最終更新: 2022年6月19日

あのThe Cureのオープニングアクトを務めたアイルランドの新人バンド、Just Mustard(ジャスト・マスタード)。

セカンドアルバム『Heart Under』はシューゲイザーサウンド一辺倒という訳ではなく、エレクトロニカなどに代表される電子音楽の反復するビートが新鮮である。

シューゲイザーを拡張するサウンドゆえにThe Cureのロバート・スミスを虜にしたJust Mustardとは何者か?メールインタビューを行い、その特別なサウンドの秘密に迫った。

アーティスト:ケイティ・ボール(Vo.)、デビッド・ヌーナン(Gt./Vo.)、メテ・カリョン(Gt.)、ロブ・クラーク(Ba.)、シェーン・マグワイア(Dr.) インタビュアー:yabori 翻訳:竹澤彩子 (Ayako Takezawa) 取材協力:Big Nothing

Just Mustardについて

Just Mustard(ジャスト・マスタード)3
-まずはJust Mustard(ジャスト・マスタード)結成のいきさつについて伺いたいと思います。海外メディアのインタビューでは当初はケイティ(Vo.)、デビッド(Gt./Vo.)、メテ(Gt.)、ロブ(Ba.)の4人で結成し、後にシェーン(Dr.)が加入したそうですね。それぞれのメンバーとはどのようにして出会ったのでしょうか。
メンバー全員ともアイルランドの北東部にあるダンドークって町の出身なんだ。町自体は小さいけど音楽コミュニティの規模は大きくて、その周辺を出入りしているうちに普通に知り合ったんだよね。メンバーのうちの何人かは10代の頃から友達で、一緒にライヴ行ったりそれぞれ別のバンドで活動してたり。このメンツで一緒に音楽をやるようになったのは2016年頃で、そのあと2017年にShaneが参加したんだよ。そこからファースト・アルバムの『Wednesday』の制作に至るっていう。

Just Mustardの意味

-Just Mustardというバンド名の由来について、インタビューでは誰も由来が分からないと答えていましたね(笑)。今ではJust Mustardというバンド名にはどのような意味があると思いますか?
それについては謎ってことで。

-ちなみに皆さんはJust Mustardというバンド名を気に入っていますか?
今のところいい感じだよ。Just Mustardっていうバンド名の何が最高って、そもそも名前自体がふざけてるから、そんなシリアスにならなくっていいんだよって思い出させてくれるところだよ(笑)。

Heart Underについて

-前作は地元ダンドークのPizza Pizza Recordsからリリースされましたが、セカンドアルバム『Heart Under』はPartisan Recordsからリリースされるそうですね。Partisan Recordsには、Fontaines D.C.やCigarettes After Sex、IDLESといった私の大好きなバンドがたくさんいるのですが、どうしてこのレーベルと契約しようと思ったのでしょうか。
Partisanとは2019年の終わり頃に出会って、そのあとすぐに契約って流れになったんだけど、最初に会ったときからスタッフもみんないい人達で、気さくだし、自分達のやってる音楽とか目指してることについてもすごく理解してくれた上で、うちのバンドのことをサポートしたいと思ってくれてるのが伝わってきたのと、彼らがやろうとしてくれてることが自分達の方向性とも一致してると思ったからなんだ。

Heart Underのサウンド

-インタビューでKatieが言っていた“自分たちの曲をできるだけ残酷にすることを学んだ”という言葉が印象に残っています。その言葉を聞いて、私は「Still」のイントロ部分を想像したのですが、自分たちのサウンドのどの部分が残酷だと思いますか?どうしてサウンドを残酷にするのがJust Mustardらしいと思ったのでしょうか。
メンバー全員とも激しいサウンドが好きなのもあるし、私(Katie)の声のトーンとか音域とかを利用して光と闇のバランスを取ってるみたいな、容赦なく激しいギターと私のヴォーカルの軽さの対比みたいなところを描こうとしてるの。

-以前、My Bloody Valentineが好きなアーティストにインタビューした際、「凄まじい轟音はかえって静寂を感じる」と言っていたのが印象に残っています。Just Mustardにも轟音の先にある静寂を感じるのですが、そういったサウンドを作る上でこだわった部分があれば教えてください。
できるだけ感情的な音楽にしようってことを心がけてて、ありとあらゆる種類の感情を表現しようとその方法論を探ってる。激しさと柔らかさのコントラストについても自分達が深く追求してることの一つで、ダイナミックな展開を作り上げて、リスナーの先入観をひっくり返すってことを同じ1曲の中でやっちゃうことはこだわってるかな。

