
俺たちはもう戦わない
ぼろ切れを縫い合わせて
革命の旗にするんだ
皆で立ち上がれば
時代のアンセムにだってなれる
さぁ立ち上がれ”
LGBTへの言及
次の歌詞では、LGBTについて言及しており、性別に関係なく愛する者同士が結ばれる“自由な世界”への願いが込められている。“愛する者同士で
誰もが自由に恋愛できるようになるさ
素晴らしいだろ”
クリス・マーティンのコメント
コールドプレイのフロントマンであるクリス・マーティンは「People Of The Pride」に関して以下のようにコメントしている。
“この曲の大部分はブラック・ライヴス・マターやゲイ・プライドといった社会運動からインスパイアされ、“この状況はおかしい”という民衆の声を代弁した曲なんだ。”
“この曲は政治に関する内容だ。地球上の全ての人間は自分らしくいられるという権利を信じる政治についての歌なんだ。”
人種差別や性差別によって自由に生きる権利を奪われた人々。
時代に革命を起こし、自由を求めて闘う人々こそが“誇り高き人々”であり、そのような人々へ贈る賛歌こそが「People Of The Pride」なのである。
コールドプレイアルバム作品
9thアルバム『Music Of The Spheres』
発売日: 2021年10月15日
収録曲:
1.🪐
2.Higher Power
3.Humankind
4.✨
5.Let Somebody Go
6.❤
7.People Of The Pride
8.Biutyful
9.🌎
10.My Universe
11.♾
12.Coloratura
フォーマット:Mp3
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8thアルバム『Everyday Life』
発売日: 2019年11月22日
フォーマット:CD、アナログ
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7thアルバム『A Head Full of Dreams』
発売日: 2015年12月4日
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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6thアルバム『Ghost Stories』
発売日: 2014年5月21日
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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5thアルバム『Mylo Xyloto』
発売日: 2011年10月19日
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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4thアルバム『Viva la Vida or Death and All His Friends』
発売日: 2008年6月11日
フォーマット:CD、アナログ
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3rdアルバム『X&Y』
発売日: 2005年6月1日
フォーマット:Mp3、CD、アナログ
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2ndアルバム『A Rush of Blood to The Head』
発売日: 2002年8月12日
フォーマット:Mp3、CD、アナログ、カセット
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1stアルバム『Parachutes』
発売日: 2000年8月9日
フォーマット:CD、アナログ
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コールドプレイプロフィール
“コールドプレイは、1996年にロンドンで結成されたイギリスのロックバンドです。ボーカル兼ピアニストのクリス・マーティン、ギタリストのジョニー・バックランド、ベーシストのガイ・ベリーマン、ドラマーのウィル・チャンピオン、クリエイティブディレクターのフィル・ハービーの4人組。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで出会い、1996年から1998年にかけて一緒に音楽を始め、最初はPectoralz、次にStarfishと名乗るようになった。
1998年にセーフティEPをインディーズでリリースした後、翌年にはパーロフォンと契約した。デビュー・アルバム『Parachutes』(2000年)は、「Yellow」のヒットでブレイクし、ブリット・アワード(British Album of the Year)、グラミー賞(Best Alternative Music Album)を受賞し、マーキュリー・プライズにもノミネートされている。
セカンドアルバム『A Rush of Blood to the Head』(2002年)も同様の賞賛を受け、シングル「Clocks」と「The Scientist」を生み出し、前者はグラミー賞のレコード・オブ・ザ・イヤーを受賞した。3rdアルバム『X&Y』(2005年)は、世界30カ国以上のチャートで首位を獲得し、その年のベストセラーとなった。
2008年の『Viva la Vida or Death and All His Friends』で、コールドプレイは再び栄誉を手にし、彼らが三部作と考える作品の完成に続いて新たな音楽領域を開拓した。
このアルバムはグラミー賞の最優秀ロックアルバム賞を受賞し、アルバム・オブ・ザ・イヤーに初めてノミネートされた。タイトル曲「Viva la Vida」は、21世紀になって初めてイギリスとアメリカの両国で1位を獲得したイギリスのグループとなった。
その後、コールドプレイは、その後のアルバム『マイロ・ザイロト』(2011)、『ゴースト・ストーリーズ』(2014)、『ア・ヘッド・フル・オブ・ドリームズ』(2015)、『エヴリデイ・ライフ』(2019)、『ミュージック・オブ・ザ・スフィアーズ』(2021)でさらに音の多様化を図っている。それぞれが特定のテーマを提示し、エレクトロニカ、アンビエント、ポップ、R&B、ファンク、クラシック、ジャズ・フュージョン、プログレッシブ・ロックなど、バンド本来のレパートリーに新しい音楽スタイルが加えられた。
彼らはまた、まばゆいばかりの多幸感あふれるライブ・パフォーマンスでも注目されており、批評家はバンドが「生き生きとし、最も意味をなす」時であると述べている。2018年に結成20周年を記念して、マット・ホワイトクロス監督による、未公開の舞台裏を収録したキャリアを振り返るドキュメンタリーを発表した。”
コールドプレイの評価
“全世界で1億枚のアルバムを売り上げたコールドプレイは、21世紀で最も成功したバンドのひとつである。
Fuseによると、彼らは史上6番目に多くの賞を受賞したグループである。その他にも、史上6番目に高い興行収入を上げたツアー、イギリスで最も売れたアルバム50枚のうちの3枚、イギリス国内で一度も首位を逃すことなく最も多くのナンバーワンを記録したこと、ブリット・アワード史上バンドとして最も多くのノミネートと受賞、イギリスのグループとして初めてビルボード・ホット100で1位デビューを果たしたことなどが挙げられる。
コールドプレイは21世紀においても最も影響力のあるバンドの一つと考えられており、Forbesは彼らを現在のオルタナティブシーンのスタンダードであると評している。
ロックの殿堂は『ア・ラッシュ・オブ・ブラッド・トゥ・ザ・ヘッド』を「200の決定的なアルバム」のリストに加え、シングル「イエロー」は最も成功し重要なレコードであるとして「現代のロックのスタンダードを形作った曲」の一つとなっています。”
コールドプレイ代表曲(Youtube)
- コールドプレイ(Coldplay) – Viva La Vida (Official Video)
- コールドプレイ(Coldplay) – A Sky Full Of Stars (Official Video)
- コールドプレイ(Coldplay) – Higher Power (Official Video)
コールドプレイ関連記事
コールドプレイ(Coldplay)の関連記事について、BELONGではこれまでに「Coloratura」の和訳記事をアップしている。
ライター:Rio Miyamoto(Red Apple)
BELONG Mediaのライター/翻訳。
高校卒業後18歳から23歳までアメリカのボストンへ留学し、大学ではインターナショナルビジネスを専攻。
13歳よりギター、ドラム、ベースを始める。
関西を拠点に活動するサイケデリック・バンド、Daisy Jaine(デイジー・ジェイン)でボーカル/ギターと作詞作曲を担当。
2017年10月、全国流通作品である1st EP『Under the Sun』をDead Funny Recordsよりリリース。
2021年2月、J-WAVEのSONAR MUSICへゲスト出演。
普段はサイケデリック、ソウル、ロカビリーやカントリーを愛聴。趣味は写真撮影、ファッション、映画鑑賞。
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