-『Heart Under』は皆さんにとって、とても青く水中にいるようなイメージだと言っていましたね。収録曲には「Rivers」というタイトルがあったり、「Still」の歌詞にも“In this river”という表現が出てきたり、“River”という言葉がよく出てくるのですが、これにはどのような意味があるのでしょうか。
曲を書いてる時期の自分の心象風景を表現するためのメタファーとして”水”という言葉を使ってるんだよね。イメージを通して歌詞を書くのが好きで、ちょうどあの曲を作ってる時期、自分が水の中にいるみたいな感覚でずっといたから。 ときとき表面に顔を出そうとするんだけど、大半はただじっと水中に留まったままみたいな状態で。

Heart Underの意味

-前作『Wednesday』は凝ったタイトルにしようし過ぎるあまり、馬鹿らしくなってあえてシンプルなタイトルにしたというエピソードが面白いと思いました!今回は『Heart Under』というタイトルですが、これはどのようにして決まったのでしょうか?また、『Heart Under』というタイトルにはどのような意味があるのでしょうか。
たしかに前回の『Wednesday』のほうがタイトルを考えるのによっぽど苦労したかも。『 Heart Under』に関しては、歌詞からタイトルを引用するのがいいと思ったんだよね。 実際に曲の中に出てくる言葉がこのアルバムの中にある感情の一部でもあるし、サウンドの方向性を左右してたりするんだ。それで言うと、今回のアルバムの中身を一番要約して伝えてるのは「Sore」の歌詞だと思って。あの中に出てくる歌詞の “the heart under its foot”を省略して”Heart Underにしたんだよね。

Just Mustardのルーツ

-ここからはJust Mustardのルーツについて伺いたいと思います。まずはロバート・スミスの指名でThe Cureのサポートアクトとして演奏したそうですね。皆さんはもともとThe Cureから影響を受けていたのでしょうか?また、彼らと共演してどうでしたか?
もちろん、The Cureにはめちゃくちゃ影響を受けまくってる!同じステージに立てるなんてものすごいシュールだったし、一生の思い出になった!しかも、ロバート・スミスが本当にいい人で、うちのバンドのことを温かく迎えてくれて、こっちがやりやすいような雰囲気を作ってくれたのもすごく嬉しかった。

-Just Mustardのルーツにあたるアルバムを3枚教えてください。また、それぞれのアルバムについてどの部分に影響を受けているか教えてください。

Warpaint

Warpaint(album)
Warpaintのセルフタイトル・アルバムの『Warpaint(ウォーペイント)』は特に重要な1枚なんだ。特にドラミングや自分達が曲作りをする上でものすごく影響を受けてるのもあるし、あのアルバムの音の中に漂う空気感がすごく好きなんだよね。ものすごく繊細なニュアンスの音を何層にも渡って重ねてるんだけど、同時にものすごく空間的な広がりと静けさを感じるんだ。

Aphex Twin

Aphex Twin『I Care Because You Do』
2枚めはAphex Twinの『I Care Because You Do』。Aphex Twin作品はどれも好きすぎて、その中から一番影響を受けた1枚を選ぶのは難しいんだけど、一番のお気に入りを選ぶならこれかな。後半にかけての”Cow Cud Is A Twin”、” MooKid”、”Alberto Balsam”の3曲が大好きで、とくにあのビートとメロディにものすごく影響を受けてる。

Girl Band

Girl Band『Holding Hands With Jamie』
3枚めはGirl Bandの『Holding Hands With Jamie』 。このアルバムもGirl Bandもメンバー全員とも大好きで、ギターやソングライティングの面でものすごく影響を受けてる。従来の楽器の使い方の枠組みを超えて新たな可能性を探ってる姿勢とか昔から今に至るまでものすごくインスパイアされてる。

Just Mustardからのメッセージ

-最後に下記の2つの質問は私たちが必ず聴いていることがあるので、ぜひお答えください。まずはセカンドアルバム『Heart Under』をどんな人に聴いて欲しいと思いますか?
みんなに聴いてもらいたいよ。歌詞をあえてぼやかしてあるから、自分なりの解釈ができて入りやすいんじゃないかな。このアルバムには悲しみが訪れる瞬間も含まれるけど、楽器やサウンド的にはスリリングな展開に仕上がってると思うんだ。

-ここ日本でも今月頃から来日公演が少しずつ再開しています。私を含め、Just Mustardの来日を楽しみにしている日本のファンもたくさんいると想像しています。彼らにメッセージをお願いします!
日本にはいつか絶対に行ってみたいし、実現できるといいな!近い将来、日本のみんなと会えますように☺

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Just Mustardアルバム一覧

Just Mustard(ジャスト・マスタード)はこれまでに2枚のアルバム(『Wednesday』、『Heart Under』)をリリースしている。

2ndアルバム『Heart Under』

発売日: 2022/5/27
収録曲:
1.23
2.Still
3.I Am You
4.Seed
5.Blue Chalk
6.Early
7.Sore
8.Mirrors
9.In Shade
10.Rivers
フォーマット:Mp3
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1stアルバム『Wednesday』

発売日: 2018/5/2
収録曲:
1.Boo
2.Curtains
3.Feeded
4.Pigs
5.Tainted
6.Deaf
7.Tennis
8.Pictures
フォーマット:Mp3
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Just Mustardバンドプロフィール

Just Mustard(ジャスト・マスタード)2-min

“ボーカルのケイティ・ボール、ギターのデヴィッド・ヌーナン(バッキング・ヴォーカルも担当)とメテ・カリョン、ベースのロブ・クラーク、ドラマーのシェーン・マグワイアからなるJust Mustardは、2016年の結成以来、ライブでもレコードでも、アイルランドで最もスリリングな新人バンドのひとつとして着実に評価を築いてきた。

Just Mustardは、ノイズ、トリップホップ、エレクトロニカに影響を受けており、2018年にデビューアルバム『Wednesday』が母国アイルランドで大絶賛され、チョイス・ミュージック・プライズでアイルランド年間最優秀アルバムにノミネートされるなど、その実力を発揮した。NMEは彼らのデビュー作を“ツートンカラーの傑作”と評し、彼らは「Frank/October」で初めて国際的に大きく前進し、アイルランド国外でも賞賛を集める。KEXPは「Frank」を「Song Of The Day」、BBC Radio 1は「Tune Of The Week」、The FADERはこの曲のビデオを公開し、「October」はStereogumから称賛を浴びた。

この勢いはライブでも発揮され、Fontaines D.C.のソールドアウトUKツアーのサポートを務め、ブライトンのGreat Escape Festivalにも出演し、NMEによるとPrimaveraではベスト12アクトの1つに選ばれている。また、ロバート・スミスがアイルランド公演でのThe Cureのサポートに抜擢し、その衝撃的なライブにより、主要な夏フェスにもブッキングされるようになった。2022年のSXSWではすでに熱狂的な反応を得ており、秋にはヘッドラインのUK/EUツアーが予定されているほか、Fontaines D.C.の米国公演でもサポートとして出演する。

『Heart Under』はJust Mustardのセカンドアルバムであり、Partisan Recordsからのデビュー作品となり、1年間のロックダウンと個人的な苦悩を息を呑むような芸術的声明に変えた驚くべき作品だ。2018年半ばにデビューアルバム『Wednesday』をリリースして以来、バンドは、推進力のある2019年のシングル「Frank」と同年後半の巨大な「Seven」によって微妙だが確固たる変遷を遂げてきた。

『Wednesday』とそれに続くシングルは、シューゲイザーというカテゴリーにぴったりと収まることから遠ざけたが、『Heart Under』は彼らを他のバンドにはないサウンドを持つバンドとして確立させた。10曲からなるこのアルバムは、鋭利に切り裂くギター、ケイティの魔法のようなボーカルなど、一貫したスタイルと理念を提示しながらも、幅広く、縛られることのないヴィジョンを取り入れている。陰鬱でアトモスフェリックなロック・ソングもあれば、軽くてドリーミーなタッチの曲もあり、すべてが完璧な楽器演奏と統一されたビジョンで結びつけられている。

「このアルバムは、私たちにとってとても青く感じられた」と、ケイティは『Heart Under』の背後にビジョンについて語っている。”このアルバムには悲しみや憂いがあって、水中にいるような、何かとても重いものの下にいるような感覚だった。それが音楽に影響を与えたんだけど、事前に話し合ったものではなくて、自然にそうなったんだ”とも語っている。レコーディングはドニゴールの田舎町にあるアッティカスタジオで行われ、追加のレコーディングとポスト・プロダクションは自宅で行われた。ケイティのボーカルも自宅で録音され、より感情的で正直なパフォーマンスができるよう、時間とスペースが割かれた。“ボーカルの感情は私にとって本当に重要で、自宅でのレコーディングでは、じっくりと時間をかけて録音することができた”と彼女は振り返りっている。

アルバムのレコーディングとプロデュースを終えた後、バンドはフランク・オーシャン、Let’s Eat Grandma、ジェイミーXX、FKA Twigsなどとのコラボレーションの経験があるミキサーのデヴィッド・レンチと作業を行い、『Heart Under』はさらに特別な領域へと押し出されたのです。“ロックだけでなく、ポップやエレクトロニカのレコードを手がけたことのある人にお願いしたかった”とケイティは語る。

2020年の深淵の中で書かれた『Heart Under』は、外界の現実に関係のない個人的な時間の記録である。“私はいつも、他の誰よりも自分の頭の中で起こっていることについて書いている”とケイティは言う。ジャンルや時代にとらわれないアルバム『Heart Under』は、ギターがギターらしくないギターアルバムであり、伝統的な枠組みを拡張してスリリングでユニークなサウンドを生み出すアルバムであり、他のアルバムでは聴くことができないものである。”

引用元:Just Mustard(ジャスト・マスタード)バンドプロフィール(Beggars Music)

Just Mustardの評価

“”彼らのデビューアルバム『Wednesday』は、催眠術のようなスモーキーなボーカルから金切り声のインダストリアル・ノイズまで、その場で反転する2トーンの傑作だ。” – NME

“この5人組は北アイルランドとの東の国境にあるアイルランドのダンドーク出身だが、彼らのサウンドはとてもラウドで、まるでロンドンやニューヨークのライブハウスを何十年もツアーしてきたかのように思えるほどである。これらの曲には多くのロックの歴史があり、過去のものがマッシュアップされ、スゥイートかつハードでモダンなサウンドに改革されている。” – bandcamp

“Just Mustardは最近見つけた最もスゥイートなバンドの一つだ” – Revolver Magazine

“この5人組は巨大でカタルシス溢れるサウンドを築き上げ、あなたの皮膚の下に潜り込み、耳元で優しく歌い、頭と顔を殴りつける。” – Overblown”

引用元:Just Mustardの評価(Primary Talent)

Just Mustard代表曲(Youtube)

  • Just Mustard(ジャスト・マスタード) – Still (Official Video)
  • Just Mustard(ジャスト・マスタード) – Mirrors (Official Video)
  • Just Mustard(ジャスト・マスタード) – I Am You (Official Visualiser)

Just Mustard関連記事

Just Mustard(ジャスト・マスタード)の関連記事について、BELONGではこれまでに『Heart Under』リリース記事を取り上げている。

  • 『Heart Under』リリース
  • ライター:yabori
    yabori
    BELONG Mediaの編集長。2010年からBELONGの前身となった音楽ブログ、“時代を超えたマスターピース”を執筆。

    ASIAN KUNG-FU GENERATIONのボーカル・​後藤正文が主催する“only in dreams”で執筆後、音楽の専門学校でミュージックビジネスを専攻

    これまでに10年以上、日本・海外の音楽の記事を執筆してきた。

    過去にはアルバム10万タイトル以上を有する音楽CDレンタルショップでガレージロックやサイケデリックロック、日本のインディーロックを担当したことも。

    それらの経験を活かし、“ルーツロック”をテーマとした音楽雑誌“BELONG Magazine”を26冊発行してきた。

    現在はWeb制作会社で学んだSEO対策を元に記事を執筆している。趣味は“開運!なんでも鑑定団”を鑑賞すること。

    今まで執筆した記事はこちら
    Twitter:@boriboriyabori

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